近年、サスティナビリティという言葉をよく耳にしますが、下記のような疑問を感じたことはありませんか?
- 「サスティナビリティって何?」
- 「サスティナビリティを重視するとどんなメリットがあるの?」
本記事ではこのような疑問に答えます。
サスティナビリティが浸透した背景や理由、言葉の意味、SDGsとの関係性について理解し、サスティナブル経営に取り組みましょう。
そもそもSDGsとは???
SDGs(持続可能な開発目標)とは?17の目標や事例をわかりやすく解説!
サスティナビリティは日本語で持続可能性のことを指し、企業は今後、環境や社会、経済に配慮したサスティナブル経営を求められます。短期的ではなく長期的な利益や社会貢献が、企業のイメージ向上やブランディングにとって重要になるのです。
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目次
サスティナビリティとは?
サスティナビリティはいつから注目されはじめた?
サスティナビリティ(Sustainability)とは「人間活動や自然環境が多様性を失わず、長期的に継続できる能力」という概念を指します。近年ではさまざまなビジネスシーンで用いられるようになりましたが、もともとは環境問題や資源開発に用いられていた概念です。
サスティナビリティは、1987年の「環境と開発に関する世界委員会」で初めて用いられました。「持続可能な開発」を中心的な課題として取り上げられたのが、サスティナビリティの始まりです。それ以降、1992年の「地球サミット」や「国連環境開発特別総会」でも、サスティナビリティが重要視されるようになります。
2002年には、サスティナビリティを重点的に議論するための「持続可能な開発に関する世界首脳会議」が開催されました。トレンドとしてサスティナビリティが浸透したのはここ数年ですが、国際機関やそれに従事する人たちにとっては、数十年前から一貫して取り組むべき課題のひとつだったのです。
サスティナビリティとCSR、サスティナブルの違い
サスティナビリティとCSRの違い
サスティナビリティが浸透した影響により、サスティナビリティから派生したCSRとも呼ばれる「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)」という考え方も日本に普及しつつあります。企業は、利益だけを求めるのではなく、顧客や社会への責任を負うべきとする概念がCSRです。CSRでは法令遵守や環境に配慮した商品の提供が求められます。
CSRはサスティナビリティと同じように使われますが、両者には明確な違いがあり、その違いは「主体」です。CSRが企業を主体とした考え方であるのに対して、サスティナビリティは社会全体で取り組むべきという考え方をします。企業だけでなく、政府や個人も取り組むことがサスティナビリティにおいて重要です。
サスティナビリティとサスティナブルの違い
サスティナブル(Sustainable)は「持続可能な」や「続けられる」といった意味です。もとの動詞である「Sustain」は「維持する」を意味します。サスティナブル(Sustainable)は「Sustain」+「able(可能である)」が組み合わさってできた言葉です。
一方、サスティナビリティ(Sustainability)は「持続可能性」や「持ちこたえる力」といった意味をもちます。サスティナビリティは「持続可能な開発・発展」(Sustainable Development)の概念から浸透しました。
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サスティナビリティ3つの「E」
サスティナビリティには、下記の3つの「E」があります。
- 環境(Envirronment)
- 公平性(Equity)
- 経済(Economy)
それぞれの分野でサスティナビリティが重要視されています。環境分野では気候変動や海面上昇、森林破壊などの課題に対処することで、地球のサスティナビリティの維持が求められているのです。
また、社会における問題は貧困やジェンダー、格差があげられます。先進国では1980年代から国内格差が広がり続けており、富の再分配や貧困が問題化しています。さらに、社会の問題は経済にも波及します。貧困は再生産されて、経済成長を阻害するのです。
以下では、サスティナビリティにおける3つの「E」について、それぞれ詳しく解説します。
環境(Envirronment)
サスティナビリティの1つめの「E」は環境(Envirronment)です。
持続可能な地球を後世に引き継ぐためには環境保護が急務であり、地球では現在、気候変動や海面上昇、森林破壊などの環境問題が深刻化しています。過剰な経済活動による環境破壊を、いち早く止めなければなりません。
また、サスティナビリティで環境に分類されるテーマは、以下の8つです。
- 水
- 原料
- エネルギー
- 生物多様性
- 大気への排出
- 排水および廃棄物
- 環境コンプライアンス
- サプライヤーの環境評価
公平性(Equity)
サスティナビリティ2つめの「E」は公平性(Equity)です。2020年から続くコロナ禍の影響もあり、貧困やジェンダー、格差などの問題が浮き彫りになりました。
たとえば、日本の相対的貧困は約16%で、6人に1人が貧困層となります。人口にしておよそ、2,000万人が貧困層に数えられます。また、アメリカでは、黒人の資産の中央値は、白人の資産中央値の約15%しかありません。このように、人種によって年収や資産に大きな格差が見られます。
格差は経済成長を鈍化させ、持続可能性を減少させるため、こうした不平等は社会正義のみならず、サスティナビリティの観点からも見過ごせません。
経済(Economy)
サスティナビリティ3つめの「E」は経済(Economy)です。
「経済のサスティナビリティ」は、人間の生活の持続可能性といえます。また、経済は「政府・企業・個人」という3つの主体から成り立っているため、経済のサスティナビリティは企業だけではなく、政府にも求められています。
企業について「経営とサスティナビリティを両立するべき時代」と語ったのは、著名な経営学者のマイケル・ポーターです。彼は、サスティナビリティに取り組むことが企業にとって成長戦略になると説いています。
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サスティナブル経営のメリット・ポイント
メリット①企業価値の向上
社会の一員として、企業は社会問題・環境問題への対応がを求められています。また、SDGsやESG投資への社会的関心が高まっており、環境に配慮した企業の商品を選ぶ消費者も増えています。
したがって、SDGsへの取り組みは企業のイメージアップやブランディングにつながり、企業価値を向上させます。
メリット②優秀な人材の確保
ミレニアル世代以降の人材は社会問題への関心が強く、社会貢献を実感できる企業で働きたいと考えている傾向があります。つまり、サスティナブル経営に取り組んでいない企業は、このような人材を得られません。優秀な人材を確保するためにも、サスティナブル経営への取り組みは必須となるでしょう。
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サスティナブル経営の2つのポイント
ポイント①長期的視点で目標を設定
サスティナビリティは短期的に成果が出るものではなく、長期的な視点で目標を設定して取り組まなければなりません。短期的な利益追求はときとして長期的な損失につながります。
ポイント②ソーシャルグッドを目指す
ソーシャルグッドとは、社会に良いインパクトを与える活動やサービスを指します。地球環境に配慮した製品や、社会や地域に配慮した活動をソーシャルグッドと呼びます。ソーシャルグッドはサスティナビリティとも通じる部分があり、サスティナブル経営を行ううえで活用すべき考え方です。
サスティナビリティが重要視される背景
- SDGsで採択
- CSRやESG投資
- 著名人による発信
そのなかでもやはり、国連サミットにおいてSDGsが採択されたことは大きな影響を及ぼしました。企業でも、サスティナビリティが重要視されるCSRやESG経営が注目されています。
それでは、サスティナビリティが重要視された背景について、わかりやすく説明します。
SDGsで採択
2015年に「持続可能な開発目標」を意味するSDGs(Sustainable Development Goals)が国連サミットで採択され、サスティナビリティという概念が世界中に広まりました。
SDGsでは持続可能な社会を実現するための17の目標が設定されており、その目標には「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」といった発展途上国向けのものから「ジェンダーの平等を実現しよう」という先進国向けのものまであります。ひとつの目標に対して複数のターゲットが設定されており、ターゲットを合計すると169に及びます。
CSRやESG投資
近年、企業ではCSRやESG投資を踏まえた、長期的な視点での経営が重要視されるようになりました。ESG投資とは環境や社会、企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のことです。
ESGは次の3つの単語の頭文字をとったもので、それぞれの要素を重視する経営をESG経営と呼びます。
- 環境(Environment)
- 社会(Social)
- ガバナンス(Governance)
著名人による発信
著名人による発信も、サスティナビリティの浸透に大きな影響を与えました。
エマ・ワトソンやメーガン妃、ヴィクトリア・ベッカムなどファッション界のリーダーたちがサスティナブルファッションについて言及しています。こういった要素も、世界でサスティナビリティが重要視されはじめた理由のひとつです。
それぞれ、著名人がどのようにサスティナビリティを発信しているのか紹介します。
エマ・ワトソン
エマ・ワトソンはハリウッドで活躍するイギリス出身の女優で、ハリウッドセレブのサスティナブルなファッションリーダーとしても有名です。普段着だけではなく、オフィシャルな場でもオーガニックな方法で生産された製品を着用しています。
さらに、エマ・ワトソンはグッチブランドを展開するケリングの取締役に就任し、さらには同社のサスティナビリティ委員会のトップも務めています。2017年に出演した実写版「美女と野獣」のプレスツアーでは、エコフレンドリーな服装で話題を集めました。
メーガン妃
イギリス王室のサセックス公爵の配偶者であるメーガン妃も、サスティナブルなファッションで有名です。彼女のチョイスするアイテムは素材から染色方法、生産工程にいたるまでサスティナブルな取り組みをしているブランドばかりでした。ロイヤルツアーでメーガン妃が身につけたアイテムは、すぐに完売することでも知られています。
これは「メーガン効果」とも呼ばれており、ファッション業界で大きな影響力をもつ証拠です。
ヴィクトリア・ベッカム
ヴィクトリア・ベッカムは、自身が立ち上げたブランドのデザイナーとしても活躍しています。彼女はブランド設立当初から毛皮(リアルファー)を使用しないと主張しており、2019年にはエキゾチックレザー(ワニやトカゲ、ゾウなど珍しい柄を持つ革)も使用しないと発表しました。
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サスティナビリティの測り方
GRIスタンダード
GRI(Global Reporting Initiative)は、GRIスタンダードを用いて環境や社会、経済に関する33のテーマからサスティナビリティを評価します。GRIは、本部をオランダのアムステルダムに置く、サスティナビリティ報告書のガイドラインを制定している国際非営利団体です。GRIによるサスティナビリティ報告書の枠組みを適用することで、企業は社会に与えるインパクトを測定して分析します。
GRIは、持続可能な経済への変化を促進し、管理に貢献するよう努めます。GRIの考えるサスティナビリティとは、企業が経済や環境、社会分野のさまざまな課題を解決したうえで、長期収益性を実現することを意味するのです。
DJSI
DJSI(Dow Jones Sustainability Index)は、アメリカとスイスの企業によって開発された、サスティナビリティを測るための株式指標です。DJSIは時価総額の世界上位3500社を評価対象としており、61産業ごとにスコアリングされた上位10%がワールド・インデックスとなります。
サスティナビリティに取り組む日本企業の事例
トヨタ自動車
トヨタ自動車は2019年に「サスティナビリティ推進室」を設立しました。設立以降、SDGsやESGを本格的に取り組むための体制作りを進めています。2020年に開かれた決算説明会では、トヨタ自動車の社長自ら「今後は今まで以上にSDGsに本気で取り組む」と発言しています。
ユニクロ
ユニクロは店舗で売れ残った衣類をリユースして、国連難民高等弁務官事務所や各国NGO・NPOを通じて被災地や難民キャンプに届ける活動を実施。リユースが難しい衣類も、加工して防音材や燃料としてリサイクルしています。また、近年では「服から服へのリサイクル」として、廃棄されたダウンやフェザーを新たに加工する活動も行っています。
エーザイ
製薬会社のエーザイは、薬を中心に人や社会、環境に貢献する取り組みを実施。サスティナビリティを環境面で推進するために、2040年にカーボンニュートラルを実現すると宣言しました。さらに、循環型社会を形成する取り組みや、くすり博物館の運営、奨学金を提供する財団の設立も行っています。
シスメックス
医用機器メーカーのシスメックスは、自社の医療機器を通じて医療課題の解決に向けて、社会貢献を果たしています。シスメックス・エコビジョン2025を掲げ、CO2削減目標などを具体的なKPIに落とし込んで取り組んでいます。
コニカミノルタ
電機メーカーのコニカミノルタは、2030年に向けて長期経営計画を発表。具体的には、気候変動への対応としてカーボンニュートラルを目指し、社会貢献として健康的で良質な生活の実現を掲げました。
そのほかにも、働きがい向上および企業活性化、有限な資源の有効利用、社会における安心・安全確保などを重要課題としています。
キヤノン
電機メーカーのキヤノンは「新たな価値創造、社会課題の解決」「地球環境の保護・保全」「人と社会への配慮」という3つのコンセプトを掲げ、取り組んでいます。特に環境分野では評価が高く、キヤノンサスティナビリティレポートは環境コミュニケーション大賞の環境報告書部門で、3年連続優良賞を受賞しました。
ユニリーバ
ユニリーバは、洗剤やヘアケア用品を提供しているメーカーです。「サスティナビリティを暮らしの”当たり前に”」というスローガンを掲げ、SDGs採択前の2010年からサスティナビリティに取り組み「健やかな暮らし」「環境」「経済発展」の3つを重要課題として取り上げています。
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サステナビリティとSDGsの関係
サスティナビリティとSDGsの関係性について紹介します。
SDGsとは
SDGsでは、地球上のあらゆる生物を対象として「誰1人として取り残さない」と誓約し、先進国や発展途上国に関係なく取り組むべき世界的な課題を掲げました。
貧困や飢餓、差別・格差の撤廃という社会課題へのアプローチや、持続可能でクリーンなエネルギーの利用、気候変動に対する対策など、あらゆる分野での取り組みが設定されています。
SDGsに取り組む意義
企業がSDGsに取り組むことは、CSR(企業の社会的責任)として大きな意義があります。SDGsへの取り組みは企業のブランドイメージを向上させるため、経営においてもサスティナビリティが注目されはじめました。
一方で、SDGsに取り組まない企業は、世界規模で取り組むべき課題に対して無頓着なイメージを与えかねません。したがって、SDGsに取り組むことでステークホルダーからの評価も上がるでしょう。
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まとめ サスティナブルな企業を目指そう
サスティナビリティは日本語で「持続可能性」を意味し、環境や社会、経済の継続的な発展をめざします。2015年にSDGsが採択されてから重要視されはじめたサステナビリティは、CSRやESGとともに今後、さらに注目されるでしょう。
さらに、サスティナブル経営には企業価値の向上といった、長期視点でのさまざまなメリットがあります。環境や社会、経済に配慮し、サスティナブルな企業を目指しましょう。
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