人事考課では目標設定が重要!人事考課における目標設定について職種別例文を元に解説

投稿日:2020/12/16

「人事考課」とは、会社が社員を評価するために導入されている制度です。目標設定に対して成果を可視化することにより、公正な評価を行うことができると言われています。適切な目標を設定した上で取り組みやすい環境を整備すれば、生産性や社員のモチベーションもあがります。

ところが、目標設定はどのように行ったらいいのか悩んでいる人も多いことでしょう。そもそも人事考課はなぜ必要なのか、人事考課の目的やメリット、また人事考課における目標設定のコツについて解説します。

 

人事考課の基礎知識

 

まず人事考課の必要性や目的について確認していきましょう。人事考課と似た制度である人事評価との違いについても言及します。

 

人事考課とは

ある一定期間における、業績や業務内容、会社への貢献度などを評価する仕組みが人事考課です。この評価結果は、異動や昇進、賞与などの決定に用いられるほか、社員の能力開発など、さまざまな分野で活用されます。

かつて日本企業が多く採用していた年功序列型給与制度はバブル崩壊以降くずれ去り、成果主義へと移行してきました。これにより、社員を適切に評価する仕組みが必要となったこともあり、より公正で適切な評価方法である人事考課の導入が広がりました。

 

人事考課を行う目的

人事考課は、給与や昇進、賞与額を決定するためのものと考えるかもしれませんが、そうではありません。単に社員をレーティングするためだけであれば、上司や経営者が評価して終わりにしても構わないことになってしまいます。

人事考課では、社員に対して方向性やビジョンを示し、達成するために必要な評価項目が設定されます。このように社員の目指すべき方向性や達成目標が示されることにより、効率的な能力開発や適切な評価が行えるようになります。また、達成度に対するリターン(報酬や処遇など)があることで社員のモチベーションや生産性が向上すると言われています。

企業が成長するためには、目標を組織や個々の目標にブレイクダウンしながら、同じベクトルに向かって成長する必要があります。人事考課は、組織の目標を達成するために社員一人ひとりが担うべき目標を提示し達成させるためのプロセスであり、これによって業績を向上させるねらいがあるのです。

 

人事考課と人事評価の違い

人事考課と似たような制度として「人事評価」があります。多くの企業では、この2つを大差なく扱っていることもあり、ほぼ同じ意味を持つものと考えても間違いではありません。ただし、もう少し厳密に言うのであれば、次のような違いがあります。

  • 人事評価…その人の持つ能力や目標達成度、取り組み方などを評価するもの。能力開発や異動などの幅広い要素で活用される。
  • 人事考課…一定期間における貢献度や成績に対して評価を行い、昇進や昇給、賞与などを決定するもの。インセンティブ的な意味合いもある。

人事評価は上司と社員の間で共有された目標設定に対して、どこまで達成できたのか、どのように取り組んだのか(プロセスやアプローチ、手法など)、向上したもしくは不足しているスキルは何か、と言ったことを振り返るプロセスのことです。

人事評価が終わると、組織全体の相対評価として人事考課を行います。人事考課は、社員の給与や賞与などに直結するため、限られた組織資源の分配や、限られたポジションへの配置を考慮しながら行われます。

 

人事考課で参考となる3つの基準

人事考課は、公正かつ適切に行われる必要があります。そのため評価に隔たりが出ないよう、次の3つの基準にそって行います。

  1. 成績
  2. 能力
  3. 情意

それぞれについて説明します。

  1. 成績

成績考課は、特定の期間において設定された数値目標に対して、どこまで達成できたのかを評価します。数値化されているので可視化しやすく、評価における客観性や公平性が高いと言われています。

単に件数などの数値目標の達成度以外にも、取り組んだ業務の難易度や達成した項目の組織への貢献度の高さなども評価対象になります。そのため、営業職などの成果を数値化しやすい職種だけではなく、管理部門などの日常的な業務を行う経理や人事、管理職など、幅広い職種で適用しやすい評価基準となります。

  1. 能力
    能力考課は、職務を遂行する上で必要となるスキルや知識の程度に対して評価されます。成績考課とは異なり、目標やノルマの達成度とは関係なく評価されます。

単に業務上必要な知識量などだけを評価するのではなく、企画力、実行力、リーダシップ、指導力、折衝力など、その人の持つさまざまな潜在能力について評価します。

  1. 情意
    情意考課は、業務への取り組み姿勢や勤務態度などを評価します。実績や能力とは無関係なので、仮に大きな実績をあげたとしても、勤務態度が悪ければ評価は低くなります。

また、協調性や新しいことにチャレンジする意欲、責任感なども評価項目となり、新入社員などの業務経験が浅い社員であっても平等に評価可能な基準とも言えます。その代わり、数値化しにくく、成績考課や能力考課に比較すると評価基準があいまいで評価者によるばらつきが出やすくもあります。

 

人事考課を行うメリット

 

人事考課を行うことにより、組織にとっても社員にとってもメリットがあると言われています。

 

会社と社員の信頼関係の構築ができる

もしも評価基準があいまいな場合には、社員は評価に対して納得することができず、不満を持ってしまいかねません。それに対して、人事考課では評価項目や評価基準が明確化されるため、納得しやすいと言えます。

目標設定の段階で、上司などから求められる期待値などを説明されるので、社員は組織目標やチームの役割などを理解することができます。すると業務目標を立てやすくなり、成果に繋げやすくなります。また、成果に対して適切なフィードバックを受けることにより、「きちんと評価されている」と感じ、会社に対する信頼感や安心感を持てるようになります。

 

社員のモチベーション向上

アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグによって提唱されたモチベーション理論「二要因理論」によると、仕事に対して満足度を左右する要因には2種類あるとしています。

満足度を上げる要因には、仕事の内容そのものや達成感、責任や昇進といったものがあり、これらが満たされることによって満足感を覚えます。ところが、これらが欠けていても不満は感じないにも関わらず、会社の方針や給与、人間関係などが不足すると不満を感じます。そして、不満要素が満たされたからといって満足度が上がることもありません。つまり、満足感を高めつつ、不満要素を減らすことによりができれば、モチベーション管理に役立つのです。

これを人事考課に照らしてみると、組織の方針を理解し、納得して設定した目標を達成する、成果を認められる、成果に見合った給与を得るといったことはモチベーションの向上や低下防止に役立つということが分かります。

 

会社の生産性や事業推進の向上につながる

人事考課によって、社員のモチベーション向上がねらえるということは、既に説明した通りです。そして、モチベーションを高く維持している社員は、より高い目標に向かって着実にステップアップしようと自発的にスキルを身に付けたり、業務の効率化を行うようになるなど、個々の生産性が向上するようになります。その結果、目標達成度に値するリターンも得られるようになり、仕事に対する満足度も上がるという好循環を生み出すようになるのです。

こうして社員個々の生産性が向上することは、組織全体の生産性の向上につながり、ひいては事業推進という点においても向上につながるのです。

 

今後の人材開発に役立てることができる

人事考課を通して、社員は必要なスキルや知識は何かということを意識するようになるほか、その時点における自身の能力値を知るいい機会となります。

人材育成においては、本人の学習意欲の高さは重要なポイントです。自身の目標達成に対するモチベーションが高ければ学習意欲も高まり、具体的に何が不足しているのか示されれば学習しやすくなります。

また、人事考課によって不足しているスキルや能力特性が明確になれば、組織としてその人材に何を学ばせるべきかなど育成指針とすることができます。

 

人事考課の代表的な評価方法

人事考課には、いくつかの方法があります。ここでは代表的な5つの方法について説明します。

 

360度評価

評価というと、「上司が単独で行うもの」というイメージが強いですが、一人の社員が業務上関わるさまざまな関係者から評価してもらう方法が360度評価です。この方法では、多面的な評価をしてもらうことができるため、客観性が高まり評価内容に対する納得感も得やすくなります。

また、「上司の顔色うかがい」で評価が変わるのではなく、業務で接する他チームなどさまざまな立場・役割の人から評価されることにより、規範意識を高めることに役立ちます。そのほか、上司が現場と管理職を兼任しているような場合にありがちな「人事考課の負担」を減らすメリットもあります。

 

プロブスト法

人事考課は人間よって評価されるため、どうしても評価エラーを避けることはできません。たとえば、評価対象者と個人的に親しい、学歴や経歴などによる先入観が強いなどで評価結果に違いが生じたり、評価を常に甘めまたは厳しめにつけてしまう、などです。このような評価者が無意識のうちの生じさせてしまうブレをなるべく少なくするための方法が、プロブスト法です。

仕事の成果や、勤務態度、能力などの具体的な評価項目をあらかじめチェックリストにしておき、評価者は評価対象者に当てはまると確信できたものだけチェックしていきます。評価結果が評価者自身にも想定しにくいため、作為的な評価を排除しやすく、公平な評価を行いやすいというメリットがあります。

その代わり、チェックシートの作成において項目の設定や重みづけを十分に検討する必要があることや、機械的なチェックになりがちで人事考課に対する評価者の気力が薄れやすいというデメリットあります。

 

コンピテンシー評価

業務におけるハイパフォーマーに共通するコンピテンシー(行動特性)をモデル化し、評価基準に設定する評価方法です。自社のハイパフォーマーが仕事で成果を出すまでに、どのように考え行動したのかに着目し、結果だけではなくそのプロセスも評価します。

そのため、「プロジェクトを支えるメンバーとして活動した」「必ずしも結果が伴うとは限らない業務を行っている」など、成果が見えにくい役割を担ってくれている社員の評価も行いやすくなるとともに、自社が求める社員像を理解してもらいやすくなる、社員が努力すべきポイントが分かりやすくなる、評価対象者の納得を得やすい、などのメリットがあります。

コンピテンシーモデルはそれぞれの企業によって異なるため、決まった評価テンプレートは存在しません。また、その時点でハイパフォーマーが存在していない可能性もあるため、初めての導入ともなれば多くの時間や労力が必要になります。

 

段階択一方式

評価基準となる複数の項目に対し、それぞれ4段階ほどのレベルに分けてその状態を文章で表現します。評価者は、どのレベルが最も当てはまるかを選択するという評価方法です。

たとえば、「仕事のはやさ」であれば「迅速でミスがほとんどない/迅速だがたまにミスが見受けられる/速度は普通だがミスが少ない/速度は普通かやや遅くミスも見受けられる」というように、各レベルがどのような状態を指しているのか文章で表現します。

この評価方法は、文章をよく読むことで理解することができ、評価者の事前トレーニングをしなくても評価のバラつきができにくいのがメリットです。ただし、評価要素の種類によっては表現が難しいことも考えられるため、レベルの違いが分かりにくい文章にならないよう、明確な表現をする注意が必要です。

 

ポイント制

多くの日本企業では、評価に対して「基本給×支給月数」というような形で賞与が支払われています。この方式の場合、年功序列の傾向が多くみられる基本給が支給額計算のベースとなるため、年齢の若い社員が大きな成果をあげて高い評価を得たとしても、賞与額が成果に見合わないことも考えられます。むしろ、それほど成果が高くなくても勤続年数の長い方が賞与額が大きいとなれば、若い社員のやる気はそがれてしまいます。

ポイント制は、こうした不公平感をなくし平等に利益を配分しようという考え方に基づいています。あらかじめ業務などに付与ポイントを決めて置き、達成した社員にポイントを付与します。たとえば、「新規アポイント獲得=1000Point」「来店対応1件=100Point」という設定をしておき、達成すると付与されます。こうして付与されたポイントの合計にポイント単価をかけて賞与額が決定します。

ポイント単価は全社員の総ポイント数と賞与原資によって決まるため、「限られた原資を分配するために評価を調整しなければならない」といったこともなく、賞与が「成果報酬」の意味を持っているとすれば、よりそれに近い形になります。また、「勤続年数ポイント」や「技能ポイント」、「組織目標貢献度ポイント」など、各組織によってフレキシブルにポイント項目や重みづけの変更が戦略的に行えるため、企業理念などを表現しやすいメリットもあります。

 

人事考課のフロー

 

では、人事考課のフローについて説明していきます。大きく4つのプロセスを経て、最初のプロセスに戻る循環フローとなります。

 

社員の目標を策定する

目標策定にあたっては、上司から部下に対して取り組んで欲しい業務内容や課題、期待する役割を伝える必要があります。これを踏まえて、社員自身が目標設定を行い上司と共有しつつ、お互いに納得のいく内容になるよう話し合います。

上司は部下の設定した目標が、組織目標やポジションとマッチしているかどうか、難易度は適切かという点を意識しながら部下と話し合い、内容をすり合わせていきます。この時、決して上司は目標を押し付けてはいけません。部下個人の意見やキャリア志向に基づく目標をヒアリングしながら話し合うとよいでしょう。

目標は、なるべく数値化して表現するようにします。「受注率が上がるよう努力する」「部下の残業を減らす」というような曖昧な目標では、どの程度達成できたのか評価が難しくなってしまいます。「他社への発注に流れないよう提案見積リードタイムを減らし、受注率を現在の30%から40%にアップさせる」「工程管理を毎日実施することにより作業ロスをなくし、部下の時間外労働を20%削減する。」といったなるべく具体的な施策と数値目標を設定するようにします。こうすることにより、評価にブレがなくなり、部下も納得しやすくなります。

 

社員一人ひとりが自己評価を行う

目標が決定したら、業務を遂行していきます。期末などのタイミングで評価期間を振り返り、目標に対しての達成度、達成するために努力や工夫をした点、学ぶことができた点などを思い起こします。上司がより理解しやすいよう、エピソードやデータなどを用いて具体的に説明するようにします。また、反省点や改善点などがあれば、それに対する対応策なども検討し報告できるようであるとベターです。

評価期間はある程度の長さに設定されていることが多く、途中で大きな変化があることもあります。たとえば、「重要プロジェクトが発足し急きょ参加することになった」というような場合には、目標設定時点から業務内容に変化が起きてしまうため、目標の見直しが必要となります。また、「家族の介護が必要になった」などで働き方の変更が必要になった場合も同様です。

こうした問題が発生した場合、上司はなるべくすみやかに目標設定の見直しなど対応をする必要があります。そのため、日ごろから部下とのコミュニケーションや報告の場を持つよう心がけ、進捗確認やフォローを行うようにします。

 

上司による評価

部下との評価面談を実施し、部下の自己評価について説明を受けます。上司は、それまでに受けている中間報告から得ている情報や資料などをまとめておくと、部下の報告を理解しやすくなります。

その後、まずは個別の目標に対する評価を行い、全体評価を行っていきます。評価は、次のような5段階で評価するとよいでしょう。

5. 期待や要求レベルを超え素晴らしい成果や貢献度であった(1レベル上の等級に等しい)
4.期待や要求レベルを超えた
3.期待や要求レベルはおおむね満した
2.期待や要求レベルを下回った
1.期待や要求レベルを大きく下回り業務に支障をきたした

この時、上司は評価エラーを起こさないよう注意し、親しさや先入観などに左右されず、客観的な評価を行うようにします。

 

フィードバック面談

上司の行った評価は、評価会議などの結果により修正が必要となる場合もあるため、最終評価が確定してから部下とのフィードバック面談を行います。面談は、単に評価結果を伝える場なのではなく、次の評価期間の目標を設定し、部下のモチベーションを高めるという目的もあります。そのため、十分な時間をとって部下が納得のいくように話しをします。

上司は、評価の根拠や次の評価期間に期待していること、アドバイスなどを伝えるようにします。たとえば、評価の低かった項目については、どんな改善点が考えられるか、どうすれば評価が高まるのかを部下と一緒に話し合い、部下が自主的に改善していけるように促します。こうすることで、部下が自ら考えて次のアクションにつなげられるようになります。

 

人事考課の目標設定とは

 

ここまで、人事考課の目的やプロセスなどについて説明してきましたが、目標設定の意味や重要性について説明します。

 

人事考課における目標設定とは

そもそも人事考課において目標設定を行う理由は何でしょうか?これには2つの理由が考えられます。目標管理をすることで、より着実に目標をやりとげられるようになることと、進捗や達成度合いを測り自己を振り返ることにより社員が成長するということです。

目標設定とは、いわばゴールがどこにあるのかを示す地図であり、今現在どこにいるのか理解するための羅針盤のような役割を果たすものとも言えます。ゴールや現在地が分からないまま歩き続けても、たださまようばかりで得るものは少なく、やがて気力は消え失せてしまいます。反対に目標設定がされていれば、ゴールに行きつく道筋や方法もイメージできるため努力を継続しやすくなり、モチベーションも上がります。

また、目標設定を適切に行えば無理な目標をたてなくなるので、必ず何かを達成することができるようになります。こうして小さな成功体験を積み重ねることで確実に成長し、やがて自己実現に近づいていくのです。

 

目標設定が重要な理由

目標設定では、組織の理念や方針を大きな目標として示し、それらをブレイクダウンして個人の目標にまで細分化します。なぜそれが重要なのかというと、「自己実現」がキーワードです。

そもそも、個人に目標設定をして自己管理していく方法は、経営学者のピーター・F・ドラッガーが提唱したMBO(Management by Objective/目標管理)という経営手法です。個人が自己実現しようとするエネルギーを組織の成長しようとするエネルギーと結びつけることで、有効活用する必要がある、という考え方が基本になっています。

ここで自己実現がどのような状態を示すのか理解する必要があります。自己実現とは人間性心理学の生みの親と言われるアブラハム・マズローの欲求階層よって提唱された言葉です。人間が持つ欲求を、生命を維持するための欲求からより高度なものへと5段階に分類し、人間はその最上位である自己実現(自分のやりたいことと社会貢献が重複している状態)に向かって絶えず成長するとしています。

企業の存在意義は、常に顧客のニーズを満たし続けることにあります。社会のニーズが高度に複雑化した現代において、企業がその存在意義を保とうとするならば、個人の自己実現に向かうエネルギーを活用することが重要なのです。

 

目標設定のために必要な要素

 

目標設定を行うための手法はさまざまですが、最も基本的な目標設定の方法に「ベーシック法」があり、4つの要素から目標設定をしていきます。

 

目標項目

まず最初に設定しなければいけないのが、何を達成するのかということです。目標項目には、次のような4つのタイプがあります。

  1. 向上・強化…現状からさらにレベルアップするような目標
  2. 改善・解消…現状の課題を改善し、解消するための目標
  3. 維持・継続…これまでやって来たことを維持し継続するための目標
  4. 創出…新たなことを始めるための目標

 

達成水準

どのような状態になれば目標を達成したと言えるのか判断する指標が達成水準です。達成できたかどうかを明確にするため、なるべく定量化した基準を設定するのがよいとされています。定量化が難しい場合には、具体的にいつまでに何をするのか、どの様な状態になっているのかを設定します。

 

期限

いつまでに目標を達成するのかの期限を決めます。半期や年度などの単位で定めますが、目標設定の際に期限を設定していればそれにあわせます。

 

方法や手段

目標を期限内にどの様に達成するのか、具体的な方法を決めます。たとえば、「ミスの発生率を10%から5%に低減させる」という目標を達成するために「チェック項目を○○までにリスト化する」というように、アクションを設定します。

 

目標設定の軸「SMARTの原則」

目標設定をする際に注意しなければいけないことは「現実的な目標であること」です。そこで、精度の高い目標設定を行うことができる「SMARTの原則」を活用し、着実に目標を達成していきましょう。

 

SMARTの原則とは

企業の成長には、目標設定が重要であるということは既にお分かりいただけたかと思います。ところが、「非現実的な目標」ではいつまでたっても目標を達成することができないため、「少し頑張れば達成できる目標」とすることが大切です。とは言え、設定した目標が適切かどうかの基準がなければ、適切であるかどうかの判断ができないため、目標設定そのものが難しくなってしまいます。

 

そこで、目標設定の軸となるフレームワークとして活用されているのが、1981年にコンサルタントのジョージ・T・ドランが論文の中で発表した「SMARTの原則」です。この原則は5つの要素からなっており、それらの頭文字をとって「SMART」と言われます。各要素に当てはまるよう目標を設定すれば、明確で現実的な目標設定ができるようになるため、取り組みやすくなります。ここからは、それぞれの要素について説明します。

 

Specific=具体的で分かりやすい

目標は、具体性がなければなりません。たとえば、「営業を頑張る」という目標は漠然としていて、どうなれば達成された状態になるのか分かりません。そこで、「受注件数〇件」「新規問合せ〇件」というように、何をどれくらいするのかを具体的にします。

 

Measurable=計測ができる

あいまいな目標設定をすると、後になって達成できたのかどうか分かりません。目標設定をする時には、その目標が計測可能な定量的な数値化が必要です。たとえば、「毎週〇件の訪問をする」「毎日〇件のアポイントを取る」とすれば達成度を計測することができます。

 

Agreed upon=達成が可能である

志が高いのはよいのですが、到底実現できないような目標を立ててもモチベーションは維持できません。そこで重要なのは「少し頑張れば達成できる」と思えるような目標設定をすることです。

たとえば、それまであまり英語に接することの無い人が「半年で英語をマスターする」というのは可能でしょうか?突然高すぎる目標を掲げても、結局は実行できずに目標はうやむやになってしまいます。そこで、「現在のTOEIC〇点から〇点を目指す」として達成可能と思われる中でも高めの点数を設定しておけば、学習意欲も継続し、より達成しやすくなります。

 

Realistic=現実的である

たとえば、それまであまり運動をしたことが無い人がいきなり「毎日10キロ走って体力をつける」という目標を立てても非現実的です。

そこで、どうすれば達成できるか、実現方法を考えながら設定するようにします。たとえば、「1日10分の筋トレと1キロのウォーキングから始め、1ヵ月ごとにウォーキングを1キロずつ増やし、最終的に1日4キロウォーキングすることで体力をつける」とすれば、より達成可能になります。

 

Timely=期限が明確になっている

どんなに目標のゴールが明確になったとしてもいつまでに達成するのかが未定であれば、計画が立てられませんし、ずるずると後回しになってしまい結局いつまでも手が付けられないかもしれません。

また、期限の長さによって目標を達成するための手段やプロセスは変わります。もしも「ベンチマーク計測をする」という目標であれば、期限が短ければ計測とまとめをするだけかもしれませんが、期限が長ければナレッジシェアのための手順書を作成する、メンバーを集めて説明会を開催する、といったことも目標設定されるかもしれません。

このように、期限を設定することで手順や成果が具体的に決まり、コミットメントしやすくなります。

 

【職種別】目標設定例文を紹介

 

目標設定のやり方や注意すべき点は分かったとはいえ、目標設定の時期になると悩む方も多いでしょう。そこで、職種別に目標設定の例文サンプルを紹介します。

 

営業職

営業職の場合にはとかく売上や件数などの数値目標だけに着目しがちですが、どのように実現するのか手段が明確になっているかを注意します。

  • 来月までに1週間の訪問件数を3件から5件に増やし、新規顧客獲得率を10%アップする
  • 来週から新規顧客訪問後の提案見積作成期間を3日から1日に短縮して必ず訪問する。その際に、「前向きに検討してもらえるか」を確認するようにし、成約率を現在の3%から5%にアップさせる
  • 来月から部署内で1ヵ月に1回競合他社サービスの勉強会を開催し、自社サービスの優位性やデメリットについて学習。顧客にとってのメリット・デメリットを正確に伝えることで信頼を勝ち取り、契約期間を現在の平均12ヵ月から15カ月へとアップさせ、新規顧客獲得コストを10%削減する。

 

事務職

事務職は、日々の業務を効率化し、ミスのないことが求められます。そのため、効率化のための改善取組みや、業務に役立つ資格取得など、目標設定とするとよいでしょう。

  • ソフトウェアの変更のため作業手順が変わり、口頭でやり方を確認する機会が増えてしまい、1日あたりの伝票処理数が減ってしまった。そのため、今月中に作業マニュアルの改定と説明会を実施し、今四半期中には処理数を昨年度までの水準に回復させる。
  • 来年度から備品棚卸を半期に1回から四半期に1回に増やし、紛失や重複購入を減らす。備品購入費を20%削減する。

 

管理部門職

管理部門の業務は、売上や件数などの数値に表しにくいと思うかもしれませんが、効率化や削減目標など、日々の業務の課題を目標にするとよいでしょう。

  • 社内の備品はなるべくまとめて発注するようにし、購入費用を年間10%削減する。そのため、来月から部署ごとの発注をやめ、月間に必要な予測数を取りまとめてもらうようにし、まとめて発注するように運用を変更する。
  • 現在外注化している作業をソフトウェアに置き換えることで、作業期間を短縮し、効率を50%アップさせる。

 

企画職

経営企画や営業企画、商品企画など、担当領域におけるマーケティング、情報収集、分析、戦略立案、企画などを行う企画職。携わったプロジェクトの件数や取り組みに対して改善可能な点を目標にするとよいでしょう。

  • Webサイトの訪問ユーザーを分析すると、男性ユーザーが65%と女性より多いことが判明した。潜在ニーズは男性の方が多い割に購買データは男女半々であることから、男性客の購買をまだ伸ばせると見込める。そこで、男性向けメディアの露出割合を増やし、次年度の売上規模を5%伸ばす。

 

サービス職

外食や販売など、サービス職では販売数や来店数など、定量化しやすい目標が立てやすいでしょう。

  • 既存ユーザーの再来店数をアップするため、顧客カードの宛先へのDM発送時にクーポンを発行する。これによって、〇月~〇月期の再来店者数を月間300名にする。
  • これまでは単品でのメニューを提供してきたが、売上を分析すると人気の高いAとBのメニューについてはセットで注文する客が多い。そのため、〇月からはA&Bのセットメニューをお得な価格で提供することとし、トータルでの注文数を現在のA+Bの合計〇皿から〇皿を目指す。

 

技術職

開発や製造にかかわる技術職の場合、会社の事業計画や顧客からの注文などによってプロジェクトやスケジュールが左右されるため、生産性や技術、品質、ノウハウといったことに着目して目標設定するとよいでしょう。

  • 社内におけるナレッジシェアと定着化を推進。〇月までに委員会を発足し、手法の検討を行う。〇月までにツールや運用方法、ルールなどを策定。〇月の経営会議にて報告の上承認をもらう。
  • 特許出願件数を年間〇件→〇件に増やす。特許出願できそうな案件であっても、出願のための工数確保を想定しておらず、現状個人のやる気に依存している。次の四半期より、部門における工数管理項目に特許出願を設け、担当を明確にすることにより、出願件数を増やす。

 

IT系技術職

SEやプログラマ、ネットワークエンジニアなど、IT系技術職の場合にも開発職のように外的要因(組織の方針や案件の受注可否など)によって、携わるプロジェクトの種類や期間などが変わる。やはり、品質やナレッジ、業務効率化といったキーワードで考えてみましょう。

  • 〇月から、バグ発生率を10%→5%に低減させる。これまでのバグ原因を振り返ると、仕様の勘違い、理解不足の点があった。コーディングの前に仕様を改めてメモとしてまとめてリーダーにチェックしてもらうことで、仕様理解度の精度を向上します。
  • 来年度からの開発コスト20%削減:(1)外注先の見直しおよび単価交渉(2)外注化作業の見直し(社内での実施可否を再検討)(3)ツール化によって外注化作業を減らす、以上の3つの方法を今年度中に検討し、実行計画を策定する。

 

医療、保育職

医療、保育職の場合も、組織に求められている習熟度や役割などを理解し、そこから自分や組織の課題・改善点を見つけて目標にするとよいでしょう。

  • マニュアルをしっかりと読み、〇月までに内科の看護業務については質問しなくても一人でほぼ全て行えるようにする。
  • 〇年度の新人研修を担当し、保育園の理念や方針を正しく伝えることで、チームのメンバーとして独り立ちできるようにする。研修終了後、1ヵ月以内に現場のリーダーから新人保育士の業務の様子をヒアリング。研修で不足していた点や良かった点を洗い出してまとめ、次年度の研修担当者用マニュアルに追記する。

 

公務員職

公務員と言っても、その業務領域は広範囲で何を担当するかによって変わります。定常業務以外にも、国や行政単位での施策に関わる業務にも柔軟に対応しなければなりません。組織の方針や自分の職位に求められる役割を意識しながら目標設定しましょう。

  • 〇年〇月から施行される法改正によって発生する業務の変更点を洗い出し、対策を検討する。〇月中に報告書をまとめ、提出する。
  • 政策会議の開催回数を現在の12回から24回(仮)に倍増し、政策決定スピードアップを促進。政策スピードがアップすることにより、タイムリーに変更点を業務へ対応させ、現場が落ち着いて準備をすることができるようにする。

 

人事考課のポイントをおさえよう

 

人事考課の目標設定は、組織の理念や方針を理解した上で、実現可能な範囲の目標を設定することが重要です。後で振り返り、自己の成長につなげることができるよう、なるべく定量的で具体的な内容を設定します。適切な目標設定をするためには、SMARTの原則や目標設定例文を活用してみましょう。ぜひ目標設定にこだわり、自己実現ができるよう意識してみてはいかがでしょうか。

参照
BIZHINT「人事考課」
https://bizhint.jp/keyword/14164
d’s JOURNAL「人事考課をうまく運用するために、押さえたい目標設定と評価のポイント」
https://www.dodadsj.com/content/181225_performance-rating/
Beyond『「MARTの法則(スマートの法則)とは?効果的な目標設定のための5つのポイント」
https://boxil.jp/beyond/a5166/

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