秘密保持契約(NDA)の書き方は?|弁護士によるピックアップ式実用解説

投稿日:2021/04/09

秘密保持契約(NDA)は、企業が取り扱う契約書の中でも、もっとも汎用性が高いものの一つです。
そのため、ビジネスパーソンであれば誰もが一度は秘密保持契約(NDA)に触れたことがあるかと思います。

中小企業などでは、秘密保持契約(NDA)は基本的にインターネット上のひな形を用いているというケースも多いかと思います。
しかし、秘密保持契約(NDA)の条項は、本来会社の事情や取引の内容に応じてオーダーメイドに設計されるべきものですので、このような対応はコンプライアンス上、望ましいとはいえません。

また、取引の相手方から秘密保持契約(NDA)を提示された場合には、自社が過度な制約を受ける内容になっていないか、よく確認する必要があります。

上記の各観点から、ビジネスパーソンにとって、秘密保持契約(NDA)のチェックポイントを理解しておくことは非常に大切です。

そこで今回は弁護士の視点から、秘密保持契約(NDA)の中で「ここだけはチェックすべき」というポイントを絞って解説を行います。
特に企業の法務担当者の方や、日常的に秘密保持契約(NDA)を取り扱う取引担当者の方には実用的な内容と思いますので、ぜひ参考にしてください。

 

【チェックポイント①】「秘密情報」の定義

 

秘密保持契約(NDA)は、「秘密情報」として定義された情報を、第三者に対して開示・漏えいすることを相互に禁止する契約です。
したがって、契約全体の内容の前提として、「秘密情報」の定義が重要になります。

「秘密情報」の定義に関するチェックポイントは、以下のとおりです。

①「書面、口頭などの方法の如何を問わず、当事者間でやり取りされるすべての情報」が秘密情報として定義されているか

→秘密保持義務をすべての情報に漏れなく及ぼすために大切なポイントです。
「秘密であることが明示された情報に限る」などの限定を付すことは、基本的に望ましくありません。

②以下の情報が秘密情報の定義から除外されているか
・開示時点で公知(公用)の情報
・開示時点で受領者がすでに保有していた情報
・開示後に、受領者の責任によらず公知(公用)となった情報
・正当な権利を有する第三者から、秘密保持義務を負うことなく適法に入手した情報
・秘密情報を利用せずに独自に開発した情報

→これらの情報は、秘密保持義務の対象とすることが不適切なものであるため、「秘密情報」の定義から除外する必要があります。

 

【チェックポイント②】秘密保持義務の内容

 

秘密保持義務の内容は、秘密保持契約(NDA)の中でも根幹となる規定なので、重点的にチェックしなければなりません。

秘密保持義務の内容に関して特に重要なのは、秘密保持義務の「範囲」、言い換えれば「どのような場合に秘密情報を開示することが例外的に認められるか」という点です。
具体的には、以下のポイントをチェックする必要があります。

①法令に基づく開示や、監督官庁その他の公的機関の要請に基づく開示が認められているか

→上記の各開示は、企業にとって従わざるを得ないものです。
秘密保持契約(NDA)との関係で疑義を生じないためにも、秘密保持義務の範囲から除外しておきましょう。

②弁護士、公認会計士、税理士などの法令上の守秘義務を負う者に対する開示が認められているか

→上記の各専門家は法令上の守秘義務を負っているので、あえて秘密保持契約(NDA)による秘密保持義務の対象とする必要はありません。
こうした専門家に取引に関するアドバイスなどを求めるケースも多いので、コミュニケーションを円滑化するため、秘密保持義務の範囲から除外しましょう。

③自社(グループ)内部での共有を目的とした開示が認められているか

→取引などに関する検討を行うため、自社やグループ会社の間で秘密情報の共有を行うことは必須といえます。
グループ会社への開示をどの範囲で認めるかはオーダーメイド性が高い部分です。
関係会社全般への開示を認めるか、個社名を明記することを要求するかは、会社の方針・交渉次第といえるでしょう。
なお、①②とは異なり、③の開示については、「開示先に対して同等の秘密保持義務を課すこと」を条件として明記する必要があります。

 

【チェックポイント③】使用・複製・返還など

 

「第三者に対して無断で秘密情報を開示・漏えいしない」という秘密保持義務そのものに加えて、秘密保持契約(NDA)の実効性を高めるため、以下の事項が規定されているかをチェックしましょう。

①秘密情報を契約の目的以外に使用することの禁止

→ノウハウや顧客情報などの営業秘密の盗用を防ぐことを目的としています。

②秘密情報の無断複製等の禁止

→秘密情報の複製物が氾濫すると、情報漏えいのリスクが上がるため、複製等には開示者の承諾を必要とするケースが多いです。

③契約終了時における秘密情報の返還

→取引に関する検討が終了した場合、秘密保持契約(NDA)に基づいて開示された秘密情報は不要になるはずです。
そのため、不要になった秘密情報については、開示者の請求によって返還を求められるようにしておくことで、情報漏えいのリスクを最小化することができます。

 

【チェックポイント④】損害賠償の範囲

 

当事者のどちらかが秘密保持契約(NDA)に違反した場合、相手方に対する損害賠償義務を負担します。

損害賠償義務の範囲には、文言によって以下のとおり広さ・狭さの区別があります。

広い
↑「一切の損害を賠償する」
 「相当因果関係の範囲内で賠償する」or「民法等の法令の規定に従って賠償する」
↓「違反行為から直接生じた損害に限り賠償する」
狭い

当事者間の公平の観点からは、「相当因果関係の範囲内で賠償する」または「民法等の法令の規定に従って賠償する」などと定めるのが相場です。

相手方の損害賠償義務が不当に限定されていないか、また自社が過大な損害賠償義務を負っていないかを必ず確認しましょう。

 

【チェックポイント⑤】契約の有効期間

 

秘密保持義務が永続するのは当事者にとって負担が重いので、秘密保持契約(NDA)には有効期間を設ける必要があります。

通常は「契約締結日から〇年間」(1年~3年程度)と定められますが、秘密保持義務を含む一部の規定については、契約終了後も引き続き効力を有する旨が規定されるケースがあります。
これは秘密保持の実効性を確保することを目的としていますが、当事者の負担を合理的な範囲に限定する観点からは、秘密保持義務については「契約終了後〇年間に限る」(1年~3年程度)と限定しておく方がよいでしょう。

 

【チェックポイント⑥】管轄裁判所

 

秘密保持契約(NDA)に関する紛争が訴訟で争われる場合、第一審に限っては、当事者の合意により管轄裁判所を定めることが認められています(民事訴訟法11条1項、合意管轄)。

万が一の紛争に備えて、秘密保持契約(NDA)の中で、当事者の最寄りの地方裁判所を「専属的合意管轄裁判所」として定めておきましょう。

 

まとめ

 

秘密保持契約(NDA)は普段よく目にするがゆえに、かえってその内容についてあまり深く考えたことがないという方も多いかと思います。

しかし、秘密保持契約(NDA)も企業を拘束する契約であることに変わりはないので、自社にとって不測の不利益が生じないかという観点から、きちんと内容をチェックすることが大切です。
この記事で挙げたチェックポイントを参考にして、秘密保持契約(NDA)のレビューに役立ててください。

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