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ガバナンスとは?意味やコンプライアンスとの違い、ビジネスで必要な事例をわかりやすく紹介

「ガバナンス」とは統治を表す英単語であり、ビジネスにおいては「企業による自身の統治」の意味合いで使われます。ガバナンスと混同されがちなビジネス用語に、コンプライアンスがあります。両者はいずれも企業経営を適正化する仕組みであり、今後ますます重要性が増していくでしょう。

本記事では、ガバナンスがビジネスにおいて重要な理由やガバナンス強化に向けて取り組むべきこと、ガバナンスが評価されている企業の事例も紹介します。ガバナンス強化を目指す経営者や担当者は、参考にしてください。

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ガバナンスの意味とは?

「ガバナンス(governance)」はビジネスにおいて、企業の統治をあらわす言葉として主に使われます。governanceは本来、「支配・統治・管理」を意味し、同じ語根「govern(統治する)」の英単語には「goverment(政府)」があります。政府や統治と聞くと国家の統治を想起させますが、統治の主体や対象はさまざまです。

実際にビジネスでは、コーポレートガバナンス(企業統治)という言葉が頻繁に使われます。ビジネスにおけるガバナンスは、コーポレートガバナンスの意味合いが強いです。コーポレートガバナンスにおける統治する側・される側は企業自身です。企業による管理体制を目指すようになった理由と、自身による統治を実現するために不可欠である、「コンプライアンス」についても理解しましょう。

コンプライアンスとは「企業が法令・規則・倫理に従うこと」

ガバナンスと混同されがちな「コンプライアンス(compliance)」は、法令順守を意味します。企業によるコンプライアンスは年々重要視されており、守るべき対象は法令以外にも、就業規則やマニュアルといった社内ルール、社会的規範、倫理・道徳規範など多岐にわたるようになりました。コンプライアンスに配慮していることが、優良企業の条件のひとつになりつつあります。

近年では、自社ホームページや広告などで、CSR(Corporate Social Responsibility)への取り組みを発信する企業が増えました。CSRとは企業の社会的責任を意味します。企業は利益追求だけでなく、社会そのものの永続的発展への貢献にも注力することが求められています

多様性への理解や環境への配慮など、コンプライアンスが強く求められる現代では、すべての企業が社会問題に高いモラルをもって対応しなければなりません。今後も社会や環境の変化に応じて、企業はコンプライアンスと向き合う必要があるでしょう。

ガバナンスとコンプライアンスの関係性

上記のとおり、ガバナンスは企業が自らを「統治・支配」することです。対するコンプライアンスは、企業が法令・規範に「従う」ことを指します。従うことと支配することは一見真逆のように感じられますが、ガバナンスによる統治は「(社会に従うための)統治」の意味合いが強いです。つまり、企業がガバナンスする目的・理由はコンプライアンスにあります。

ガバナンスを強化するためには企業のコンプライアンスが必要であり、コンプライアンスを維持改善するためには、企業のガバナンスが不可欠です。ガバナンスとコンプライアンスは互いに相補関係にあり、両方が機能することで企業経営が健全化されます。結果として、一方の強化はもう一方の強化に直結するのが混同されやすい原因ですが、明確な違いを理解するよりも、「両者は相関関係にある」ことを念頭におきましょう。

リスクマネジメントとは?

リスクマネジメントとは、リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失の回避・低減を図るプロセスのことです。コンプライアンスに加え、リスクマネジメントもガバナンス強化のためには欠かせません。企業は経済活動を営み、会社としての価値を増大していくことが使命です。そのうえで、事前に障壁となるリスクをできるだけ正確に把握することが、健全な企業経営の継続には必要です。

ガバナンスが注目されるようになった背景

日本においてコーポレートガバナンスが注目され始めたのは、バブル崩壊後の1990年代後半からでした。それまでは「会社は株主のもの」という認識が甘く、また、企業が株主の利益を重視した経営を行っていることを、株主がチェックする仕組みがありませんでした。なぜなら、戦後からバブル期にかけて日本企業のガバナンスを担っていたのは、メインバンクだったからです。しかし、バブル崩壊により従来の銀行制度が破綻し、バブル期に行われた銀行の不当融資、企業による粉飾決済や不正経理などの不祥事が続々と明るみに出ました。

また、同時期に規制緩和やグローバル化が進み、これまで系列会社や取引先をはじめとする「物言わぬ株主」が軒を連ねていた株主構成も、大きく変化します。外部から投資家としての株主が増えたことで、日本企業にガバナンスを求める声が上がるようになり、株主の企業に対する影響力は次第に大きくなっていきました。このような背景から、不祥事の発生を防ぐにはどのように企業を統治すべきか、という視点が重視されるようになり、コーポレートガバナンスの考え方が浸透しました。

そもそも、株式会社は出資者である株主が所有しており、企業は株主の利益を実現することが原則です。しかし、ガバナンスが注目される以前は、経営者が実質的な支配権を握っていたのが実情でした。経営者主導であればスピーディーな決断ができる一方、権力が少数者に集中してしまい、会社が私物化される弊害があります。そういった事態が1990年代に問題視されるようになり、株主の権利を守るためにも、ガバナンスの重要性は高まりました。

ガバナンスがビジネスで必要な理由とは?

ガバナンスの本来の目的のひとつは、経営者任せの企業統治によって引き起こされるリスクを最小化することです。しかし、現在のビジネスシーンでは以下の3点が重視されています。

  • 顧客の情報を守るため
  • 企業にとって不利益な情報を流されないため
  • ステークホルダーを守るため

顧客の情報を守るため

企業は顧客の情報を守る責任があり、そのためにはガバナンスを強化する必要があります。現代では1990年代後半とは異なり、情報のIT化やDX化によって企業が保有する情報は膨大になりました。同時に、情報の価値自体も増しています。現代において企業が抱える情報は重大な資産であり、情報を失うことは大きな損失を意味します。

情報漏えいの原因には、メールでの顧客情報の誤送信といった人為的なミスもありますが、多くはサイバー攻撃や不正アクセスによるものです。そういった事態を起こしてしまっては、重大なコンプライアンス違反として損害賠償を請求されたり、深刻な信用低下につながったりします。十分な仕組みづくりとリスクマネジメントを行うことで、あらゆるリスクから自社を守りましょう。

企業にとって不利益な情報を流されないため

SNSの普及により誰もが簡単に情報を発信できるようになったことで、企業内のネガティブな情報が流出する恐れも高まりました。たとえば、近年では退職者が企業内部のさまざまな情報を投稿した、退職エントリと称される記事がWeb上に見られます。

こうした内部告発の多くは、企業の対応に不満を持つ退職者によって発信されることがほとんどです。退職者による逆上を避けるためにも、企業側は問題社員に対しても適切に対応することが求められます。また、ネット上の不利益な情報が間違っている場合には、企業自ら正しい情報を発信することで、自社の透明性をアピールすることも重要です。

ステークホルダーを守るため

ガバナンスの強化は、企業に関するあらゆる人物・機関を守ることにもつながります。ガバナンスが注目されるようになったのは、株主の権利を守るためと述べました。しかし、企業の経営状況による影響を受けるのは、株主だけではありません。

企業経営が不健全な場合、企業の従業員や取引先、銀行などの債権者も影響を受けます。このような企業の利害関係人のことを、ステークホルダーと呼びます。ステークホルダーの利益を守るためにも、企業はガバナンスを強化しなければなりません。

ガバナンス強化のメリットとは?

ガバナンスを強化する大きなメリットのひとつが、投資家や世間に優良企業として認知されることです。
投資家がガバナンスに注目している例として、近年、年金基金や資産運用会社など大きな資金を長期的に運用する機関投資家のあいだで、ESG投資という手法が注目されていることが挙げられます。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素に注目した投資のことです。ガバナンスが強化されている会社は魅力的で、投資先としてリスクが低いとみなされるため、企業価値が向上します。

また、ガバナンスを整えていれば「ホワイト企業」としてブランドイメージが向上し、優秀な人材が集まりやすくなるメリットもあります。既存社員にとってもガバナンスの強化は安心感をもたらし、従業員の貢献意欲をあらわす従業員エンゲージメントの向上やモチベーションアップ、生産性向上にもつながるでしょう。

ガバナンス強化の事例

日本取締役協会は、コーポレートガバナンスによって中長期的に健全な成長を続けている企業を、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」として毎年表彰しています。本項では2021年に特別賞・経済産業大臣賞を受賞した、株式会社ダイフクの事例を紹介します。

株式会社ダイフクは自動車生産ラインのコンベアシステムや自動倉庫などの製造を手がけるメーカーです。同社は社長・CEOの選任、後継者計画において、先進的な取り組みを行っている企業として、高い評価を受けました。具体的な授賞理由としては、以下のとおりです。

  • 新社長は客観性を重視したプロセスで選任されたこと
  • 新社長は就任直後からリーダーシップを発揮し、速やかに前社長から経営体制を移行したこと
  • 将来を見据えた全社的な後継者育成にも意欲的であること
  • 経営者に求められる誠実さが発揮され、外部に対して迅速に対応、情報を開示し、真摯にステークホルダーと向き合っていること
  • 社外取締役とも情報共有を行い、中長期的な視点に立って高い業績を上げていること

ガバナンスにおいて、経営者のリーダーシップやスピーディーな経営、株主をはじめとするステークホルダーへの貢献が重要であることがわかります。

(経済産業省:『株式会社ダイフクが「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2021」経済産業大臣賞を受賞しました』

ガバナンス担当者として取り組むべきこと

コーポレートガバナンスは、単なる抽象的な概念ではありません。具体的に仕組みとして落とし込むことで、経営が健全化されます。ガバナンス担当者が取り組むべきことは、以下のとおりです。

  • 内部統制システムの構築
  • 客観的なモニタリングを強化
  • 社内全体でガバナンスの意識を高める

内部統制システムの構築

不祥事や人為的ミスによる対外的な信頼低下を防ぐためには、社内で違法行為やミスを防ぐ体制を整える必要があります。自社のルールを策定し、ルールに沿った運用がなされているか、監視する機関を設置しましょう。

一部の企業には、内部統制システムの設置が義務付けられています。具体的な取り組みとしては、後述するCG(コーポレートガバナンス)コードを参考にしてください。

客観的なモニタリングを強化

第三者の視点を導入することで、社内の経営層だけでは気付かない点をチェックすることができます。経営の健全化を維持するためには、社外取締役や社外監査役の設置が有効です。

社内全体でガバナンスの意識を高める

以上のような仕組みを作っても、従業員一人ひとりがガバナンスに対する高い意識を持たなければ、意味がありません。自社にとってガバナンスがなぜ必要なのか、そのためにどのような仕組みを導入しているのか、研修や訓練などの教育を行い、全社的に共通意識を持てるようにしましょう。

ガバナンスと関連のある言葉

記事内で登場した「ステークホルダー」「CGコード」について、説明します。

ステークホルダー

ステークホルダーとは、企業経営におけるさまざまな利害関係者のことです。株主や経営者・従業員・顧客・取引先・金融機関・競合企業・地域社会・行政機関などを含みます。

現代において、顧客や株主だけを見据えた経営では存続が難しく、ステークホルダーを含む社会全体に配慮した、企業の社会的責任の重要性が高まり続けています。

CGコード(企業統治方針)

CG(コーポレートガバナンス)コードとは、東京証券取引所が提示するコンプライアンス遵守のための提案・方針のことです。

企業が公正な意思決定を行うために、さまざまな規則を設けています。5つの「基本原則」と、付随する30の「原則」、さらに原則を補足する38の「補充原則」の、計73項目から成り立っています。

まとめ

以上、ガバナンスとコンプライアンスの違い、ガバナンスが注目されるようになった時代背景、企業がガバナンスを強化するメリットなどを解説しました。

ガバナンス強化、コンプライアンス重視の風潮は今後ますます高まるでしょう。時代の変化に合わせた誠実な対応が、いっそう求められます。ステークホルダーと真摯に向き合い、この先もずっと続くより良い会社を目指しましょう。

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