企業活動からスポーツ活動まで、あらゆる組織活動に求められているのがリーダーシップです。
リーダーシップを理解していればいるほど、チームは上手く回ります。
その中で、多くの研究者がリーダーシップについて研究し、実際にある程度まで体系化することに成功しています。
それがリーダーシップ論です。
本記事ではリーダーシップ論について解説していきます。
目次
リーダーシップ論とは
リーダーシップ論は、リーダーシップに必要な能力や考え方を体系化しようとする理論のことを指します。
リーダーシップに完璧な正解はないものの、ある程度までは体系化可能です。
また、リーダーシップとは、チームの目標を達成するにあたってのリーダー活動のプロセスを指すと考えていいでしょう。
つまりリーダーシップ論とは、どのようにリーダーが動けばチームのパフォーマンスが向上するかを模索する理論ということになります。
リーダーシップ論を学んだ方がいい理由
リーダーシップ論を学んだ方がいい理由は以下の3つです。
- 選択肢を増やせる
- 知恵に繋がる
- 教養が身に付く
それぞれ詳しく解説していきます。
関連記事:リーダーシップに必要不可欠な3要素 | 権限によらない新たなリーダーシップとは?
理由①:選択肢を増やせる
リーダーシップ論を学ぶことで選択肢を増やせます。
リーダーシップに限った話ではなく「学ぶ」という行為は選択肢の増加に繋がります。
例えば就職活動の際、多くの企業・キャリアを知っている人の方が、当然のことながら選択肢が多いはずです。
もっと広く見れば、就職以外のキャリア選択があるとも言えます。
リーダーシップでも同じです。
実際に自分がリーダーになった際に、複数のリーダーシップ論を知っていれば「このチームだったら、あのリーダーシップ論が良いんじゃないか」というように適切な判断ができるようになるはずです。
たしかにリーダーシップには一定のカリスマ性、つまり才能が必要なのかもしれません。
しかし学ぶことは、努力でカバーできる領域です。少なくとも、リーダーシップ論を学んで損はないでしょう。
理由②:知恵に繋がる
リーダーシップ論を学ぶことは、知恵に繋がります。
一般的に、私たちがインターネットで見ているものは情報です。
たしかに情報を摂取すれば「知る」ことはできるかもしれません。
しかし体系的な知識として理解できるかと言われると微妙なところでもあります。
そして知恵というのは、知識を体系的に理解し、実践を積み重ねることでようやく手に入れられるものです。
リーダーシップを手に入れたいのであれば、実践の積み重ねはもちろんのこと、これまでのリーダーシップの変遷を理解することが重要になります。
リーダーシップを理解しているかどうかで、知恵の習得スピードが大きく違ってくるでしょう。
理由③:教養が身に付く
リーダーシップ論を学ぶことは、教養に繋がります。
なぜならリーダーシップの歴史や最新動向を知ることで、当時の社会がどのようなリーダーを求め、どのような問題意識を抱いていたかを間接的に理解できるからです。
ビジネスマンとなるとどうしても英語やプログラミングなどの「スキル」に注目してしまいます。
しかし、どんなにスキルが優れていても、教養を持たないのであれば、人の上に立つのは難しいと言えるでしょう。
教養を身につける方法はいくつもありますが、その中でも歴史を学ぶことは非常に意義のあることです。
最新の「使えるリーダーシップ」だけではなく、リーダーシップ論の変遷も理解する。これが結果的に、あなたのキャリアアップに貢献するはずです。
リーダーシップ論の歴史
ここではリーダーシップ論の歴史・変遷を解説していきます。
ここで取り上げるリーダーシップ論は以下の通りです。
- 特性論
- 行動論
- コンティンジェンシー論
- 交換型リーダーシップ論
- 変革型リーダーシップ論
- 倫理型リーダーシップ論
それぞれ詳しく見ていきましょう。
関連記事:リーダーシップ3.0とは?権力者から支援者となる新しいリーダーの在り方
特性論
特性論は、リーダーシップ研究において、優秀なリーダーの性格や属性など、特性の部分で共通点を探していく理論を指します。
特性論は、リーダーシップ研究以外でも、人事戦略などで活用されています。
その代表例が「ストレングス・ファインダー」です。
少なくとも就職活動で自己分析に取り組んでいた人なら、一度は特性論を用いて自己分析に取り組んでいたと思います。
しかし、特性論で優秀なリーダーの定義を体系化することができませんでした。
なぜなら性格や属性という概念が非常に曖昧なものだからです。
仕事とプライベートで性格が異なることも珍しくないため、特性を完全に掴み切るのも至難の技でした。
行動論
第二次世界大戦が終了し、リーダーシップ研究が盛んになってから登場した理論が行動論です。
特性論は優秀なリーダーの「特性」で共通点を探そうとしていましたが、行動論では優秀なリーダーの「行動」で共通点を探すアプローチとなっています。
行動であれば、少なくとも特性よりは具体的な概念なので、測定しやすいと言えるでしょう。
行動論によるリーダーシップ研究で有名なのは「マネジリアルグリッド論」と「PM理論」です。
どちらの理論も「目標達成のための行動」と「人間関係のための行動」の2つの行動がベースになっています。
そして最終的に、仕事と人間関係の両方にリソースを割ける人材がリーダーにふさわしいという結論が出ました。
一方で、組織論は外的要因などの様々な変数が含まれていないため、あまりにも単純化されすぎているという批判が挙げられています。
コンティンジェンシー論
組織論で挙げられた批判を元に、新たに注目を集めるようになったのがコンティンジェンシー論です。
「コンティンジェンシー(contingency)」とは「偶然」という意味があり、コンティンジェンシー理論は「そもそも組織構造に最適解は存在しないため、周囲の変化に合わせて対応しながらチームを運営していく必要がある」とした理論を指しています。
つまり、リーダーシップの在り方を常に変化させ続ける必要があるということです。
実のところ、これは限りなく正解に近いと言えます。
現代社会が猛烈な変化の波に襲われていることから、多くの人が、コンティンジェンシー論に共感するはずです。
実際、世界は諸行無常であるため、それに合わせてリーダーシップも変化させる必要があると言えます。
一方で、コンティンジェンシー論はリーダーシップ論を体系化させるには至りませんでした。
変数があまりにも膨大で、構築モデルが事実上、無限大に存在するからです。
逆に言うと、コンティンジェンシー論は「リーダーシップ論を体系化するのは不可能」という発見ができたのが、大きな功績かもしれません。
交換型リーダーシップ論
1970年代に登場したのが、リーダーとメンバーの相互関係に注目した交換型リーダーシップ論です。
交換型リーダーシップ論は、リーダーとメンバーがどのような価値交換を実施するかに注目した理論となっています。
その中で最も多く用いられるのが報酬です。
リーダーは報酬を武器にメンバーをコントロールし、メンバーは規則やルールに応じてリーダーの指示を元に仕事を進めます。
一見すると、上から目線的なリーダーシップのように見えますが、このリーダーシップの在り方を実現させるためには、リーダーがメンバーに信頼されていなければなりません。
また、実力と報酬を連動させる仕組み自体は、現代でも有効に働くと言えそうです。
変革型リーダーシップ論
コンティンジェンシー論によって「リーダーシップは常に変化すべき」という考え方が浸透したことで、積極的に変化を推し進めるリーダーシップ論が1980年代に登場しました。
それが変革型リーダーシップ論です。
変革型リーダーシップ論において求められるのは、コンパスです。
常に正しいコンパスを用意できれば、どんな状況でも正しい判断を下せるようになるでしょう。
では、どのようにコンパスの正確度を高めていくのか。それは、ビジョンを明確にすることです。
コンパスの目的地(ビジョン)をどこに設定するかが、変革型リーダーシップ論の鍵を握ります。
つまり「ビジョンを設定する」ということが、変革型リーダーシップ論において必要不可欠ということです。
1990年代以降、目覚ましい活躍を遂げた巨大IT企業は、2000年代初頭のITバブル崩壊を切り抜け、見事なまでの成長を成し遂げました。
いずれの企業も、壮大なビジョンを掲げ、長期的な視点で経営を推し進め、社会全体の変化を積極的に促している点が共通しています。
常にリスクをとって変化を促せるリーダーは、現代でも間違いなく求められている人材です。
倫理型リーダーシップ論
従来よりも多様性が重視され、それどころか「脱・成長」というワードまで浸透している現代社会では、成長よりも倫理観に重きを置く人材が増えました。
その中で注目されているのが倫理型リーダーシップです。
支配的かつ実力主義なリーダーシップではなく、どのように働き、どのように生きるかに重きを置いたリーダーシップ論となっています。
この倫理型リーダーシップで求められているのは、企業としての成長ではなく、より良い生き方を追求する姿勢です。
どのようにすれば社会が素敵になるかを重視するため、メンバーに対しても倫理的な行動を求めます。
もちろんリーダーも例外ではありません。
リーダーがどのような存在であるべきかを倫理的に追求しようとしているのが、現代社会の風潮だと言えます。
最新のリーダーシップ論4選
近年注目されているリーダーシップ論は以下の4つです。
- サーバント・リーダーシップ
- ポジティブ・リーダーシップ
- レベル5・リーダーシップ
- オーセンティック・リーダーシップ
それぞれ詳しく解説していきます。
サーバント・リーダーシップ
サーバント・リーダーシップは、リーダーがメンバーの奉仕することによってチームを引っ張っていくリーダーシップを指します。
日本サーバント・リーダーシップ協会によると、サーバントなリーダーには以下の10つの特性が求められるそうです。
- 傾聴
- 共感
- 癒し
- 気づき
- 説得
- 概念化
- 先見力、予見力
- 執事役
- 人々の成長に関わる
- コミュニティづくり
サーバントには「使用人」という意味があります。
つまりリーダーが使用人になってメンバーを支えることで、最大限のパフォーマンスを発揮してもらうというのがサーバント・リーダーシップの目的です。
ポジティブ・リーダーシップ
ポジティブ・リーダーシップは、チームにポジティブな雰囲気を与えて健康的な働き方を促すリーダーシップのことを指します。
ポジティブな雰囲気を作ることで、働くことが楽しくなり、モチベーションが向上したり人間関係が良好になったりするメリットがあります。
一方で、アメとムチのバランスが難しいのがデメリットです。
重要なのは「楽しい」と「楽」を同列に並べないことだと思われます。
仕事を楽しむのは良いとして、仕事を楽なものにしてしまっては、業績が落ちてしまいます。
ポジティブ・リーダーシップと並行で成果主義を重視するなど、一定の工夫が必要なリーダーシップと言えそうです。
レベル5・リーダーシップ
レベル5・リーダーシップは、リーダーシップを発揮するために必要なステップを5つにまとめたものです。
5つのステップは以下の通りとなっています。
- 第1水準:優秀な個人
- 第2水準:組織に寄与する個人
- 第3水準:優秀な管理者
- 第4水準:優秀な経営者
- 第5水準:第5水準の経営者
第5水準の経営者とは、第1水準から第4水準の要素を全て兼ね備え、それでいて屈強な精神と謙虚さを持ち合わせた人材を指します。
以上のような第5水準の人材を見つけ出し、その人材をトップに据えることが、現代社会で求められているという考え方です。
オーセンティック・リーダーシップ
オーセンティック・リーダーシップは、自分自身の価値観を重視したリーダーシップのことを指します。
倫理観と強烈なビジョンを持ち合わせていれば、メンバーがリーダーを信頼するようになるとするリーダーシップ論です。
これぞまさに倫理的リーダーシップ論の代表例と言えるでしょう。
関連記事:オーセンティックリーダーシップとは?メリット・デメリットも解説!
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- リーダーシップ論の歴史は想像以上に長い
- どの時代でもリーダーシップが求められてきた
- 現代で求められているリーダーシップは変化を促し、かつ倫理観を重視すること
やはり、リーダーシップ論の変遷を踏まえた方が「なぜこのリーダーシップが求められているか」を理解しやすくなります。
実際、企業活動では様々な世代の方と関わり、それぞれの世代で価値観も異なります。
これらの人々と上手く仕事を進めるためにも、リーダーシップ論の歴史を抑えておいた方がいいと言えるでしょう。