2020/11/06

「人を動かす」から学ぶ原則と良質な人間関係の築き方

「人を動かす」という本を読んだことはありますか?「人を動かす」はデール・カーネギー著のビジネス本ですが、一度は名前を聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。まさに不朽の名作と呼ぶに相応しく、現在に至るまで世界中で読み継がれています。

ビジネスマンに限らず、大学生に勧められることも多く、「リーダーの必読書」とも呼ばれるこの書籍。今回の記事では、この「人を動かす」について、その概要や読むべきポイントを解説していきます。

 

「人を動かす」とは

 

まずは「人を動かす」の概要から眺めていきましょう。「どのような本なのか」ということについて触れた後、著者であるデール・カーネギーの紹介、そして書籍の主な内容を見ていきます。

 

「人を動かす」とはどのような本なのか

「人を動かす」というタイトルの通り、本書は人を動かすことの本質(つまりマネジメントの本質)についてまとめられた本です。様々な物語を通して「人を動かす」ことのエッセンスに触れ、どのように人と関わっていくべきかを示していきます。

本書では「原則」と呼ばれていますが、「人を動かす三原則」「人に好かれる六原則」「人を説得する十二原則」「人を変える九原則」など、マネジメントの本質を原則として表現したところに本書がベストセラーたる所以があります。

 

著者デール・カーネギーの紹介

では本書を書いたデール・カーネギーとはどのような人物なのでしょうか。カーネギーは1888年、アメリカの農家に生まれ育ちます。大学卒業は様々な職を経て、弁論術・成人教育の講師となります。

このようにカーネギーは早くから自己啓発や成功哲学のジャンルに身を置いており、1936年には「人を動かす」、1948年にはこちらもベストセラーである「道は開ける」を執筆しています。これらの著書では一貫して、「自分の行動を変えることによって他者の行動を変える」という、人を動かすための原則が提唱されています。

 

「人を動かす」の主な内容

それでは「人を動かす」の主な内容についてざっと眺めていきましょう。冒頭にも説明した通り、本書は「マネジメント」の本質を、具体的なエピソードを交えながら「原則」として表現した書籍です。

詳しくは後述しますが、「人を動かす3原則」として「批判も非難もせず、苦情も言わない」「率直で、誠実な評価を与える」「強い欲求を起こさせる」を紹介しています。これと同じように、「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」についても、物語と交差させながらその原則を示していきます。

 

人を動かす3原則

 

まずは手始めに「人を動かす3原則」を眺めていきましょう。

 

盗人にも五分の理を認める(相手を批判も非難もせず、苦情も言わない)

まずは盗人にも五分の理を認めるというものです。たとえ盗人のような人でも、「自分が間違っている」とは認めたくありません。そんな人に正当な批判を加えたとしても無意味であり、状況を悪化させるだけです。

なので「相手を批判も非難もせず、苦情も言わない」。どれだけ自分が正しくて相手が間違っていようとも、まずは相手を認めるところから始めます。

 

重要感を持たせる(率直で、誠実な評価を与える)

人間は誰しも「重要な存在になりたい」という欲求を持っているはずです。人間は誰しも、集団の中で特別な位置を築き、重要なピースであることの自覚を持ちたいと願っているはずです。

そこで相手の優れているところをストレートに伝えることによって、相手に重要感を持たせることができます。何よりも本音で言っていることが重要なので、取ってつけたようなお世辞は厳禁です。

 

人の立場に身を置く(強い欲求を起こさせる)

人を動かす唯一の方法は、「その人の好むもの」を問題にします。つまりその人が何を欲しているのかを考え、それを手に入れる方法を教え、相手の利益と自分の利益を一致させることです。

 

人に好かれる6原則

 

さて、次に見ていくのは「人に好かれる6原則」です。具体的には「誠実な関心」「笑顔」「名前をしっかり覚える」「聞き手に回る」「関心のありかを見抜く」「心からほめる」。

 

誠実な関心を寄せる

人間というものは「自分に関心を寄せてくれる人に関心を寄せる」ようにできています。ですから、まず人に好かれるためには、自分から誠実な関心を寄せることが重要になってきます。

例えば失礼にあたらないような相手のプライベート(「スポーツはするか」「どんな食べ物が好きなのか」など)を聞き、そこから話を広げていくことによって、相手に「この人は自分に関心を持ってくれている」と思わせることができます。

 

笑顔を忘れない

「人の魅力は笑顔に詰まっている」とはよく言ったもので、笑顔が多い人間は好かれる傾向にあります。笑顔は我々の想像以上に強力なコミュニケーションツールであり、笑顔が伝染していくことによってスムーズな会話が実現できます。

とにかく人と話すときは笑顔を心がけ、笑う気にならない時でも無理に笑ってみましょう。笑顔というのは不思議なもので、相手の気持ちをやわらげることもできれば、自分もまた幸福な気持ちになることができる魔法のアイテムなのです。

 

名前を覚える

名前を覚えるというのもとても重要です。これはひとつめの原則である「誠実な関心」にもつながっていきますが、人間は「自分の名前を覚えてくれていて、かつ自分の名前を読んでもらえる」ととても気分が良くなるものです。

特に経営者は色々な人と出会うので、いちいち人の名前を覚えておくことは難しいかもしれません。しかし相手の特徴や姿と一緒に名前を覚える習慣をつけることによって、相手の名前をしっかりと記憶し、会話の端々に混ぜていくことができます。

 

聞き手に回る

人の話を熱心に聞くというのがこの原則です。人は「自分の話をしっかりと聞いてくれる人」を好きになります。人間は自分の話をしている時間は誠に気分の良いもので、相手の「気分の良さ」を持続させることによって、自分に関心を持ってもらうことができます。

具体的には自分の話をせず、聞き役に徹します。そしてただ聞いているだけではなく、時折気の利いた質問を混ぜるようにしましょう。質問をすることによって「こちらの誠実な関心」を相手に伝えることができるのです。

 

関心のありかを見抜く

相手の関心ごとをしっかりと見抜いて、それを話題にするのも重要な技術でしょう。人間は自分の興味があることに共感されると、その人間に好感を覚えるようになります。一致した趣味の話がとても盛り上がるのと同じ原理です。

誰かと会うようなことがあったときには、その人の好きそうな話題について一通り勉強しておき、淀みなく話せるようにしておきます。「自分はあなたを理解していますよ」と態度で示すことによって、相手に好かれるようになります。

 

心からほめる

最後に見ていくのは「心からほめる」ということです。相手を心から称賛してあげることによって、相手の自己重要感をしっかりと満たしてあげます。先ほどの「自己重要感」の話とつながりますが、人間は誰しも「自分が重要な存在でありたい」と思っています。

相手の良いところをしっかりと褒め、卓越した存在であることを認めてあげることによって、相手の人心をしっかりと掴んでいきます。もちろん取ってつけたようなお世辞ではなく、心から賛辞を送ってあげてください。

 

人を説得する12原則

 

次に「人を説得する12原則」について簡潔に見ていきましょう。

 

議論を避ける

まずは議論を避けるということです。議論はほとんど建設的にはいかず、自尊心を傷つけるだけです。どれだけ自分の意見や考え方が正しいと思っても、そして相手が議論をふっかけてきたとしても応じない心構えが重要になってきます。

 

誤りを指摘しない

相手が間違ったことを言っていたときても、決して鬼の首を取ったように主張してはいけません。人の意見を真っ向から否定したり、断定的に自分の意見を述べてしまうと、相手を納得させることはできなくなってしまいます。

 

誤りを認める

人間生きていれば誰しもミスはあります。その時にしっかりと「自分はミスをした」と主張できるかどうかが重要になってきます。こちらが一旦下手に出れば、相手も寛容になり、相手を説得するための土壌が作れます。

 

穏やかに話す

話し方はとても重要です。甲高い声で鋭く話すよりも、穏やかな口調で、物腰を柔らかくして話すだけでも相手の反応は違ってきます。まず自分の意見を断定的に述べるのではなく、相手を尊重する態度が重要なのです。

 

イエスと答えられる問題を選ぶ

いきなり相手の納得できない問題を選んでしまうと、相手は警戒してしまいます。そこで「イエスと答えられる問題から」選んでいきます。相手に何度もイエスと言わせることによって、相手の心情を肯定的な方向へ向かわせるのです。

 

しゃべらせる

これは「聞き手役に徹する」という話にもつながりますが、相手に心置きなくしゃべらせ、余計な口を挟まないというのはとても重要です。まず相手にしゃべらせて自己重要感を満たしてあげましょう。

 

思いつかせる

相手にすべてを伝える(要するに答えを教える)だけでは、相手に自分の意見を押し付ける形になってしまいます。相手にキーワードやヒントを与えて、「自分で気付くように仕向ける」ことによって、こちらの意図を伝えましょう。

 

人の身になる

何事においても重要になってくるのが、「相手の立場だったらどう感じるだろうか」「相手の立場だったらどういう反応をするだろうか」を考えることです。つまり相手の行動の要因にフォーカスし、コミュニケーションの円滑化を図ります。

 

同情を寄せる

まずは「相手に同情する」ことによって、相手の立場に立ち、そこから食い違った意見を修正していくという原則です。まずは相手の敵対心をほどくという作業から始めて、建設的な話をしていきましょう。

 

美しい心情に呼びかける

相手を「品行方正」な人物として扱うことによって、相手の良心を刺激します。相手を美しい存在として仕立てあげることによって、こちらのしてほしい行動を訴えかけ、相手に行動させることができるのです。

 

演出を考える

人に何かを頼む時には、ただ事実を伝えるのではなく、相手が興味を持ってくれる演出をするべきという考え方です。相手の興味を引くような演出を混ぜることによって、ただ事実を考えるだけでなく、相手を楽しませることができます。

 

対抗意識を刺激する

人間は誰しも「特別な存在でありたい」「誰よりも優れた存在でありたい」と願っています。周りと比較をすることによって、相手に対抗意識を芽生えさせることができ、仕事の質・スピードを増大させることができます。

 

人を変える9原則

 

次に見ていくのは「人を変える9原則」になります。

 

まず褒める

人に苦言を呈する前に、まずは褒めましょう。まずは相手に優れたところがあればしっかりと褒めてやり、相手の気分を良くしてあげます。それから直すべきところに触れることによって、相手はフラットに意見を聞くことができるのです。

 

遠回しに注意を与える

苦言を呈するときには、なるべく直接的な表現は避けましょう。人間は注意されたり叱られたりすることがあまり好きではありません。「〜するな」「〜しろ」と言うのではなく、それとなくこちらの意見を気づかせることが重要です。

 

自分の過ちを話す

苦言を呈するときには、自分の失敗エピソードを織り混ぜることによって、相手の警戒感を解いてあげることが重要です。頭ごなしに相手のやり方を否定したり、非難してしまうと、相手も反抗心を抱いてしまいます。

 

命令をしない

命令口調で何かを言ったりするのは避けましょう。命令するのではなく自主的にやらせることが重要なのです。「〜をしろ」というのではなく、「〜してみるのはどうか?」というように、一つの提案という形で勧めてみるのがおすすめです。

 

顔をつぶさない

相手の顔をしっかりと立てて、顔をつぶさないことはとても大事です。何度か触れてきた話ではありますが、たとえ相手の言うことが100%間違いだったとしても、まずは相手の言い分を聞いてあげましょう。

 

わずかなことでも褒める

「褒められて伸びる」という言葉があるように、人間は褒められることをとても喜びます。どんなに些細なことでも良いので、褒めるべきところは褒めてあげましょう。大袈裟に褒めるのではなく、あくまで誠実に褒めてあげることが大事です。

 

期待をかける

「期待をかけられる」と人間は頑張るものです。相手をしっかりと信頼し、期待をかけているのを伝えることによって、相手に静かに発破をかけることができます。

 

激励する

これは「ほめる」という話にも共通しますが、とにかく相手の長所を褒めてやり、相手に自信をつけさせてあげることが大事です。人は激励されると、その期待に応えようとしてパフォーマンスを上げます。

 

喜んで協力させる

相手が喜びそうな肩書きを与えて、こちらに協力してくれるようにするのも重要な技術です。何度か出てきたキーワードではありますが、「相手の自己重要感」をしっかりと満たしてあげることによって、こちらに協力させることができるのです。

 

【巻末付録】幸福な家庭をつくる7原則

 

最後に「幸福な家庭をつくる7原則」を見ていきましょう。これは巻末付録としてついているもので、ビジネスの場所から一旦離れ、「幸福な家庭」を築くための原則を示したものになります。

 

口やかましく言わない

夫婦生活の基本は「口やかましく言わない」ところです。長いこと一緒に暮らしていると、相手の悪いところばかりが目についてしまいますが、まずは我慢して意識を他に向けましょう。夫婦喧嘩が起これば子どもにも伝播します。

 

長所を認める

相手の長所をしっかりと認めてあげましょう。結婚生活が続いていくことによって、相手への信頼やリスペクトが薄れていくのは仕方のないことです。まずはしっかりと相手の長所を見つけ、そこを認めてあげましょう。

 

あら探しをしない

これは長所を認めるという話と関連しますが、「あら探しをしない」というのもまた重要です。あら探しをして相手の短所を見つけたところで、こちらには何のメリットもありません。血眼になってあら探しをするのはやめましょう。

 

ほめる

適度に相手を褒めてあげることによって、相手は嬉しい気持ちになり、いずれこちらにも返ってきます。ほんのささいなことでも良いので、相手を褒めてあげる習慣を持ちましょう。まずは円満な関係を維持することが重要なのです。

 

ささやかな心づくしを怠らない

「ささやかな心づくし」を忘れないようにしましょう。夫婦生活というものが長く続くと、どうしても相手に遠慮がなくなってしまい、心づくしを怠りがちになってしまいます。ちょっとしたプレゼントを贈るなど、相手への心遣いをしっかりと示しましょう。

 

礼儀を守る

親しき仲にも礼儀ありという言葉があります。どんなに親しい間柄であったとしても、一定の礼儀は忘れないようにしましょうという考え方です。夫婦だろうとそれは一緒。基本的な礼節を欠くことのないように気をつけましょう。

 

正しい性の知識を持つ

少し変化球のように思われるかもしれませんが、夫婦生活においてセックスは非常に重要な地位を占めます。近年ではセックスレスや、性生活に不満を持つ夫婦が増えています。しっかりとお互いの性に向き合うことによって、夫婦生活を円満に保ちましょう。

 

原則を理解し、良質な人間関係を

 

「人を動かす」は自己啓発本の元祖とも言われる名作です。ビジネスという分野だけにとどまらず、「人と人との関係はどうあるべきか」という普遍的命題を突き詰めた、非常に価値の高い本になっています。

重要なのは、一度読んだ終わりにするのではなく、何度も繰り返し読んで定着させることです。もちろん日常生活における実践も忘れないようにしましょう。原則をしっかりと理解し、より良好な人間関係を築いていけるといいですね。

参照
テール・カーネギー(1999)『人を動かす 新装版』創元社
ビジネス+IT「カーネギーの「人を動かす」三原則は、なぜビジネスパーソン必修なのか」https://www.sbbit.jp/article/cont1/32691

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