LLPとは、2005年から新たに定められた事業体です。
法人ではありませんが、株式会社と任意組合の良い点を組み合わせたような形態が特徴となっています。
そこで本記事ではLLPについて、
- 概要や特徴
- メリット・デメリット
- 混同されがちな言葉との違い
- 設立方法
- 活用時の注意点
を解説していきます。
目次
LLP(有限責任事業組合)とは
LLPとは、「Limited Liability Partnership」の略称で、正式名称は「有限責任事業組合」です。
経済産業省によって定義されており、2005年に成立・施行された「有限責任事業組合契約に関する法律」によって、LLPを設立できるようになりました。
LLPはもともと、イギリスで誕生した事業体で、その後にアメリカで普及し、2005年に日本で導入されたという経緯を持ちます。
会社でもなく組合でもない、新たな事業体です。
導入の背景
日本でLLPが導入された背景には、海外におけるLLPやLLCによる共同出資や、合弁企業の流行があります。
当時、海外においては新たに設立されるLLPの数が、新規設立株式会社数に匹敵するほど立ち上げられていました。
そういった状況もあり、日本でも企業間の連携によって新たな価値や発想を育む社団づくりのために、法整備が進められたのです。
関連記事:有限会社とは?株式会社との違いやメリット・デメリットを解説!
LLP(有限責任事業組合)の特徴
LLPの特徴には下記のようなものが挙げられます。
有限責任性
LLPの組合員は出資額に応じた有限責任を負います。
したがって、事業が負債を負った場合でも、組合員が債務を負う必要はありません。
出資者はベンチャー企業やスタートアップなどのハイリスクな事業に対する出資のハードルが下がります。
関連記事:資金調達の注意点とは?ベンチャー企業が確認すべき資金調達項目を詳しく解説!
内部自治の原則
LLPの2つ目の特徴は、内部自治原則です。
このため出資額を問わず、利益や権限の配分を任意で設定することができます。
したがって、出資額ではなく事業への貢献度や労働負荷をもとに配分を設定することも可能です。
法人税が課されない
LLPの3つ目の特徴は、法人税が課されない点です。
LLPは法人税が課されず、構成員の所得に対して税を課す課税制度である「パススルー課税(構成員課税)」が採用されています。
パススルー課税によって、二重課税の問題を解決できることや、出資者の他の所得と通算して課税所得を算定することによる節税効果があるのです。
LLP(有限責任事業組合)のメリットとは
LLPには下記のような利点が挙げられます。
低コストで設立できる
株式会社の設立費用はおよそ25万円であるのに対し、LLPの設立費用は6万円です。
このように、LLPは比較的低コストで設立することができます。
関連記事:起業するには?まず考えておくべき4つのポイントや必要な費用を解説
短期間で設立可能
株式会社の設立には、一般的におよそ1ヶ月程度かかりますが、LLPの場合は数日から2週間ほどで設立できます。
決算公告義務がない
LLPは決算公告義務がありません。
株式会社であれば、出資者と経営者が異なるため、決算書を通じて自社の状況を知らせる義務を負います。
内部自治の徹底ができる
LLPでは、「出資者=組合員」であるため、組合員自身がルールを定めることができます。
株式会社であれば、通常の場合は出資比率によって損益や利益の分配がなされますが、LLPであれば、組合員同士の合意により、出資比率を問わず権限・利益を分配することが可能です。
LLP(有限責任事業組合)のデメリットとは
上記のように、利点が多く便利なLLPですが、下記のような弱みもあるため注意しなければなりません。
法人格がない
LLPには法人格がありません。
これにより、法人税が課されないという利点につながりますが、多くの利益が期待できる場合は、法人化することで節税効果を高められるケースがあるため、慎重な検討が必要でしょう。
株式会社に変えることができない
LLPは株式会社に組織変更することはできません。
したがって、一度LLPを解散した後に株式会社を立ち上げる必要があります。
会計処理が煩雑
LLPは会計処理が煩雑となるので、専門家の税理士に一任しなければなりません。
確定申告を行いますが、パススルー課税となっているため、一般的な確定申告とは異なることがその理由です。
LLPを設立する方法とは
LLPを設立するには、下記の3つの段階を経て進めていきます。
- 組合員による組合契約書をつくる
- 所轄の法務局に設立登記の申請を行う
- 登記が終わった後、関係機関に登記簿謄本と印鑑証明書を提出する
組合契約書を作る際に必要な書類は場合によって異なりますが、主に下記のようなものが必要になります。
- 有限責任事業組合契約書
- 出資の払込を証する書面
- 主たる事務所の所在地を決めたことを証する書面
- 組合員の印鑑証明書
- 組合員が法人であるときに必要な書類
- 現物出資がある場合に必要な書類
- 有限責任事業組合契約効力発生登記申請書
- 委任状(代理人の場合に限る)
- 印鑑届書
- 印鑑カード交付申請書
これらを法務局に持っていき、登記申請を行うことで組合の登記簿標本と印鑑証明書を受け取ることができます。
そして、それらを税務署や年金事務所、労基署などに提出することでLLPを設立できます。
まとめ
LLPの設立者は有限責任となるため、リスクが低いという点ではメリットがあります。
一方で、法人格がないため、信用力の増加には繋がりません。
株式会社よりも安く設立できる法人格にはLLCもあります。
目的に合わせて、ご自身に合うものを選ぶことが大切です。