【弁護士が解説】業務委託が「偽装請負」にならないための判断基準・ペナルティ

会社が人材を確保する際には、正社員などとして「雇用」するよりも、「業務委託」の方が都合がよいと考えるケースも多いでしょう。

たしかに業務委託には、会社にとって多くのメリットがあることも事実です。
しかし一方で、業務委託が「偽装請負」とみなされ、違法と判断されないかについては常に注意する必要があります。

この記事では、「偽装請負」の違法性・判断基準・法律上のペナルティなどについて解説します。

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会社にとって、業務委託が雇用よりも有利なポイント3つ

  • 残業代を支払わなくてよい
  • 契約を打ち切りやすい
  • 社会保険料の負担がない

法律上の制約が多い「雇用」に比べて、「業務委託」は会社側のメリットが多い人材確保の方法といえます。

会社にとって、業務委託が雇用よりも有利となる主なポイントは、以下のとおりです。

残業代を支払わなくてよい

「雇用」の場合、労働基準法37条1項に基づき、使用者は労働者に対して、時間外労働等に対応する残業代を支払う必要があります。

時間外労働に対する残業代は、通常の賃金よりも25%以上割増となるため、会社にとって人件費の負担がかさんでしまいます。

これに対して「業務委託」の場合、契約内容によるものの、時間超過による追加報酬は原則として発生しません。
業務委託には労働基準法が適用されないため、委託者が受託者に対して「残業代」を支払う義務はないからです。

契約を打ち切りやすい

使用者が「雇用」している労働者を解雇するには、原則として契約上・就業規則上の解雇事由または懲戒事由が存在することが要件となります。

さらに加えて、解雇について客観的・合理的な理由があり、社会通念上相当と認められなければ、不当解雇として違法・無効となってしまいます(労働契約法16条)。
これを「解雇権濫用の法理」といいます。

解雇権濫用の法理は厳格に適用されるため、使用者が労働者を解雇することは極めて困難であるのが実態です。

これに対して「業務委託」では、契約期間が短期に設定されるのが通常であり、契約満了をもって、比較的簡単に委託を打ち切ることが可能です。
また、業務委託には解雇権濫用の法理も適用されないため、契約解除事由に当たる受託者の行為が見受けられた場合には、直ちに契約を解除できます。

このように、業務委託は解雇に比べて、会社にとって人材の流動性を確保しやすいメリットがあります。

社会保険料の負担がない

使用者は、雇用している労働者について、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料)を折半で支払わなければならないほか、労災保険への加入義務もあります。

一方業務委託の場合は、委託者(会社)がこれらの保険料を支払う必要はないため、実質的な人材確保のコストを低く抑えることができます。

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「偽装請負」は違法行為

会社が上記のメリットを享受するために、「業務委託」の形式で契約を締結した場合でも、それが「偽装請負」として違法とみなされてしまうケースがあります。

偽装請負=「業務委託」の体裁をとりながら、実質的には「雇用」

「雇用」か「業務委託」かは、契約の名称ではなく、業務の実態を踏まえて判断・決定されます。

したがって、会社が「雇用」ではなく「業務委託」を選択して、そのメリットを享受するためには、「業務委託」の実態を備えていなければなりません。

この点、「業務委託」という体裁をとっておきながら、実態としては「雇用」であると判断されるような委託者・受託者の関係性を「偽装請負」と呼んでいます。

偽装請負は、労働法における各種規定を潜脱する行為として違法です。

偽装請負の判断基準は「指揮命令関係」

本来「業務委託」は、民法上は「請負」または「委任」と整理されます。

請負は仕事の完成、委任は業務の遂行を目的とする違いはありますが、両者はいずれも、請負人(受任者)の裁量で業務を行うという点で共通しています。

これに対して「雇用」の場合、労働者は使用者の指揮命令に従い、労働を提供します。
この「指揮命令関係」の有無が、業務委託か雇用か、つまり偽装請負かどうかを判断するための分水嶺です。

たとえば、A社からB社に業務委託(請負)を行い、その業務を行うために、B社からA社にXという人が派遣されたとします。なお、XはB社に雇用されているわけではなく、単にB社が運営する人材紹介サイトに登録しているだけだとしましょう。

もしXが、自らの裁量によって業務を行っているのであれば、純然たる業務委託であるため問題ありません。

しかし、Xに対して、A社が業務のやり方や働く時間などを指定し、さまざまなルールを遵守するように求めているとすれば、A社とXの間に指揮命令関係が存在すると評価されます。

この場合、A社はXを実質的に「雇用」していると判断され、労働法の規定が適用される可能性があるのです。

仮に、実質的には「雇用」しているにもかかわらず、労働法の規定に沿った労務管理が行われていない場合は違法となり、次の項目で解説する各種のペナルティを受けてしまうので注意しましょう。

偽装請負に関する法律上のペナルティ

偽装請負の形で人材を受け入れた場合、以下の法律に基づくペナルティを受けるおそれがあります。

労働基準法違反

自社で受け入れた人材について、実質的な「雇用」が認定された場合には、労働基準法に基づく残業代の支払い義務等が発生します。

その結果、過去に遡って残業代等を請求される可能性があるほか、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」(労働基準法119条1号)の刑事罰に処されるおそれもあるので注意しましょう。

職業安定法違反

紹介元との間に雇用関係がない人材を、偽装請負によって受け入れた場合には、そのプロセス全体が「労働者供給」に該当します。

労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を派遣し、受け入れ先との指揮命令関係に基づいて働かせることをいい、有償のものは全面的に禁止されています(職業安定法44条)。

違法な労働者供給が行われた場合、厚生労働大臣による指導・助言・改善命令等の対象になります(同法48条の2、48条の3)。
さらに、紹介元・受け入れ先の両方が「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処される可能性があります(同法64条9号)。

労働者派遣法違反

紹介元との間に雇用関係がある人材を、受け入れ先の指揮命令に基づいて働かせた場合、そのプロセス全体は「労働者派遣」に該当します。

労働者派遣は、「労働者派遣法※」に基づく許可を得て行わなければならず(同法5条1項)、無許可の場合は紹介元が「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の対象となります(同法59条1号)。
※労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

受け入れ先企業についても、上記の労働者派遣法違反に関する共同正犯や従犯に問われる可能性があるので、無許可の労働者派遣に加担することは厳に避けましょう。

偽装請負を防ぐには|経営陣が現場の実態を把握すべき

業務委託が偽装請負に当たるかどうかは、現場での業務実態を実質的に観察して判断されます。

企業の規模が大きくなればなるほど、マネジメントの目が現場まで行き届かなくなりがちです。
そうなると、マネジメントが偽装請負を見落とすリスクが高くなってしまいます。

偽装請負の芽を早期に摘むためには、マネジメントが現場とこまめにコミュニケーションをとり、指揮命令関係を窺わせる事情がないかを定期的にチェックすることが大切です。

現場とのコミュニケーションは、その他にも業務の効率化やコンプライアンス全般の観点から重要なので、この機会に意思疎通の仕組みを見直してみてはいかがでしょうか。

参考
[1]大和総研「なぜ米国企業は中計を発表しないのか」
https://www.dir.co.jp/report/consulting/vision/20151022_010244.pdf

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