LGBTQとは?意味や定義、割合をわかりやすく解説

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はじめに 

従来、法律的・社会的に割り当てられた性別(sex)=自分の性別であり、その性別を生きていくということが自明であるかのように考えられてきました。

しかし、近年では、「性のあり方」は、一般的に言われる「男性」「女性」という2通り以上にもっと多様であるという考え方が広がってきています。

身体の性別(sex)、自認する性別(gender identity)、好きになる性別(sexual orientation)、表現する性別(gender expression)などの組み合わせによって、一人ひとりの性のあり方は異なるのです。

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LGBTとは

LGBTとは、Lがレズビアン(Lesbian:女性の同性愛者)、Gがゲイ(Gay:男性の同性愛者)、Bがバイセクシュアル(Bisexual:両性愛者)、Tがトランスジェンダー(Transgender:こころの性とからだの性との不一致)の頭文字から作られた言葉であり、性的少数者の総称として用いられている言葉です。

LGBTのうち、「L」「G」「B」の三者は性的指向に関わる類型であり、「T」は性自認に関する類型です。性的指向とは、人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念のことで、具体的には、恋愛・性愛の対象が異性に向かう異性愛(ヘテロセクシュアル)、同性に向かう同性愛(ホモセクシュアル)、男女両方に向かう両性愛(バイセクシュアル)を指します。

性自認とは、自分の性をどのように認識しているか、どのような性のアイデンティティ(性同一性)を自分の感覚として持っているかを示す概念であり、「こころの性」と呼ばれることもあります。

そのほか、性的指向や性自認がはっきりしていない場合や、定まっていない、どちらかに決めたくないと感じるなど、特定の状況にあてはまらないQ(クエスチョニング)6など、LGBTの分類に収まらない類型もあります。そのため、SOGI(性的指向及び性自認:Sexual Orientation and Gender Identity)という表現やLGBTQ+という表現が使用されることもあります。

世界の多くの地域で、LGBT、あるいはLGBTQ+であることは間違ったことだと認識されていることも多く、同性愛は、罪、病気、イデオロギーの逸脱または文化への裏切りであると考えられています。LGBTQ+の人びとは、宗教・文化・道徳または公衆衛生を理由に、政府あるいは個人からの激しい攻撃に直面しているのです。

「ダイバーシティ」や「包摂と共生」を目指す21世紀の社会では、LGBT、あるいは、LGBTQ+の権利の保障は非常に重要な課題です。

彼らの権利を守るために、国、地方自治体、企業、NPO法人などが協力して様々な取組みをスタートさせています。

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セクシャルマイノリティの割合

同性愛者や性同一性障害者に対する根深い差別的態度に加え、そういった差別に対する法的保護の欠如があわさり、多くの同性愛者や両性愛者、トランス・ジェンダーの人々(LGBT=lesbian, gay, bisexual and transgender)は、年齢や地域に関係なく、世界各地で甚だしい人権侵害の被害にあっていると言われています。

米国のコンサルティング会社であるGallup(ギャラップ)社は、毎年、LGBTに関する調査を行っています。

2021年の調査によれば、現在、アメリカ人の86.7%が「自分は異性愛者またはストレートである」と答えており、7.6%が自分の性的指向に関する質問に答えていません。この最新の結果は、2020年を通して18歳以上の米国人を対象に実施した15,000件以上のインタビューに基づいています。

ギャラップ社の2012年から2017年のデータでは、「意見なし」の回答がおよそ5%で、2018年と2019年にはLGBTのアイデンティティを定期的に測定していませんでした。

2020年に行われたアイデンティティの質問では、これまでの質問よりも詳細なレベルを提供しています。回答者は、自分の性的指向や性自認の側面をより正確に示すことができるようになり、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、ストレートに加えて、トランスジェンダーであることを明記することもできるようになっています。

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LGBTのアメリカ人の過半数がバイセクシャルと認識

また、調査によるとLGBT成人の半数以上(54.6%)がバイセクシャルであると認識しており、約4分の1(24.5%)がゲイ、11.7%がレズビアン、11.3%がトランスジェンダーであると回答しています。さらに3.3%の人は、自分の性的指向を表す言葉として、「Queer(クィア)」や「Same-gender-loving(同性愛)」など、異性愛ではない別の嗜好や言葉を使っています。

回答者は、自分の性的指向について複数の回答をすることができるため、合計は100%を超えます。これらの割合を米国の成人人口に占める割合に直すと、バイセクシャルが3.1%、ゲイが1.4%、レズビアンが0.7%、トランスジェンダーが0.6%となっています。

セクシャリティを考えるアプローチ方法

「セクシュアリティ(性のあり方)」という概念は、すべての人が多様な性の中で生きていることに気づくために重要な基礎であり、他者を尊重するうえでとても大事なことです。セクシュアリティは、主に4つの要素で成り立っています。

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1.生物学的性 (Sex)

人間は生まれ持っての性別(sex)があり、大半は男性か女性に生まれます。ただし、生物学的性は、非常に複雑で、生物学的に男性と女性の間に簡単に線を引くことができないこともあります。

生物学的性は、具体的には、生殖機能の違いによってセクシャリティを判断します。妊娠出産や授乳が出来るのは女性だけであり、男性にその機能はありません。

また、男性ホルモン・女性ホルモンの量の差で体毛や筋肉の量の違いにより、外見にも違いが表れます。生物学的性は、生物(動物)としての性差によってセクシャリティを判断するので、「身体的性」と呼ばれることもあります。

社会的性(Gender)

生物学的性は、染色体、ホルモン、遺伝子、性器、第二次性徴などの生物学的特徴によってセクシャリティを判断することを意味する言葉ですが、「社会的性」とも言われる「ジェンダー」とは区別されなければなりません。

社会的性とは、自分の性的アイデンティティをどのように考えるかということです。ジェンダーは、男性か女性かという二者択一で理解するのではなく、スペクトラム(グラデーション)として理解しなければなりません。社会的性は、男性または女性であるとは限らず、男性と女性の間である、男性でも女性でもある、男性でも女性でもない、定まっていない、決めたくない、流動的である、など様々です。自分の性的アイデンティティがこのようにスペクトラムであるという考え方は比較的最近になって出てきた考え方です。

毎日、社会のなかで生きる人々は、自分の性別に基づいて数え切れないほどの決断をしています。その中には、使用するトイレの選択、法的文書の記入、スポーツの試合など、議論を引き起こすものもあります。

2.性自認 (Gender identity)

性自認(ジェンダー・アイデンティティ: Gender Identity)は、「男性」、「女性」、「男性と女性のどちらでもある」、「どちらでもない」などといった、自分がどの性別であるかに対する自身の認識・判断のことです。生物学的性と一致する人もいれば、一致しない人もいます。

ジェンダー・アイデンティティは、出生時に割り当てられた性別(戸籍上の性別)・身体上の性別(sex)とは独立したものです。出生時に割り当てられた性別とジェンダー・アイデンティティが異なる人を「トランスジェンダー」と言います。

3.性的指向 (Sexual orientation )

性的指向(Sexual Orientation)は、恋愛感情や性的な関心の対象が、どの性別に向いているかを示すものです。異性愛、同性愛、両性愛などがあります。

異性愛と一言で言っても、100 パーセント異性に向いているかというと人それぞれであり、性的指向も多様です。また、恋愛感情や性的な関心がいかなる性別の人にも向かないということもあります。

通常、性的指向は以下3つのカテゴリーで語られます。

  • ヘテロセクシュアル(異性愛者。異性に対して感情的、恋愛的、性的な魅力を感じる)
  • ゲイ/レズビアン(同性に対して感情的、恋愛的、性的な魅力を感じる)
  • バイセクシャル(男女両方に対して感情的、恋愛的、性的な魅力を感じる)

ただし、どちらも好きにならない「アセクシュアル/エイセクシュアル」という性的指向もあります。

4.性表現 (Gender Expression)

言葉遣い・服装・振る舞いなど、自分らしさが社会からどのような性別と捉えられているのかを「性表現」と言います。

服装や髪型、仕草、言葉遣いなどの外見に表れる社会的性(ジェンダー)を、自分がどう表現したいかということです

言い換えると、見た目の男らしさ/女らしさのことを言います。性表現は、性自認と混同されがちですが、性自認が女性だとしても、性表現が女性だとは限りません。自分の性別を女性と思っているからといって、たとえば、スカートをはきたいかどうかは自分自身で判断することです。

ファッション界ではすでにジェンダーレスやジェンダーフルイディティといった言葉で、既成の男らしさ/女らしさにとらわれないスタイルが認知されるようになっています。

「LGBT」ではなくなった理由

LGBTは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gey)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の4つの英語の頭文字を組み合わせた言葉で、一般に、性的マイノリティの総称として使われています。

しかし、LGBT以外にも、男女どちらにも恋愛感情を抱かない人(アセクシャル)、自分の性を決められない・わからない人(Xジェンダー・クエッショニング)など、さまざまな人がいます。つまり、全ての性的少数者(セクシャルマイノリティ)が、「LGBT」に分類される訳ではなく、自身の性自認や性的指向が定まっていない人(「Q」=クエスチョニング(Questioning))など、様々な人たちがいるのです。

なお、性的少数者 (セクシャルマイノリティ) を表す言葉の一つとして、Sexual Orientation (性的指向) と Gender Identity (性自認) の頭文字をとった 「SOGI」という表現もあります。

このことは、つまり、LGBTだけが、セクシュアルマイノリティではないということを意味しています。

LGBTがまだまだ認知されていなかった時代と比べれば、今やLGBTという言葉は随分広く認知されるようになっていますが、性のあり方はさらに多様であり得るということもまた、認知されるようになってきているのです。

それを表す言葉が、「LGBTQ」「LGBTQIA」「LGBTTIQQ2SA」という言葉です。LGBTQは、LGBTに「Q」がプラスされた言葉です。  このプラスされたセクシュアリティというのが、「クエスチョニング(Questioning)」、そして「クィア(Queer)」です。このQは、LGBT以外のセクシュアリティがあることを意味しています。

このように、セクシャリティは多様であり得ることから、それを表現する言葉であるLGBTという言葉にも広がりが出てきています。以下では、LGBT以外のセクシャリティのあり方について説明していきます。

LGBTだけじゃないセクシャリティのあり方

クエスチョニング (Questioning)

クエスチョニングとは、自身の性自認(自分の性を何と考えるか)や性的指向(どんな性を好きになるか)が定まっていない、もしくは意図的に定めていないセクシュアリティのことを言います。

クィア (Queer)

クィア(Queer)とは、元々は「風変わりな・奇妙な」といった英語圏の言葉です。「男・女、異性愛」以外の性に対する理解がなかった時代に、「変態」の意味合いを持って、侮蔑的にゲイを表現する言葉として用いられていた言葉です。しかし、クィアという言葉は、近年では、性的少数者を総称するときに使われる中立的な総称として、性的少数者自らが積極的に使う言葉になっています。

インターセックス (Inter-sex)

「身体的性が一般的に定められた男性・女性の中間もしくはどちらとも一致しない状態」を意味する言葉です。

インターセックスの人々は、多くが男性として、女性としての両方のジェンダー・アイデンティテイ(性自認)を曖昧に、あるいはその間で揺れ動きながら持っていると言われています。

インターセックスは、大半の場合、男性と女性の生理学的性質を不完全ながら両方とも有している人たちのことを言います。したがって、医学的には、インターセックスは、DSD(Disorders of Sex Development/性分化疾患)と呼ばれます。

医学的な名称が付されていることからもわかるとおり、かねてからインターセックスは病気/異常であり、医学的な治療の対象であるとされてきました。

しかし近年では、インターセックスを本人の意志に反して医学的に治療しようとすることは暴力であると言われるようになっています。

私たち人間のおよそ2000人に1人は、生まれつき生殖系の構造に変異がある、もしくは男性あるいは女性を特定する染色体パターンが一般的なものと合致していないとも言われています。

アセクシュアル /エイセクシュアル(Asexual)

アセクシャルは、同性愛、両性愛、異性愛と同様に、性的指向の一つです。

恋愛感情の有無に関わらず、他者に対して性的欲求を抱かないセクシャリティを持つ人のことを言います。

人に対する愛情や結婚願望がないと誤解をされることもありますが、必ずしもそうではありません。日本では無性愛者と呼ばれることもあります。

Xジェンダー

Xジェンダーとは、「(身体的性に関係なく)性自認が男性にも女性にもあてはまらない」人のセクシュアリティを指す、日本で生まれた言葉です。Xジェンダーにはいくつかのタイプがあり、自分に性別がないと性自認している人々(無性、アジェンダーagender)、男女両方の性別であると性自認している人々(両性、バイジェンダーbigender)、男女の中間の性別と性自認している人々(中性)などがいます。

また、身体的な性別としては男性として生まれながら、その性別であることの性自認をもたないXジェンダーをMtX(Male to X)、女性として生まれながら、その性別であることの性自認をもたないXジェンダーをFtX(Female to X)と呼ぶこともあります。

パンセクシュアル (Pansexual)

パンセクシャル(またはパンセクシュアル、全性愛)とは、あらゆる性別の人が恋愛対象になるセクシャリティを持つ人のことを言います。

パンセクシャルのセクシャリティを持つ人は、性自認(自分がどの性別に属するかという意識)がどうであれ、他人を愛するときに、相手のセックス(生物学的性)やジェンダー(社会的性)が理由になることがありません。

パンセクシャルの「パン(pan)」は、ギリシャ語では「すべて」を意味し、パンセクシャルというセクシャリティを持つ人は、すべての人を好きになる可能性があると言えます。

アンドロセクシュアル/ジニセクシュアル

どのような性自認であるに関わらず、恋愛対象が男性というセクシャリティを持つ人のことをアンドロセクシャルといいます。

逆に、恋愛対象が女性というセクシャリティを持つ人のことをジニセクシュアルと言います。Xジェンダーやクエスチョニングを自認する人が、自分の性的指向を示す時によく使われる言葉です。

アライ (Ally)

自分の性自認や性的指向に関わらず、セクシュアルマイノリティに対してフレンドリーな人や差別をしない人、様々な活動を一緒にしてくれる人は Ally(アライ)と呼ばれます。

もともと、アライ(ally)とは、英語で「味方」を意味する単語です。そこから転じて、性的少数者に対してフレンドリーな人々をアライと呼ぶようになりました。

LGBTQが抱える悩み

教育 

  • 学校で「男のくせに」「気持ち悪い」「ホモ」「おかま」「レズ」などと侮蔑的な言葉を投げかけられ、自尊感情が深く傷つけられた。
  • 性的指向について、教員や同級生がおかしいものと話したり、「うちの学校にはいない」と言われ、何も言い返すことができなかった。

就労 ・就職活動

  • 結婚などの話題から性的指向や性自認をカミングアウトしたところ、面接を打ち切られた。
  • 職場での昇進・昇格に結婚要件があったため、同性パートナーがいたのにもかかわらず昇進・昇格できなかった。

医療 

  • 認知症・意識不明状態のパートナーが入院したが、病院・医師から安否情報の提供や治療内容の説明を受けられず、面会もできなかった。
  • 医療機関の受付では戸籍上の名前で呼ばれるため、受診しづらくなった。

公共サービス

  • 高齢者向けの施設において、男女分けで施設が運営されているため、性別違和を抱える。

社会保障

  • 当事者の意向を伝えても考慮されず、戸籍の性で分類され、精神的な負担が大きかった。
  • 同性パートナーと公営住宅への入居を申し込もうとしたが、同居親族に当たらないことを理由に拒否された。

カミングアウトとは

「カミングアウト」とは、自分の性的指向や性自認などを自ら他の人に明らかにすることです。「Coming out(Coming out of closet)」が語源で、社会の差別・偏見や周囲の無理解から自分のセクシュアリティを隠さざるを得ない状態のことを「クローゼット(押し入れ)に隠れている状態」とし比喩的に表現したものです。

カミングアウトは、自分のセクシュアリティを受け入れ自分らしく生きていくための手段の一つである一方、カミングアウトすることでこれまでの人間関係を壊すのではといった不安があり、本人にとってはとても勇気のいることです。

カミングアウトするかどうかや、いつ、誰に、どのように伝えるかは、当事者本人が決めることであり、決して周囲の人が強要してはなりません。

カミングアウトは、相手への信頼に基づく行為ですから、当人の許可なくカミングアウトされた性別情報や性的指向を第三者に暴露することを「アウティング」といい、当人の尊厳を傷つけたり居場所を奪ってしまうなど、危険性の高いプライバシー侵害行為となります。

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LGBTQに関する世界の動きや課題

イスラム教圏

イスラム教には中央管理機関がないため、LGBTQに関わる問題について明確な方針を示すことはできません。

国籍、世代、家庭環境、文化的な影響により、イスラムの個人や組織は、歓迎してくれる包括的なものから、社会的隔離から物理的な暴力まで様々な行動で示される拒絶のレベルまで、幅広いスペクトルを持っています。

アメリカの主流のモスクでは、LGBTQのムスリムが完全に歓迎されていると感じることは稀です。文化的規範や伝統的な聖典の読み方では、性別識別や性的指向のヘテロ規範的な二項対立を支持することが多く、今日の社会に存在する様々なアイデンティティを許容していないのが一般的です。

キリスト教やユダヤ教と同様に、イスラム教の聖典は何世紀にもわたってLGBTQの人々を抑圧するために利用されてきました。

クルアーンを伝統的に読めば、同性間の関係、ひいては同性間の結婚を非難することになります。

しかし、中央の統治機関が存在しないため、コミュニティや個人は、この問題に関して自由に選択することができます。

同性婚は、ごく少数のイマームが個別に行っているほか、米国やカナダのユニティ・モスクや同様の包括的モスク・コミュニティでも行われています。

ヨーロッパ

2021年現在、EU法では、雇用の分野において、年齢、障害、宗教、信条と同様に、性的指向に基づく差別から人々を保護しています。

しかし、残念なことに、現在のところEU法には、人の性自認や性表現を理由とした差別の明確な禁止規定はありません。

実際、EUの条約では、「性別、人種・民族、宗教・信条、障害、年齢、性的指向に基づく差別」と闘うための行動を取ることがEUに与えられているだけで、トランスの問題については言及されていません。

また、EU基本権憲章にも、トランスに対する差別を禁止する記述はありません。

現状として、EU全体では、たとえば以下のようなことから法的に保護されています。

・性的指向を理由に仕事を断られたり、解雇されたりすること

・ゲイやレズビアンであることを理由に、職場の同僚から嫌がらせを受けること

しかし、欧州の法律では、性的指向、年齢、障害、宗教や信条、住宅を含む商品やサービスへのアクセス、社会的保護や社会的利益、教育や医療など、生活の他の分野での差別からは保護されていません。

このことからわかることは、EU域内のすべての人が保護されているわけではないということです。実際、EU圏内において以下のようなことが起こっています。

・学校でのホモフォビックないじめ

・LGBTを公言している人への医療サービスや治療の拒否

・ホテルで同性カップルにダブルルームを提供することを拒否される。

・遺族年金や介護者への支援などの社会保障制度の利用拒否

アジア

韓国

韓国の憲法は、性別、宗教、社会的地位による差別を禁止しており、法務省はLGBTQの人々にも適用されるとしています。しかし、これらの「保護」は、背後に何の強制力もない権利として機能しており、同性婚をする権利もありません。性別の変更を要求することはできますが、それは他の市民的自由を奪うような厳しい条件を満たす場合に限られます。

北朝鮮

北朝鮮の法律は、同性間の性行為を行う権利については言及していません。しかし、北朝鮮政府は、社会主義に反する活動を禁止しているため、同性間の活動は「事実上」禁止されています。

中国

中国の最新刑法では、合意の上での同性愛活動は明示的には禁止されていません。しかし、LGBTQの人々を差別から保護する法律はなく、同性間の結婚やパートナーシップは違法とされています。また、性別を変更する権利はあるものの、注意点が多くあります。

日本

日本は同性婚を認めていません。しかし、いくつかの自治体では、同性カップルの権利を “結婚に準ずるもの “として認めています。また、トランスジェンダーの方は、一定の条件のもと、国の戸籍に性別変更を申請することができます。

バングラデシュ

バングラデシュでは、同性間の性行為を犯罪としています。終身刑の可能性もありますが、同性愛者同士の挿入性行為にのみ適用されます。

また、同性愛者の軍隊への参加も禁止されています。2013年、バングラデシュは、投票、旅行、身分証明、その他の重要な公民権において、ヒジュラ(トランスジェンダーの人々、主に女装をする人に使われることが多い)の人々を「第三の性」として法的に認めました。

ブータン

ブータンでは、同性間の性行為を軽犯罪として扱っています。この法律に基づいて起訴された事例は報告されていません。LGBTQの人々は、結婚やシビルパートナーシップの締結、公然と軍隊に参加すること、性別を変更することができません。

インド

インドでは、植民地時代の法律が、”自然の摂理に反する”性行為を犯罪としています。2018年、インドの最高裁判所は、同国の同性愛禁止令の見直しを命じましたが、現在係争中です。

モルディブ

モルディブでは、同性間の性交や結婚を禁止しており、懲役、鞭打ち、死刑などの刑罰が科される可能性があります。

これらの禁止事項はほとんど実施されていません。モルディブでは、同性愛者の兵役を禁止しています。

ネパール

ネパールの最高裁判所は2008年、LGBTQの人々を法律上の「自然人」と見なす判決を下しました。ネパールの憲法では、国家は「性的少数者」を差別してはならないと明記されています。

国民は、第三の性別を指定することができます。

パキスタン

パキスタンでは、同性間の性的行為を禁固刑で処罰すると定めていますが、これが施行されることはほとんどありません。

しかし、公衆の面前での「わいせつな行為」を犯罪とする別の法律が、ゲイやトランスの男性のセックスワーカーを標的として頻繁に使用されています。

2009年、最高裁判所は、国民IDカードに「トランスジェンダー男性」または「トランスジェンダー女性」と自己申告することを認めるよう当局に求めました。

2012年、最高裁判所は、ヒジュラを平等な市民として認める判決を下しました。

カンボジア

カンボジアは独立以来、同性間の性行為を違法としていません。同性婚は明示的には認められていませんが、2008年の民法ではカップルを表す言葉として「配偶者」が使われています。しかし、特に警察に治安維持の名目で差別する広範な権限を与えている法律のため、差別が続いています。

インドネシア

インドネシアでは、国レベルでは同性間の性行為を犯罪とする法律はありませんが、LGBTQの人々に汚名を着せる法律もあります。同性婚は明確に違法とされており、異性間では16歳、同性間では18歳という同意年齢の違いがあります。

放送基準では、子どもたちを守るという「論理」から、テレビでのLGBTQの表現が制限されており、LGBTQに特化したアプリやウェブサイトの禁止も提案されています。

マレーシア

マレーシアの刑法では、アナルセックスやオーラルセックスが犯罪とされており、最高20年の刑罰が科せられています。

マレーシアの一部の州では、イスラム教のシャリア法が施行されており、同性間の性交を鞭打ちで罰しています。また、マレーシアでは、同性愛者の兵役を明確に禁止しています。

ミャンマー

ミャンマーでは、同性間での性行為は10年以下の懲役となります。結婚する権利や、差別されない権利を守る法律はありません。

フィリピン

フィリピンでは、強力なカトリック教徒の存在が、同性カップルを保護する法案を阻止してきました。

しかし、成人したフィリピン人の73%が「同性愛は社会に受け入れられるべきだ」と回答しており、日本の54%、韓国の39%、米国の60%と比較しても、フィリピンは同性愛者のコミュニティに最も友好的であると評価されています。

シンガポール

シンガポールでは、同性間の性行為を罰則化しており、2年以下の懲役が科せられています。2014年、シンガポール最高裁判所は、同性愛の「不変性」について「決定的な結論はない」との判決を下しました。同性愛者の兵役を明確に禁止しています。

ベトナム

ベトナムでは、1945年以降、同性間の性行為は非犯罪となっています。同性愛者も兵役に就くことができます。

2014年、ベトナムでは、同性婚を禁止する条項も認める条項もない改正結婚法が成立し、暗黙のうちに合法化されました。

したがって、同性婚には罰金が課せられなくなりましたが、同性パートナーは法的には認められません。性別適合手術を受けることは違法です。

アメリカ

トランプ政権は、就任から4年間の大半を費やして、LGBTQの人々の権利を侵害する攻撃を行い、差別的な政策を推進し、重要な政府サービスへのアクセスに障害をもたらしました。

これらの行為は、LGBTQの人々やその家族、コミュニティの権利、尊厳、幸福をあからさまに無視するトランプ政権の姿勢を反映しています。

特に、LGBTQの人々と非LGBTQの人々との間に存在する不平等や格差を、健康、雇用、司法制度や法執行機関とのやり取り、教育、住宅、移民の分野で悪化させました。

これらの政策の現実的な影響は、LGBTQの人々、特に、複数の形態の制度的な差別を経験している有色人種のLGBTQの人々の日常生活に悪影響を与えています。

おわりに

現代社会において、性のあり方(セクシャリティ)は多様であり得るという考え方は当たり前になりつつあります。

社会のなかには、男/女しかいない、異性愛者しかいないという思い込みや決めつけは差別であり、偏見にすぎません。

「男性」「女性」で単純に分けようとしたり、その人の服装、しぐさ、言葉遣いなどで性別を判断したり、固定概念で決めつけたりしてしまうことで、知らず知らずのうちに誰かを傷つけてしまっているかもしれません。

一人ひとりのセクシュアリティは多様であり、個人の尊厳にかかわる大切な問題です。誰もが自分のセクシュアリティを尊重され、自分らしく生きることのできる社会の実現が望まれます。

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