2020/08/11

メンタルマネジメントで仕事の能力と心の強化を実現する

あなたは、メンタルマネジメントという言葉を聞いたことがあるでしょうか。メンタルマネジメントとはビジネス・スキルアップ術のひとつで、ストレスや自分の心を管理し、仕事のパフォーマンスをアップさせることを指します。

メンタルマネジメントは、元々スポーツ選手たちのトレーニングとして始まりました[1]。しかし、その管理方法を仕事に応用したビジネスパーソンが業績を伸ばしたことで、ビジネスシーンでも注目されるようになってきたのです。

職場でのストレスや心の管理ができれば、仕事のパフォーマンスが向上して目標達成の近道になります。今回は、仕事の能力向上と心とメンタルの強化が叶う、「メンタルマネジメント」の方法について解説していきましょう。

 

仕事に「ルーティン」を取り入れて行動する

 

ルーティンとは、決まった仕事や行動の前に行う一連の動作のことを指し、日本語では「日課」と呼ばれることもあります。

元メジャーリーガーのイチローさんやラグビー選手の五郎丸歩さんは、ビッグ・プレーをする直前に独特のポーズや動きをしますよね。一見すると「変な体の動き」にしか見えないものですが、このポーズや動きこそがルーティンと呼ばれるものです。

実はこのルーティンを仕事の場面で取り入れると、メンタルマネジメントに役立つのです。

 

ルーティンを活用したメンタルマネジメントで仕事の不安は管理できる

あなたは仕事の大事な場面で、以下のような症状を経験したことはありませんか。

  • 重要な会議のプレゼンで手汗をかいてしまう
  • 大口の契約がかかっている面でお腹を下してしまう

これらはどれも、緊張によって引き起こされる体の変化です。

スポーツ科学が専門の山梨学院大学の遠藤俊郎教授によると、人は緊張状態に置かれると、呼吸や心拍数が速くなり、動作が通常より速くなることがあるそうです[2]。練習では上手くいっても本番で失敗するのは、こうした体の「異常」が起きるからなのです。

そんな緊張する大事な場面でも、ルーティンを行うことでストレスの管理ができます。ルーティンに意識を向けると呼吸や心拍数を通常に整い、意識を緊張から逸らすことが可能になるからです。

スポーツ選手が行っているシーンが印象的なルーティンですが、仕事におけるストレス管理にも有効です。ルーティンを行うことで「重要な会議」や「契約が取れるかどうか」から意識を逸らし、心を落ち着けて冷静に行動するきっかけになってくれるでしょう。

 

職場でルーティンを活用したメンタルマネジメントを取り入れる方法

それでは、職場でもルーティンを取り入れるにはどんな方法があるのでしょうか。例えば、仕事にも取り入れられる簡単なルーティンには、次のようなものがあります。

  • 決まった時間に目覚める
  • 毎日1本早い電車に乗る
  • 決まったニュースサイトを閲覧する
  • 仕事の前にコーヒーを1杯飲む

ルーティンにはどんな行動を選んでも良いですが、ビジネスにとってプラスになる行動を採用することをおすすめします。なぜなら「ビジネスにプラスになることを毎日コツコツ積み重ねてきた」という自覚が、自信の形成にもつながるからです。ルーティンに専念することで「今日もいつも通り正しい行動が取れている」ということを自己確認でき、心が自然に落ち着いていくでしょう。

他にもルーティンは、仕事モードへスイッチして集中力を高めたり気分をリフレッシュさせたりする効果があります。集中したい時やリフレッシュしたい時のルーティンを自分の中で決めておくことで、仕事のパフォーマンスをアップさせることも可能です。

こうしたルーティンのことを、メンタルの専門家たちは「プレ・パフォーマンス・ルーティン」と呼んでいます[3]。

 

メンタルマネジメントは科学的に心を鍛える方法

2002年に国立スポーツ科学センターの調査によると、トップ選手が競技成績に影響を及ぼすコンディショニングのポイントは、心理面であることが示されています[4]。この調査で、ストレスや不安を克服し目標に向かって最善の行動を取るには、心理状態を整えることが不可欠だということが指摘されたのです。

しかし、直感に頼ったメンタルトレーニングを進めてしまうと、精神論に向かってしまう可能性があります。精神論には科学的な根拠が乏しく非生産的なのは、皆さんもご存知でしょう。

ビジネスパーソンがメンタルトレーニングを考える時は、可能な限り科学的にエビデンス(根拠、証拠)がある方法を試す必要があります。その点メンタルマネジメントは、スポーツ科学や医学や宗教学といった学術的に裏打ちされたメンタルトレーニングの方法であるため、安心して取り入れることができます。

本稿でご紹介するメンタルマネジメントの方法は、いずれも簡単に実行できるものばかりです。気に入ったものがありましたら、ぜひ明日から職場で試してみてくださいね。

 

メンタルマネジメントを取り入れた「メンタル手帳」を仕事に活かす

 

科学的な根拠に基づいたメンタルマネジメントの方法として、手書きのメンタル手帳の活用が挙げられます。手書きの手帳を使うことで自律神経が整い、ストレスや心の不安による体の異常を抑える効果があるのです。

実際に順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、自律神経を整えるために昔ながらの手書き手帳の活用をすすめています[5]。

なぜ手書き手帳の活用がおすすめなのか。それは、ストレスと自律神経の関係を知れば理解できます[6]。ここからは、自律神経と「メンタル手帳」について見ていきましょう。

 

ストレスと自律神経の関係

ストレスがかかる状況においても冷静に行動できるかどうかは、自律神経にかかっています。自律神経は臓器の動きをコントロールする働きがあり、気持ちを高揚させる「交感神経」と体をリラックスさせる「副交感神経」で構成されています。

緊張している状態で息が荒くなる、汗が出る、鼓動が高鳴るなどの症状出るのは、ストレスで自律神経が乱れてしまっていることが原因です。

つまり、自律神経を整える術を身につければ、緊張した時に現れる体の「異常」を引き起こさなくて済むのです。

 

メンタルマネジメントに効果的な「メンタル手帳」の活用方法

ストレスや不安に対するメンタルマネジメントには、1日を振り返る「メンタル手帳」をつけることが効果的です。丁寧にペンで書いているうちに1日の自律神経の乱れがリセットされ、正常化していくことから、小林氏は自律神経を整える訓練として毎日「3行日記」をつけることをすすめています。

3行の内容は、次のとおりです。

1行目…今日、失敗したこと、体調が悪かったこと、嫌だったこと
2行目…今日、感動したこと、嬉しかったこと
3行目…明日の目標、今一番関心があること

ポイントは、それぞれ一行で簡潔にまとめることです。また、マイナスの出来事から前向きな出来事の順で書くことで、仕事や目標に対するモチベーションアップにも効果を発揮してくれます。
小林氏自身、スケジュール管理にはグーグルカレンダーを使っているということです。肝心の手書きの手帳はいつ使うのかというと、TODOリストや電話の内容などを記録する時に活用しているそうです。
重要な内容を手書きでメモすることで「あそこに書いたな」と思い出せるので、記憶の引き出しがスムーズに行えます。

 

メンタルマネジメントで職場のチームを強化する

 

メンタルマネジメントによって「自分の」仕事能率が上がったら「他人の」仕事についても考えてみましょう。大きな目標や問題はひとりでは対処できません。自分とチームメンバーのメンタルが強くなって初めて、チーム全体で大きな成功を収めることができるようになります。

明治大学文学部教授の齋藤孝氏は「仏教にメンタルマネジメントを学ぼう」と呼び掛けています[7]。仏教には慈悲の教えがあり、この教えには「友に与え、同胞から不利益と苦を取り除く」という意味が含まれています。

齋藤氏はこの教えをビジネスに活用し、忙しさから脱却した人ほど「他人の時間を無駄にしていないか」と自省した方が良いと説いているのです。他人の行動や心に意識を向ければ、自然に人間関係の改善やストレスの減少につながります。その結果、目標に対して高いパフォーマンスを発揮できるようになるのです。

 

職場のチームに活用できるメンタルマネジメントの方法

齋藤氏の教えを応用すると、ビジネスではチームのために次のような行動を取ることが望ましいと言えます。

 

他人から時間を奪わないようにする

・チームのメンバーの利益を考えて行動する
・仕事で責任感と協調性を重視する
・チームのメンバーが抜けたら、その穴を埋めようとする
・他人に対する怒りを鎮めようとする

職場内でこうした動きが広まればコミュニケーションが深まり、問題解決に対して冷静に行動できるようになります。自分だけではなくチーム全体の利益のためにも、ぜひメンタルマネジメントを活用してみてください。

 

メンタルマネジメントで仕事のモチベーションを管理する

メンタルマネジメントは、仕事や目標に対するモチベーションの維持にも効果的だとされています。

「企業の中で仕事へのやる気が見出せない」「残業が続いて心が折れそう」「他の社員との折り合いが悪くてストレス」など、現代は仕事におけるメンタル面が社会問題として表に出てくる時代になりました。「根性論」で全てを済ませていた時代もありましたが、現在は周囲の力を借りたメンタルマネジメントで心を管理していく時代になってきています。

ここからは、仕事のモチベーション維持に効果を発揮するメンタルマネジメントについて解説していきます。

 

メンタルマネジメントは仕事のどのような場面で役立つ?

モチベーションの維持にメンタルマネジメントが役に立つのは「目標を達成する手段が不明確」あるいは「その迷いの中にいる」時です。具体的に言うと「自らをモチベートして、最大限に成果を発揮するための心の整え方」を必要としている場面で活用できます[8]。

とくにビジネスシーンでは、高いモチベーションを長く持ち続ける必要がある時や、仕事へのやりがいを見出せない時にメンタルマネジメントが重要だとされています。

 

メンタルマネジメントをすればモチベーションのコントロールは可能

メンタルマネジメントをすればモチベーションのコントロールが可能となり、目標達成のために行動し続けることができます。

「英会話スクールに申し込んだけれど1か月で行かなくなってしまった」「自己啓発のために休み時間にビジネス書を読み始めたが、数か月で自然消滅した」という経験のある人も多いでしょう。継続することで得られるものもありますが「続かない」「どうせ無理だとすぐに諦めてしまった」と諦めてしまうことはありうることですよね。

最初は情熱的に取り組んでいたことも、やる気が続かなければやめてしまうことになります。それはひとえに「やる気=モチベーションのコントロール」がうまくいかなくなった代表例といって良いでしょう。

モチベーションを維持するには、最初に思い描いていた理想の姿に近づけるようにメンタルを維持する必要があります。この「メンタル維持」に欠かせないのが『メンタルマネジメント』なのです。

 

メンタルマネジメントを必要とする場面

では具体的に、どのような場面でメンタルマネジメントが必要となるのでしょうか。

例えば「どんなに準備をしてもプレゼンが上手くいかない」「目標がなかなか達成できない」「いつも失敗ばかりする」など、職場における失敗でストレスを受けている方、諦めそうになっている方には、メンタルマネジメントが必要となってきます。放っておくとモチベーションが維持できなくなり、メンタルヘルスにも異常をきたしてしまう可能性があるからです。

メンタルマネジメントを用いれば、上記のような問題を抱えた人も前向きに仕事へ取り組めるようになる可能性があります。

実際にアスリート界において「あがり症」の解決のためにメンタルマネジメントが利用された例を見てみましょう。あがり症を持っていた対象者は、いくつかのメンタルマネジメントプログラムを経た結果、集中力の向上やポジティブさ、プレイへの喜びの高まりを実感しました。[9]

ビジネスの世界においても、上記のようなメンタルマネジメントによるモチベーションの維持・向上効果は応用可能です。今、自分や周囲のモチベーション維持に関して悩んでいるのであれば、メンタルマネジメントを活用してみることをおすすめします。

 

メンタル『ヘルス』マネジメントで社員の心をサポートする

会社においてはメンタルマネジメントだけではなく、心の健康を保つための「メンタル『ヘルス』マネジメント」が必要とされることがあります。ここからは、メンタルヘルスマネジメントの内容とメンタルマネジメントとの違いを解説していきます。

 

メンタルヘルスマネジメントとメンタルマネジメントの違い

メンタル「ヘルス」マネジメントでは、メンタルがマイナス方向に行かないように職場環境の改善やストレス緩和をするなど、心の健康面におけるサポートを重要視しています。[10]

一方でメンタルマネジメントは、アスリートやビジネスパーソンに必要な「あがり症の解消」や「目的を達成するため」など、パフォーマンスの向上を目的としています。

一見似ているように思えますが、メンタルヘルスマネジメントは「心や健康を保つこと」、メンタルマネジメントは「パフォーマンスを向上させること」と、目的に明確な違いがあるのです。

 

メンタルヘルスマネジメント検定について

近年、企業では労働生産性の維持・向上及び離職防止のため、組織的にメンタルヘルスマネジメントを導入する必要が出てきました。

最近では、職場内でのメンタルヘルスケアの知識や対処方法に関する資格「メンタルヘルスマネジメント検定」が注目されてきており、社員に資格取得を推奨している企業も増えてきています。

自分や部下、社員の心をサポートするためにも、今後メンタルヘルスの知識はますます重要になっていくことが予測されますね。

 

【メンタルヘルスマネジメント概要】

検定は年に2回、11月と3月に実施されています。(I種のみ年に一回)

 

マスターコース(Ⅰ種)

合格率:10~20%
対象者:人事労務関係スタッフ・経営幹部
目的:社内のメンタルヘルス対策を推進する。専門家・機関との連携やメンタルヘルスケアの計画や教育・研修の立案と実施に関する知識が必要。

 

ラインケアコース(Ⅱ種)

合格率:50%
対象者:管理監督者
目的:上司としての部下のメンタルヘルス対策を推進する。部下の維持・管理及び見守り、いざとなった場合に安全配慮しながら対応できる知識が必要。

 

セルフケア(Ⅲ種)

合格率:70~80%
対象者:一般社員
目的:自らケアを行い必要な時には助けが呼べる。基礎知識をはじめ、ストレスのセルフチェック及び対処方法に関する知識が必要。

受験者は年々増えており、とくに管理監督者向けのラインケアコース(Ⅱ種)は、以前に比べると2倍ほどに増加しています。企業内で、従業員に対するメンタルヘルスマネジメントがますます重要視されている傾向にあるといえるでしょう。[11]

 

導入事例

 

近年では社員のモチベーションアップや心の健康管理などを目的に、職場でメンタルマネジメントやメンタルヘルスマネジメントを実施する企業が増えてきています。

では、メンタルマネジメント及びメンタルヘルスマネジメントは、実際に仕事や職場でどのように利用され、役に立っているのでしょうか。具体的な問題解決の事例を挙げながらご紹介していきます。

 

メンタルマネジメントの導入事例

スポーツの世界でもビジネスの世界でも、実力が互角にもかかわらず結果が残せる人と残せない人がいます。「メンタルマネジメントができているかどうか」で、この2人には大きな違いが出てしまうのです。

まずは、メンタルマネジメントでストレスや不安との向き合い方を学び、問題を解決した事例について見ていきましょう。

商社Kに勤めるM氏は社歴14年目の中堅社員です。入社4年目に営業部から現在の情報管理部に異動して来て10年目。社歴も長いので、そろそろ係長への昇進話が出ているのですが、上司のJ部長は渋い顔をしています。それは、M氏の活躍に「ここぞ」という決め手がないためでした。

M氏は現在の部署に異動してくる前は営業部で仕事をしていたのですが、大口契約を解除されてしまうという失敗をしていました。「緊張すると、なんだか全てうまくいかなくなってしまう」とM氏は言います。

人物的には気配りのできる良い人なのですが、過去の一件から萎縮してしまって、可もなく不可もない無難な仕事のみをしており、本来の力が発揮できていないようです。また、情報管理部では年度初めに複数の目標と担当者を決めているものの、M氏が担当する案件は、途中で不完全燃焼になってしまうことも多々ありました。「この企業で成長し、ゆくゆくは役職も欲しいと思っている」と言っていたM氏に対し、J部長は物足りなさを感じてしまっているのです。

そのためJ部長はM氏の将来を思い、メンタルマネジメントの研修を受けさせることにしました。週に1度、3か月間のメンタルマネジメント研修で、緊張、プレッシャー、焦り、不安の扱い方や過去のマイナスの経験との向き合い方を学んだことで、研修後のM氏の仕事ぶりに変化が現れます。

当たり障りのない仕事をしていたM氏が少しずつ会議で意見を述べるようになり、難易度の高い仕事にもチャレンジをし始めました。不完全燃焼になっていた課題についても、周りの力を借りながら再度検討し取り組んでいます。

M氏は、「メンタルマネジメント研修を受けて、不安や焦りを感じることや失敗をすることは当然だということと、自分なりの対処法を学ぶことができた。また、過去の失敗についても向き合い方が分かった」と言います。

M氏が言う不安への対処法とは、「焦りや不安の原因をしっかり把握し、それを紙に書き出す」ことでした。不安材料の一つひとつを書き出して対策を導き出すことが、M氏の仕事や行動に対する不安を小さくしてくれたのです。その結果、メンタルを強化するとともに仕事の質を向上させ、行動にも変化をもたらしてくれました。

M氏の焦りや不安といったマイナス思考から抜け出すきっかけとなったのが「メンタルマネジメント」なのです。M氏が係長に昇進した今、その知識は部下教育にも活かされています。

メンタルマネジメントの研修を通して、あがり症の解消方法を模索し、自分の行動に自信を持つことができた事例です。

 

メンタルヘルスマネジメントを用いた導入事例

次に、メンタルヘルスマネジメントによって、社員の離職率の低下と心のケアを果たした事例を見ていきましょう。

IT企業Aに勤めるKさんは、2年前に双子を出産しました。子供たちが1歳になる年に復職して、現在は時間短縮勤務をしています。

しかし、Kさんは毎日仕事と子育てに追われてかなり辛そうな様子で、仕事上のミスも増えていました。Kさんにヒアリングをすると「子育てと仕事の両立が難しく、職場復帰して3か月後に夫が海外出向し、ワンオペレーション育児になってしまったことでつらい思いをしている」と言います。Kさんは現在、生活も仕事もギリギリの状態のようです。

このようなギリギリの状態の人はKさんだけではなく、他にも何名かいました。

そこでメンタルヘルスマネジメント検定Ⅰ種の資格を持つ人事部長F氏は、メンタルヘルスマネジメントの研修を社員に向けて実施することにしました。自らのストレス度がチェックできるストレスチェック表を配布し、ストレス度が一定以上の人に対しては面談を実施。さらに「いったん休暇を取らせる」「勤務体制を見直す」などの対策をとることになりました。

Kさんのストレスレベルは既定の数値を上回るものであったため、数日間の有給休暇を強制取得させました。またその間に取締役と相談して勤務体制の見直しを行い、可能な限り自宅からのリモート勤務を取り入れるシステムを導入します。「条件を満たすとリモート勤務可能」という就業体制の見直しによりリモート勤務者が増え、健康や生活事情の変化を理由とする退職者も減少しました。体調が悪く長期休暇を取っていた人も、リモート勤務で復帰することができたのです。

Kさんも現在はリモート業務をしていますが、夫の帰国をきっかけに職場出勤したいと申し出てくれています。もちろんF氏は、うまく行かなかった時のためにいつでもリモート勤務に戻れるようサポートするつもりです。

メンタルヘルスマネジメントの資格を持つ人が「ストレスチェック」「個人のケア」「職場改善」という3点を導入したことで、離職率の低下と社員の健康に良い影響を及ぼした事例です。[12]

 

【メンタルマネジメントの手法①】アファメーション

 

それでは、メンタルマネジメントをするためには、具体的にどうしたら良いのでしょうか。

まず挙げられる方法として、自己肯定感を上げてパフォーマンスを向上させる「アファメーション」という方法があります。

アファメーションとは、なりたい自分になるための言葉による思い込みづくりのことで「肯定的な自己暗示」「肯定的な自己説得」「肯定的な自己宣言」とも言われます。[13]目標とする自分像を作り出して何度も口に出したり見たりすることで思い込みを作り、前向きな思考や行動を引き起こす効果が期待できるのです。

具体的に、アファメーションを行うことで以下の3つの効果が期待できます。

  1. 自分に必要な情報の収集ができるようになる(RAS効果)
  2. 目標の実現に必要な思考や行動に対するパフォーマンスのアップ(プラシーボ効果)
  3. 効率の良いスキルアップや学習が可能になる

アファメーションで思い込みを形成することによって、自分の目標達成に必要な情報に脳が敏感になり、加えて仕事や行動のパフォーマンスがアップしていきます。さらにアファメーション効果は他人にも有効。他者に対する前向きな思い込み持って接することで、その人の能力を伸ばす効果も期待できます。(ピグマリオン効果)

このように、アファメーションでメンタルマネジメントをすると、自分だけではなく他者にも良い影響を与えられるのです。

 

アファメーションでメンタルマネジメントを実践する方法

理想のアファメーションを作成するには、「正しく文言を作って」「正しく実践する」必要があります。

ここからは、アファメーションの作成方法と実践方法を見ていきましょう。

 

アファメーションの作成方法

脳は、繰り返しイメージすると現実とイメージの区別がつかなくなっていきます。そのため、アファメーションでは「今現実で成功している」文言を作成する必要があるのです。実際にアファメーションの文言を作成する際は、必ず以下のポイントに注意しましょう。

  • 肯定文だけで作成する
  • 現在形・現在進行形・完了形で作成する

例えば「仕事で失敗せず、目標を達成できている」の文言には、「失敗」という否定的な言葉が入っていますよね。この場合、脳は勝手に失敗を連想してしまい、アファメーションがうまくいきません。「仕事がどんどんうまく進み、目標を達成できている」に直すことで、ネガティブな思考を排除してうまくアファメーションを実施できるのです。

 

アファメーションの実践方法

実際に文言を作成できたら、それを活用して自分の脳に思い込みを植えつけていきましょう。この時に有効なのが、以下の5つの方法です。

  1. 声に出す
  2. 書き出す
  3. 手帳やデスクなど、目に入る場所に貼っておく
  4. 人に言ってもらう
  5. 裏付ける証拠を記録する

毎日朝と晩だけでも良いので、作った文言を言ったり書き出したりしましょう。目につく場所に、成功した自分のイメージやアファメーションの文言を貼り付けることも有効です。また他人に言ってもらうと、脳だけではなく感情にまでアプローチをしてくれるため、効果がグッとアップします。

最後に、アファメーションの文言を強化するために、証拠を集めることもおすすめです。「職場で出世できた」のアファメーションを実践中だとしたら、成功した仕事のことや上司に評価された事実を手書きで記録していきましょう。作りたての思い込みは、生まれたての赤ちゃんのようなもので、育てていくことであなたを支える信念になります。[14]

 

【メンタルマネジメントの手法②】ビリーフチェンジ

 

ビリーフチェンジとは、自分の中にある信念(ビリーフ)をポジティブに変えていく方法のことを指します。仕事で起こったマイナスの出来事をボジティブに変換することで、ネガティブな考え方の癖を直し、メンタルマネジメントに役立てることが可能になります。

 

ビリーフチェンジでメンタルマネジメントを実践する方法

ビリーフチェンジの実践方法は、以下の通りです。

  1. 紙の中央に縦線を引き、2分割する
  2. 左側に1日の行動や出来事をざっくり書き出す
  3. ネガティブな行動や出来事があれば、丸で囲む
  4. 丸をつけた項目の右側にポジティブな見方を書き足す

例えば「上司にミスを注意された」とあれば「自分がミスしやすい場所を教えてもらえた」と書き直しましょう。これがスムーズにできるようになるには訓練が必要ですが、身に付けば日常生活の嫌なことを瞬時にプラスの出来事に捉えられるようになります。

 

【メンタルマネジメントの手法③】ストレス抽出法

 

ストレス抽出法とは、自分の悩みを客観的に捉えて冷静に問題解決に取り組むメンタルトレーニングの方法です。

私たちはストレスや心の問題を抱えても、なかなか自覚したり原因を把握したりすることができません。それではいつまで経っても問題の解決はできないため、ストレス抽出法で問題に向き合うことが大切になります。

 

ストレス抽出法でメンタルマネジメントを実践する方法

ストレス抽出法の実践方法は、以下の通りです。

  1. 今感じているストレスを全て紙に書き出す
  2. 書き出したことを「仕事ストレス」「金銭的ストレス」などにカテゴリー分けをする
  3. どんなことにストレスを感じやすいのかを客観的に分析する

ストレスを書き出したからといって即座に問題が解決するわけではありません。しかし「部下の〇〇に関するストレスが多いな」「この業務が苦手なんだな」と客観的に分析をすれば、心が整理されて対策法を考える余裕が出てきます。

普段自分が思い込んでいるストレスの原因は、もしかしたら実際の原因とは異なるかもしれません。正しくストレスを把握することで、適切な対策を取れるようになるのです。

 

【メンタルマネジメントの手法④】ソリューション・フォーカスト・アプローチ

 

ソリューション・フォーカスト・アプローチは、今ある問題ではなく、「未来の前向きな目標」に着目してメンタルマネジメントする手法です。問題を深掘りするよりも、問題が解決しているイメージを思い浮かべることによって、心の負担を軽減することができます。

ただし、この手法は対人関係や職場環境の問題に有効で、仕事などに関する「原因追及」を必要とする問題には適さない点に注意しましょう。

 

ソリューション・フォーカスト・アプローチでメンタルマネジメントを実践する方法

ソリューション・フォーカスト・アプローチでメンタルマネジメントを実践する方法は非常に簡単です。

  1. 問題やストレスに対して、「どうして?」と疑問をもたない
  2. 問題解決後に「どうなりたいか」「何を求めているか」をイメージする

たったこれだけで出来事のポジティブな一面に焦点を当てられるため、ストレスや不安が解消されます。心に余裕が生まれれば「どうすれば状況を良くできるか」を考えられるようになり、より良い行動へのきっかけになってくれるでしょう。

 

メンタルマネジメントで自分の目標にコミットしよう

 

周りからの期待や圧力、人間関係の問題などストレスの多い現代社会において、メンタルマネジメントは欠かせないものとなってきました。メンタルマネジメントを用いれば自分の心だけではなく、職場やチーム全体を管理することができます。

「緊張で思うように仕事ができない」「仕事のストレスで体調が悪い」と感じている場合は、メンタルマネジメント及びメンタルヘルスマネジメントで問題解決の一助となる可能性が高いです。

目標達成のためのより良い行動を取るためにも、職場全体でメンタルマネジメントを活用していきましょう。

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参照
[1]メンタル・マネジメント(コトバンク)https://kotobank.jp/word/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%82%B8%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88-163338
[2]「ルーティン」はどのようにして作られるのか?(山梨学院大学 スポーツ科学科教授 遠藤俊郎)https://yumenavi.info/lecture.aspx?GNKCD=g007880
[3]メンタルは技術。理論と研究に基づいたトレーニングで鍛えられる(園田学園女子大学教授 荒木香織)https://note.aktio.co.jp/sports/20190809-1054.html
[4] メンタルトレーニングとは 〜日本メンタルトレーナー協会の紹介〜(一般社団法人日本メンタルトレーナー協会)
[5]メンタルを安定させるメモ・手帳の使い方とは?(順天堂大学教授、小林弘幸)https://shuchi.php.co.jp/the21/detail/3486?
[6]一流の人は「自律神経」が整うよう、工夫をしている(小林弘幸)https://next.rikunabi.com/journal/20161102_p/
[7]:齋藤孝氏が指南 仏教に学ぶ「メンタルマネジメント」(日経ブック)https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44704490T10C19A5000000/?page=2
[8]
https://www.hj.sanno.ac.jp/cp/distance-learning/course/B560-01.html
[9]
http://ir.jwcpe.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/537/1/nichijo_kiyo33-15.pdf
[10]
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2007/01/pdf/041-053.pdf
[11]
https://www.mental-health.ne.jp/about/
[12]
https://cweb.canon.jp/mental-health/improvement-necessity.html
[13] [14]アファメーションを「仕事や人間関係に活かす」7つの基本と8つの実践例(足達 大和)https://life-and-mind.com/affirmation-12198

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