「30代管理職の転職ってどうなの?」「30代の転職活動で管理職経験を求められるのはなぜ?」など、ある程度キャリアを積んできた時期である30代での転職には、さまざまな悩みや不安がつきものです。
本記事では、30代管理職・管理職未経験で転職をお考えの方に向け、以下の観点から解説します。
- データから分かる、仕事において30代に起こる転機
- 30代の転職で管理職経験を求められる理由
- 30代の管理職経験者が転職を成功させるポイント3つ
- 30代の管理職未経験者が転職を成功させるポイント3つ
ぜひ、自身のキャリアビジョンを達成させるための参考にしてみてください。
目次
30代管理職の転職は難しい?データで見る30代に起こる転機
30代は管理職への昇進以外にも仕事やプライベートで人生の転機を迎える年代です。
本章では、仕事において30代に起こる転機をデータを基に解説します。
- 転職者数は25~34歳が最も多い
- 転職後の賃金の変化
- 昇進の年齢と管理職の年齢分布
1.転職者数は25~34歳が最も多い
総務省が公表している「労働力調査」。
2022年の転職者の総数は303万人で、うち25~34歳は75万人と最も多くなっています。
さらに、2022年は35歳~44歳の転職者数が56万人と25歳~34歳に次いで多く、データから見ると30代で転職する人の割合が高いことが分かります。
関連記事:20代で管理職になる人の割合は?平均年収やメリット・デメリット
2.転職後の賃金の変化
厚生労働省が2022年に実施した「令和4年雇用動向調査結果」。
転職入職者の賃金変動状況の調査では前職の賃金に比べ34.9%が「増加」、33.9%が 「減少」、29.1%が「変わらない」と回答しています。
調査結果を30~34歳、35~39歳の30代に限定して見てみると以下の通りです。
30~34歳
- 増加:39.4%
- 変わらない:27.1%
- 減少:32.3%
35~39歳
- 増加:44.9%
- 変わらない:28.8%
- 減少:23.3%
前職の賃金に比べ「増加」した割合と「減少」した割合の差をみると、30~34歳では7.1ポイント、35~39歳では21.6ポイント「増加」が「減少」を上回っています。
30代での転職は、賃金面において見れば、比較的ポジティブな印象と言えるでしょう。
3.昇進の年齢と管理職の年齢分布
管理職は一般的に「課長」以上とされているため、管理職経験は「課長」から始まるといえます。
しかし、課長への登用年齢は企業や業界、職種などによってさまざまです。
以下は新卒入社の大卒社員が管理職に昇進するまでのスピードです。
労務行政研究所の「役職別昇進年齢の実態と昇進スピード変化の動向」を参考にしています。
役職 | 最短年齢 | 標準年齢 |
係長 | 29.5歳 | 32.7歳 |
課長 | 33.4歳 | 33.9歳 |
部長 | 40.1歳 | 47.0歳 |
また、2022年の厚生労働省の調査結果によると管理職(係長、課長、部長)の平均年齢は、以下の通りです。
- 係長:45.4歳
- 課長:48.8歳
- 部長:52.7歳
参考:令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省 ,「役職別昇進年齢の実態と昇進スピード変化の動向」|財団法人 労務行政研究所
関連記事:管理職の適正割合をデータから解説|リスクや改善アクションも紹介
転職活動における管理職経験とは
一般的な管理職経験とは、課長や部長などの役職についてマネジメントを行うことです。
しかし、転職活動において企業の求人条件となっている「管理職経験」の内容・実情は、企業規模や業界、職種などによって異なります。
「管理職経験」を役職についていることと明確に定めている企業もあれば、管理職候補としてプロジェクトに参加した経験を求めている企業もあります。
管理職経験を活かして転職活動を行う場合も、管理職未経験で転職活動を行う場合も、その企業に求めている管理職経験が何を指すのか、明確に把握することが大切です。
関連記事:マネージャーって管理職なの?業務内容や種類について解説
30代の転職にマネジメント経験が求められる理由
転職活動では、管理職候補やマネージャー候補を募集する求人を見かけることも多いでしょう。
そのため、管理職候補を募集する求人の場合、マネジメント経験が求められることがよくあります。
そこで本章では、30代の転職にマネジメント経験が求められる理由を3つ解説します。
- 入社後に管理職として育成するため
- 入社後マネジメントスキルを活かした仕事を任せたいから
- マネジメント経験が評価のひとつとなるから
関連記事:時間軸を持って転職活動に臨もう!
1.入社後に管理職として育成するため
企業が30代以上の人材を採用するということには、管理職や管理職候補にふさわしい人物を採用したいという狙いがあります。
管理職の登用方法は、内部昇進以外に「社内公募」や「キャリア採用」などです。
2022年にパーソル研究所が実施した調査によると、管理職のキャリア採用実施率は約6割となっています。
また、キャリア採用を行う約6割の企業のうち25%が「数カ月~1年の観察期間後にポスト登用」としています。
キャリア採用は、言い換えると即戦力採用です。
部署や職種、期間などを限定しているものの、入社後に管理職(もしくは管理職候補)として育成できる人材が求められます。
2.入社後マネジメントスキルを活かした仕事を任せたいから
企業は入社後すぐに管理職として育成しなくとも、これまでのマネジメント経験を活かした仕事を任せたいと考えている場合があります。
中小企業・ベンチャー企業における管理人材や、事業拡大におけるリーダー人材が不足しているためです。
ほかにも、後継者不足に伴って次期社長やマネージャー人材の需要も高まっています。
企業にとって、マネジメント経験のある人材を採用することで入社後に自社の事業や新プロジェクトを任せられる人材が確保できるメリットがあります。
3.マネジメント経験が評価のひとつとなるから
マネジメント経験があるということは、危機管理能力や問題解決能力などがあると認識されるので、企業からの評価も高くなります。
また、マネジメント経験があると自分の専門知識や業務スキルだけでなく、主体性やコミュニケーション能力なども備えていると理解されます。
主体性やコミュニケーション能力は、転職時に高く評価されるポイントのひとつです。
実際に弊社が2022年に行った調査では、中途採用の選考で重視することのうち最も多かった回答が76.1%で「コミュニケーション能力がありそうか」でした。
マネジメント経験は、さまざまな能力を具現化し、アピールできる経験と言えるでしょう。
参考:【ニュースリリース】中途採用に関する調査_企業編|識学
30代の管理職経験者が転職を成功させるポイント
本章では、30代の管理職経験者が転職を成功させるためのポイントとして、以下の3つを解説します。
- 管理職としてのスキルや実績をアピールする
- 転職活動は長期的な視点で行う
- スカウト型サービスや転職活動エージェントの活用
関連記事:【必見】転職時に危ない会社を見極める9つのポイント
1.管理職としてのスキルや実績をアピールする
管理職として過去にどのような成果をあげたか、どのようなマネジメントスキルを持っているかを具体的に伝えることが大切です。
職務経歴書や面接では、以下のようなスキルや実績をアピールできます。
- 部下やチームの人数、年齢層、目標達成率などの定量的なデータ
- プロジェクト数
- 人材育成力
- 問題解決数
管理職の採用はポテンシャル採用ではなく、キャリア採用である場合がほとんどです。
管理職を募集する企業では求める人材の条件が細かく設定されているため、その企業に見合った経験やスキルか見極めることが重要となります。
2.転職活動は長期的な視点で行う
30代管理職の転職は自分のキャリアプランや将来の目標を明確に持ち、それに合った企業やポジションを探すことが重要となります。
キャリアプランの策定や目標達成に必要となる転職先での役割や責任、組織風土などは、転職エージェントや面接などで事前に確認しておきます。
また、自分のキャリアに最適な選択を行うためにも、3年後、5年後を見据えた長期的な視野を持って転職活動を行うことが大切です。
3.スカウト型サービスや転職エージェントの活用
管理職の転職は、ポストが少なく求人も少ないことから難しいとされます。
ほかにも、求人の要件が多く、採用基準も高いことも管理職の転職が難しい理由です。
また、さまざまな事情から非公開求人が多いことも管理職の転職が難しい理由のひとつです。
非公開求人とは、一般向けに公開されていない求人のことを指します。
非公開求人は多くの場合、スカウト型サービスや転職エージェントを経由して募集されます。
求職の軸が定まっている方はスカウト型サービスや転職エージェントを活用して非公開求人も検討するとよいでしょう。
30代の管理職未経験者が転職を成功させるポイント
30代の管理職未経験者は「管理職になるか?ならないか?」「40歳までに○○資格取得」など、キャリアプランを明確にすることが大切です。
本章では、30代の管理職未経験者が転職を成功させるためのポイントとして、以下の3つを解説します。
- 明確なルールのある会社を選ぶ
- マネジメント経験に近い経験をアピールする
- 転職サイト選びは慎重に行う
1.明確なルールのある会社を選ぶ
転職後、会社とのミスマッチを防ぐために「明確なルールの」ある会社選びをすることが重要です。
「自由な社風」や「社員同士の仲良く、和気あいあいとした雰囲気」などが気に入って入社を決めたものの、合わないと感じた経験はありませんか。
会社が合わないと感じるのは会社に「明確なルール」がないせいかもしれません。
転職先に「明確なルール」があるかどうかは面接や転職サービスの担当者を通じて確認しておけます。
ミスマッチを防ぐためにも必ず確認するのをおすすめします。
2.マネジメント経験に近い経験をアピールする
管理職の経験がなくても、以下のような経験はマネジメント能力があることの証明となります。
- プロジェクトリーダーやチームメンバーとしての経験
- 後輩や新人の指導や育成の経験
- 部署や社内外との調整や交渉の経験
また、管理職経験が具体的にどのような経験を指すか、何を求められているのかは企業によってさまざまです。
マネジメント経験に近い能力やスキルが管理職候補として評価してもらえる場合もあるため、積極的にアピールするようにしましょう。
3.転職サイト選びは慎重に行う
管理職未経験での転職は、今後のためにもやりがいや成長環境を重視したい方も多いのではないでしょうか。
弊社が2022年6月に行った「転職後の幸福度調査」では、回答者の59.7%が転職先の企業に入社してから「後悔・失敗した」と思った経験があるという結果になっています。
また、転職サービスを実際に利用した中で、うたい文句と実態が違っていたことは21.2%が「やりがいのある仕事」、20.7%が「成長できる環境がある」という結果となっています。
転職サイトの表面的な条件やうたい文句だけでなく、自身の不安や期待に応えてくれる転職サイトやエージェントを慎重に選ぶようにしましょう。
30代の転職にはマネジメント経験が大切
今回は、30代の管理職経験者・未経験者の方向けに転職を成功させるポイントや転職活動で管理職経験を求められる理由を解説しました。
転職活動において求められる管理職経験は企業や業界、職種などによって異なります。
30代での転職には役職の有無に問わず、マネジメント経験やマネジメント経験に近い経験が大切です。