あなたもサンクコスト効果で損をしている?身近な事例からマーケティング活用例まで解説

あなたは下記のようなことを経験したことはありませんか?

  • 途中までみた映画がつまらなくても最後まで見続けてしまう
  • 高いお金を出して買ったが着ていない服を捨てられない
  • ゲームに課金しすぎて途中でやめれなくなってしまった

このような、非合理的な意思決定や行動をとらせてしまう心理効果を「サンクコスト効果」といいます。

この記事ではサンクコスト効果の概要や、身の回りにあるサンクコスト効果の事例、マーケティングに応用されている事例などを解説していきます。

ぜひサンクコスト効果について理解を深めて、ビジネスに応用するための参考にしてみてください。

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サンクコスト効果とは?「もったいない」が生み出す心理効果

「サンクコスト効果」という言葉は聞いたことはあるけど詳しくは説明できない、という方も多いのではないでしょうか? まず、サンクコスト効果の解説の前に「サンクコスト」が何かを解説します。

サンクコストとはすでに支払ってしまって回収できないコストのことで、「埋没費用」とも呼ばれています。例えば、支払ってしまったお金や費やした時間、労働力が該当します。

そして、サンクコスト効果とは「埋没費用効果」とも呼ばれ、本来は回収できないサンクコストを回収しようとして、非合理的な意思決定や行動をしてしまう心理効果です。

非合理的な意思決定や行動とは、すでに費やしてしまったお金や時間、労働力を取り戻そうとするあまり、回収できる見込みがほとんどないにも関わらず、さらにリソースを費やしてしまうことを指します。

例えば、あなたは新しくビジネスを始めるために、1,000万円という多額の資金をそのビジネスに費やしたとします。しかし、どれだけ頑張っても黒字にはならず赤字が続いてしまったうえに、将来的にも黒字になる可能性が低いことがわかりました。

この時点でビジネスをやめることができれば、サンクコストは支払った1,000万円だけで済みます。そして、合理的に考えるのであれば事業をたたむべきでしょう。しかし、人間はときに論理的・合理的には考えられず、感情的に判断してしまいます。

つまり、この場合でいえば、すでに支払った1,000万円のサンクコストが頭から離れずに、どうにかして回収しようと事業を続けてさらに損失を大きくしてしまうケースが考えられます。本来であれば、過去に費やした費用のことは忘れて、将来的に得られる利益だけで考えて合理的な判断を下すべきです。

サンクコスト効果と同じ意味をもつ「コンコルド効果」とは?

サンクコスト効果とともに、有名な言葉に「コンコルド効果」があります。これはどちらも同じ意味を持つのですが、その成り立ちに違いがあり、コンコルド効果は過去に実際にあった事例をもとにつくられた言葉です。

かつて、フランスとイギリスにより「コンコルド」という超音速旅客機が開発され、名前の通り音速よりも速いスピードで移動することができました。コンコルドの開発には膨大な費用がかかりましたが、乗客定員が少なかったり、使用できる空港が限られていたため、開発途中で発注のキャンセルが相次いだのです。

開発段階で採算がとれないことがわかったため、普通ならこの時点で開発を中止するはずです。しかし、すでに4,000億円という巨額の資金が費やされていたため、途中で開発をやめることができませんでした。

最終的には数兆円もの赤字をだす結果に終わり、コンコルドは商業的に大きな失敗に終わりました。

すでに投資した費用に執着するあまり、失敗が目に見えていても後戻りできない状態を「コンコルド効果」と呼ぶようになった由来はこの事例にあります。サンクコスト効果の事例としてもよく取り上げられており、最も有名なものです。

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あなたならどうする? サンクコスト効果を考えてみよう

コンコルド効果のような有名な事例をみると「自分なら途中でやめられる」と感じた方もいるのではないでしょうか?

では実際に、サンクコスト効果を検証するために下記のような例を考えてみましょう。

あなたは、ずっと行きたいと思っていたクラシックコンサートのチケットを5,000円で買いました。しかし、コンサート当日になると猛吹雪で60キロも離れた会場に行くのは困難です。また、このコンサートはインターネットでも配信されていました。このとき、あなたは下記のどちらを選びますか?

  1. コンサート会場に行く
  2. コンサートを家でゆっくりネットで視聴する

あなたがサンクコストに敏感であれば「1」を選び、猛吹雪のなか会場に行くでしょう。猛吹雪のせいで交通がストップし、到着する頃には開演時間を過ぎてしまうかもしれないうえに、何より危険です。しかし、支払ったチケット代の5,000円がもったいなく、どうしてもその金額分は回収したいと感じてしまいます。

しかし、次のように考えてみてください。

コンサートのチケットは、あなたが買ったものではなく家族からもらったものでした。しかし、やはり外は猛吹雪です。この場合、あなたはどうしますか?

  1. コンサート会場に行く
  2. コンサートを家でゆっくりネットで視聴する

おそらく、あなたは「2」を選び、家で視聴するのではないでしょうか。自分のお金を出して買ったわけではないので、そこまでサンクコストに影響されないのです。

サンクコスト効果の威力を実感できましたか? このように、サンクコストはあなたの合理的な意思決定に大きく影響を与えるのです。

日常にあふれるサンクコスト効果の事例

サンクコスト効果はさきほど挙げた例のように、私たちの日常にあふれており、人の判断に影響を与えています。

ここでは、下記のような日常的に私たちが体験するサンクコスト効果を解説していきます。

  • つまらない書籍を買ってしまった場合
  • 行列に並んでしまった場合
  • 洋服の整理をしているとき

つまらない書籍を買ってしまった場合

あなたは、中身をあまり見ないで書籍を買って失敗したことはありませんか? 自分が期待していた内容とは異なり、全くおもしろくない書籍を買ってしまった場合もサンクコスト効果が働きます。

途中まで読んでつまらなかったなら、時間と読む労力を無駄にしないためにも読むのをやめるのが合理的な判断です。しかし、多くの場合は支払った代金がもったいないと感じ、「せっかくなら」と最後まで読み進めようとするのではないでしょうか。

これは明らかなサンクコスト効果です。その本を最後まで読んだところでお金は返ってきませんし、何よりつまらない本を読むのは苦痛であるため、自ら苦痛を感じる時間を過ごすのは非合理的だと言えます。

この場合、サンクコスト効果を回避するのであれば「この本を図書館で借りた本だとしたらどうするだろうか?」と考えてみましょう。図書館で借りたのであれば、途中で読むのをやめることに抵抗がないため、合理的な判断ができます。

行列に並んでしまった場合

続いてのサンクコスト効果の事例は、行列に並んだ時のケースです。

あなたはお昼時に昼食を食べるお店を探している際に、行列ができているお店をみて「こんなに人がいるなら美味しいはずだ」と考えて、並ぶことにしました。しかし、初めは30分で入れると言われましたが、45分経っても入店できません。

まだ時間がかかりそうなとき、あなたはどうするでしょうか? この場合、待てば待つほど待った時間がサンクコストとして積み重なり、「これだけ待ったんだから」とさらに待つようになります。

合理的に判断するなら、30分を過ぎた時点で列を離れ、他のお店に行くべきでした。しかし、サンクコスト効果により並んだ時間を取り返そうとするため、さらに待とうとしてしまうのです。

洋服の整理をしているとき

家の片付けをするときに、捨てるかどうか悩むのが洋服ですよね。

例えば、あなたが断捨離をすると決めて、要らないものや使わないものをどんどん捨てていこうと決めたとします。そのとき、クローゼットの奥から高いお金を出して買ったはいいものの、何年も着ていない服が出てきました。

現時点で服はたくさんあり、収納するスペースもないため捨てなければならない状態です。あなたは、この服を捨てられるでしょうか?

おそらくこの場合も、「高いお金を出した」ことを思い出し、サンクコスト効果により捨てられないのではないでしょうか。しかし合理的に考えるなら、何年も着ていない服であれば今後も着ることがないため、収納スペースをつくるためにも捨てるべきです。

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マーケティングで活用されるサンクコスト効果

サンクコスト効果は、ただ単に私たちの身の回りで起こる事象を説明しているだけではありません。ビジネスの世界ではしっかりマーケティングで活用されているのです。

その事例が下記の3つですが、あなたも身に覚えがあるのではないでしょうか?

  • 定期購読で付録が完成する雑誌
  • 購入や利用によるランク分け
  • 無料お試し版の利用

それでは1つずつ解説していきます。

定期購読で付録が完成する雑誌

あなたはテレビで、毎月買って付いていくる付録を全部集めることでプラモデルなどが完成する雑誌のCMを見たことがないでしょうか?

このビジネスモデルで狙っているのは、一度買ってしまうと途中でやめられなくなってしまうサンクコスト効果です。つまり、途中まで買うことによりサンクコスト効果が働いて「ここまでは買ったのだから今さら止めるのはもったいない」と感じてしまうわけです。

また、この事例では、最初の1冊を買ってもらうことが重要になるため、多くの場合で創刊号だけが安く買えるようになっているのです。

購入や利用によるランク分け

購入金額や継続して利用することで、会員のランクを少しずつ上げていくというシステムを用いてサンクコスト効果を活用している事例もあります。

例えば、クレジットカードの場合、シルバーランクから始まり利用金額が多くなるほど、プラチナランク、ゴールドランクと少しずつランクが上がっていくのです。そして、ランクが上がるほど特別なサービスを受けられるようになります。

しかし、一度ランクが上がっても利用金額が減るとランクが下がってしまうところがポイントです。こうすることで、ユーザーには「あともう少し利用しないとシルバーランクに落ちてしまう」や「あとちょっと使えばゴールドランクになれる」という心理が働くため、利用を促進させることができます。

無料お試し版の利用

そして最後に紹介するのが、無料お試し版の利用によるサンクコスト効果を用いたマーケティングです。

世の中にはいろいろなサービスがありますが、ほとんどのサービスにおいて「無料お試し期間」や「1か月無料」といったように、一定期間や簡易版を無料で利用できますよね。そして、多くの人は「タダの間だけ使おう」と考えて利用します。

しかし、一度利用すると無料期間が終わる頃にはサンクコスト効果により、「せっかく今まで使ったのに」や「せっかく登録したしやめるのももったいない」と感じさせることができ、有料版へと誘導できるのです。

また、この手法はサービスのみならず、実際の店舗でも活用されています。例えば、お店でプレゼントがもらえるイベントを開催したり、お店に来るだけでポイントがもらえるキャンペーンを実施することなどです。

ほとんどのお客はプレゼントやポイント目当てでお店に集まりますが、お店に実際に足を運ぶことには時間や労力がかかります。したがって、サンクコスト効果によりお店に来た人は「せっかく来たんだし」と考えるようになるため、お店のものを買って帰ろうとするのです。

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サンクコスト効果による非合理な判断を回避する方法

サンクコスト効果を用いたマーケティングは見事なもので、多くの人が無意識のうちに非合理な選択をさせられているのです。

それでは、この非合理な判断を回避するためには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか?

そのためには、下記の2つのポイントを意識しておくことが重要になります。

  • ゼロベースを意識する
  • 費やす費用の上限を設定しておく

それでは1つずつ解説していきます。

ゼロベースを意識する

まず、サンクコスト効果への最も基本的な対策は、常にゼロベースを意識しておくことです。つまり、現時点までに費やした時間やお金といった費用を、一度なかったことにしてから考え直すということです。

例えば、あなたは高額のギターを買ってギター教室に通うとします。その時、ギターの練習に飽きてしまった場合、高額なギター代がサンクコストとしてのしかかるため、「せっかく買ったんだし…」と退屈なままギター教室に通うことになります。

しかし、その時に「ギターは買ったのではなく、もらったものだとしたら…」と考えることで、合理的な判断を下すことが可能になるのです。

費やす費用の上限を設定しておく

もう一つの対策は、費やす費用の上限を設定しておくことです。

例えば、ギャンブルですでに5万円をすってしまった場合、多くの人は回収しようと考えてさらにお金を使うことになりますが、結局は回収できずに終わります。

この時、サンクコスト効果で失敗しないためには、使っていいお金の上限を設定しておくことです。この場合なら「7万円使ってもダメなら諦める」というように、前もって決めておきましょう。

また、この方法は本を読む時に「◯ページ読んでおもしろくないなら読むのをやめる」と決めておくなど、いろいろなシーンに応用できます。

ビジネスでサンクコストを応用しよう

解説してきたように、冷静に考えると非合理的だとわかる判断を、サンクコスト効果はいとも簡単に人にさせてしまいます。

これを応用しているマーケティングは世の中にたくさんあるため、自社のマーケティングに使えないか検討してみてはいかがでしょうか。

サンクコスト効果を働かせるには、いかにユーザーや消費者に対して「もったいない」と感じさせられるかどうかが肝になります。

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