2020/04/09

コーポレートガバナンス・コードから見る企業ガバナンスのあり方~生産性向上とコンプライアンスによる株主利益の最大化~

皆さんは、普段企業の中でマネジメントの役割を果たすに当たって、「コーポレートガバナンス」という概念について意識することはあるでしょうか。
コーポレートガバナンスは、直訳すると「企業統治」となりますが、つかみどころのない漠然とした概念に思えてしまう、という方も多いでしょう。
しかし、企業の本来のあり方というものを考えるに当たって、コーポレートガバナンスの考え方は無くてはならないものです。
この記事では、コーポレートガバナンスの本質について迫ってみたいと思います。
なお、記事中ではたびたび「コーポレートガバナンス・コード」の内容に言及します。

(参考)
東京証券取引所「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」(2018年6月1日付)
https://www.jpx.co.jp/news/1020/20180601.html

コーポレートガバナンス・コードとは、金融庁と東京証券取引所により取りまとめられた、上場企業が守るべきとされる企業統治の指針です。
企業統治のあり方を考えるに当たって、コーポレートガバナンス・コードは、決して唯一の正解というわけではありません。
しかし、多くの示唆を与えてくれる内容にまとめられていますので、ぜひ参考にしてください。

 

外してはならない原点:「企業を統治するのは株主である」

 

企業統治のあり方を考えるに当たっては、まず「企業を統治すべきなのは誰か」という問いを出発点とする必要があります。
この問いについては、改めて問われると「株主」という答えを思い浮かべることができる方は多いでしょう。
事実、コーポレートガバナンスの根幹は「株主による統治」にあります。
株式会社における意思決定の最高機関は株主総会です。
そして、取締役をはじめとする役員は、株主の信託を得て任命される、株主に対しての奉仕者として位置づけられます。
日常の会社経営において、マネジメント層としては、
「いかにして会社をコントロールするか、思い通りの方向へ向かわせるか」
ということを考えてしまいがちです。
しかし、むしろこのようなマネジメント層の独善的な発想を規律し、真の株主利益を実現するための仕組みを作ることの方が、コーポレートガバナンスの本質であると言っても過言ではありません。
コーポレートガバナンス・コード1項では、「株主の権利・平等性の確保」が掲げられています。
株主の権利と平等性は、「株主による統治」を実現するための前提・礎となるものです。
3項では、「適切な情報開示と透明性の確保」について規定しています。
同項では、「取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ・・・」という言及があります。
次いで5項では「株主との対話」が規定されています。5項は3項の内容を受ける位置づけにもなっています。
5項においては、「経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行」うべき旨が規定されています。
すなわち、3項・5項は株主に対する奉仕者としての経営陣(取締役会)という位置づけを明確に打ち出したうえで、「株主による統治」を実効化するための透明性を備えることを上場会社に要請する規定であると位置づけられます。

このように、コーポレートガバナンス・コードは、「株主による統治」が実効的に機能するための基本的な仕組みを備えることを会社に対して要求していると言えます。

 

コーポレートガバナンスとは総合力である

 

株式会社に関して、「株主の株主による株主のための」という表現がなされることがあります。
この表現は、会社の所有者が株主であるということと同時に、会社の目的は株主利益の最大化であるということを含意しています。
当然、コーポレートガバナンスも会社の営みの一環ですので、その究極の目的は「株主利益の最大化」でなければなりません。
コーポレートガバナンス・コードは、どのようにして株主利益を最大化すべきであるかについての示唆を提示しています。
まず、2項には「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」として、多様なステークホルダーとの協働により企業価値を高めるべき旨が規定されています。
また、4項には「取締役会等の責務」として、「経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと」などが規定されています。
このように、コーポレートガバナンス・コードは、マネジメント層に対して、「多様な視点から、時にはアグレッシブに会社の生産性を向上させる取り組みを行うこと」をその役割として求めています。
また一方で、3項の「適切な情報開示と透明性の確保」に関する規定は、会社のコンプライアンスを意識した内容になっています。
コンプライアンスは、必ずしもダイレクトに企業の生産性に寄与するというわけではありません。
しかし、特に近年においては、法令リスクやレピュテーションの観点から、会社はコンプライアンスの重要性を無視するわけにはいきません。
そのため、コーポレートガバナンス・コードは、マネジメント層に対して、会社に対するレビューが利くような仕組み作りを求めているのです。
つまり、コーポレートガバナンス・コードの根底に通ずるのは、生産性の向上とコンプライアンスの両輪が、安定的な株主利益の実現に必要不可欠である、という考え方であるということが言えます。

 

中長期的な株主利益を追求する

 

会社の価値は「Going Concern(継続企業価値)」にあると言われています。
近年は金融庁もこの点を非常に重視していて、公表資料等でも「中長期的な」企業価値、株主利益という点に言及することが増えています。
つまり、短期の株価や財務諸表の数字を重視するのではなく、中長期的な株主利益を追求することが、トータルでは株主利益の最大化につながるという考え方が近年のスタンダードとなっているのです。
コーポレートガバナンス・コードでも、2項、4項、5項において「中長期的な企業価値」についての言及があり、この考え方に賛同していると言えます。
よって、コーポレートガバナンスによって実現が目指されるのは、「中長期的な株主利益の最大化」であるということになります。

 

まとめ:コーポレートガバナンスはマネジメントにとっての職業倫理

 

これまでコーポレートガバナンス・コードの規定からコーポレートガバナンスの本質を探ってきました。
そのないでしょうか。
そして、マネジメント層は、本来企業を統治すべきである株主から信託を受けて、このような仕組み作りを行うことを委任されている立場にあるのだということを忘れてはならないのです。
一つの解としては、コーポレートガバナンスとは、「中長期的な株主利益を最大化するための仕組み作り」であるというところに行き着くのでは
コーポレートガバナンスを考えるに当たって、マネジメント層は、「何が株主にとって利益であるか」ということについて独善的であってはなりません。
コーポレートガバナンス・コードにも示されているとおり、マネジメント層は、株主との適切な対話を行い、真の意味で株主のことを考えた経営をしているかということを常に考える必要があります。
こうした意味で、コーポレートガバナンスは、マネジメント層にとっての職業倫理であると言うことができるかもしれません。