
「工程を細かく監視すればするほど、品質管理が徹底される」そう信じている組織では、組織のスピードが上がらなかったり、結局品質問題が繰り返されたりしてしまうかもしれません。識学では、品質管理の失敗の本質を「監視の不足」ではなく、「誰がどの工程の品質基準を定義し、結果に責任を持つかが決まっていない」という設計の問題だと考えます。管理者の仕事は監視ではなく、達成基準を定義し結果に基づいて確認することです。本記事では品質マネジメントの基本から、識学が示す『責任の所在の明確化』と『達成基準の先行定義』の方法を解説します。
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目次
品質マネジメントとは何か——基本の定義
品質マネジメントシステム(QMS)は、「品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステム」のことです。(出典:日本産業標準調査会|品質マネジメントシステム(QMS)|https://www.jisc.go.jp/mss/qms.html)
成果物だけでなく「製造過程そのもの」が対象である点が重要です。
品質基準を「完全結果」として定義する
「○月○日の出荷までに、不具合件数ゼロ・納期遵守率100%の状態で納品する」このように期限と状態が明確になっている目標を、識学では「完全結果」と呼びます。「なるべく高品質なものをつくる」では、期限と状態が明確ではないため、人によって認識がずれてしまいます。「何をもって達成とするか」と「どこで区切るか」の両方を先に定義することが品質マネジメント設計の起点です。

品質マネジメントが必要とされる理由
顧客との関係構築・維持の合理化:個人の経験や属人的なノウハウではなく、仕組みとして品質を担保することが目的です。
性善説に頼らない備え:「担当者がきちんとやるだろう」という性善説への依存が、品質の低下に気づかないという事態に繋がることがあります。品質基準をルールとして先に定義し、誰が守ったか・守っていないかを事実として判断できる状態を作ることが基盤になります。
品質マネジメント7原則——識学の観点から再整理する
原則1:顧客重視——目標を顧客基準で完全結果として定義する
ISOでは、現在及び将来の顧客ニーズを理解し、顧客要求事項を満たすよう努力すべきであるとしています。「顧客が求めるもの」は、求められる期限・状態について認識のずれない事実として記述されていなければ品質基準になりません。「高品質なもの」という漠然とした要求を「○件以下の不具合」「○の状態を満たしていること」のように完全結果として定義することから実践が始まります。
原則2:リーダーシップ——責任と権限を先に定義する
ISOでは、リーダーは、組織の目的及び方向を一致させるとしています。識学では、品質マネジメントにおけるリーダーの役割を「品質基準を完全結果で定義し、その結果に対して責任を持つこと」に置きます。リーダーが責任と権限を果たしていない組織では、品質基準が現場の解釈に委ねられ、一貫性が失われてしまいます。
原則3:人々の積極的参加——役割定義が参画を生む
ISOでは、組織のすべての階層の人々が能力を発揮し、価値創造に参加できるようにすることとしています。役割が先に明確になっていると、部下は「何をすれば良いか」がわかり、自然と行動に移りやすくなります。
原則4:プロセスアプローチ——経過介入しない原則との接続
ISOでは、活動及び関連する資源が一つのプロセスとして運営管理されるとき、望まれる結果がより効率よく達成されるとしています。結果に不足が生じた際に、プロセスを分析し改善する仕組みをつくること自体は、目標の達成に向けた設計の一部です。ただし担当者が報告のルールに沿って動いている限り、管理職は個別のプロセスに介入しません。プロセスの分析・改善の仕組みをつくることと、都度口を出す経過介入は異なります。また、担当者に行わせる必要があるプロセスがある場合は、「ルール」として先に設定することで、経過介入をせずに担当者に行わせることができます。
原則5:改善——責任の所在の分類が改善を生む
ISOでは、組織全体のパフォーマンスを向上させるために、継続的な改善を目標とすることとしています。問題発生時の改善に必要なプロセスは以下の通りです。まず問題発生時に原因を2つに分類します。「品質基準として求められるものが不明確だったための問題(管理職の責任、対応はルール設定)」か「品質基準として求められるものは定義されていたが、担当者のルール違反やスキル不足によって起きた問題(担当者の責任、対応はルール遵守と行動の改善)」です。この分類をせずにただ漠然と改善活動を行うと感情的な対応になりがちであり、同じ問題が繰り返されてしまうかもしれません。
原則6:客観的事実に基づく意思決定——観察可能な事実への徹底
ISOでは、効果的な意思決定はデータ及び情報の分析という確かな根拠に基づいているとしています。識学では品質基準の設計段階からこれを徹底します。「高い品質を目指す」という不明確な記述ではなく「不具合件数○件以下・納期遵守率○%以上」のように、誰が見ても判断できる事実として記述することが原則です。
原則7:関係性管理——指示系統の一本化が関係性を機能させる
ISOでは、持続的成功のために、サプライヤーなど利害関係者との良好な関係を築き、持続可能な成功を目指すとしています。外部との関係を安定して機能させる前提となるのが、組織内部の運営の一貫性です。識学では特に『誰の指示に従って動くか』という指示系統の一本化を重視します。複数の立場から異なる指示が届く状態では『どちらの指示に従えばよいか』と担当者が迷い、対外的な品質の一貫性にも影響が生じやすくなります。
(参考:日本規格協会|ISO9001 品質マネジメントシステム7原則)
品質マネジメントにおける「経過介入」しない原則の適用
管理職が担当者のやり方について都度口を出すということを続けていると、担当者は「上司が全部教えてくれるから、自分からは何もせず指示を仰げばいい」「上司の指示通りにやっていれば、うまくいかなくても自分に責任はない」という認識を持ちやすくなります。その結果、品質基準を自責として捉えられず、「指示通りやっただけ」という他責の意識が常態化します。
識学が示す品質管理の設計は4点です。
①品質基準を完全結果で先に定義する:「○月○日の出荷時点で不具合件数ゼロ・返品率○%以下」のように数値・状態で記述します。
②当たり前の基準として、姿勢のルールを先に定義する:「品質基準を下回った場合は、発見した当日中18:00までに担当管理職に報告する」「工程に問題が生じる場合は期限を迎える前に上司に確認する」のように、誰が見ても「守った・守っていない」が判断できる形で記述します。
③報告のルールを先に定義し、経過に介入しない:「毎週月曜日の10:00までに品質状況を所定フォーマットで提出する」といった定期的な報告のルールに沿って情報が届いている限り、管理職は経過に介入しません。ただしルール違反が発生した場合には指摘を行います。
④品質問題発生時の責任を構造的に分類する:「品質基準として求められている物が不明確だったための問題(管理職の責任)」か「品質基準は定義されていたが担当者の違反によって起きた問題(担当者の責任)」かに分類します。この分類が再発防止の構造的な条件です。

品質マネジメントにおける検査の位置づけ
検査の本来の目的は、品質基準以下の成果物が顧客の手に渡らないようにするための仕分けです。検査で品質を「上げる」のではなく、作業工程において品質基準を満たすプロセスが先に定義・実践されていることが前提であり、検査はその確認の役割を担います。
検査で問題が発見された場合も「品質基準の設計の問題(管理職の責任)」か「設計された工程の違反(担当者の責任)」に分類し、次のサイクルの改善につなげます。
まとめ:品質マネジメントの本質は「監視の徹底」ではなく「基準の先行定義」にある
品質マネジメントを機能させるうえで最も重要なのは、工程の監視や意識改革より先に、達成基準と責任の所在を明確に定義することです。
現在の品質管理において、「この品質基準は、誰が見ても達成・未達が判断できる形で記述されているか」を確認してみてください。そうなっていない基準が一つでもあれば、そこが品質問題の起点になっているかもしれません。この原理原則が、品質管理をどのように運営していくかのヒントになれば幸いです。
参考文献・引用元
- ISO9001 品質マネジメントシステム7原則:日本規格協会(JSA)邦訳版
- 日本産業標準調査会 https://www.jisc.go.jp/mss/qms.html
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