マイクロマネジメントとは、上司が部下の行動を逐一チェックし、きめ細かく指示する管理スタイルのことを指し、その増加とともに問題となっています。
例えば、上司のあなたが毎日部下の仕事ぶりが気になり、必要以上に何度も声をかけたりしていませんか?そういった過干渉な管理方法を続けていると、部下の精神に負担をかけることとなり、メンタルに支障をきたしたり、上司であるあなた自身がパワハラで訴えられるかもしれません。
そこでこの記事では、
- マイクロマネジメントの概要と増えてきている理由
- マクロマネジメントとの違い
- マイクロマネジメントが引き起こす悪影響
- マイクロマネジメントの改善方法
などについて解説します。
この記事を読めば、マイクロマネジメントの概要から、想定される悪影響、改善方法までを理解するとともに、部下と適切なコミュニケーションが取れるようになれます。
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マイクロマネジメントとは?
マイクロマネジメントとは、上司が部下の行動を逐一チェックし、きめ細かく指示する管理スタイルのことで、間違ったマネジメント、コミュニケーション方法です。
また、マイクロマネジメントは、世界最大の検索エンジンであるGoogle社の人事トップが下記のように述べています。
【Google人事トップによるマイクロマネジメントについてのコメント】
- 人はマイクロマネジメントをすることによって、仕事に対する不安を和らげようとしている。
- マイクロマネジメントをすることで、上司は部下を管理できているという錯覚に陥りやすい。
- 上司がマイクロマネジメントを行う理由は、できる”と言っている部下の言葉を信じていないからだ。
つまり、それ自体が間違ったマネジメント方法でありながら、上司は安心感を得るためにマイクロマネジメントを行っていると言えます。
マイクロマネジメントが増えてきている原因3つ
マイクロマネジメントが増えてきている原因は、最近の仕事環境の変化が根底にあると考えられます。具体的には、以下の要素が挙げられます。
【マイクロマネジメントが増えてきている原因】
- テレワークの普及
- 仕事量の増加
- 中途採用増加による人材の多様化
それぞれどんな理由か、詳しく見ていきましょう。
理由1 テレワークの普及
マイクロマネジメントが増えている原因の一つ目として、「テレワークの普及」が挙げられます。
テレワークが普及したきっかけは、2020年から猛威を振るっているコロナです。
株式会社NTTデータ経営研究所の調査では、「2020年1月までと比べて、2020年4月の時点で2倍以上の企業がテレワーク/リモートワークに取り組んでいる結果となった。」と言われています。
日本政府の指導もあり、急速に普及したテレワークですが、その影響で上司はミーティングでしか姿を見ない部下がきちんと仕事をこなしているか気になり始めます。
その対処法として、上司は部下へ「メールの返信は5分以内で」といった無茶な要求をして監視に近い行動、つまりマイクロマネジメントをとってしまうという現象が増えているのです。
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理由2 仕事量の増加
マイクロマネジメントが増えている原因の二つ目として、「仕事量の増加」が挙げられます。
近年は働き方改革の推進もあり、従業員のワークライフバランスも叫ばれるようになりました。
しかし実際は、株式会社イトーキの調査からも分かる通り、「仕事量が増えた」と感じる人が「仕事量が減った」と感じる人よりも3.4倍も多いことが判明しています。
引用:働き方改革と働きがいに関する調査|株式会社イトーキー
つまり、働き方改革によって
- フレックスタイムの導入
- 残業禁止
- 有給休暇取得の推進
などは改善されましたが、従業員側からは、その分だけ仕事量が増えたと感じる結果になっており、そのしわ寄せとして、上司が部下の面倒を見きれずに「言われたことだけやってくれ」という指示スタイルがマイクロマネジメント増加の原因となっているのです。
理由3 中途採用の増加による人材の多様化
マイクロマネジメントが増えている原因の三つ目として、「中途採用の増加による人材の多様化」が挙げられます。
その証拠として、マイナビ転職動向調査の情報から、2016年から2018年の間に転職率が「3.7%」→「5.3%」と増加しているのが見て取れます。
参考:マイナビ転職動向調査|株式会社マイナビ
年度 | 転職率 |
2016年 | 3.7% |
2017年 | 4.2% |
2018年 | 5.3% |
中途採用が増加すると、他社で経験を持った人材が集まり、転職経験のない従業員だけでは思い付かないようなアイデアが生まれるなどのメリットがあります。
しかし、逆に前職での経験が足かせとなり、企業の暗黙のルールや風土に慣れるまで時間がかかることもあります。
そのため、上司が部下に対してマイクロマネジメントで接してしまうということにつながるのです。
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対して、「マクロマネジメント」とは上司が部下に対して過干渉せず、大まかな指示を出して管理するスタイルのことを指します。
つまり、マクロマネジメントはマイクロマネジメントとは逆で、部下へ必要なときに必要な分だけ指示をする、適正化されたスタイルと言えます。
マクロマネジメントは部下に仕事の裁量を任せることになりますので、人によっては不安に感じることもあるでしょう。しかし、マクロマネジメントをすることで、以下のメリットが生まれます。
【マクロマネジメントのメリット】
- 細かい確認でお互い時間を取らずに済む
- 上司からの指示が少ないので、部下が自分の仕事に責任感を持って取り組むようになる
- パワハラ回避につながる
もちろん、放任は責任放棄と同じですので、部下への接触は適度に保つのが肝心です。
マイクロマネジメントの悪影響
マイクロマネジメントをすることによって、部下に与える悪影響は以下の通りです。
【マイクロマネジメントの悪影響】
- 部下の仕事に対する意欲が下がる
- 指示待ち人間になってしまう
- 部下の成長が止まる
現状でこういった状態が見られるのであれば、部下に対してマイクロマネジメントをしてしまっている可能性が高いと言えます。
悪影響1 部下の仕事に対する意欲が下がる
上司がマイクロマネジメントをしていると、部下の仕事に対する意欲が下がる可能性があります。なぜなら、上司から仕事の進み具合からやり方まで多岐にわたって指摘されると、部下のやる気がなくなるからです。
例えば、「○○の提出はどうなった?」「××はやったのか?」と毎日質問攻めにあうと、仕事に集中できません。その上、できていないことを報告すると、「なんだ、まだやってないのか?」と呆れ顔で言われる始末。
そんな状況が続くと、部下のメンタルが不調になり、うつになる可能性があります。
そこまで行くと、人事部などからパワハラ疑惑をかけられることもあります。もし思い当たる節があるようでしたら、今すぐやめましょう。
悪影響2 指示待ち人間になってしまう
マイクロマネジメントは、部下を指示待ち人間にする可能性があります。理由は、上司が部下へあれもこれも細かく指示をするからです。
上司から見たら、部下の仕事の進め方ややり方が非効率に見えることがあります。それが気になって助言を繰り返していると、部下は「上司から言われなければ動けない人材」になってしまいます。
それが続くと、会社には指示がないと動けない指示待ち人間ばかりになってしまい、会社の業績や成長にも影響を与えてしまいます。
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マイクロマネジメントの悪影響は、部下の成長を止めることにもつながります。なぜなら、上司の了解がなければ、自分で何も判断しなくなるからです。
例えば、新商品開発プロジェクトでどの部品を選んで設計していくかという局面があったとします。経験豊富な社員なら、自分でどの部品が良いか素早く判断できるでしょう。しかし、経験が浅い社員だと判断に時間がかかるため、心配した上司がどれを使うか細かく指示をするとどうなるでしょうか。
本来は、ここで時間がかかったとしても自分で判断するプロセスが、部下の成長につながります。ですが、上司が判断したことによって、このプロセスがなくなってしまい、結果、部下の成長が阻害されてしまうのです。また、結果としてよりマネジメントに手間がかかるようになります。
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マイクロマネジメントの改善方法
マイクロマネジメントの改善方法として、下記の二つが挙げられます。
【マイクロマネジメントの改善方法】
- SMARTの法則
- 上司から部下へのマネジメント方法を変える
1は理論的な方法で解決する方法で、2は即効性の高い方法論となります。
状況や部下との関係を考えて、自分が使いやすいと思う方を採用して、改善を試みてみましょう。
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マイクロマネジメントを解決する方法として、「SMARTの法則」が使えます。
SMARTの法則とは、ジョージ・T・ドラン(George T. Doran)著の『There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives』(1981年)にて提唱された、目標設定の方法のことです。
五つの考え方から構成されており、それぞれの頭文字をとって「SMARTの法則」とされています。
【SMARTの法則】
- Specific(具体性)
- Measurable(計量性)
- Assignable(達成可能性)
- Relevant(関連性)
- Time-related(期限)
SMARTの法則は、時代遅れな考え方という認識が広まっています。しかし、実際は目標設定をする方法として、現在でも活用されている実績があります。
SMARTの法則1 Specific(具体性)
Specific(具体性)とは、目標を「具体的」かつ「明確に」設定することです。もし目標の中身がハッキリしていないと、部下たちが困惑する原因になるからです。
例えば、「新サービスをお客様に提供する」という目標があったとします。しかしこれでは、下記の疑問が湧いてしまいます。
【目標に対する疑問】
- どれくらい提供するのか?
- 個人のノルマはあるのか?
これでは疑問が壁となって、部下たちが実際に行動を起こすことは少なくなってしまいます。
逆に、「新サービスを既存顧客の80%以上に提供する」なら、「どれくらい提供するのか?」などが明確化されていますので、それを達成するための行動もそれぞれ考え、取り組むこともできるのです。
SMARTの法則2 Measurable(計量性)
Measurable(計量性)とは、数値や指標などを具体的に設定して、後からどこまで達成したかを計量できる形にすることです。
これをすることで、目標が「何%達成したか?」「達成まで、あと何%残っているか?」などの進捗を確かめることができます。
例えば、「営業状況の確認のために、ミーティングを増やす」にするのではなく、「ミーティングは週2回、20分ずつ実施」というように、数字にして具体化するのです。
この設定ができていれば、仮に目標達成ができなかったとしても、数値を見直すことで改善につなげることができますにつなげることができます。
SMARTの法則3 Assignable(達成可能性)
Assignable(達成可能性)とは、設定した目標が本当に達成可能か検証することです。ここをおろそかにしてしまうと、達成不可能と気づいた時に部下たちのモチベーションが下がる原因になるので気をつけましょう。
例えば、「今年度の売上を前年度比の100%増にする」という目標を掲げたとします。しかし、それを達成するための人材や施策が不足していると、達成不可能で終わってしまいます。そのため、目標が本当に達成できるか、過去のデータなど参照したり、他の部署の方と相談したりして、きちんと検証しておきましょう。
SMARTの法則4 Relevant(関連性)
Relevant(関連性)とは、目標達成によって何がもたらされるかという関連性を考えることです。
例えば、ある営業担当者が「英会話教室に通う」と決断しました。しかし、仕事上英会話が必要になっただけなので、通うのを決断しただけです。もし仕事に対するモチベーションが低いと、英会話教室に通い続けるのは難しいかもしれません。
そこで、英会話ができるようになることで「海外旅行先で現地の人とコミュニケーションができる」などの利用シーンを想像したとすればどうでしょうか? プライベートでも使えることをイメージできれば、社員のモチベーションを上げることができます。
つまり、自分にとっての利益につながるように考えさせれば、目標達成がしやすくなるのです。
SMARTの法則5 Time-related(期限)
Time-related(期限)とは、目標達成するまでの期限設定のことです。
例えば、「新商品を開発する」という目標が設定されたとしても、「いつまでに」が明記されていないので、いつまでたっても新商品が開発されない可能性があります。
もしこの目標設定をするなら、下記のように期限を決めて具体化させる必要があります。
【目標の期限設定】
- 6月までに試作機を完成させる
- 10月から量産準備に入る
- 12月からリリースする
上記のように、「いつまでに何をやるか」が明確化されていれば、具体的な行動に落とし込めます。期限設定は目標達成するためにも重要な要素なのです。
改善方法2 上司から部下へのマネジメント方法を変える
マイクロマネジメントを改善する方法として、上司から部下へのマネジメント方法を変えることが有効です。
具体的には、以下の通りです。
【上司から部下へのマネジメント方法を変える】
- 何度も確認しない
- 小さなミスまで責めない
- 自分が一番正しいとは思わない
- 成功できる条件を提供して見守る
それでは、1つずつ具体的に見ていきましょう。
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チームがおかしくなる原因は、大体において「リーダーの当たり前」と「部下の当たり前」が違うから。マネジメント方法1 何度も確認しない
何度も上司から仕事の進捗を確認されるのは、部下にとってはかなりの精神的負担になります。なぜなら、上司から常に監視されているというプレッシャーを感じてしまうからです。また、何度も同じことを不定期に聞きに来られると、ストレスが溜まり、仕事に集中できません。
上司からしたら、任せた仕事がどこまで進んでいるか気になるところですが、そこは我慢しましょう。
もしどうしても進捗を聞きたかったら、定期的に短時間のミーティングを開くようにしましょう。そうすれば、部下も上司が進捗を聞くタイミングがミーティングであると分かり、それに向けて的確な回答も準備します。また、ミーティング以外の時間は仕事に集中できます。
マネジメント方法2 小さなミスまで責めない
上司が部下の小さなミスまで責めるのは、マイクロマネジメントになる可能性があります。なぜなら、部下も人間なので、小さなミスぐらいはしてしまうものと考えるのが妥当だからです。例えば、「エクセルで文章を揃えていない」「印鑑の位置が少しだけずれている」などもそれに当たります。確かに会社の業績に多大なる影響を及ぼすミスは許されませんが、上記のようなミスまで責められると、部下のモチベーションが下がる原因になります。さらにミスの指摘を恐れて報告をしなくなると、最悪、重大なミスでも報告されないという事態も考えられます。
そのため、些細なミスまで許さないというスタンスは、上司と部下双方にとって不利益しかないので、今すぐやめるようにしましょう。
マネジメント方法3 自分が一番正しいとは思わない
当然ですが、上司は部下よりも仕事ができます。
「ここまで出世できたのは、自分のやり方が正しかったからだ!」という成功体験があるため、部下よりも自分の方が一番正しいと信じ込んでしまいがちです。成功体験は自分に自信をつけてくれますが、部下からしたら上司の成功体験は時代遅れかもしれません。
例えば、営業部の上司が「なんで外回りしないんだ!」と部下を責めたとします。
しかし、部下からしたら「外回りばかりだと非効率。だから、メールや電話でアポを取ってから外回りした方が効率的なんだけどな」と反感を抱かれてしまいます。
自分が一番正しいとは思わずに、部下がなぜそうしているのか聞き、それを踏まえて指導するようにしましょう。
マネジメント方法4 成功できる条件を提供して見守る
上司は、部下が成功できるように必要な条件を提供したら、後は見守るようにしましょう。実際、部下に多くのことを任せられるCEOがいる企業の方が、そうでない企業に比べて「利益が33%上がる」というGallupによる調査結果があります。
上司からしたら、部下に対して「何か仕事で失敗されたら、自分の責任になってしまう」と心配になり、あれもこれも指示したくなります。
しかし、それではいつまでたっても部下が自分の頭で考えて仕事をできるようにはなれません。
指示待ち人間が多くなれば必然的に上司のマネジメントにかける労力はさらに増えることとなり、優秀な人材も育たないことから、長い目で見れば会社にとってデメリットが大きいのです。
そのため、成功できるように必要な資料や方法などを一通り説明した後は、部下が困っている様子にでもならない限り、見守るのが得策と言えます。
参考:Delegating: A Huge Management Challenge for Entrepreneurs | GALLUP
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まとめ マイクロマネジメントについて
部下へのマネジメントは、バランスが大事です。もしマイクロマネジメントし過ぎると、部下のやる気がなくなり、うつや退職の原因になります。しかし、部下を信用しすぎて、ほとんど指示しないのも問題です。
そのため、部下の性格や能力、立場を理解することから始めてみましょう。そうすれば、部下への接し方のバランスが分かり、マイクロマネジメントを防げるはずです。
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