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【鬼滅の刃】「煉獄杏寿郎」とは?よもや管理職が杏寿郎を見習わないなんてありえないワケ

「斃(たお)れて後已(のちや)む 精神一到何事か成らざらん」

鬼滅の刃「無限列車編」を見た人なら誰でも知っている煉獄杏寿郎。

杏寿郎の座右の銘が中国宋時代の思想書『朱子語類』から引用されていることをご存知の鬼滅ファンはどれほどいらっしゃるでしょうか。

上記の言葉は「自分がどうしようもない状況になるまでは、集中してどんなことでも成し遂げる」という意味で、まさに杏寿郎の強い意志が感じられる言葉です。

1270年に黎靖徳が座談した際の内容を記録した『朱子語類』は、そのまま朱子学の元となり、その後日本の経営哲学の基礎となっています。

本記事では、経営学の古典とも呼ばれる『朱子語類』を座右の銘とする、煉獄杏寿郎から管理職としての心得を解き明かしたいと思います。

参考:日本の経営哲学の系譜 | 林 廣茂

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鬼滅の刃とは?

※本記事はネタバレを含みます。

2020年に引き続き、2021年にも「年間コミックランキング」でランキング1位に輝いた鬼滅の刃の勢いは止まることを知りません。

本作品の主人公「炭治郎」は田舎の一軒家に住む6人兄弟の長男。慎ましくも幸せな生活を送っていました。

物語は一家が鬼に襲撃されるところから幕を開けます。炭を売りに街へ出ていた炭治郎は「今日は鬼が出るから泊まっていきなさい」と知り合いに声をかけられ、その晩は自宅に帰りませんでした。

翌朝、自宅へ戻ってみると家族は鬼に殺されていて、かろうじて生き残っていた禰豆子の姿も鬼になっていました。そんな妹を人間に戻すための手がかりを探す為、炭治郎は鬼を殲滅するための組織「鬼殺隊」に入隊するのです。

鬼である妹の存在を隠しながら挑んだ任務の中で、炭治郎は相手を倒した後意識を失ってしまいます。気づいた時には周りにいるのは鬼殺隊の幹部である柱たち。その中のひとりが「煉獄杏寿郎」でした。

鬼滅の刃がヒットした理由

『鬼滅の刃 無限列車』が映画化されたのは2020年の10月16日。コロナ禍の私たちは外出をするのにはマスクが必要になり、「自粛警察」と呼ばれるコロナ禍での行動を取り締まる市民が出てくるまでの事態が発生していました。

「どことない閉塞感」が日本全体を取り巻いていたのがこの時期です。

鬼滅の刃が描くのは「悪」をものともせず、自身の正しいと思う正義を振りかざす「鬼殺隊」の物語。

鬼にも悲しい過去はあるものの、決して鬼を許すということはない物語は、スカッとするものであったことに間違いありません。

ジャンプの漫画の優等生ともいえる「敵」と「味方」の構図がわかりやすく見て取れる「鬼滅の刃」がヒットした理由は、そうしたところにあるのでしょう。

参考:映画『鬼滅の刃』大ヒットの“わからなさ”の理由を考察 21世紀のヒット条件は“フラットさ”にあり? | https://realsound.jp/movie/2020/10/post-642853.html

鬼滅の刃が日本社会に与えたもの

鬼滅の刃が日本社会に与えたものは「有限のものへの熱狂」でした。

『ONEPIECE』や『ドラゴンボール』などはステージをクリアするごとに主人公たちが強くなる方式の漫画です。

このため、いつまでも読者は漫画を楽しむことができますが、その一方で終わらないものへの飽きは強まり、「面白さ」が少しずつ減退していきます。

最初は熱中して読んでいたものの、気づけば物語に飽きてしまったといった経験は、皆さんにもあるでしょう。

しかし『鬼滅の刃』は「終焉」へと進む作品です。伏線を回収し、物語が短く完結するからこそ、読了後のカタルシス、その気持ちを周囲に伝えたいという思いは膨れ上がります。

ここにコロナ禍の「退屈からの解放」を求める人々の思いが重なり、コロナの終焉を想う気持ちと重なったのかもしれません。

鬼殺隊におけるパーフェクトな上司「煉獄杏寿郎」

鬼滅の刃では、「鬼殺隊」と呼ばれる鬼を殺すための隊が編成されています。その中で最も強い剣士を集めたリーダー格が「柱」と呼ばれる存在です。

「柱」に求められるのは、プレイヤーとしての能力と、マネジメント能力です。

柱の中でも、最も熱いビジョン、想いを抱える炎柱の「煉獄杏寿郎」に心打たれた方も多いのではないでしょうか。

煉獄杏寿郎が居なくなった世界にも、炭治郎たちの心に炎を灯し続けたパーフェクトな上司、煉獄杏寿郎をここからは詳しく深堀りしていきます。

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煉獄杏寿郎とは?【ネタバレあり】

誕生日 5月10日
年齢 20歳
身長 177cm
体重 72kg
出身地 東京府 荏原郡 駒沢村
声優 日野聡

煉獄杏寿郎は声優の日野聡さんが演じる鬼滅の刃の「炎柱」。

「よもやよもや」が口癖で、目が大きく正義感溢れるヒーローのような存在です。

普段は少しポケーっとしているように見える煉獄杏寿郎ですが、戦闘になると一転、決して揺らぐことのない姿はまさに、鬼滅の刃の映画無限列車編の主題歌「炎(Lisaさん)」の歌詞を彷彿とさせます。

そんな燃えたぎる炎を心の中に秘めている杏寿郎ですが、漫画で初めて炭治郎と対面するシーンでは妹「禰豆子」を庇う炭治郎に対し、「鬼を庇うなんて明らかな隊律違反!我らのみで対処可能!鬼もろとも斬首する」と割と冷徹なことをいう人物でもあります。

上記は「隊律」を重視する管理職としてのあるべき姿なのですが、初めて漫画を読んだ方の中には驚かれたことも多いことでしょう。

結局、鬼殺隊の主人「産屋敷耀哉」の最終決定で、禰豆子も炭治郎もその存在を許されることになるのですが、上司に対して「納得できない!」という意見を表明。

間違っていると思えば、上に意見をする杏寿郎からは「正義感」と「強い意志」を感じることができます。

鬼殺隊における煉獄杏寿郎の役割

鬼殺隊の柱の中には煉獄杏寿郎の他に優秀な柱がいます。最強とも謳われる岩柱の「悲鳴嶼行冥」、恋柱の「甘露寺蜜璃」なども柱のひとりです。

例えば、悲鳴嶼行冥はその圧倒的な強さから、隊の戦闘のリーダーの役割を、甘露寺蜜璃はそのほんわかとした雰囲気から、個性豊かなメンバーを繋ぎ止めるムードメーカーの役割を負っています。

その中で煉獄杏寿郎が演じた役割は「最高の上司」でした。

  • ビジョンを決して曲げることがない
  • 部下のモチベーションを信じることで上げる
  • どんな過酷な状況でも職務を全うする

他の隊員も熱い想いを持っていたのは確かですが、限界の状況でも皆を守り抜き散っていったその姿は、他の隊員にも大きな影響を与えたことでしょう。

まさに正義の姿を体現した煉獄杏寿郎は、隊の中でも一目置かれる立ち位置にいたことは間違いありません。

煉獄杏寿郎の強さの秘訣とは

煉獄杏寿郎は、敵の組織の中でもトップ3に君臨する十二鬼月「猗窩座」と対峙します。猗窩座と対峙した時は既に、杏寿郎は200人の人質を守り抜いていました。

連戦になったのにもかかわらず、猗窩座に「至高の領域」に近いと言わしめた煉獄杏寿郎の強さはどこにあるのでしょうか。

ここからは杏寿郎の強さの源泉を探ります。

煉獄杏寿郎の母「瑠火」からの言葉

煉獄杏寿郎の真っ直ぐに「人を守る」信念の源泉は、母「瑠火」からきています。煉獄杏寿郎が幼い頃に瑠火は病気により死別していますが、母からはこのように言われていました。

「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように。」

上記の言葉から、鬼から人を守ることを責務とした杏寿郎は、自身がどんな状況であっても周りの人を最優先して守ろうとします。

猗窩座との戦いの中で放った「俺は俺の責務を全うする」という言葉は、自身の士気を極限まで高めるものでした。

煉獄杏寿郎の父「槇寿郎」に見向きもされずに過ごした幼少期

「柱」に選出された人物は皆、家庭環境や生い立ちが複雑なことが多いですが、煉獄杏寿郎もそのひとりです。

煉獄杏寿郎の父「槇寿郎」は元炎柱。前線で活躍していた人物でした。

しかし、母「瑠火」が亡くなってからというもの、槇寿郎は杏寿郎の修行の相手をしてくれなくなります。

大切な人を亡くし、心にポッカリと穴が空いてしまった「槇寿郎」を横目に、杏寿郎はただひとりで修行を続けます。

「煉獄家に伝わる三冊の指南書」を読み、弛まぬ努力を続けたのです。

全ては母から与えられた責務を果たすままに。

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煉獄杏寿郎の呼吸「炎の呼吸」

指南書を会得した杏寿郎は無事「炎の呼吸」を会得します。

  • 炎の呼吸 壱ノ型 不知火(いちのかた しらぬい)
  • 炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天(にのかた のぼりえんてん)
  • 炎の呼吸 参ノ型・気炎万象(きえんばんしょう)
  • 炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり(しのかた せいえんのうねり)
  • 炎の呼吸 伍ノ型 炎虎(ごのかた えんこ)
  • 炎の呼吸 玖ノ型 煉獄(くのかた れんごく)

具体的な技の名前は上記の通りです。

杏寿郎が、猗窩座との決着をつけるために使用したのが、玖ノ型 煉獄ですが、結果としては猗窩座の攻撃に敗れ、杏寿郎は鳩尾を貫かれてしまいました。

いえ、敗れたという表現は間違っているかもしれません。

杏寿郎の戦いの目的は相手に勝つことではなく、皆を守ること。

そう考えると、太陽の光による消滅を避けるために、自陣に逃げ帰った猗窩座に対して浴びせた炭治郎のセリフ「杏寿郎は負けてない!誰も死なせなかった」という言葉通り、杏寿郎はその強い志で戦いに勝利したと表現できるかもしれません。

なお、『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』によると、杏寿郎に切られた鬼は地獄で「杏寿郎はかっこいい」「切られたときはすっきりした」などと供述しています。

杏寿郎の思いは鬼殺隊のメンバーのみだけではなく、鬼にもしっかりと伝わっていたことがよくわかります。

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【煉獄杏寿郎のマネジメント術】管理職が見習うべきポイント

管理職とは企業が掲げる目標の達成に向け、部下を指揮、指示をする職位のことです。

そして鬼殺隊の中でリーダーを担った杏寿郎の姿は、まさに管理職のポジションそのものです。

杏寿郎は「よい上司、管理職」と表現されることが多いですが、具体的に評価されている管理職が見習うべき点を以下にまとめました。

【煉獄杏寿郎のマネジメント術①】部下に真に必要なものを与える

杏寿郎を突き動かしていたものに母から引き継がれた思いがありますが、決してそのことだけを考え杏寿郎は生きていたわけではありません。

杏寿郎は過去に鬼殺隊の恋柱「甘露寺蜜璃」を継子にし、部下を育成した過去がありますが、その修行は過酷なものだったと公式ファンブックに記載されています。

その後杏寿郎の継子がいなかったのも、稽古がきつすぎて逃げ出した継子が多かったとされています。

杏寿郎は「弱いものは死んでしまう」ことをしっかりと理解していたのでしょう。

だからこそ「強くなること」こそが部下に必要だと考え、妥協をしなかったのです。

部下に気に入られるために褒めるのではなく、最も必要とされる「スキル」を惜しみなく教えていたことが伺えます。

【煉獄杏寿郎のマネジメント術②】ビジョンをぶらさない

杏寿郎のビジョンは、「斃(たお)れて後已(のちや)む 精神一到何事か成らざらん」。

自分がどうしようもなくなるまでどんなことも成し遂げるという意味で、具体的には「弱き者を守ること」を指しています。

そしてその言葉通り、鳩尾を敵の拳で貫かれようとも、仲間を守るために戦い続けます。

人間は窮地に陥った際に本性が出ると言われますが、杏寿郎の本性、ビジョンは最後まで守り続けられたことがよくわかるエピソードです。

【煉獄杏寿郎のマネジメント術③】上司に対してもの申す

杏寿郎は管理職ですから、さらに上司がいます。

その上司が間違った判断をした時に、自身の言葉で伝えることができる組織文化は、VUCAの時代においても有用とされます。

そもそも鬼殺隊自体が自由な組織文化があったのには違いありませんが、杏寿郎は鬼である禰豆子を殺さずにおくというリーダーの判断に対し、以下のように発言しています。

「心より尊敬するお館様であるが理解できないお考えだ!!全力で反対する!!」

現場において自身の主張を明瞭にできる部下は多くはありません。

もちろん、部下と上司が見ている世界は違うため、意見を言わずに指示に明確に従うことも大切です。

ただし、リーダーの下した判断が間違っていると感じた際には、そのことを発言できる。

そうした姿勢を部下に求めているのであれば、杏寿郎は会社にとっても「できる社員」であったはずです。

煉獄杏寿郎の名言・セリフから学ぶ「マネジメント」の極意:俺は信じる、君たちを信じる

私たちは日々の仕事や勉学の中で結果に追われています。そのため、子供の頃夢に見ていた「理想の姿」とはご自身がかけ離れた姿であることに失望してしまうこともあるでしょう。

そんな時に読み返して欲しいセリフが、杏寿郎の以下のセリフです。

「俺は信じる、君たちを信じる」

これは杏寿郎の最期の言葉です。

鳩尾を貫かれた杏寿郎は最後に部下である「炭治郎」「善逸」「伊之助」「禰豆子」に対し上記の言葉を投げかけます。

信じるとは時に無責任な行為です。

さらに、この後杏寿郎は「終わり」を迎えるわけですから、その後の彼らの活躍を見守ることはできません。

それでもこの言葉を投げかけたのは、杏寿郎自身が自分を信じていたからという自信に他なりません。

自分が信じた「彼ら」を信じることで、その炎は彼らに灯され、その後杏寿郎の言葉は、炭治郎たちを強く支えることになります。

マネジメント層も同様です。

時には部下を信じて、任せることが大切です。

しかし、人間は不思議なもので、信じていない人に「信じる」と言われたところで、やる気が湧かないことは多々あります。

この「信じる」行為に最大限のレバレッジを効かせるのは、上司がどうあったのかという有り様そのものでしょう。

上司であるからには、部下から信頼を杏寿郎のように集められる人材になりたいものです。

煉獄杏寿郎から学ぶ理想の管理職の姿とは?

ここまで杏寿郎が管理職として優秀な理由を解説してきましたが、最後に杏寿郎から学ぶことができるマネジメントのエッセンスを一般化しておきましょう。

組織において管理職という職位に就いている方にも、きっと役立つものがあるはずです。

上司は部下よりも偉いわけではない

まず「上司は部下よりも偉いわけではない」ということを管理職の方は認識しておくことが大切です。

管理職は一つの職務であり、会社の目的を達成するために組織を合理的に動かす手段でしかありません。

ただし、中には上司という立場を「人間として優秀である」と勘違いしてしまう方もいるようです。

管理職という職位を「虎の威を借る狐」の如く利用するのではなく、あくまでも上司としての機能を果たすためのものだと認識しておく。

これだけで、部下からの信頼は上がり、説得力のある上司になれそうです。

ただし「管理職はひとつの職務である」などと部下に発言してしまうと、実はウケが悪いという調査結果も出ているため、あくまでもご自身で認識しておく程度に留めておくのがよいでしょう。

参考:「管理職は一つの職務であり、偉いわけではない」と管理職が自分で言ってしまうと、なぜか受けが悪い理由 | YahooNews

ビジョンを語ることができる

「上司と会話をした時に仕事の業務の話しか出てこない…」こんな上司は部下から信頼されづらいかもしれません。

現在は終身雇用が崩壊した世界。だから自分のスキルを上げなければならないということは、既に多くのビジネスパーソンが認知しています。

今や「働きがい」や「スキルアップ」も仕事を選ぶ際に重視されているため、この上司のもとで仕事をしても何も得られないと思われてしまえば、部下の上司離れが進むと言ったリスクも考えられます。

このため、時には仕事の手を止め「上司のビジョン」を伝える。部下のビジョンを聞き、そのためのキャリアプランを考えるなどの関係を築くことも重要です。

指示が明確

部下が上司に対して求めることは「指示を明確にして欲しい」だということが、識学の調査で明らかになりました。

指示が不明瞭だったり、感覚的な指示が社員を成長させるとの考え方は確かにありますが、一方で部下が「やりづらさ」を感じていることは明白です。

指示の不明確さは、組織を崩壊させることがあります。仮に部下が曖昧な指示で成果物を出せたとしても、それは例外。誰しもができるわけではありません。

「無限列車編」で炭治郎たちに明確な指示を出し、自分が窮地に追いやられたとしても「待機命令」を継続した杏寿郎からは、管理職も学ぶことは多いでしょう。

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まとめ | 煉獄杏寿郎のマネジメントは今若手に刺さる

鬼滅の刃がこれほどまでに日本社会において支持されているということは、鬼滅の刃に出てくるキャラクターが今、日本において求められている背景があります。

少子高齢化が進む今、今後若手の採用なども難化することは容易に想定できます。

今後訪れる採用難に対応するためには、若手に刺さるマネジメントが必要不可欠です。

煉獄杏寿郎から学ぶマネジメントは、きっと上司である「あなた」も取り入れることができるに違いありません。

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