コンピテンシー評価とは?メリット・デメリットと導入方法や注意点について解説

投稿日:2020/12/16

従来型の人事評価制度に代わり、客観的で透明性の高い評価手法として広まりつつある「コンピテンシー評価」。導入障壁は高いものの、生産性の向上や効率的な人材育成を目的として取り入れる企業が増えています。今回は、コンピテンシー評価について、導入におけるメリット・デメリット、具体的な導入手順、注意点などを解説します。

 

コンピテンシー評価とは

 

まずは、コンピテンシー評価の基礎知識について解説していきます。

 

コンピテンシー評価とは

コンピテンシー評価とは、ある業務や職種において特に高い成果をあげている社員の特性をロールモデル化し、それを評価基準とする人事評価制度です。

例えば、営業職において常にトップの成績を収めている社員には、市場や競合他社の調査を怠らないとか、密にコミュニケーションを取り根気強く交渉しているなど、成果を生み出している何らかの要因があるはずです。そのような成果に結びついている行動特性を洗い出し、業務や職種ごとに理想とする「コンピテンシーモデル」を定めます。

社員はそれを元に目標を設定し、評価においてはコンピテンシーモデルとすり合わせを行うことで、行動改善や査定に活かしていきます。目指すべき指標が明確に可視化されているため、会社と社員双方にとって透明性が高く客観的な評価がしやすいとされています。

 

職能資格制度(能力評価)との違い

これまで、日本の多くの会社では「職能資格制度」による人事評価を行ってきました。職能資格制度とは、社員が身に付けている能力に応じた等級を用意し、等級ごとに賃金やボーナスを設定する日本独自の等級制度です。

コンピテンシー評価においては、「チームと信頼関係を築ける」「積極的に後輩育成に関わっている」といった具体的な行動が評価基準となります。一方、職能資格制度では、どの程度の知識やスキルを身に付けたかといった能力値を評価基準とするため、「協調性」「責任感」など、評価項目があいまいになりがちです。実際の業務に必要な能力よりも、ゼネラリストとして総合的に必要な能力を評価する傾向にあるのが職能資格制度といえます。

 

コンピテンシー評価が必要な理由

従来の日本企業で広く導入されてきた職能資格制度は、長期間の人材教育やゼネラリストの育成に長けているというメリットもある一方で、キャリアを重ねるごとに能力は向上するという考えに基づいているため、評価が年功序列に陥りやすいというデメリットがありました。一度等級があがった社員を降格させることが難しいため、勤続年数が長い社員ほど自動的に高額な報酬を得ることになってしまうのです。評価の公平性に欠けるだけでなく、人件費がかさばる点が課題となっていました。

しかし、バブルの崩壊によって人件費の見直しがはかられるようになり、併せて成果主義を重視する企業も増えました。このような背景から、高い成果をあげている社員を評価し、より公平性の高い人事評価制度としてコンピテンシー評価にも注目が集まるようになっています。

 

コンピテンシー評価導入のメリット

 

コンピテンシー評価を導入することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な4つのメリットを紹介します。

 

効率的に人材の育成ができる

コンピテンシー評価では、業務や職種ごとにコンピテンシーモデルを設定して評価を行うため、より実業務に即した評価を行います。そのため、より専門的な知識や技能を持った社員が評価されやすくなります。

実業務における即戦力を育成しやすいだけでなく、自分の課題や身に付けるべき能力が可視化されているため、社員にとってもモチベーションを維持してスキル向上に励みやすいといえます。

 

生産性の向上

評価の基準や目指すべきロールモデルが明確になっていると、社員が自分自身で課題を把握でき、改善行動にもつなげやすいといわれています。行動を改善して成果を上げれば、確実に評価や昇給に反映されるため、向上心も高まります。社員の自主的な改善行動やアイデアの創出を促しやすく、それが生産性の向上にもつながります。

 

従業員への評価がしやすくなる

会社にとっては、より正確な評価を行いやすいというメリットもあります。従来の職能資格制度による評価では、評価基準があいまいなため、評価者の主観に左右されやすいという問題も指摘されていました。コンピテンシー評価の場合、行動が評価基準となるため、「しているか」「していないか」で評価をすることになります。評価者との関係性や立ち位置といった外的要因が反映されづらく、透明性の高い評価をすることができます。

 

評価される側の公平性や納得感が高い

コンピテンシー評価を導入すると、より実際の成績に見合った評価が行なわれるようになります。成果はあまり高くないけどやる気があるとか、勤続年数が長くて会社に貢献しているといった評価は重視されなくなるのです。評価の基準が明確で公平な評価が行なわれることは、社員の納得感を高めることにもつながります。社員の企業に対する信頼感を高め、帰属意識を向上させる効果も期待できます。

 

コンピテンシー評価導入のデメリット

 

メリットの一方、コンピテンシー評価には一定のデメリットも存在します。

 

コンピテンシー評価を導入すること自体が難しい

成果を出している社員の行動特性を洗い出すといっても、社員を選定し、その特性を抽出して、指標として設定するのは容易な作業ではありません。たくさんの工程を要するだけでなく、この作業を全職種において行う必要があるのです。そのため、運用までに少なくとも1年以上の時間がかかるとされています。

 

策定したコンピテンシー評価が自社にとって必ず正しいとは限らない

コンピテンシーの行動モデルや評価基準には、テンプレートというものが存在しません。そのため、自社にとって有用なコンピテンシーモデルや評価基準は、自分たちで策定するしかないのです。さらに、これらは一度で完成するものではなく、何度も試行や修正を繰り返すことになります。

 

業務や経営状況など環境の変化に適応しづらい

アップデートが困難という点もデメリットです。評価基準を確定させるまでに年単位の時間が必要となるため、その間に事業フェーズが変化したり、モデルとすべき行動特性が変化したりしてしまい、また一からコンピテンシーを抽出しなおさなければなりません。膨大なコストがかかるだけでなく、社員にとっても評価基準がわかりづらくなってしまいます。

 

コンピテンシー評価の導入手順

 

コンピテンシー評価を導入する際には、どのような方法をとればいいのでしょうか。具体的な導入ステップを解説します。

 

ハイパフォーマーへのヒアリングを行う

はじめに、業務や職種別に高い成果をあげている社員を選定して、ヒアリングを行います。ヒアリングの目的は、その社員がどうして成果を上げられるのか、その理由を探ることです。「普段どのようなことを意識しているか」「この行動をおこしたとき、どのような必要性を感じていたか」「選択肢が複数あったとき、何を重視して優先順位を決めるか」など、様々な角度から質問していきましょう。

 

コンピテンシー項目を洗い出す

ヒアリングが終わったら、得られたデータを分析し、行動特性を見極めていきます。ヒアリングで明らかになった項目をリストアップし、ハイパフォーマーに共通するものを見つけていきます。見つかった共通点は一般化し、コンピテンシー項目の候補として再びリスト化します。

 

基準となるコンピテンシーモデルを作成する

続いて、ヒアリング結果や経営ビジョンをもとに、コンピテンシーモデルを作成します。コンピテンシーモデルの設定方法には、「実在型モデル」「理想型モデル」「ハイブリッド型モデル」の3つが存在します。

・実在型モデル:社内のハイパフォーマーにヒアリングを行って行動特性を抽出する方法。実業務に即したモデルが作成できるが、策定までに時間がかかる。
・理想型モデル:自社が求めている人材や、業務においてのあるべき姿をコンピテンシーとして設定する方法。比較的作成が容易だが、「机上の空論」になってしまう可能性もある。
・ハイブリッド型モデル:実在型で抽出されたモデルに、理想型の特徴をプラスしていく方法。

モデルの策定に利用できるリソースや時間によって、どの方法を選択するかは様々です。運用までにどのくらいの時間をかけられるのか、コンピテンシーによってどのような効果を求めているのかを考え、自社にあった方法を選択しましょう。

 

コンピテンシーの項目を作成する

候補として洗い出したコンピテンシー項目から、評価基準として採用する項目を選別していきます。コンピテンシー評価は、企業や社員のさらなる成長のために設定するものであるため、企業の経営方針やビジョンと合致している必要があります。洗い出したコンピテンシー項目やモデルを経営方針やビジョンと照らし合わせて、社員の育成に必要な項目を絞り込んでいきましょう。

 

コンピテンシー・ディクショナリー6つのカテゴリーと20項目

コンピテンシー項目やモデルには決まったテンプレートはありませんが、目安として「コンピテンシー・ディクショナリー」を活用することができます。コンピテンシー・ディクショナリーとは、一般的なコンピテンシー項目を6領域・20項目に分類したものです。自社の実態と一致しているとは限らないため、あくまでも参考にするものですが、コンピテンシー・ディクショナリーを最初の指標として抽出や選別を行うとスムーズかもしれません。

 

各コンピテンシー項目のレベルを設定する

最後に、設定したコンピテンシー項目をレベル分けすることで、「どの程度満たしているか」を評価しやすくします。例えば、「チームワーク」という項目においては、「レベル1:チームと円滑な関係を築ける」「レベル2:協力して業務を進めることができる」など、習熟度を明文化するようにしてください。

 

コンピテンシー評価を導入する際の注意点

 

企業文化になじめば多くのメリットを享受できるコンピテンシー評価ですが、導入には注意も必要です。コンピテンシー評価における注意点を解説します。

 

最終目的は「成果の向上」

コンピテンシー評価は人事評価や人材育成に活用できる仕組みですが、単純なフレームワークではありません。導入しただけでは意味をなさず、自社にとって有用なコンピテンシーの形を模索し続ける必要があるのです。「成果を向上させる」という最終目的にコミットし、形骸化しないように注意しましょう。

 

すべてのコンピテンシーを満たす人材は存在しない

コンピテンシーモデルと完璧に合致する社員はいないという点も、忘れないようにしましょう。会社の理想を社員に押し付けすぎると、かえってモチベーションを下げることになってしまいます。社員の能力をコンピテンシーに近づける努力は必要ですが、あくまでも目安や基準値として活用するようにしてください。

 

定期的なメンテナンスや更新を行う

社員に求めるスキルや知識は、市場の変化やその中での会社の立ち位置、事業フェーズなどによって変化していきます。会社の目標が変化すれば、コンピテンシーモデルも変化するもの。常に経営目標やビジョンとすり合わせて、定期的に見直しを行うようにしましょう。

 

コンピテンシー評価を検討してみよう

 

コンピテンシー評価は、導入に多くの時間や手間がかかるだけでなく、導入後も定期的な見直しが必要です。しかし、企業風土にうまくマッチすれば、従来の職能資格制度による評価のデメリットを克服し、より客観的かつ公平な人事評価を実現できます。

また、コンピテンシーモデルを策定できれば、人事評価のみならず採用や人材育成にも活用することが可能です。自社が抱える人事評価の課題や導入における注意点をよく検討し、時間をかけてコンピテンシー評価を作り上げてください。

参照
カオナビ「コンピテンシー評価とは? 必要性、メリット・デメリット、基準、項目、コンピテンシーモデルのつくり方、具体例について」
https://www.kaonavi.jp/dictionary/competency_hyoka/
人事ZINE「コンピテンシー評価とは?評価方法やメリット・デメリット、運用方法を解説」
https://jinji-zine.jp/competency-evaluation/
d’s JOURNAL「サンプル付き/コンピテンシー評価はまずモデルの作成から~すぐに使える項目例で解説」
https://www.dodadsj.com/content/200918_competency-model/
起業LOG「コンピテンシー評価とは?必要性や評価項目や基準、具体例を解説」
https://kigyolog.com/article.php?id=665
重本コンサルティングオフィス「コンピテンシー評価」
https://sgmtco.com/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%BC%E8%A9%95%E4%BE%A1.html
ONE TEAM Lab「客観的人事評価が可能なコンピテンシー評価のメリット・導入までの流れ」
https://media.unipos.me/competency

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