現代社会においてリーダーシップを有する人材が求められているのは、誰もが知るところでしょう。
では具体的にリーダーシップとはどのようなもので、どのような力が求められているのでしょうか。
この部分をしっかり理解できている人材は、そう多くないと考えられます。
本記事ではリーダーシップ力について解説していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
リーダーシップ力とは?
リーダーシップ力は、チームを引っ張っていく力を指します。
ただしチームを引っ張ると言っても、アプローチは主に2種類あると考えられます。
1966年に三隅二不二によって提唱されたPM理論によると、リーダーシップの機能は「Performance function(P機能)」と「Maintenance function(M機能)」の2つによって構成されているそうです。
P機能は「どのようにすればパフォーマンスが向上するか」にフォーカスした機能で、M機能は「どのようにすればチームを一致団結させられるか」にフォーカスした機能だと考えていいでしょう。
つまりリーダーシップ力とは、パフォーマンスと人間関係の2つの観点から、どれだけチームを引っ張れるかを示した力だと言えます。
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リーダーシップ力が求められる背景
リーダーシップ力が求められる背景は以下の3つです。
- 日本国内でリーダー人材が少ないから
- 雇用の流動性が高まっているため
- 組織のパフォーマンスが大きく向上するから
それぞれ詳しく解説していきます。
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日本国内でリーダー人材が少ないから
リーダーシップ力が求められる背景として挙げられるのが、日本国内でのリーダー人材の供給不足です。
ここで言うリーダー人材とは、世界で活躍できるリーダー人材を指します。
では一体なぜ日本国内でリーダー人材が少ないのでしょうか。
その理由の1つに「空気感」が挙げられます。
高度経済成長期から現代まで続いている伝統的な日本式経営の基本は、軍隊のごとく従順に動く組織構造にありました。
上司に言われたことを各々が徹底することで業績を出していたのです。
しかし、現代社会で求められるリーダーとは、ヒエラルキーやルールに囚われずに、正しい方向性を示すことができるリーダーだと考えられます。
これは、従来の日本社会の基本であった「自分の意見よりも周囲の意見を尊重する空気感」とは相容れないものです。
そのため、組織の中では能力を発揮することができても、社会、ひいてはグローバル社会で活躍できないリーダー人材ばかりになってしまったのだと考えられます。
雇用の流動性が高まっているため
リーダーシップ力が求められる背景として、雇用の流動性が高まっていることが挙げられます。
雇用の流動性が高まることで大きな恩恵を受けられるのは、これまで安く雇用されていた優秀な人材です。
一般的に、市場の流動性が高くなればなるほど、実際の価格が市場価格に近づくため、実力が報酬に反映されやすくなります。
そして雇用の流動性が高くなったことで優秀な人材、ひいてはリーダーシップを有する人材の価値が正当に評価されるようになりました。
そのため、ヘッドハンティングされることも珍しくなく、企業はリーダーシップ力を有している人材を常に求めるようになったのです。
雇用の流動性が高まっている今、リーダーシップ人材の取り合いが盛んになっています。
組織のパフォーマンスが大きく向上するから
少子高齢化が進む現代社会では、組織の成果を最大化できるリーダーシップ人材が求められています。
リーダーシップの能力には、チームメンバーのパフォーマンスを引き出すことも含まれています。
そのため、リーダーシップ人材を1人雇用するだけでも組織のパフォーマンスが大きく向上するのです。
このような背景から、企業はリーダーシップ人材を強く求めるようになっています。
リーダーシップには6種類ある
アメリカの心理学者であるダニエル・ゴールマンは、リーダーシップは以下の6種類に分けることができるとしました。
- 強圧型
- ビジョン型
- 親和型
- 民主主義型
- 実力主導型
- コーチ型
それぞれ詳しく解説していきます。
種類①:強圧型
強圧型のリーダーシップは、メンバーに対して強制的な命令を発することでチームを引っ張っていくのが特徴です。
PM理論を例に取ると、P機能に特化したリーダーシップだと言えます。
一見するとブラック企業のようですが、実際に責任を取るのはリーダーであるため、それ相応の権限がリーダーに与えられていてもおかしくありません。
そのうえ、リーダーの命令が正しいものであれば、組織のパフォーマンスを最大化することが可能になります。
強圧型のリーダーシップを発揮した方がいい場面としては、トラブル時の緊急対応など、時間がほとんどない状況が挙げられるでしょう。
このような状況では、リーダーが組織の主導権を完全に握り、短期間で成果を出すことにフォーカスした方がいいと言えます。
種類②:ビジョン型
ビジョン型のリーダーシップは、リーダーがビジョンを明確にすることでチームを引っ張っていくのが特徴です。
ビジョン型のリーダーシップが発揮される場面としては、スタートアップやベンチャーで急激な成長を狙う場合や、変革期が挙げられます。
このような状況では、模範的なアプローチが通用しないことが多いため、リーダーが明確なビジョンを提示する必要があります。
また、ビジョン型のリーダーシップは、あくまでもビジョンを提示するだけで、業務内容の隅々まで口出しすることはほとんどありません。
ビジョンを明確に提示できれば、メンバーもその方向に向かって仕事を進めていくことができるでしょう。
種類③:親和型
親和型のリーダーシップは、チームメンバー全員が良好な人間関係を構築することにフォーカスしているのが特徴です。
PM理論のM機能に特化したリーダーシップだと言えます。
人間関係の構築に力を入れているため、メンバーは気楽な気持ちで仕事に取り掛かることができるのがメリットです。
一方、結果よりも人間関係を重視してしまうことが多く、成果に繋げづらいのがデメリットだと言えます。
自分自身でストイックに追い込める人材が集まっている場合は、親和型のリーダーシップが有効かもしれません。
逆に、自分で追い込めない人材が集まっている場合は、少々ムチが必要です。
種類④:民主主義型
民主主義型のリーダーシップは、リーダーがメンバーの意見を聴きながら仕事を進めていくのが特徴です。
リーダーが主導権を握る強圧型に比べて、色々なアイデアが出やすくなるのがメリットだと言えます。
一方、メンバーの意見を聴きながらになるので、意思決定のスピードが遅れてしまうのがデメリットです。
特に、スピードを求められる現代社会において、このデメリットはかなり大きな痛手だと言えます。
民主主義型が有効な状況としては、メンバーが多様かつ優秀である場合が挙げられるでしょう。
種類⑤:実力先導型
実力先導型のリーダーシップは、実力のあるリーダーが実際に高いパフォーマンスを発揮することでチームを引っ張っていくのが特徴となっています。
いわゆる「背中を見せて部下を育てる」というものです。
実力先導型を成功させる大前提として、まずリーダーが高い業務遂行能力を有している必要があります。
それに加えて「なぜ自分自身の業務遂行能力が高いのか」を体系化できていると、部下への指導で役立つでしょう。
実力先導型が活かされる場面としては、現場での業務遂行が挙げられます。
実際にリーダーが業務をガンガン進めることで、成果の最大化と人材育成を両立させることができるでしょう。
ただし「背中を見せて部下を育てる」が上手く機能しなかった場合に、リーダーの負担が大きくなってしまうのが懸念点です。
種類⑥:コーチ型
コーチ型のリーダーシップは、リーダーがメンバーのコーチとなって、メンバー個人の目標達成をサポートするのが特徴です。
1on1でメンバーをサポートするため、メンバーのモチベーションが向上しやすいのがメリットとなります。
また、上手くハマってくれれば、メンバーが自主性を持って業務に取り掛かるようになり、長期的なパフォーマンスが向上する可能性もあります。
ただし、チームの規模が大きくなったり、コーチングする余裕がないほどに忙しかったりすると、コーチ型のリーダーシップを活かすのが難しくなります。
リーダーシップで求められる7つの力
リーダーシップで求められる力は以下の7つです。
- 目標設定能力
- 情報収集力
- コミュニケーション力
- 業務遂行力
- 判断力
- 意志力
- 育成能力
それぞれ詳しくみていきましょう。
関連記事:リーダーシップに必要不可欠な3要素 | 権限によらない新たなリーダーシップとは?
目標設定能力
リーダーシップで求められる力として挙げられるのが目標設定能力です。
ただ大きな目標を設定しても実現可能性が低いため、やる気が出ません。
逆に緩すぎる目標を設定しても刺激が足りないため、やはりやる気が出ません。
メンバーが最大限のパフォーマンスを発揮したうえで、ギリギリ達成できるかどうかの目標を設定する力が、リーダーに求められます。
情報収集力
リーダーシップは、チームを引っ張っていく以上、社会の動向や技術についての最新情報を収集する必要があると言えます。
情報収集で重要なのは、量ではなく質です。
インターネットには有象無象の情報があるため、その中で必要な情報だけをチェックする必要があります。
そこでおすすめなのが、情報の入手経路を制限してしまうというものです。
経済新聞、信頼性の高い海外ニュースサイトなどは、非常に質の高い情報が眠っています。
そして逆に、SNSやネットサーフィンを可能な限り避けるようにするのです。
これであれば、情報の大海原に飲まれることなく、実用的な情報のみを収集できるようになるでしょう。
コミュニケーション力
リーダーである以上、ほぼ間違いなく、他者とコミュニケーションを取る機会が増えます。
それどころか、メンバーとのコミュニケーションがリーダーの仕事といっても過言ではありません。
そのため、人を動かすためのコミュニケーション力は、リーダーに必要不可欠だと言えます。
コミュニケーションは、言葉や文字だけでなく、表情やジェスチャーも含まれます。
これらの非言語的な要素を活用して、仕事に適した雰囲気を構築するのもリーダーの仕事の1つです。
業務遂行力
実力先導型のリーダーシップを重視しなくとも、メンバーのお手本になるくらいの高い業務遂行力は、どのリーダーにも求められています。
「仕事のできる上司」と「仕事のできない上司」だったら、どちらの上司の言うことの方が信頼できるでしょうか。
当然のことながら「仕事のできる上司」のはずです。
リーダーは部下に舐められない程度の業務遂行能力が、最低限必要だと言えます。
判断力
リーダーシップでは判断力も求められます。
正解かどうかはわからなくとも、物事をハッキリとさせる判断力が無くては、メンバーもついてきません。
また、感情的に判断するのではなく、論理的かつ客観的に判断する力も必要です。
少なくともメンバーを説得できるだけの判断材料を、常に意識した方がいいでしょう。
意志力
リーダーシップでは意志力も求められます。
意思力とは、簡単に言えばやり遂げる力です。
目先の誘惑に負けず、目標達成まで業務をやり遂げる力が、リーダーに必要だと言えます。
メンバーが目先の誘惑に惑わされていても、リーダーの方向性がブレなければ、いくらでも軌道修正できます。
逆に、リーダーの方向性がブレてしまうと、途端に組織が脆くなるものです。
リーダーは意志力を養うためにも、目標の細分化や業務の記録化などを習慣にするといいでしょう。
育成能力
リーダーシップでは、メンバーを育成する力が求められます。
リーダーがどれだけ優れていても、メンバーがダメだと、チームを組んだ意味がありません。
足の引っ張り合いになって逆効果になります。
そのため、リーダーはチームの成果を最大化させるためにも、メンバーを育成する力が求められています。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- リーダーシップ力はチームを引っ張っていく力のこと
- 日本国内でリーダー人材が強く求められている
- チームの成果を最大化させるアプローチは実に多様で、様々な能力がリーダーに求められる
現在、リーダー人材が日本国内で不足し、かつ少子高齢化が進んでいることから、チームの成果を最大化できるリーダー人材が強く求められています。
また、リーダー人材でなくとも、視座を高めるために、全ての従業員が一定のリーダーシップ力を持っておいた方がいいでしょう