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『コロナ禍でのボーナス不支給は違法?』労働基準法など法律上の注意点と影響を再確認しよう

新型コロナウイルスの影響により、企業は軒並み減収・減益となっています。

内閣府の発表によると、緊急事態宣言の影響下にあった2020年4~6月期における日本の実質GDPは、1~3月期に比べて年率換算で27.8%もの減少となり、戦後最大の下げ幅を記録しました。

参考:「GDP実質27.8%減、4~6月年率 戦後最大の下げ」(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62699240X10C20A8MM0000/

こうしたコロナ不景気の状況では、企業が従業員に対してボーナスを支給するだけの体力が残っていないケースもあるでしょう。
では、コロナ不景気を理由として従業員に対してボーナスを支給しないことには、何か法律上の問題はあるのでしょうか。

仮に法律上問題ないとしても、従業員のモチベーション管理などの観点から、本当にボーナスを支給しなくても良いのかについては、慎重に検討する必要があります。

この記事では、法的な観点を踏まえたうえで、ボーナスが持つ性格・意味合いにも立ち返りながら、ボーナスを不支給とする際の注意点について論じています。

 

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コロナ禍で日本の実収賃金はマイナス傾向

コロナ禍で日本の実収賃金はマイナス傾向

日本における新型コロナウイルスの感染拡大は、諸外国と比べると比較的抑えられているという評価が一般的です。
しかし、こと経済的な側面に注目すると、日本における新型コロナウイルスの影響は、各国と比べてもむしろ深刻といわざるを得ません。

(出典:「新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 国際比較統計:実収賃金」
(独立行政法人労働政策研究・研修機構))
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/f/f52.html

上記は、日本・アメリカ・ドイツ・イギリスの4か国について、2018年7月から2020年7月までの前年同月比実収賃金を示したグラフです。

これを見ると、緊急事態宣言が発令された2020年4月以降、日本は4か月連続で実収賃金が前年同月比マイナスとなっています。
アメリカの実収賃金がコロナによる影響からV字回復の兆しを見せる中、日本の実収賃金は、これから持ち直すことができるのかどうか、依然として先行き不透明な段階といえます。

このような状況では、会社にとってボーナスのカットが現実的な選択肢となることもやむを得ないでしょう。

 

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ボーナスを不支給とすることに法律上の問題はない?

ボーナスを不支給とすることに法律上の問題はない?

そもそもボーナスを会社の裁量により減額したり、不支給としたりすることについて、法律上の問題はないのでしょうか。

会社が従業員に対してボーナスを支給することの根拠に立ち返って考えてみましょう。

 

労働契約・就業規則等の内容次第|会社に広い裁量があるケースが多い

会社の従業員に対するボーナスの支給は、会社と従業員の間の労働契約におけるボーナス支払いの規定を根拠としています。

一般的には、ボーナスの支払いについては、労働契約の内容の一部を構成することになる就業規則・賃金規程・賞与規程などの社内規程で定められています。

したがって、会社がボーナスを「誰に」「どのくらいの金額」支払わなければならないかは、これらの就業規則をはじめとする社内規程の内容によって決まります。

なお多くの会社では、就業規則などの社内規程に定められるボーナス金額の決定方法については、会社の裁量が広く認められるような内容になっているでしょう。

これは後に解説するように、ボーナスがきわめて複合的な要素を含む賃金であって、その金額もケースバイケースで決定されるべきものと一般に考えられているためです。

ボーナス金額の決定について、会社の裁量が広く認められているケースでは、業績不振などを理由としてボーナスを減額または不支給としても、多くの場合は適法と判断されることになります。

 

就業規則は簡単には変えられない

就業規則などに定められたボーナスに関する規定について、会社の裁量をより広く認める形に変更しようと考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、就業規則を変更する際には、労働者の過半数を代表する者の意見を聴いたうえで、その意見を記した書面を添付して労働基準監督署長に届け出る必要があります(労働基準法90条1項、2項)。

また、ボーナス支給に関して会社の裁量権を広げる就業規則の変更は、労働者にとっては不利益変更に該当します。
就業規則を労働者の不利益に変更することは、以下の各要素を総合考慮し、その変更が合理的なものと認められなければ行うことができません(労働契約法9条、10条)。

・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
など

就業規則の不利益変更には、厳密にいえば、労働者側の同意は必要ありません。
しかし、上記に「労働組合等との交渉の状況」とあることからもわかるように、きちんと労働者側に対して説明を尽くして納得を得るプロセスを経なければ、変更内容が合理的なものと認められずに無効となってしまう可能性があります。

このように、就業規則におけるボーナスの規定を会社にとって有利に変更しようとしても、超えるべきハードルは高いということを理解しておく必要があるでしょう。

なお、「賃金規程」や「賞与規程」などの名称でボーナス支給のルールが定められている場合でも、これらは法的には「就業規則」の一部と解されますので、上記の手続きや要件をみたす必要があることに変わりはありません。

 

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ボーナスの安易なカットは求心力の低下に繋がる

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ボーナスを減額・不支給とすることが法的には問題ないとしても、実際にボーナスをカットするかどうかについては、善後策も含めて慎重な検討を要します。

安易にボーナスをカットすると、マネジメントの従業員に対する求心力が失われてしまう結果になりかねないので、うまく従業員の納得を得るような工夫が必要でしょう。

 

ボーナスが持つ多様な意味合いとは

マネジメントの立場にいる方は、ボーナスは「営業利益の調整」といった要素が色濃く反映されるものと認識しているかもしれません。

しかし、ボーナスは本来、以下に挙げるような要素が複合的に絡み合っており、それぞれの角度から従業員のインセンティブを刺激する性質があることに注意が必要です。

①賃金の後払い
ボーナスは、計算期間中の労働に対する対価の後払いという性質を持っています。
この観点からは、労働者にとってボーナスは「労働の対価として当然もらえるもの」であって、もらえるはずのものがカットされてしまった場合の失望感は大きいでしょう。

②功労報償
ボーナスは、会社にとって特に貢献のあった社員に対して報いるという性質も有しています。
会社のために身を粉にして働いている社員については、会社の側としても、ボーナスの金額で最大限の配慮を見せる必要があるでしょう。

③生活補填
労働者の視点では、普段の給料だけでは補いきれない生活費などの出費を、ボーナスで補うという側面もあります。
従業員によっては、ボーナスの支給を前提として住宅ローンを組んでいるケースなどもあり、こうした従業員にとってボーナス不支給の影響は甚大です。

④勤労奨励
「これからも会社に貢献してほしい」という意味合いを込めて支給されるものという観点も重要です。
従業員から「ボーナスを出し渋る会社」と認識されてしまうと、従業員の側が会社を見限って離職してしまうリスクが高まります。

⑤収益分配
もちろん、ボーナスには会社の収益を従業員に分配するという側面もあるため、「業績が悪いからボーナスをカットする」ということは一概に不合理ではありません。

しかし、上記で解説したような多様な観点を踏まえて、ボーナスが不支給となった場合に従業員がどう感じるのか、どれだけ困るのかということについて、マネジメントは思いを致す必要があるでしょう。

 

ボーナスをカットする場合は、将来のボーナスアップにコミットすべき

経営不振などの理由で、どうしてもボーナスをカットせざるを得ない場合はあるかと思います。

その場合には、「後で業績が上向いた際には、ボーナスを増額して支給する」というメッセージとセットにして、ボーナスカットを断行することをおすすめいたします。

このようなメッセージを効果的に伝えることができれば、従業員の側も会社の危機を正しく認識して納得感を得られる可能性がありますし、業績向上に向けた社内一丸の取り組みを促すことにも繋がるでしょう。

会社の都合を従業員に一方的に押し付けるのではなく、マネジメントが従業員と対話する姿勢を見せることが、会社のピンチにおいて特に重要なポイントではないでしょうか。

 

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