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人事評価のお悩みは『意欲』ではなく『成果しかみない』で解決できる【上司が意欲を評価しだすと、組織がおかしくなる】

人事評価のお悩みは『意欲』ではなく『成果しかみない』で解決できる【上司が意欲を評価しだすと、組織がおかしくなる】

昔、私が駆け出しのコンサルタントだったころ。

人事評価のコンサルティングの現場で、上司から聞かれた質問です。

「安達さん、情意考課って知ってる?」

それまでの人生で聞いたことのない言葉でした。

「じょうい……?聞いたことないですね。」

上司は言いました。

「人事評価の項目の一つで、意欲や姿勢を評価することだよ。コンサルタントの常識だから、知っておきなさい。」

上司の言う通り、多くの会社が「意欲」や「姿勢」を評価の対象として、人事制度に組み込んでいました。

私はそれを見聞きし、当初は「意欲も評価の対象になるなんて、素晴らしい制度だ」と
思ったのです。

しかし、長くコンサルタントをやり、様々な会社を見て回るにつれて、一見、妥当に見える「意欲の評価」が、かなりのデメリットを生み出していることも見えたのです。

むしろ、組織マネジメント上の、最も大きな害悪の一つが、「意欲」を評価の項目の一つに組み込んでしまうことだといっても、過言ではないでしょう。

それは一体なぜか。
本稿ではなぜ「意欲」を評価してはならないのかについて述べます。

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意欲があるのかどうかは本人以外にわからない

 

日本国語大辞典によれば、意欲とは

「そうしたいと思う

「積極的にやろうとする意思

「自ら進んで望むこと」

とあります。

意欲は、外形的なものではなく「心」や「意思」あるいは「願望」といった、人間の内面にかかわる事象であるといえます。

で、あれば「意欲」は本質的に、正確な評価が不可能です。

人の心はわからないからです。

たまに「人の心が読める」という人もいますが、それは真っ赤な嘘です。

もし嘘じゃない、という人がいれば、その人に向かって、「では、私が今何を考えているか、当ててください」と言えば、それが嘘であるとすぐにわかります。

つまり、要するに、外からわからない「意欲」を、外から「評価」するという定義からして、矛盾しているのです。

したがって、これが制度として機能しないことは自明です。

例えば、ある会社では、皆が嫌がる仕事を引き受け、こなしている女性がいました。

彼女は「積極性が高い」と評価されていたのですが、ある時「本心では、評価が下がることを恐れて、嫌々引き受けている」と、告白してくれました。

「できればその仕事はやりたくない」とも。

彼女には「意欲がある」と言えるのでしょうか。

それとも「意欲はないが、仕事はしている」というべきでしょうか。

もちろん、嫌々引き受けることを「意欲がある」とは言わないでしょう。

意欲だけであれば、「嫌な仕事は引き受けない」人とレベルは同じです。

したがってこの場合、評価は「仕事をしたこと」に与えるべきであって、

意欲に与えるべきではありません。

 

実態は「上司のご機嫌取り」を正当化するための項目

 

そんな矛盾をはらむ、意欲の評価。

なぜそんなものが、組織に存在しているのでしょう。

実は、シンプルな理由です。

ほとんどは上司のご機嫌取りを正当化するために使われているのが実態です。

つまり、経営者や上司の機嫌を損ねる社員は

積極性が低い、規律を乱す、だから成果にかかわらず評価を下げてやる、

というわけです。

それなら、合点がいきます。

実際、「日本の雇用終了」という、解雇にかかる係争の調停事例を扱った研究書籍を見ると、

日本企業では「能力不足」よりも「態度の悪さ」のほうが問題になりやすいという傾向がハッキリと指摘されています。

・労働条件変更といった中間形態をとることなく、直接「態度」を理由にした雇用終了に至っているケースが、168件(実質166件)と全雇用終了事案の中で実質的に最も多くなっている。(第一節)

・狭義の「能力」を理由とする雇用終了では、具体的な職務能力の欠如や勤務成績の不良性を理由とする事案はそれほど見られず、むしろ「態度」と区別し難いような「能力」概念が一般的に存在していることが大きな特徴である。(第二節)

ただし「上司の機嫌を損ねない」という項目は評価項目には入れづらい。

そこで、表現を「意欲を評価します」となるわけです。

 

「上司の機嫌を取ること」が社員の仕事になると、組織に何が起きるか

 

「上司の機嫌をとること」が、人事制度の中で正当化されれば、当然それは、社員にとって重要な仕事の一つになります。

時にそれは、「成果を追及する」よりもわかりやすく評価されるため、上司におもねることが最優先事項となってしまう社員も珍しくありません。

実際、一昔前は「人事は好き嫌いでやっていい」と公言してはばからない経営者がいましたが、そのような経営者の下では、まさに社員は「上司の顔色だけ」が気になります。

優秀な経営者であれば私情と成果を切り離して考えることができるでしょう。

しかし多くの会社ではマネジメント層であっても、必ずしも優秀な人間で占められているわけではありません。

ですから、そういった制度は、長期的には必ず、成果を出す人を遠ざけます。

組織を腐敗させ、堕落を招きます。

なぜなら、評価側にとっては、社員を明確な評価基準に沿って評価する必要がなく、「なんとなく」積極性がありそうだ、「なんとなく」協調性がありそうだ、と自らの主観で評価を決定することができるのは恐ろしく楽であり、そしてそれは「権力」を振り回す気持ちよさを伴うからです。

昔、私が出入りしていたある会社は、経営者が「社内営業をしろ」と強く言っていました。

単純に言えば、上司に気に入られろ、と。

そのような組織においては、出世するのは実力ある人ではなく、上司の機嫌を取るのがうまい人です。

スタンフォード大学教授の、ジェフリー・フェファーは

「多くの組織、多くのポストで、実績はさほど重要な意味を持たないことが、データによって明らかになっている。仕事ぶりや目標達成度はおなじみの人事評価にも反映されないし、在任期間や昇進にすらさほど影響しない」

と言いいますが、まさにその通りなのです。

 

まとめ 評価は「成果しか見ない」で全て解決

 

このように言うと「態度に問題がある部下」を矯正するために、意欲の評価はどうしても必要だと反論される方もいるでしょう。

何か指示をすると「パワハラ」と言ってきたり、納期は守らず、無気力そのものという部下がいるという相談は、確かに私も受けたことがあります。

しかし、よく考えてください。

彼らに「意欲がない」と言い切れるでしょうか?

実際、「意欲はあるんです。ただ、体がついていかないだけです」と言われてしまったり、

積極的に引き受けるのだけれど、結果的には「引き受けるだけ」で、全然仕事を終わらせられない、という人も「意欲」では評価せざるを得ません。

では、そのような場合どうするべきか。

単純です。

「成果しか見ない」で、全て解決します。

意欲などという、外から見えないものへの評価を一切、排して、外形的なアウトプットだけを評価する。

それが本来のあるべき姿であり、唯一、組織の腐敗を防ぐ方法です。

仕事をやらない人については、単純に評価を下げ、給与を下げるだけでいい。

「意欲を持て」などという指導も、一切必要ありません。

逆に「嫌々」だろうが何だろうが、仕事をする人は評価をあげ、給料を上げる。

それが腐敗を防ぐ、正しい制度の在り方です。

機嫌取りをしてほしい「上司」と、成果を出さずとも上司に大目に見てもらいたい「部下」が

結託して生まれた制度、それが「意欲を評価する」という、不思議な制度です。

現在は、テレワーク化が進む中で、その意味はますます薄れています。

この機会に、経営者や幹部の方々は、シンプルに「成果しか見ない」制度への転換を、強くお勧めします。

 

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