2021/01/22

マスク、クルマ、生花…「サブスクリプションサービス」の基礎知識と、注目される理由

発売開始と同時に注文が殺到し、高い倍率の抽選販売となって話題を呼んだのが、シャープが製造しているマスクです。

そのシャープが今度は、「マスク定期便サービス」に乗り出しました。毎月1箱、30枚のマスクが届くという定期購入で、一種のサブスクリプションサービスです。

最近よく耳にする「サブスクリプションサービス」ですが、いったいどのようなものなのか、事例とともに紹介します。

 

注文殺到で再びの一時受付停止も

 

シャープの「マスク定期便」は、「ふつうサイズ」と「小さめサイズ」の2種類があり、月1650円で30枚のマスクが届き続けるというものです。

シャープのマスクは発売以降注文が殺到し、抽選販売となってからは入手困難な「幻のマスク」とも呼ばれています。

マスク騒動は今やすっかり収束し、今ではどの店頭でも当たり前のように様々な使い捨てマスクが並んでいます。

しかし、シャープの「目のつけどころ」は、ただ単にマスクが手に入るというだけでない部分にあります。

「日本製を使いたい」という顧客ニーズと、その中でももはやブランド化した「シャープマスク」の知名度がマッチして、今回の定期便の受付もアクセスの集中で、受付を一時停止せざるを得なくなったほどの人気ぶりになっています。

「サブスクリプション」はこうした「定期購買」に由来するものです。
ただ、従来の「定期購買」とは色合いが異なる部分もあります。

 

サブスクリプションサービスの魅力と現状

 

日常生活に欠かせないものや消耗品、またBtoBでの取引について、サブスクリプションサービスがユーザーにもたらすメリットは「毎回購入手続きをしなくて良い」ことにあります。
加えて、モノを買う際に「これだけの金額を出して買う価値があるかどうか?」と悩まなくて良い、といったものがあります。

また、企業にとっては、安定した固定収入が見込めるということです。

サブスクリプションサービスは現在、多種多様な業界に浸透しつつあります。

典型的なのはNetflixをはじめとした月額制動画配信サービスがあります。

また、トヨタやホンダが展開しているのは、自動車を購入するわけでもレンタルするわけでもなく、月々固定費用を支払うことで契約期間中のみを所有できるというサービスです。
購入するのもレンタルするのもどちらも費用がかかりすぎてしまう、という点を解消したサービスでもあります。

さらに近年では、家庭用に毎週少量の花を届けるサービスがあるほか、月額制で洋服やバッグの借り放題といったものも展開されています。

一方で、サブスクリプションという言葉はいまいち浸透していません。

マクロミルの調査[1]によると、「サブスクリプション型サービス」という言葉の認知状況は、

:内容も含めてよく知っている:9.5%
・聞いたことはあるが内容までは知らない:16.8%
・知らない/よくわからない:73.7%

と、言葉としてはあまり浸透してはいません。

そこで言葉の意味を説明した上で再度問うと、

・使っている:36.1%
・以前は使っていたが現在は使っていない:10.2%
・今までに使ったことはない:53.7%

という結果になり、サブスクリプションという言葉を知らないまま利用しているユーザーが多いと見られます。

また、利用しているというサブスクリプションサービスとしては、動画・音楽の定額配信が圧倒的に多くなっています(図1)。


図1 利用したことのあるサブスクリプションサービス
(出所「サブスクリプション・サービスの利用状況に関するアンケート結果」消費者庁資料)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/pdf/caution_internet_200205_0002.pdf p5

そして、サブスクリプションサービスを利用している理由は下のようなものです(図2)。


図2  サブスクリプションサービス利用理由
(出所「サブスクリプション・サービスの利用状況に関するアンケート結果」消費者庁資料)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/pdf/caution_internet_200205_0002.pdf p8

こうしたニーズを満たし、同時に企業の収益構造を定期収入型へとシフトさせるのがサブスクリプションサービスのポイントです。

しかし、これまでの「定期購読」「定期購入」を踏襲しても勝ち目はありません。

 

ロイヤリティの種類・顧客との関係性の変化

 

サブスクリプションサービスは、一つの大きな契約成立よりも一件あたりの利益は薄くなります。
しかしそれを着実に積み上げていけば安定した収入になりますので、人口減少で市場が縮小する業界にとっては必要な生き残り策です。

当然、他社との差別化をはからなければなりません。

企業が他社との差別化を図る方法として、消費者に与える「商品・サービスを通じたロイヤリティ」があります。そして、ロイヤリティは2種類に分かれます。

「行動ロイヤリティ」と「心理ロイヤリティ」です。

従来からある純粋な「定期購買」の時代は、「毎月買いに行かなくて良い」という行動ロイヤリティによって契約の継続意思が決定されていました。

しかしいまやECの普及で、行動ロイヤリティが満たされることは当たり前になっています。

そこで必要なのが心理ロイヤリティの提供です。

シャープのマスクはその典型。「日本製である」「シャープのものを毎日使える」という心理面での顧客満足を満たしているのです。

また、他の業種でうまくいっているサブスクリプションサービスに共通するのは、顧客の生活に新しい価値観をもたらしたという点です。

従来の売り切り型では得られることのなかった新しい習慣を作ってくれた、という心理ロイヤリティが非常に有利に働いています。

洋服やバッグの借り放題は、モノの「所有」に拘らないミレニアムやZ世代の心を掴み、新しい価値観を提供していると言えます。

一方でサブスクリプションは、販売者との関係をいつでも解消できる権利を顧客が握っています。
売り切り型の販売では、購入した側は嫌でも購入先のアフターサービスを選ぶしかありませんでした。

しかしサブスクリプションサービスの世界では、他に良いもの、より安いものが登場すればすぐに乗り換えられてしまう。

そこで心理ロイヤリティを満たし続けることが必須となります。

例えばNetflixは近年、オリジナルコンテンツに注力しています。他ではできない体験を提供し続けることで、解約率を減らすための取り組みです。

そして、顧客との関係も変化します。
これまでは顧客との関係は、売買成立が一つのゴールでした。あとは「対応」という関わり方があるのみです。
しかしこれからのサブスクリプションサービスでは、契約の成立が顧客との関係のスタートとなります。

顧客の生活や意識の変化を常に観測し続け、心理ロイヤリティを提供し続けなければならないのです。ユーザーとの「伴走」の始まりとも言えるでしょう。

顧客の生活に「物理的にあって当たり前」なのではなく、「毎回のこれが楽しみ」といった風に変化する必要があります。

なお、スティーブ・ジョブズは心理ロイヤリティについて天才的な部分があったと言えるでしょう。
多くのファンが「最新のiPhoneを誰よりも早く手に入れる」という心理ロイヤリティを求め、新しい端末の発売ごとに店舗に長蛇の列ができる状況を作って見せたのです。

 

「カスタマーサクセス」への意識

 

サブスクリプションビジネスの時代になってもう一つ注目されるようになったのが、「カスタマーサクセス」という概念です。

顧客に成功=つまり心理ロイヤリティを与え続けるには、提供側が常に能動的に働きかけ続けなければなりません。
聞かれたことに答える「対応」だけでは不十分です。

そして、経営上のKPIとして「継続率」と「LTV(顧客生涯価値)」を強く意識する必要が出てきます。

顧客に成功の連続を与え、地道に積み上げることで、いずれは単価を上げることも可能でしょう。コースの種類を増やすという対応も考えられます。

最近では、「いずれ全ての業種はサービス業化する」と分析する意見まで耳にするようになりました。
サブスクリプションビジネスは、様々な業界の「サービス化」の一端を見せてくれています。


参照
[1]「サブスクリプションに関する調査。サブスク利用者拡大のカギとは?」株式会社マクロミル
https://honote.macromill.com/report/20190425/ 

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