変化の激しい現代社会では、スピーディーに事業を進めるために、多くの企業が即戦力人材を求めています。
そこで注目されているのがキャリア採用です。
本記事では、キャリア採用の概要やメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
目次
キャリア採用とは?
キャリア採用とは「就業経験があり、かつ業界経験や職種経験のある人材」を採用することです。
例えばエンジニア募集で、エンジニア経験3年以上の人材を求めている場合はキャリア採用だと言えるでしょう。
新卒採用との違い
新卒採用とは、その年に学校(高校、専門、大学)を卒業する人材を対象とした採用方式です。
そのため、通常の新卒採用において就業経験や業界経験を条件に加えることはほとんどありません。
また、多くの大学生が卒業するのが3月なので、4月に入社する人材を一括で採用する新卒一括採用を用いることがほとんどです。
キャリア採用は就業経験や業界経験を有している人材を期間問わず募集する点で、新卒採用と大きく異なります。
ただし、既にインターンなどで就業経験のある学生がいる点には注意が必要です。
関連記事:新卒採用とは?中途採用との違いやメリット・デメリットを解説
中途採用との違い
中途採用は、業界や職種経験ではなく、就業経験があることだけが要件となります。
例えばエンジニア募集であるにもかかわらず、エンジニア経験を要求しない場合は、中途採用と言えるでしょう。
そのため、就業経験を求める点に関しては同じですが、業界・職種経験を求めるかどうかが中途採用とキャリア採用の違いだと言えます。
中途採用のなかにキャリア採用が含まれると認識しておくのが正しいです。
関連記事:中途採用とは?新卒採用との違いやメリット・デメリットについても解説
ジョブ型雇用との違い
ジョブ型雇用は、職務内容を明確に定義した人材採用です。
そのため、ジョブ型雇用で採用した人材は、その職務に配属することが基本となります。
例えばエンジニア職をジョブ型雇用で採用する場合、必ずしも就業経験を設ける必要はありません。
エンジニアとしてのスキルを有しているであろう経験(アプリ制作実績など)があれば、ジョブ型雇用で採用可能です。
一方のキャリア採用は、職務経験というよりは、それ以前のキャリア全体を通して採用するイメージです。
例えばエンジニア職であれば、サービス開発経験などではなく、「エンジニア歴◯年以上」のような大まかな就業経験を要件に加えます。
キャリア採用に比べてジョブ型雇用の方が、職務内容により深く突っ込んだ採用方式です。
キャリア採用が増えている理由
キャリア採用が増えている理由としては、以下の2つが挙げられます。
- 転職が当たり前になっているため
- VUCAに対応するため
それぞれ詳しく解説していきます。
関連記事:中途採用の目的と失敗しないために必要なポイントを紹介
転職が当たり前になっているため
キャリア採用が増えている理由としてまず挙げられるのが、転職が当たり前になっていることです。
従来のキャリアプランでは、多くの人が「終身雇用」を前提としていました。
つまり「1つの会社で定年まで働くことが良い」とされていたのです。
しかし現代では、終身雇用で定年まで安定して働くのではなく、転職を繰り返してキャリアやスキルを習得することを求める人材が増えています。
就職情報会社のディスコが2022年2月後半に実施した調査によると、入社1年目の社員の中で「転職を検討している」と答えた人が約4割だったそうです。
つまり、現代の若者は、転職を前提に会社に入社していることがわかります。
そのため、必然的に中途採用者が増えている現状があり、その中でキャリア構築に意欲的な人材を確保する手段として、キャリア採用が注目されているのです。
VUCAに対応するため
現代はVUCAの時代です。
VUCAとは「Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)」の4つのキーワードの頭文字を取った言葉で、簡単に言えば「変化が激しく予測不可能な状態」を指します。
そのため、個人も企業も、流動性の高い労働市場を求めるようになっているのです。
まず個人の視点で見ると、VUCAの時代で何十年も会社が存続することはほとんどありません。
そのため、終身雇用で一つの企業で経験を積むのではなく、いくつもの企業で転職を繰り返して市場価値を高めた方が、キャリア構築で有利に働くと考えられます。
一方、企業の視点で見ると、VUCAの時代では全く予測できないトラブルが発生する可能性があり、財務状況が突然悪化する可能性も十分あります。
この際、人材の流動性を高めておけば、いざという時に事業を縮小させることが容易になります。
また、ビジネスチャンスが突然訪れた時には、即戦力人材を集めやすいキャリア採用との相性が良いことも考えられるでしょう。
以上のことから、変化の激しいVUCA時代を生き抜くために、キャリア採用が必要不可欠となっています。
キャリア採用のメリット
キャリア採用のメリットは以下の3つです。
- 即戦力人材を採用しやすい
- 教育コストを抑えられる
- 新しい文化を取り入れやすい
それぞれ詳しく解説していきます。
即戦力人材を採用しやすい
キャリア採用は、即戦力人材を採用しやすいのがメリットです。
キャリア採用では、すでに職種・業界経験のある人材を対象となっているため、ゼロから指導する必要はほとんどありません。
特に現代のVUCA時代では、スピードが求められています。
キャリア採用で即戦力人材を採用できれば、入社後すぐの活躍が期待できるため、事業をスピーディーに展開できるようになるでしょう。
即戦力人材を獲得したい際は、まずキャリア採用を検討するのがおすすめです。
教育コストを抑えられる
キャリア採用で獲得した人材は、既に社会人基礎力を身につけていることが多く、それでいて職種・業界経験もあります。
教育が必要なのはあくまでもカルチャーや社内ルールのみです。
そのため、新卒採用などのポテンシャル採用に比べると、教育コストが発生しづらいのがキャリア採用のメリットと言えます。
人材育成する時間を確保できそうにない場合は、キャリア採用がおすすめです。
新しい文化を取り入れやすい
キャリア採用で獲得した人材は、既に他社で経験を積んでおり、自社にはない価値観や考え方を有していることが多いです。
そのため、キャリア採用を積極的に活用することで、新しい文化を取り入れられる可能性があります。
近年はダイバーシティの考え方が普及しているため、新しい考え方を柔軟に取り入れる姿勢が必要です。
外からの発想を取り入れて、変化に対応できる組織作りを意識すべきでしょう。
キャリア採用のデメリット
キャリア採用のデメリットは以下の3つです。
- 未経験採用より賃金が高い
- 転職する可能性が高い
- 既存社員からの不満発生の可能性がある
それぞれ詳しく解説していきます。
未経験採用より賃金が高い
キャリア採用は、未経験採用に比べて賃金が高い傾向にあります。
キャリア採用に該当する人材は、既に経験が豊富です。少なくとも、相場以上の給与を設定する必要があるでしょう。
また、給与単価が高い分、それに比例する形で採用コストも上昇します。
そしてキャリア採用は基本的に通年実施されるので、他社の採用時期と被り、優秀な人材の取り合いになることも考えられるでしょう。
多くの場合、優秀な人材は同じような職場環境であれば給与の高い方を選びます。
この点からも、キャリア採用はどうしても賃金が高くなりがちです。
転職する可能性が高い
キャリア採用に応募する求職者の大半は、自身のキャリア構築のために転職を繰り返します。
そのため、自社でやれることをやった後に、さらなるキャリアアップを目指して他に転職してしまう可能性が高いです。
もちろん、キャリア採用を実施する以上、このデメリットは許容しなければなりません。
ただ少なくとも、採用コストの観点からは早期転職は防ぐべきです。
キャリア採用の面接時に、求職者のキャリア展望を確認するようにしましょう。
そして入社後のアフターフォローも充実させるべきです。
これらの対策で、ある程度は早期転職のリスクを下げられる可能性があります。
既存社員からの不満発生の可能性がある
キャリア採用で入社してきた即戦力人材は、他社で培ってきたカルチャーを持っているため、既存社員とは異なる価値観を持っていることも珍しくありません。
即戦力人材を獲得する前に、まずは受け皿となる既存社員に適切な説明をする必要があるでしょう。
そしてキャリア採用を実施した後も、アフターフォローを充実させるべきです。
そのため、キャリア採用実施時には「能力の有無」だけでなく「価値観・カルチャー」も重視して、採用活動を進めるとよいでしょう。
キャリア採用に適した職種
キャリア採用に適した職種としては以下の3つが挙げられます。
- 営業
- フルスタックエンジニア
- 研究・開発
それぞれ詳しく解説していきます。
営業
実力至上主義である営業職は、キャリア採用に適した職種だと言えます。
他社で既に結果を出している人材を獲得できれば、確実な成果を見込めるでしょう。
また、営業の成功率を高めるノウハウを手に入れることができるかもしれません。
それに加え、業界経験を有している営業職は、市場や商品の特性をあらかじめ把握している場合がほとんどです。
そのため、やはり教育コストが少なくなり、即戦力人材として期待できます。
営業部門のパフォーマンス向上を目指すのであれば、既に結果を出している営業人材をキャリア採用で獲得するのがおすすめです。
フルスタックエンジニア
プログラミングスキルを有しているエンジニアは、キャリア採用との相性が非常に良い職種です。
特に、複数のスキルを有するフルスタックエンジニアは、自社でIT関連事業を立ち上げる際に重宝される人材だといえます。
そもそも、新しいプログラミング言語を習得するには1ヶ月から3ヶ月程度の時間が必要です。
これをショートカットできるだけでも、キャリア採用を実施する意義があります。
そして可能な限り、上流工程から下流工程までをカバーできるフルスタックエンジニアを採用するのがいいでしょう。
もし、ソフトウェアを内製で開発したい場合は、キャリア採用でサービス立ち上げ経験のあるフルスタックエンジニアを獲得するのがおすすめです。
研究・開発
数ある職種の中でも実績が重視され、専門的な知識も要求される研究・開発の関連職は、キャリア採用との相性が抜群です。
むしろ、文系の新卒採用ではほぼ確実に獲得できない人材だといえます。
そのなかでも、企業が提示できるコストを考慮して研究開発できる人材は、そう多くありません。
大学での研究・開発経験ではなく、企業での研究・開発経験のある人材であれば、コスト・時間感覚を有しているはずです。
即戦力人材を求めるのであれば、企業での研究・開発経験を有している人材を、キャリア採用で獲得するのがいいでしょう。
キャリア採用を成功させるためのポイント
キャリア採用を成功させるためのポイントは以下の3つです。
- 求める人材を明確にする
- 給与水準と職場環境を整える
- 自社のリアルな部分をしっかり伝える
それぞれ詳しく解説していきます。
求める人材を明確にする
キャリア採用を実施する前に、まずは自社が求める人材を明確にしましょう。
例えば、同じエンジニア職でも、WebエンジニアからAIエンジニアまで、幅広いカテゴリーが存在します。
まずは自社が、具体的にどのような人材を欲しているかを明確にすべきです。
あらかじめ明確にしておけば、即戦力人材と自社とのマッチ度が高まっていきます。
給与水準と職場環境を整える
キャリア採用を実施する際は、事前に給与水準と職場環境を整えておきましょう。
まずキャリア採用の求職者は、優秀な人材であればあるほど、他社から高額の給与を提示されている可能性があります。
そのため、もし優秀な即戦力人材を獲得したいのであれば、あらかじめ相場よりも高い給与を用意するのもよいでしょう。
そして、キャリア採用で獲得した人材がすぐに活躍できるように、職場環境もしっかり整えましょう。
事前にしっかり説明して、即戦力人材の受け入れ環境を整えることが大切です。
自社のリアルな部分をしっかり伝える
キャリア採用の面談時では、自社のリアルな部分をしっかり伝えることが大切です。
あらかじめ自社のカルチャーを把握してもらうことで、入社後のトラブルを防げる可能性があります。
また、自社の課題をオープンにすることで、キャリアアップを目指す求職者が「課題解決の実績」を築こうと、モチベーションを上げることも考えられます。
どちらにせよ、自社のリアルな部分をしっかり伝えて、求職者とのミスマッチを防ぐ必要があるでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- キャリア採用は業界・職種経験を有している人材を獲得する採用方式
- キャリア採用は即戦力人材を獲得できるが、賃金が高いのがデメリット
- キャリア採用の成功率を高めるには、自社が求める人物像を明確にし、受け入れ体制も整えておくべき
キャリア採用は即戦力人材を獲得するために必要不可欠な手段です。
人事担当者は、キャリア採用を活用して、自社の事業成長に大きく貢献できる人材を見極める力を手に入れるべきでしょう。