契約社員を雇い止めする際の注意点|無期転換ルールと雇い止め法理

投稿日:2021/01/22

無期雇用の正社員に比べて、有期労働契約を締結する契約社員は、経営者にとっては「切りやすい」というイメージで語られることも多いかと思います。
たしかに、正社員を解雇する場合と比較すれば、有期雇用の契約社員を「雇い止め」することの法的なハードルが低いことは事実です。

しかし法律上、有期雇用の契約社員を保護する目的で「無期転換ルール」と「雇い止め法理」の2つのルールが設けられています。
会社が有期雇用の契約社員を雇い止めする場合には、この2つのルールの観点から違法性が生じないかを、慎重にチェックすることが必要です。

この記事では、有期雇用の契約社員に関して適用される、無期転換ルールと雇い止め法理という2つの法律上のルールを中心に、弁護士の視点から解説します。

 

そもそも「雇い止め」とは?解雇との違いについて

 

すでにご承知の方も多いでしょうが、念のため「雇い止め」の意義について確認しておきましょう。

「雇い止め」は法律用語ではありませんが、一般的には、

「有期労働契約を締結している契約社員について、使用者の判断で、期間満了時に契約を更新しないこと」

を指します。

これに対して、雇い止めとよく並列して語られる「解雇」は、

①無期労働契約を締結している正社員・契約社員について、使用者の判断で、契約を終了すること
②有期労働契約を締結している契約社員について、使用者の判断で、契約期間の途中で契約を終了すること

のいずれかを指します。

つまり、契約期間の満了によって労働契約を終了させるのが「雇い止め」、それ以外のタイミングで使用者が一方的に契約を打ち切るのが「解雇」というわけです。

 

契約期間切れの雇い止めは使用者の自由のはずでは?

 

一般的には、契約期間が満了した時点で、当該契約を更新するかどうかは、本来当事者の合意によって自由に決められるはずです(契約自由の原則)。
有期労働契約についても、原則論としてはそのとおりです。

しかし日本の労働法は、有名な「解雇権濫用の法理」をはじめとして、労働者を厚く保護する方向性に傾いています。
すなわち、有期雇用の契約社員であっても正社員と同様に、

「賃金に生活を依存していて、使用者に対して弱い立場にあり、保護の必要性がある」

というのが、日本の労働法の出発点なのです。

上記の考え方により、有期労働契約に関する「契約自由の原則」は、「無期転換ルール」と「雇い止め法理」の2つによって、一定の修正を受けています。

これらはいずれも、労働者側の「継続して雇用してもらえるだろう」という期待が合理的である場合に、その期待を保護する制度といえます。

次の項目からは、この2つの修正ルールについての詳細を見てみましょう。

 

「無期転換ルール」とは?

 

「無期転換ルール」とは、労働契約法18条1項に規定された以下のルールを意味します。

①有期労働契約の契約期間が通算5年を超えた労働者が、
②使用者に対して無期労働契約締結の申込みをした場合、
③使用者は当該申込みを承諾したものとみなす

つまり、契約期間が通算5年を超えた労働者からの無期転換の申込みがあった場合、使用者はこれを拒否することができず、自動的に無期労働契約が成立するのです。

この無期転換ルールは、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約に対して適用されます。
有期労働契約の契約期間は、原則として最長3年です(一部5年の例外あり。労働基準法14条1項)。
したがって、現時点で存続している有期労働契約は、そのすべてが無期転換ルールの対象となります。

 

「雇い止め法理」とは?

 

一方「雇い止め法理」とは、労働契約法19条に規定された以下のルールを意味します。

①以下のいずれかに該当する有期雇用労働者が、
・過去に契約が反復して更新されており、雇い止めが社会通念上解雇と同視できること
・有期労働契約更新への期待が合理的であること
②契約期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結(更新)を申し込み、かつ
③使用者が申込みを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、
④使用者は従前と同一の労働条件で、当該申込みを承諾したものとみなす

雇い止め法理は、有期雇用契約の強制自動更新を認める規定です。

契約年数によってボーダーラインが定められている無期転換ルールに比べると、適用要件がぼんやりしている印象を受けるかもしれません。
この点、雇い止め法理が適用されるかどうかを判断するための考慮要素などについて、厚生労働省が基準を示しています。

参考:
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/dl/h1209-1f.pdf

同基準においては、以下の要素を総合的に考慮して、労働者の継続雇用に対する合理的な期待の有無を判断すべきものとされています。

・業務の客観的内容(仕事の種類、内容、勤務形態など)
・契約上の地位の性格(基幹的か臨時的かなど)
・当事者の主観的態様(会社側からの継続雇用に関する説明内容、労働者自身の認識など)
・更新の手続、実態(契約更新の回数、勤続年数、契約更新時の手続きの厳格性など)
・他の労働者の更新状況(同様の地位にある労働者にも雇い止めが行われているかどうか)
・その他(契約締結の経緯、勤続年数・年齢に関する上限の有無など)

 

経営者が契約社員の処遇を考える際のポイントは?

 

無期転換ルールと雇い止め法理が存在することを踏まえると、経営者が有期雇用の契約社員をひとまとめにして「切りやすい」人材と捉えるのは、法的に正確とは言えません。

経営者としては、上記2つのルールを前提として、正社員への登用を踏まえた総合的な人材マネジメントを展開する必要があるでしょう。

 

「5年経たないうちに雇い止めをすればいいや」は危険

無期転換ルールにおける「5年」のボーダーラインが強調されて、「5年経たないうちに雇い止めをすればOK」というような考え方が吹聴されることがあります。

しかし、雇い止め法理の存在も併せて考えると、この考え方は不正確と言わざるを得ません。

すなわち、過去に契約更新がない場合であっても、労働者側に契約更新に関する合理的な期待が存在する場合には、有期労働契約が自動更新されてしまいます。
たとえば契約期間が3年のケースで、雇い止め法理の適用によって契約延長が1回行われると、それだけで通算の契約期間は5年を超え、無期転換ルールの適用対象になるのです。

このように、「5年経過前に雇い止めをする」という方針でいたとしても、結果的にそれより前の段階で無期転換ルールが問題となる可能性があるので注意が必要です。

 

有望な契約社員は早めに正社員に登用する

無期転換ルールの存在を踏まえても、5年周期で人材を総入れ替えしてしまうという発想は、企業人材の成長という観点からは望ましくないでしょう。

そのため、初回の契約期間は人材適正を見極める期間と捉え、その期間中に有望と判断した有期雇用労働者については、早めに正社員に登用することも有力な選択肢です。
労働者との間の紛争防止に繋がるほか、有能な人材の確保や、労働者のモチベーションアップにも繋がります。

 

派遣会社を利用するのも一つの手段

無期転換ルールや雇い止め法理は、解雇権濫用の法理と並んで、企業側にとっての人材の流動性を低下させる意味で大きな負担となります。

これらのルールの適用を回避したい場合には、派遣会社から人材派遣を受けることも一つの手段です。

派遣社員については、労働契約は派遣先ではなく、派遣元との間に存在します。

したがって、人材派遣を受ける会社としては、派遣社員を雇っているわけではないため、雇用に関する労働法の厳しいルールが適用されません。

有期労働契約を締結するか、派遣会社から人材派遣を受けるかの選択においては、コストと人材の流動性を天秤にかけて、適切に経営判断を行う必要があるでしょう。

 

まとめ

 

新型コロナウイルスの影響が色濃く残る中、企業の人材マネジメントは大きな転換点を迎えています。

正社員・契約社員・派遣社員など、さまざまな雇用形態の特徴を理解して、自社の状況に合わせた適切な人材マネジメントを組み立ててください。

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