週刊誌での連載は終了しましたが、未だに根強い人気を誇る『鬼滅の刃』。
ご覧になった方の中には、鬼殺隊のリーダーである産屋敷耀哉(うぶやしき かがや)に魅力を感じた方も多いのではないでしょうか?
産屋敷耀哉は病弱のため直接戦場に向かうことはできませんが、その慈愛の精神から多くの部下に慕われている人物です。
鬼を倒せるような実力を持っているわけではないのに、個性豊かな鬼殺隊をまとめ上げることができたのは、産屋敷耀哉にリーダーの資質があったからです。
本記事では、鬼殺隊を率いる産屋敷輝哉のリーダーシップを深堀りします。
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鬼滅の刃とは?
※本記事はネタバレを含みます。
2020年に引き続き、2021年も「年間コミックランキング」で1位に輝いた『鬼滅の刃』。その勢いは止まることはありません。
本作品の主人公「炭治郎」は田舎の一軒家に住む6人兄弟の長男。慎ましくも幸せな生活を送っていました。
物語は一家が鬼に襲撃されるところから幕を開けます。炭を売りに街へ出ていた炭治郎は「今日は鬼が出るから泊まっていきなさい」と知り合いに声をかけられ、その晩は自宅に帰りませんでした。
翌朝、戻ってみると家族は鬼に殺されていて、かろうじて生き残っていた妹の禰豆子も鬼になっていました。
そんな妹を人間に戻すための手がかりを探しに、炭治郎は鬼を殲滅するための組織「鬼殺隊」に入隊するのです。
鬼である妹の存在を隠しながら挑んだある任務の中で、炭治郎は相手を倒した後、意識を失ってしまいます。再び目を覚ました際に周りにいたのは、鬼殺隊の幹部である柱たち。
そして屋敷の奥からいかにも病弱そうな人物が出てきました。それが鬼殺隊のトップ、「産屋敷輝哉」でした。
鬼滅の刃はなぜ日本でヒットしたのか?
『鬼滅の刃』がヒットした理由には登場する鬼の「リアリティさ」が上げられます。
「鬼が実際にいるわけない」と思う方は多いでしょうが、かつて、日本では「人食い鬼」がいたと信じられていた時代があります。
明治時代末期から大正時代にかけて、「肺病には人間の丸焼きが一番」という噂が広まり、それを真に受けた人々が本当に「人」を食べてしまう痛ましい事件が起きました。
これをマスコミは「人食い鬼事件」として報道しています。
参考:猟奇「少年殺害臀肉切り取り事件」(下)3つの殺人が矛盾なくつながる予審決定書 | 産経新聞
鬼滅の刃が日本社会に与えたもの
『鬼滅の刃』が日本社会に与えたものは「生きる価値の再認識」でした。
国内で多くの人々を熱狂させた「無限列車編」をはじめ、鬼滅の刃では、重要な役割を担っているキャラクターが次々と死を迎えます。
新型コロナの流行により、私たちの生活にも「死」が身近になりました。
迫りくる死と向き合い、諦めずに立ち向かおうとする炭治郎の姿は、コロナに苦しむ私達とどこか重なって見えます。
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「君たちはどう生きるか」から見るリーダーシップ信頼されるリーダーがいるだけでチームは変わる
『鬼滅の刃』で主人公たちが所属する「鬼殺隊」の最終目標は、鬼の当主「鬼舞辻無惨」を倒すことです。
つまり、組織のリーダーである産屋敷輝哉の役割は、「打倒鬼舞辻無惨」の旗を下げず、部下を率いて戦い続けることです。
自身が戦うことができないというハンディキャップを抱えながらも、「胡蝶しのぶ」「煉獄杏寿郎」などの柱たちを従えることができたのは、産屋敷輝哉が信頼に足る人物だったからでしょう。
ここからは、自らが戦わずとも信頼を集めたリーダー「産屋敷輝哉」について詳しく解説します。
産屋敷耀哉とは?
誕生日 | 不明 |
年齢 | 23歳 |
身長 | 不明 |
体重 | 不明 |
出身地 | 不明 |
声優 | 森川智之 |
産屋敷輝哉は、産屋敷家の97代目当主です。いつも優しく鬼殺隊の剣士を見守っている、慈悲に満ちた心で鬼殺隊の隊員たちを導くリーダーです。アニメ版では声優の森川智之さんが産屋敷輝哉の声を演じています。
産屋敷輝哉は自身で戦うことはできないほどに病弱な体です。しかし、個性豊かな柱をまとめ上げる人身掌握術を持ち合わせています。
漫画での初登場シーンでは、鬼になった禰豆子の処分について柱のほとんどが「鬼になった人間が人を襲わない保証はない!」と産屋敷に詰め寄る中「人を襲うということもまた証明できない」と、2年間1度も人を襲っていない禰豆子の本質を捉えた一言で柱たちを黙らせました。
この判断が正しかったということは物語終盤でわかります。
部下の反対が多い中でも、「正解」を導き出す判断力の鋭さは、彼が鬼殺隊のリーダーとしてふさわしいことを示しています。
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鬼殺隊の中には「煉󠄁獄杏寿郎」「悲鳴嶼行冥」など剣士の中でも群を抜いて強い柱が存在しています。
その中で、産屋敷輝哉は、柱やその他の剣士を率いるリーダーとしての役割を担っていました。
柱たちが集まった柱合会議では、産屋敷輝哉が現れると、禰豆子を殺そうと躍起になっていた柱達も一斉に膝を付き、誰が最初に挨拶をするのか競い合うほど。
直接、戦えないながらも、部下である剣士たちに信頼されていることがよく分かる有名なシーンです。
「気持ち悪い」と揶揄される産屋敷耀哉の病気の正体
産屋敷輝哉は、額を中心に顔の上半分が焼けただれたようになっています。
その影響で目も見えず、柱の前に姿を表す際には自身の子供達に手を引かれながら現れます。
この病気は、産屋敷輝哉個人のものではなく代々一族が抱える呪いです。
実は、鬼の親玉・鬼舞辻無惨は産屋敷一族の出身。
産屋敷一族は、その血筋から鬼を出してしまったことにより、生まれてくる子どもたちが病弱ですぐに死んでしまうという呪いを受けることとなりました。
神主からは「打倒無惨」のために一族は心血を注ぎなさいと言われており、神職の妻をもらうことでなんとか寿命を延ばしてきました。
産屋敷輝哉も例外ではありません。23歳の若さで既に呪いの進行は進み、物語中盤には部下の「討伐報告」に喜ぶのもつかの間、すぐに吐血をするほど弱っていることがわかります。
産屋敷耀哉の特徴・能力
柱の中でも特に荒々しい性格を持っている風柱・不死川実弥でさえも、産屋敷輝哉の前では礼儀正しい振る舞いを見せていました。ここからも、産屋敷輝哉の部下からの信頼はとても厚いと分かります。
そんな柱から信頼を集める産屋敷輝哉の特徴と能力について解説します。
刀を10回も振れないくらい力は弱い
病弱な産屋敷輝哉は、肉体的には全く強くありません。
「刀を振ってみたが、脈が狂ってしまって10回も続かなかった」と本人が話す場面があります。
風柱・不死川実弥も「武術を齧ってすらねぇだろう、見れば一発でわかる」と語っています。
鬼舞辻無惨を殺すため、幼少期から命を少しでも繋げることに意識を集中していたので、武術の鍛錬は行わなかったようです。
「1分の1揺らぎの声」を持っている
彼は「1分の1揺らぎの声」と呼ばれる特殊な声を持っています。
「f分の1揺らぎの声」とは、人間の生体リズムと共鳴し、聞いているだけで高揚感や心地よさを感じる声です。初めて耀哉の声を聞いた炭治郎も「不思議な高揚感だ」と発言しています。
作中では「f分の1揺らぎの声を持つ者は、カリスマ性があり、大衆を動かす力を持つ者がこの能力を備えている場合が多い」と説明されています。
なお、1分の1の揺らぎの声は「産屋敷一族特有のもの」と説明されており、耀哉特有のものというわけではないようです。
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ここからは、耀哉がなぜリーダーとして活躍できたのかを解説します。
【産屋敷耀哉のリーダーシップ①】他人の自己肯定欲求を満たす
耀哉が登場しているシーンで印象的なのは、積極的に剣士を褒める言葉を口にしていることです。
例えば、生まれた忍びの家系を抜け、鬼殺隊に入隊するという過酷な道を選んだ音柱・宇髄天元に対しては、選択した道の過酷さに共感しながら「君は素晴らしい子だ」と宇髄を褒めています。
「人から称賛されたい」という心理を「自己肯定欲求」と呼びますが、耀哉は自己肯定欲求を満たして人心把握をするのが得意でした。
柱を含め鬼殺隊には、辛い過去や心に大きな傷を持っている剣士も入隊しています。
そんな剣士に対し、ありのままの自分を認めてくれ、自らの選択を肯定してくれる耀哉の存在は大きいものでした。
【産屋敷耀哉のリーダーシップ②】自分の弱さを認める本当の強さがある
産屋敷耀哉は鬼殺隊のリーダーでありながら、権力を誇示することなく、謙虚な姿勢を持ち合わせています。風柱・不死川は、柱になった当初、直接鬼と戦わない耀哉に対して苛立ちをぶつけたことがありました。
そんな不死川に対し耀哉は優しくも、少し悲しい顔で「ごめんね」と真っ直ぐに謝罪し、病弱であるために剣士になれなかったと話しました。
耀哉の悲しい思いを聞いた不死川は、以後、他の柱同様敬意を持って話すようになります。
会社でも、役職が上がり上司となった際、自分の弱さを見せることで、部下が付いてこないのではないかと考えてしまうかもしれません。
しかし、耀哉のように誰に対してもフラットな対応をし、自分の弱さを見せることで、部下から信頼を得ることができます。時にはそれも必要でしょう。
【産屋敷耀哉のリーダーシップ③】確固たる意思を持っている
人からの信用を得るためには、「強い意思を示す」ことが重要です。意思の力が弱いと思われてしまうと、部下から「困難な状況に陥った時に自分に利益のある選択を優先するのでは」と思われるリスクがあります。
産屋敷耀哉は「鬼舞辻無惨を自分の代で殺す」という強い意思を持っています。実際、最終決戦では自らの意思で、鬼舞辻無惨とともに自爆するという選択をしました。
強い思いがあるから部下は上司を信頼することができます。
産屋敷耀哉と部下との間にはそうした絆があったのでしょう。
産屋敷耀哉のリーダーとしての名言
産屋敷耀は、普段から鬼殺隊の剣士のことを一番に考え行動しているリーダーです。ここからはそんな耀哉の、リーダーとしての側面が見え隠れする名言を解説します。
叶うことなら私も君たちのように体一つで人の命を守れる強い剣士になりたかった
風柱・不死川実弥は兄のような存在だった粂野が鬼との戦いで亡くなり、自分だけが柱となった現実に苛立ちを感じ、耀哉のことを「自分の手を汚さず、命の危険もなく、一段高い所から涼しい顔で指図するようなやつ」と決めつけ、怒りをぶつけました。
そんな不死川に耀哉が言ったのがこのセリフです。
誰もがそうですが、自分の思い通りに事が進むわけではありません。
産屋敷家の当主に生まれ、鬼殺隊のリーダーであるにも関わらず、呪いのせいで戦えないことは、耀哉にとって歯がゆい思いであると考えられます。
しかし、作戦を練ることや指示を出すことなど、自分にできることを最大限に行う耀哉だからこそ部下に信頼されているのではないでしょうか。
君たちが捨て駒だとするならば 私も同じく捨て駒だ 鬼殺隊を動かす駒の一つに過ぎない
こちらの台詞も、先程と同じシーンでやり場のない怒りと悲しみをぶつけた不死川に、耀哉が発した言葉です。
そして「私は偉くもなんともない。それよりも人の命を守ってくれ」と続けます。
自分をコマとして扱ってでも、求めるビジョンを達成しようとする姿勢が、怒りで溢れていた不死川の心を動かしました。以後不死川は耀哉を尊敬し慕うこととなります。
ここでのポイントは、耀哉がポジションを役割として考えているということです。
指示を出す立場だから偉いのではなく、あくまでも目標を達成するための手段として、リーダーというポジションがあるだけです。
決して傲ることのない耀哉の本質が表れた言葉です。
君を悪く言う人は皆君の才能を恐れ羨ましがっているだけなんだよ
この台詞は、以下の特異体質をコンプレックスに思っていた恋柱の甘露寺蜜璃に対しての言葉です。
上記の特異体質をネガティブな印象からポジティブな印象にとらえさせるコーチングスキルが耀哉にはありました。
コンプレックスや劣等感を抱いている部下の弱みを強みへと変えるのも、リーダーに求められるスキルです。
産屋敷耀哉は自身の役割を理解していた
産屋敷一族の恥、長年の目標であった「鬼舞辻無惨」を殺すことができたのは、耀哉が総大将の役割を理解し、部下を鼓舞し、敵を引きつけたからです。具体的には以下が挙げられます。
それぞれ詳しく解説します。
部下を信頼し人間味のある言葉で鼓舞する
産屋敷耀哉は、部下である剣士に対して、常に優しい目や顔で語りかけています。
「人間的な温かみを伝える」上で重要なポイントが以下3つです。
鬼殺隊の中には、心に傷を負っている剣士も多く所属しています。
耀哉が人間味のある行動で接することによって鬼殺隊が一丸となり無惨を倒せたといえるでしょう。
目標を達成するために全力を尽くす
重い病を患いながら、最後まで戦い続けた産屋敷耀哉ですが、最終的には妻と子供、鬼舞辻無惨もろとも自爆しその一生を終えました。
自分の家族まで巻き込んでしまうことに関しては、ファンの中でも賛否両論ありますが、無惨に耀哉が1人でいることに不信感を抱かれないようにする、という戦術であった可能性が高いです。
目標が達成できるのならば、たとえ自らが死んでも実行するといういわば執念のような思いが鬼殺隊全体の意識となり、無惨を殺すという目標が達成できたのではないでしょうか。
産屋敷耀哉に学ぶリーダーの条件
ここまで、耀哉がリーダーとして優秀な理由を解説してきましたが、最後に耀哉から学べるリーダーの条件についてまとめておきましょう。
リーダーとして優秀な耀哉からエッセンスを抜き出すことで、日々の生活に活かすことができるはずです。
思いやりを持ちコミュニケーションを図る
剣士たちが、鬼と戦うなかで危機的状況に陥った時、剣技や体技よりも精神的な支えが最も重要です。
産屋敷耀哉は、当主になってから亡くなった剣士の名前と生い立ちをすべて記憶しています。隊員1人1人に対して自分自身の言葉でコミュニケーションを図っているからです。
信頼関係を築いたり、部下の力を理解するにしても、大事なのはコミュニケーションです。
相手の気持ちを理解して、部下から発言ができる空気づくりも必要です。
参考:リーダーに向いていないタイプとは?リーダーに必要な資質と辞めたいときの対処法について
組織としての目的を明確化し共有する
「なんのために仕事をしていますか?」という問いにはっきりと答えられる方は少ないかもしれません。
仕事をする目的が曖昧であればあるほど、本来の実力も出せず、モチベーションも薄れていきます。
鬼殺隊では、「鬼舞辻無惨を殺す」という共通の目標を剣士全員が持っています。
実際の企業でも、社内全体で目標を共有しておくことにより、部下の意識が高まります。
企業のビジョンを逐一共有し、向っている方向が正しいものかどうかを判断できるようにしましょう。
チームの「意思決定」と「メンバーの能力の最大化」に徹する
産屋敷耀哉は、病弱で剣を振ることが出来ないため、直接的な戦力にはなりません。
しかし、リーダーが、冷静な判断で意思決定をし、自ら課題をクリアするために動いている姿を見せることで、メンバーも行動を起こしやすくなります。
また、メンバーの特性を理解した上で、自発的に取り組みやすい環境を整備し、それぞれの能力を最大化できます。
産屋敷耀哉が鬼舞辻無惨に勝てた理由:組織として勝負をしたから
鬼VS人間の戦いで、結果的にリーダーの産屋敷耀哉は死んでしまいましたが、鬼殺隊は勝利を納めました。
勝敗を分けた要因は「組織として戦ったのか否か」です。
鬼殺隊は、無惨を殺すというチームとしてのビジョンを定めていました。だからこそ、多くの犠牲を出したものの最終決戦で無惨を殺すという目標を果たせたのではないでしょうか。
一方、鬼たちは協力して戦う描写は描かれておらず個人での戦いが基本です。
更に、パワハラのような言動も受けながら戦っていたことを考えると、どちらが勝つかは明白だったといえます。
まとめ
一族の血から鬼舞辻無惨を生み出してしまったことで、短命の呪いを受けてしまった産屋敷輝哉。
耀哉を始めとする鬼殺隊が勝利した理由は、チームメンバーである柱や剣士達を心から信頼していたからです。
鬼舞辻無惨のように力を見せつけ恐怖や権力で部下を縛るのではなく、相手の心に寄り添った言動で信頼された剣士たちは「産屋敷耀哉のため」と本来の力以上のものを発揮できたのかもしれません。
産屋敷耀哉が鬼殺隊として無惨に勝てた理由は、亡くなってしまった剣士のことも一切忘れず剣士1人1人を信頼していたからといえるでしょう。
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