セクハラ・パワハラの定義や事例とは?厚生労働省の告示を元に企業は適切な対処を

投稿日:2021/01/26

コンプライアンス強化の流れを受けて、職場におけるハラスメント対策の重要性は年々増しています。

会社が従業員にとって魅力的な職場であり続けるためにも、マネジメントが主導してハラスメント対策を実施し、職場環境を良好に保っておくことは重要です。

この記事では、法律上のセクハラ・パワハラの定義を踏まえたうえで、事業主が講ずべきハラスメント対策の内容について、弁護士の視点から解説します。

 

セクハラに関する法律上のルール|男女雇用機会均等法11条

 

男女雇用機会均等法※11条では、セクハラの定義や、セクハラについて事業主が講ずべき対策についてのルールが定められています。
※正式名称:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

 

いわゆる「セクハラ」の定義

「セクハラ」は法律上の用語ではありませんが、男女雇用機会均等法11条1項で定義される以下の要件をいずれも満たす行為が、いわゆるセクハラに該当すると解されています。

①職場において労働者に対して行われる性的な言動
②性的な言動への対応によって、労働条件について不利益を受け、または就業環境が害されること

セクハラが行われる場は会社のオフィス内に限らず、出張先なども上記の「職場」に含まれます。
また、異性に対する性的な言動のみならず、同性に向けられた性的な言動についても、当然にセクハラの対象になり得る点に注意が必要です。

なお、上記②の要件の該当性は、ある程度の客観性を確保するため、「被害を受けた労働者本人がどう感じたか」だけでなく、「平均的な労働者がどう感じるか」の観点も考慮して判断されます。

 

セクハラに当たる行為の2パターン

上記のセクハラに関する法律上の定義を整理すると、セクハラには大きく分けて「対価型」と「環境型」の2パターンがあります。

参考:「職場におけるセクシュアルハラスメント対策に取り組みましょう!!」(厚生労働省)

 

<対価型セクシュアルハラスメント>

労働者がセクハラに対して拒否・抵抗などをしたことにより、解雇・降格・減給などの不利益を受けることをいいます。

(例)
・上司から性的な関係を要求され、それを拒否したことを理由に会社から解雇された。
・上司からのボディータッチに抵抗したところ、そのことを理由として不利益な配置転換を受けた。

 

<環境型セクシュアルハラスメント>

セクハラによって労働者の就業環境が不快なものとなったため、労働者の能力が十分に発揮できないなど、就業上見過ごすことのできない程度の支障が生じることをいいます。

(例)
・上司からのセクハラ行為によって精神的なダメージを受け、就業意欲が低下してしまった。
・自分に関する性的な情報を社内で言いふらされたため、仕事が手につかなくなってしまった。

 

パワハラに関する法律上のルール|労働施策総合推進法30条の2

 

一方パワハラについては、労働施策総合推進法※30条の2において、セクハラとパラレルな形で、定義や事業主の講ずべき措置に関するルールが定められています。

※正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

 

いわゆる「パワハラ」の定義

「パワハラ」もやはり法律上の用語ではありませんが、労働施策総合推進法30条の2第1項によれば、以下の要件をすべて満たす行為がいわゆるパワハラに当たるとされています。

①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
上記の「職場」が、会社のオフィスに限らず出張先なども含むことは、セクハラの定義と同様です。

「優越的な関係」としては、典型的には上司・部下の関係が想定されますが、それに限らず、以下のパターンについても優越的な関係に該当することが指摘されています。

・労働者の集団vs個人
・専門性のある労働者vsそうでない労働者

 

パワハラに当たる行為の6パターン

パワハラに当たる行為の類型として、厚生労働大臣の指針では、以下の6つが挙げられています。

参考:
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省告示)

 

<身体的な攻撃>

労働者に対して、物理的な暴行を加えることをいいます。

(例)
・殴る
・蹴る

 

<精神的な攻撃>

労働者に対して、精神的な嫌がらせをすることをいいます。

(例)
・名誉毀損
・侮辱
・脅迫

 

<人間関係からの切り離し>

労働者を職場内で疎外することをいいます。

(例)
・無視
・仲間外れ
・隔離

 

<過大な要求>

労働者に無理難題を要求したり、不必要な業務を強制したりすることをいいます。

(例)
・新入社員に一人で難しい作業をさせる
・若い社員に上司のお茶くみをさせる

 

<過小な要求>

労働者の能力に応じた仕事を与えず、活躍の機会を奪うことをいいます。

(例)
・20年以上のキャリアがある従業員にコピー取りだけをさせる
・「追い出し部屋」に配置転換して仕事を全く与えない

 

<個の侵害>

労働者のプライバシーを侵害することをいいます。

(例)
・職場外でストーカー行為をする
・プライベートなことを過度に詮索する

 

事業主が講ずべきセクハラ・パワハラ対策の内容とは?

職場において事業主が講ずべきセクハラ対策の内容を考える際には、厚生労働大臣が定めている指針の内容が参考になります。

参考:「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省告示)
参考:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省告示)

両指針はいずれも共通して、事業主が各ハラスメント防止に関して、以下の措置を講ずることが求められます。

①ハラスメント防止方針の明確化・周知・啓発
セクハラ・パワハラの定義や具体例を明示したうえで、行為者に対する処分のルールを整備し、セクハラ・パワハラを排除する方針を社内に宣言することが必要です。

②労働者からの相談に対応するための体制整備
社内全体に向けてのハラスメント対策として、以下の対応などが求められます。

・相談窓口の設置
・人事部門との連携
・担当者用マニュアルの整備

③実際に起こったハラスメントへの迅速・適切な対応
実際に職場でセクハラ・パワハラが発生した際には、以下の対応を迅速・適切にとることが求められます。

・事実関係の把握
・被害者の加害者からの引き離し
・加害者への処分
・再発防止対策

④その他
上記以外にも、ハラスメント当事者のプライバシー保護や、通報・相談によって労働者が不利益に取り扱われることはないことを周知することが求められます。

 

セクハラ・パワハラの相談をした従業員のケアを怠らずに

 

セクハラ・パワハラに関する相談や、ハラスメント防止のための協力をした従業員に対して、会社が解雇その他の不利益な取り扱いをすることは、法律上禁止されています(男女雇用機会均等法11条2項、労働施策総合推進法30条の2第2項)。
したがって、会社として労働者に対して不利益な取り扱いをしないことは当然の留意事項といえます。

さらに上記にとどまらず、マネジメントの立場としては、周囲の上司や同僚からの冷やかし・仲間外れなどが発生しないように、ハラスメント排除に関する徹底したメッセージを全社的に発信することが大切です。
また、ハラスメントの被害に遭った従業員が、再び安心して業務に取り組めるような環境作りもマネジメントの重要な役割といえるでしょう。

マネジメントの役割を全うするためには、現場担当者とのホットラインや相談窓口を充実させるなどして、常時現場の問題意識を吸い上げる仕組みが必要です。
ハラスメント問題に限らず、会社組織全体を有機的に機能させるためにも、今一度マネジメントと現場の連携・コミュニケーションを見直してみてはいかがでしょうか。

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