2020/05/21

法務部門とコンプライアンス部門は分けるべきか?役割の違いと企業文化からの考察

「コンプライアンス」という言葉は法令遵守だけを意味するにとどまらず、より広い意味として捉えられるべきであるという議論はよく聞かれるところです。

このような議論からすれば、会社の業務領域としての「法務」と「コンプライアンス」は、共通する範囲を含むけれども完全には一致しないものであるということができます。

しかし、会社の業務領域を説明する際には、両者は「法務・コンプライアンス」という形で一つのカテゴリーとして語られることも多いところです。

実際に、企業のコンプライアンスに関する業務をどの部署が担当するのかは、企業の考え方によってさまざまです。
法務部門が法務・コンプライアンスを包括的に担当するという企業もあれば、コンプライアンス特化の部門を法務部門とは別に設置している企業もあります。

特に、外資系企業においては後者のように、法務部門とコンプライアンス部門が明確に分離されていることが多いようです。

この記事では、筆者が外資系企業で法務担当者として勤務した経験をもとに、

・法務部門とコンプライアンス部門が果たす役割
・両部門を分けた場合のメリットや注意点

などについて考察します。

 

特化・分業型の外資系企業、ジェネラリスト型の国内企業

 

一概に言うことはできませんが、企業における人材採用の方針について、外資系企業と国内企業(日系企業)の間には差があると考えられます。

外資系企業の場合、一定の経験があるスペシャリストをヘッドハンティングすることにより、適材適所の人材をそろえることを目指す傾向があります。

一方で国内企業は、社員が長期間会社にとどまることを前提としていることが多いようです。
そのため、新卒やそれに準ずる若い人材を採用した上で、ジェネラリストとして教育することを目指す傾向にあります。

こうした傾向は、法務・コンプライアンスのリスク管理部門においても共通で見られるところです。

経済産業省の調査では、米国企業の法務部員に占める弁護士有資格者の割合は7割弱となっています。
また、米国企業が法務部員として弁護士を採用する際には、法律事務所や企業などで十分な実務経験を積んだ弁護士を採用することを好む傾向にあります。

一方で、国内企業の法務部員に占める弁護士有資格者の割合は2割弱にとどまります。
また、国内企業は法務部員として、新卒や実務経験のない既卒の人材を採用することを好む傾向にあります。

(参考:経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(平成30年4月)p5~https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180418002/20180418002-2.pdf

こうした調査結果については、弁護士有資格者の数に日米で差があることも影響していると思われます。
しかし、このような採用傾向により、リスク管理部門においても「特化・分業型の外資系企業、ジェネラリスト型の国内企業」という図式が増長されているということができるでしょう。

 

法務部門とコンプライアンス部門が果たす役割とは?

 

外資系企業において法務を担当している筆者の経験・見聞したところによれば、上記の採用傾向も影響してか、法務部門とコンプライアンス部門の分離は主に外資系企業においてみられることが多いようです。

以下では、外資系企業を中心とした法務・コンプライアンスの各部門を分離している会社において、両部門に期待されている役割について解説します。

 

法務部門

法務部門は、基本的に弁護士または外国法弁護士の有資格者を中心として構成されます。
そのため、法令や契約に関係するレビューに特化した能力を備えています。

外資系企業においては、フロントオフィスの同僚のことを”Internal Client”、つまり社内顧客と呼ぶこともあります。
つまり法務部門は、社内における法律事務所のような存在として機能することが求められています。
特にDeal案件や有事への対応に強みを発揮するほか、必要に応じて外部弁護士との間の窓口的役割を果たすこともあります。

 

コンプライアンス部門

これに対してコンプライアンス部門には、企業における日常的なオペレーションを常に監視し、社内におけるコンプライアンス遵守の定着・常態化を図ることを期待されています。

コンプライアンス部門には、法務部門ほどではないものの、法令の内容に通じていることが要求されます。
これに加えて、社内規則やビジネスの内容にも深く通じ、フロントオフィスと密接なコミュニケーションを取ることが必要になります。

 

法務部門とコンプライアンス部門を分けることの功罪

 

法務部門とコンプライアンス部門を分けるのか、あるいは一つの部署が両方の領域を取り扱うのかは、企業によって考え方が異なるところです。

ここでは、法務部門とコンプライアンス部門を分けた際のメリットと注意点について概観します。

 

メリット

 

  • それぞれの得意分野に特化・専念することができる

部門を区切って得意な業務領域に集中させることにより、一般的には各業務領域における遂行能力が高まることが期待されます。

  • 外部弁護士を雇う費用を一部節約できる

法務部門を有資格者で構成されるスペシャリスト集団とすることにより、日常的な法律事務や、マンパワーをそれほど必要としない事務については法務部門のみで十分対応することができます。
そのため、外部弁護士をカウンセルとして雇う必要のある業務が限定され、業務委託費用を一部節約することができます。

  • 中途採用を機動的に行うことができる

企業における中途採用活動は、部門ごとに行われることが一般的です。

法務部門とコンプライアンス部門が分かれている場合は、両者間で中途採用についての利害調整を行う必要性が低くなります。
そのため、各部門のニーズに合わせた中途採用を機動的に行うことが容易になると考えられます。

 

注意点

 

  • 情報の偏在が問題になりやすい

法務部門とコンプライアンス部門が分かれていることによって、自然発生的な情報共有の機会は減る傾向にあります。
そのため、部門間での情報の偏在が問題になりやすいといえます。

特に、日常的にオペレーションを監視しているコンプライアンス部門だけが情報を持っていて、法務部門に情報が共有されていないという事態がよく起こりがちです。
こうした事案について、法令上の問題が後から発覚すると紛糾してしまいます。

このようなリスクを避けるためには、法務・コンプライアンス間での定期的・即応的な情報共有を意識的に行うことが必要になるでしょう。

 

スペシャリスト集団同士の協働により盤石な法務・コンプライアンス体制を

 

法務部門とコンプライアンス部門を分けてそれぞれをスペシャリスト集団化することは、それぞれの業務遂行能力を高めることに繋がるため、一般的には企業のリスク管理強化の観点から有効と思われます。

しかし、法務・コンプライアンスは隣接領域であるため、両者は相互に連携・協働する必要があります。
両部門間で意識的な情報共有を行わなければ、情報偏在の問題が発生してしまい、連携・協働は困難になるでしょう。

したがって法務・コンプライアンスの両部門は、

・案件ごと
・ビジネスの分野ごと
・部門全体同士

など、さまざまなレベルで定期的なミーティングを持つなどして、部門間の情報共有体制を万全にすべきです。

スペシャリスト集団同士の協働が適切に機能する体制を構築できれば、会社の法務・コンプライアンス体制はより盤石なものとなるでしょう。

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