経営戦略とは?策定方法と役立つフレームワークもあわせて解説

経営者

経営戦略の立て方がわからない
本記事では経営戦略の手順までわかりやすく解説しています。

専門家

「経営には経営戦略が大事」ということはわかっていても、具体的にどうすればいいのかわからずお困りではありませんか?

本記事では、経営戦略の意味と具体的な経営戦略の策定方法までわかりやすく説明しています。

今後、経営戦略を自社で策定したいと考えている方におすすめの記事になっていますので、ぜひご一読ください。

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経営戦略とは?

経営者

漠然としていてわかりづらい。

経営戦略は、「事業をどのように成長させるか」の戦略を指しますが、それ以外にも重要な役目を担っています。

そこでまずは「経営戦略」を正しく理解するために、以下2つの視点から経営戦略を確認しましょう。

  • 経営戦略の意味、定義
  • 経営戦略の構造

それぞれわかりやすく解説します。

経営戦略の意味、定義

経営戦略の意味は「企業が環境の変化に適合し、成長を続けていくための施策」です。

もともと軍隊で使われていた戦略(Strategy)という言葉が、A.D.チャンドラーらによってビジネス分野でも使われ始め、現在ではビジネス用語として用いられるようになりました。

経営戦略では以下の項目が重視されます。

  • 売上を伸ばすためにどうすればいいか
  • 利益の拡大のためには何をすればいいのか

しかし、経営戦略の意義は上記だけには留まりません。そこで知っておくべきは、経営戦略の構造です。

経営戦略の構造

ここからは経営戦略の構造の話です。

専門家

経営戦略は以下の構造から成り立っています。

  1. 全社戦略(企業戦略)
  2. 事業戦略
  3. 機能戦略

企業が成長を続けるにつれ、複数の事業部を自社内に内包することになります。例えば、コングロマリットと呼ばれる企業体では、その内部にいくつもの事業を内在させており、どの事業部にどれだけリソースを割けばいいのかが不明瞭になることがあります。

つまり「経営戦略」においては、まず第一フェーズとして、こうした複数事業を持っている会社が「人」「モノ」「カネ」という三大リソースをどこに割けばいいのかを検討することから始まります。

それを踏まえて、事業戦略や機能戦略の検討をするフェーズに到達します。

したがって、経営戦略はただ会社の売上を向上させるための戦略を検討するのではなく、そもそも何にどれだけのリソースを割くのかを検討することだと頭に留めておくのがよいでしょう。

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経営戦略と混同しやすい言葉

経営者

紛らわしい言葉が多くて混乱してきたよ。

経営戦略について理解する際に、混同、誤解しやすい概念を下記にまとめます。

  • 経営戦術と経営戦略
  • 経営戦略と経営計画
  • 経営戦略とマーケティング・営業戦略

経営戦略と経営戦術

経営戦術とは、手段などの具体的なオペレーションのことを指します。そのため、経営戦略の決定後に、その手段として経営戦術が決まります。

例えば、経営戦略で自社には差別化が必要だと理解した際に、差別化をするための具体的な手法として初めて経営戦術が表れます。

つまり、戦術は戦略の下位の概念ということです。

経営戦略と経営計画

経営計画とは、企業が決定した目指すべきビジョンに到達するために、具体的なマイルストーンを設定し、その達成のための計画を立てることをいいます。

具体的には以下の3つが挙げられます。

  • 長期経営計画
  • 中期経営計画
  • 短期経営計画

それぞれ経営戦略を決定した後に立てられるものであるため、経営戦術と同様、経営戦略の下位概念になります。

ただし、経営計画は投資家が企業に対し投資を検討する重要な指標にもなるため、上場を目指す企業は念入りに経営計画を立案することが多いです。

経営戦略とマーケティング戦略・営業戦略

マーケティングや営業戦略も経営戦略と近しい概念です。ただし、マーケティング戦略も営業戦略も機能的な戦略であり、経営戦略で決定したことを達成するための手段として利用されます。

したがって、経営戦略が決定しない限り、どちらのマーケティング戦略も営業戦略も立てることはできません。

頭の中が整理できたでしょうか?

専門家

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経営戦略の必要性

それでは、なぜ経営戦略は重視されているのでしょうか?

ここには以下3つの現在の社会情勢があります。

  • VUCAの時代
  • 少子高齢化問題
  • 破壊的イノベーションの登場

VUCAとは、以下4つの頭文字を取ったものです。

  • Volatility:変動性
  • Uncertainty:不確実性
  • Complexity:複雑性
  • Ambiguity:曖昧性

つまり、いまは何が起こるか予想もつかない時代だということです。とくに2020年以降企業を取り巻く環境は、新型コロナウイルスにより大きく変化しました。

今まで当たり前だったオフィスワークはリモートワークへと姿を変え、気づけばオンラインでのやりとりが普通になりました。

経営戦略が時代に適合して変わることを意味するならば、今こそ経営戦略の立て直しが必要な時期だということを示します。

また、VUCAは後の2点、少子高齢化と破壊的イノベーションとも関わりがあります。少子高齢化が問題になる中、企業は生産性の向上に努めなければなりません。

一方で、日本の生産性は世界と比較すると低く、今後ますます経営へのテコ入れが必要になります。

かかる状況下で、破壊的イノベーションを生み出すUberなどの振興企業により、既存の業界が破壊されるということも起きています。

経営者

時代背景から、経営戦略は企業の存続のために必要不可欠なものとなっているんだね。

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経営戦略の策定順序

実際に策定をしていきましょう。

専門家

実際に企業で経営戦略を策定する際は、以下のように戦略を策定します。

  1. 全社戦略
  2. 事業戦略
  3. 機能戦略

前述した、経営戦略の構造に合わせて経営戦略を策定するのが効果的です。

1.全社戦略

まず、会社全体の戦略を決定するのが第一段階です。全社戦略の策定では、以下の3つを行います。

  • リソースの配分を決定する
  • 事業領域を決定する
  • 成長戦略を決定する

自社の利益をどの事業で出すのかを明確に定め、自社のドメインを明確に定義、そして成長戦略を描くことが会社戦略の目的です。

2.事業戦略

会社戦略を決定し、自社のリソースの配分が決まった後で事業戦略の策定をします。

会社によっては会社戦略が明確に定まっていないのにも関わらず、先に事業戦略を策定するケースもあります。しかし、会社戦略を決定してはじめて注力分野がわかるため、先に会社戦略、次に事業戦略を決定することをおすすめします。

事業戦略で決定するのは以下3つです。

  • 現状分析
  • 戦略を策定
  • 計画を策定

事業戦略では、各事業の現状分析を実施します。現状を分析せずに感覚的に事業戦略を立ててしまうと間違った戦略となってしまう可能性があるので、必ず現状分析を先に実施しましょう。

戦略の策定では以下2つの戦略の何かを選択することが多いです。

  • ポーターの基本戦略
  • コトラーの戦略

後述しますが、古来より事業戦略は上記2つの理論が元になっています。

その後、戦略をいつまでに実行するか、その目標値をどうするかを定量的に判断するために、中期経営計画などの計画策定が為されます。

3.機能戦略

機能戦略とは、事業内での企業活動を細分化し、効率的に事業を展開するために必要な施策の検討をすることです。

例えば、メーカーの場合、研究開発、購買、営業、物流、販売などの機能がありますが、これらの最適化を図るのが機能戦略です。

このように、経営戦略を策定する際はあくまでも経営戦略の構造通りに事を進めるのがセオリーとされています。

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会社戦略の策定に役立つフレームワーク

まずは会社戦略の策定に役立つフレームワークを紹介します。

  • アンゾフのマトリックス
  • BCG-PPM

それぞれ詳しく解説します。

アンゾフのマトリックス

アンゾフのマトリックスは会社の成長戦略を決定するのに役立つフレームワークです。

以下のように項目を分けて、自社の成長戦略を検討します。

「市場浸透」は既にある商品と既にある市場を組み合わせた企業戦略であるため、これ以上の拡大が見込めず、また「多角化」は新たな市場を切り開いて新商品も開発を同時にしなければならないため、現実的ではありません。

まずは、「新市場開拓」「新商品開発」を検討するのが一般的です。

専門家

BCG-PPM

経営者

どこにどの程度リソースを使おうかな…

自社のリソースの配分を決定する際は、BCG-PPM分析を行うのが有用です。

複数の事業がある場合には、その事業のポジションをBCG-PPM分析することで、どの事業に力を入れるべきなのかがわかります。

自社のキャッシュフローに余力があるなら「問題児を育てるべき」「花形を成長させて金のなる木」にすべき、という結論になりますし、既にキャッシュフローが厳しい状態ならば不採算事業の撤退などの企業戦略を決定できます。

企業戦略があってこそ次の経営戦略や事業戦略が決定されるので、時間をかけてでも正確にリソース配分を検討することが重要です。

事業戦略の現状分析に役立つフレームワーク

事業戦略の策定は以下の手順で行うと説明しました。

  • 現状分析
  • 戦略を策定
  • 計画を策定

この内、現状分析に役立つフレームワークには以下が該当します。

  •  SWOT分析
  • 3C分析

それぞれ詳しく解説します。

 SWOT分析

事業戦略の策定をする際はSWOT分析を利用するのが有用です。

SWOT分析を実施することで、事業の改善ポイントやリスクヘッジを検討することができます。

SWOT分析を活用する際は、まずは外部要因から洗い出すために「OT」を分析し、その後に「SW」を検討するのが良いでしょう。

専門家

3C分析

3C分析とは、以下3つの頭文字を取ったものです。

  • Company:自社
  • Competitor:競合
  • Customer:市場

3C分析を実施する際は「市場、競合、自社」の順番で分析をするのが良いと言われています。このような順序にするのは、市場と競合の情報を知らないケースが散見されるからです。

事業戦略において重要なのは、自社の改善のポイントやビジネスチャンスを掴むことですが、そのチャンスを掴むためには顧客の分析と他社分析が必要です。

競合の成功要因を分析し、自社に当てはめて考えることが事業戦略においては最も重要なため、他社をみて自社を律する視点を忘れないようにしましょう。

専門家

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事業戦略の市場分析に役立つフレームワーク

事業戦略の現状分析のうち、市場分析に役立つフレームワークは以下の通りです。

  • PEST分析
  • 5Fs分析
  • シナリオ分析

それぞれわかりやすく解説します。

PEST分析

PEST分析は市場のマクロ環境を分析するのに最適なフレームワークです。

PEST分析とは以下4つの頭文字を取っています。

  • Political
  • Economical
  • Social
  • Technology

PEST分析の特徴は、業界環境をマクロの視点で見ることで、俯瞰して業界を把握できることです。例えば、どれほど素晴らしい商品を作ったとしても、社会の価値観に合わない製品を製造したところで需要は生まれません。

また、あるビジネスを規制する法律が可決されたのにもかかわらず、そうした分野に手を出してしまえば、その事業は失敗に終わるでしょう。

PEST分析では自社ではどうしようもできない外部要因を洗い出すのに適しています。

業界環境は、必ずマクロの視点から見ることを忘れないようにしましょう。

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5Fs分析

5Fs分析は「ファイブ・フォース分析」と呼ばれます。

ファイブ・フォース分析は後述するポーターによって考案されたフレームワークです。

ポーターによれば、自社には以下5つの動向を気にする必要があります。

  • 新規参入の脅威
  • 売り手の交渉力
  • 買い手の交渉力
  • 代替品の脅威
  • 既存事業者との競争

自社に関わるステークホルダーの立ち位置を勘案することで、自社のビジネスにステークホルダーがどういった影響を及ぼすのかを予測します。

例えば、アナログカメラは代替品のスマートフォンの脅威を軽視しており、顧客のスイッチングコストの低さを見極めていなかったせいで、その市場を大きく失いました。

このように、事業戦略の策定にあたって業界環境を分析する際はファイブ・フォース戦略が役立ちます。

シナリオ分析

経営者

リスクへの対処はどうするの?

シナリオ分析とは、特に事業戦略のリスク要因に対処するための方法のことです。NPV(フリーキャッシュフローなどを利用して算出する)を算定することで、戦略実行時にダウンサイズ、アップサイズしたときの収益や投資がどの程度変化するかを求めます。

コーポレートガバナンス・コード改訂により、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への注目が集まってきていることから、シナリオ分析に現在注目が集まっています。

事業戦略の策定方法

ここまでは、事業戦略のうち、現状分析の方法を具体的に説明してきました。

ここからは、具体的な事業戦略の策定方法を解説します。

事業戦略の策定方法としてよく参照されるのは以下の2つです。

  • ポーターの基本戦略
  • コトラーの基本戦略

事業戦略の基本戦略として、経営者であれば押さえておきたい内容です。

ポーターの基本戦略

ポーターの基本戦略とは、企業の取りうる戦略は「コストリーダーシップ戦略」「差別化」「集中」の3種類に分けられるという考え方です。

まず、「コストリーダーシップ戦略」は業界内で最もコストを安くできる企業のみ選択できる戦略です。具体的には、業界1位の企業がコストリーダーシップを選択すべきと言われることが多いです。

具体的には、サプライチェーンの効率化や自動化などの選択をすることで、コストの削減が見込めます。

業界1位の企業の場合、経験曲線効果やスケールメリットが働きやすいため、そもそものコストが削減しやすいメリットがありますが、それに加えてさらに最適化を図ることで他社に追随されないコストの実現ができます。

一方で、差別化戦略や集中戦略は弱者に与えられた選択肢です。これを別の用語でランチェスター戦略と呼ぶこともありますが、コストで勝てない分、特定のニッチな部分の顧客層のみを狙ったり、リソースを一分野に絞ることで大手に真似できない強みを発揮できます。

逆に、こうした戦略に業界1位の企業が気づいた場合には、模倣をして差別化や集中戦略を防ぐことが定石とされています。

専門家

コトラーの基本戦略

コトラーは『マーケティング・マネジメント』などを書いた戦略策定の有名人で、ポーターと双璧を為す学者です。コトラーが説く事業戦略では、企業を以下4つに分類します。

  • リーダー企業
  • チャレンジャー企業
  • ニッチャー企業
  • フォロワー企業

リーダー企業とは業界シェアNo.1の企業のことで、チャレンジャーはそんな業界シェアNo.1に挑戦する企業のことです。

ニッチャーとは大手が参入できないようなニッチな分野のシェアを獲得している企業のことで、フォロワー企業はその他の企業全てという意味です。

リーダーであれば全方向への戦略を取ることでシェアの死守が求められますし、チャレンジャーはリーダーとの差別化を上手くはかりながら、リーダーのシェアを獲得することが求められます。

また、ニッチャーは集中戦略を取ることでニッチ分野でのトップシェアを獲得すべきです。

このように、自社の立ち位置によって具体的な戦略が変わります。

日本社会における今後の経営戦略の課題

経済産業省も説明資料として経営戦略と人材戦略の資料を公開しています。

それによると、経営上の課題は以下3つだと説明しています。

  • グローバル化
  • デジタル化
  • 少子高齢化

そしてこの問題を解決するためには、人材戦略こそが重要であると説明しています。

従来型の日本の閉じられたコミュニティーではなく、変化に富んだイノベーティブな人材を自社に獲得することで、デジタル化やグローバル化に適応できます。

日本では人材戦略が経営戦略に紐づいていないという課題があります。

したがって、今後は日本でも経営戦略と人材戦略を紐付け、適切な人事施策をとっていくことが重要だと説明しています。

経営者

経営戦略は時代によって変わるということだね。よくわかったよ!

参考:事務局説明資料(経営戦略と人材戦略)| 経済産業省

経営戦略を学べる本

最後に、経営戦略についてより深く学べる本をご紹介します。本記事で紹介するのは以下の3冊です。

  • グロービスMBA経営戦略
  • 経営戦略とマーケティング
  • ロバート W. グラント『グラント 現代戦略分析』(中央経済社)

それぞれ詳しく解説します。

『グロービスMBA経営戦略』

『グロービスMBA経営戦略』では、経営戦略の構成や事例などが多く説明されており、経営者が知っておくべき理論やツールについて幅広く説明しています。

フレームワークも詳しく説明しているため、実践的な一冊といえるでしょう。

『経営戦略とマーケティング

「経営戦略とマーケティング』は、名古屋商科大学ビジネススクールのMBA講座の内容がわかりやすくまとまっている一冊です。

講義形式で中身が進んでいくので、難しい内容の経営戦略も頭に入りやすく、導入として読むには最適でしょう。

『グラント 現代戦略分析』

日本国内の指定教科書としてMBAで利用されているのが『グラント 現代戦略分析』です。日本語に不自然な訳があったり、回りくどい表現なので読みにくいといった声もありますが、経営戦略を学ぶのであれば必見の一冊です。

まとめ

本記事では、経営戦略をわかりやすく解説しました。

経営戦略を実施する際は以下3つの順で施策を実施するのが大切です。

  1. 全社戦略(企業戦略)
  2. 事業戦略
  3. 機能戦略

正しい順序で実施することで、自社の成長戦略に寄与する経営戦略が立案できることでしょう。

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