労働組合とは、労働者が団結して結成する団体です。
略して労組と呼ばれることもあり、その言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。
しかし、実際にどういった活動をしているのかや、その目的などに関しては詳細に知らないという声もよく聞かれます。
本記事では労働組合について、
- 概要や必要性
- 実現されること
- 種類と役割
- 企業・従業員のメリット
- 注意点
などを解説していきます。
目次
労働組合とは
労働組合とは、「労働者が中心となり、自主的に労働条件の維持や改善、経済的地位の向上を図るために組織される団体」です。
つまり、労働者が団結して給与や労働時間などの労働条件を改善するために結成される団体ということです。
また、労働組合に加入しているメンバーは「組合員」と呼ばれます。
(参考:労働組合丨厚生労働省)
実現できること
労働組合の活動によって実現できることは、下記のようなものが挙げられます。
- 組合員の不満や要望などの、企業側へのスムーズな伝達
- 不当解雇やリストラを抑制し、安定的な雇用の実現
- 話し合いによる労働条件の決定や維持、改善
- 経営情報へのアクセス
- 働きやすい職場環境の整備
- 労使関係や組合運営に関する助言を受けられるようにする
- 同業他社の状況などの情報交換
- 労使トラブルが起きた場合の後ろ盾となる
- 各種共済制度の利用
重要性
労働組合の重要性は、労働環境の改善を望む労働者を支援することや、労働者に仕事の充実感ややりがいをもたらすことにあります。
労働者一人ひとりの力は弱くとも、労働組合があれば、企業側と対等の立場で交渉できるようになるのです。
労働組合法と労働三権
日本国憲法第28条では、下記の「労働三権」を保障しています。
- 団結権:労働者が労働組合を結成する権利
- 団体交渉権:労働者が企業(使用者)と団体交渉する権利
- 団体行動権:労働者が要求実現のために団体で行動する権利
これらをさらに具体的に定めている一般法が、「労働組合法」です。
労働組合法では「不当労働行為」が禁止されているため、企業は労働組合または組合員に不利益となる扱いをすることはできません。
しかし、公務員などの場合は特別法が存在するため、一部の権利が制限されるケースもあります。
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労働組合の種類と役割とは
労働組合には大きく分けて下記の4種類があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
企業別組合
企業別組合とは、企業を組織単位として、企業に勤める従業員が団結して結成した労働組合で、「企業内組合」とも呼ばれています。
終身雇用制度など長期雇用の慣習が根付く日本では、何十年もともに仕事をする従業員同士で労働組合をつくり、企業側との交渉をしてきました。
産業別組合
産業別組合とは、1つの産業を単位として組織化される労働組合です。
同じ産業で結成することで、
- 労働者の立場が有利になる
- 労働条件の向上と均一化に貢献する
といったメリットがあります。
合同労組・ユニオン
合同組合・ユニオンとは、職種や産業で括らずに、地位ごとに結成される労働組合です。
昨今、日本においてはこの合同組合・ユニオンの組織化事例が増えつつあり、企業別組合が存在しない中小企業の労働者や、加入できない被正規雇用労働者を助ける役目を果たしています。
ナショナルセンター
ナショナルセンターとは、労働組合の全国中央組織です。
労働組合が加盟する連合組織で、加盟している組合をまとめることや、共同行動を起こすことが主な役割です。
労働組合結成によって企業側が得られるメリットとは
労働組合の結成によって企業側が得られるメリットには、下記のようなものがあります。
労使トラブルの回避
1つ目のメリットは、労使トラブルを事前に回避できることです。
企業は、労働組合を通して従業員が抱える不満や要望、意見を集めることができます。
これにより、従業員の考えを反映させた経営が可能となるため、労使トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
法令遵守の強化
2つ目のメリットは、法令遵守の強化につながることです。
労働組合の存在によって、組合員が抱える問題意識や従業員からみた企業の問題点をヒアリングすることができます。
こうして多角的に物事を見ることにより、企業が抱える問題や問題に発展しそうなことを迅速に捉え、問題が深刻化する前に対策を打つことができます。
これにより、法令遵守の強化に貢献するでしょう。
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生産性向上
3つ目のメリットは、生産性向上につながることです。
労働組合と企業が力を合わせて職場環境の整備を行うことで、従業員がより働きやすくなるでしょう。
これにより作業効率も上がり、従業員のモチベーションも引き出すことができるため、生産性の向上が期待できます。
離職率の低下
4つ目のメリットは、離職率の低下です。
労働組合を通して労働環境を整え、労働条件の改善を図ることで、労使間のコミュニケーションが活発化します。
これにより、従業員は自分たちの要望や意見が届いていることを実感できれば、離職率の低下や安定的な労働力の確保が期待できます。
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労働組合結成による従業員側のメリットとは
一方で、従業員側のメリットとしては下記のようなものが挙げられます。
- 企業側に意見や不満を伝えやすくなる
- 企業側が不利益な扱いをしにくくなる
- 相談窓口として機能する
労働組合を通すことで、企業に自分たちの不満や要望を伝えやすくなると同時に、企業が聞き入れる可能性も上がるでしょう。
また、企業が労働者に利益な扱いをすることを抑制したり、実際に不利益な扱いをしてきた際の後ろ盾としても機能します。