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「君たちはどう生きるか」から見るリーダーシップ

「君たちはどう生きるか」から見るリーダーシップ

1937年に新潮社から出版された「君たちはどう生きるか」。80年近くたった今もビジネスマンの間では名著として扱われ、なおかつジブリ映画の巨匠宮崎駿の次回作のタイトルとしても採用が決まっています。

この本は将来「リーダー」となりうる当時の学生に向けた本であり、この本からは「リーダーシップがある人がどのような考え、動いているのか」を随所に読み取ることができます。

 

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ロングセラーになっている「君たちはどう生きるか」

ロングセラーとなっている本書は、世界情勢が緊迫する太平洋戦争開始4年前の1937年に、未来ある若者たちに向かって「君たちはどう生きるのだ?」と問いかけている本です。

80年以上も前の古い本、しかも本来は児童書でありながら、現在多くの社会人層に受け入れられています。2017年8月に原作を踏襲しつつも時代に合うように、漫画家芳賀翔一が一部修正を入れて漫画化して読みやすくなったということも大きな一因ですが、どこにロングセラーとなるような魅力があるのでしょうか。

「君たちはどう生きるか」はどのような話か

この本が出版されたのは太平洋戦争開始4年前であり、この年は日中戦争が勃発した年でもあります。日本が軍国主義に向けて動き出す中、戦争に向かっていくことに不安を抱いた作者吉野源三郎は、児童書という形で「反戦メッセージ」と「正しく生きるための考え方・材料」をこの本に盛り込んだのです。

日本はまだまだ貧しい時代、学校に通えるのはお金持ちの男子のみです。女性にはまだ参政権すらない時代です。

主人公「コペル君」は旧制中学に通う勉強が得意な15歳、「おじさん」はコペル君のお母さんの弟です。コペル君はお母さんと2人暮らし、コペル君が幼い時に亡くなったお父さんは銀行の重役でした。

15歳の旧制中学2年「コペル君」が主人公。コペル君の学校生活の中で起こった問題やエピソードをコペル君から聞いている「おじさん」は、コペル君にたくさんのことを問いかけ、コペル君はその答えを日常の中に探しています。

コペル君のクラスでは浦川君が陰湿ないじめにあっています。浦川君のいじめに対する対応や彼と自分との違いをきっかけに、世の中のことや深く考え始めます。

そんな中、コペル君の友人北見君が、上級生数人から目を付けられてしまいます。「上級生から北見君を守る」と約束したコペル君でしたが、約束を守ることはできませんでした。

「約束を破ってしまった」と死にたくなるほどの後悔を味わったコペル君は、北見君たちにしてしまったひどいことをどう挽回すればよいのかと考え始めます。

「正しい道に進もうと思っているからこそ悩み苦しんでいる」というおじさんの言葉に、貴方は何を思うでしょうか。

 

悩める大人たちへのメッセージ

コペル君のような「やらなかったがために後悔した」「正しいことができなかった」という経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

直接的な暴力を受けるような経験はなくとも、社会に出ればモラルハラスメントやセクシャルハラスメントで部下を追い込む上司や、いつも他人を見下している同僚の態度に嫌気がさすこともあるでしょう。会社の雰囲気や大きな流れに飲み込まれながら「これでいいのか」と自問自答している人もいるかもしれません。

リーダーシップがある人は、人を見下すような発言や、陰で卑怯なことをしているような人間でしょうか。もちろん能力が高いことは必須条件ですが、それだけではないはずです。

「なぜ勉強するのか」「犯した過ちをどう償うか」「立派そうな人と立派な人の違い」。

人として正しい在り方を述べている本書は、リーダーシップについて思い悩んでいる人だけでなく、人間関係や自分の生き方に悩んでいるすべての人に読んでもらいたい内容です。

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リーダーシップとは

ジョン・C・マクスウェルの著書『これからのリーダーが「志すべきこと」を教えよう』に記載されているように、リーダーシップとは、他人の持つ能力を生かせるように上手に人を導く力です。

リーダーシップを「人を引っ張る力」だと思っている人は多いかもしれません。実際、どのような人にリーダーシップがあるかという問いに「自信がある人」「挑戦し続ける人」など、人を引っ張っていく力を求めた答えが第4位と5位を占めています。

しかし釣り人のように針にかかった魚を無理やりぐいぐいと自分のほうに引き寄せた際に、魚が抵抗して糸が切れてしまってはどうでしょうか。

この魚釣りを会社で例えると、「リーダーシップ」を発揮してプロジェクトを成功させようとしてメンバーをぐいぐい引っ張った結果、それに嫌気がさしたメンバーは退職あるいはプロジェクトから抜けてしまうといった具合です。このようなリーダーを「リーダーシップがある人」とは誰も呼ばないでしょう。

 

リーダーシップの欠如がもたらす悲劇

リーダーシップのない人がリーダーになった場合、どのようなことが起こるのでしょうか?魚釣りの例のようにメンバーが離脱し、最後に残ったのはリーダーのみという場合や、プロジェクトの進みが悪いや完成品の質が悪いなど、様々な悪影響が出てきます。

具体的な例を2つほど見てみましょう。

 

自己中心型リーダーが会社を破壊する

自己中心的型のリーダーでは、プロジェクトは進まず、メンバーの本来の力も発揮できません。むしろ会社に損害を与えることさえあります。

数年前私が働いていた食品製造工場では、生産性向上のための食品加工機械改善プロジェクトを立ち上げました。
メンバーは加工機をよく知る製造課係長のAとAの部下のB、商品開発課のC、品質管理部のDとEの計5名です。このプロジェクトのリーダーは加工機をよく知る製造課のAに決まりました。

最初こそうまく進んでいたプロジェクトですが、機械改造案の話になるとAは自分の意見を譲りません。リーダーたるもの、プロジェクトを「引っ張らなければいけない」と考えていましたし、機械を一番知っているのは自分だと自負していたからです。Aの提案した改造案に品質管理部のDは「問題があるのではないか」と主張しますが、Aは「そんなことはない」と一歩も譲らず会議は長時間化していきます。

次第に嫌気がさしたメンバーは早く会議を終わらせることに尽力し、プロジェクトはほとんどAの意見を基に進んでいきました。

プロジェクトによって機械を改造して半年後、商品にカビが生えているというクレームが入りました。その後プロジェクトで改善した商品パッケージに不具合が見つかり、密封されていなければならないパッケージに空気が入っているものがあることが分かりました。会社はすぐに該当商品700万個を自主回収し、材料費も併せて5千万円を超える損失を出しました。

プロジェクトリーダーであったAは会社のヒアリングに対し「該当の不具合はプロジェクト中に見こせなかった」「不具合やリスクを見つけるのは品質管理部の仕事なのに、該当メンバーは不具合のリスクに気づいていなかったようだ」と説明しました。

 

相手を見下した結果、社員が離れていく

また、以下は私が学生時代の友人から聞いた話です。

従業員100人ほどの会社で営業部長を務めるFは、従業員の半数を占めるパート社員には小さな声で挨拶はするものの自分からは声をかけません。営業部長という高い立場にある自分が、パート社員たちと話をして得られるものは何もないと考えているからです。パート社員もそのことは薄々わかっていました。

ある時営業部の発注ミスで、通常より多くの商品を出荷することになりました。実際の出荷作業をしているのはパート社員たちです。

営業部長はパート社員のリーダーにパート社員残業の依頼を出しますが、残業ができるといって協力してくれたのは50人いるパート社員の内7人程度でした。

営業部長はパート社員たちを「仕事に対する真摯さがない」「やる気がない」と評価しますが、パート社員たちは仕事が嫌なのではなく普段自分たちを見下している営業部長に協力することを嫌がっているのです。

 

「君たちはどう生きるか」に見るリーダーシップ論

リーダーシップとは前述したように「人を導く力」ですが、それを発揮するために必要な前提条件があります。それは「人間らしい人間関係」です。この本の中では「人間が、人間同士、お互いに好意をつくし、それを喜びとしていることほど美しいことはない。そしてそれが本当に人間らしい人間関係だ」と述べられています。

そのような人間関係を作るためには、何が必要なのでしょうか。

 

人の痛みを知る

浦川君の家ははコペル君のように「何もしなくても学校に通える」状況ではありません。しかしコペル君は浦川君を下げずんだりせず対等に接します。浦川君が学校に行けるようになったときに、それを嬉しそうに報告してくれたのでした。おじさんは「浦川君を対等に扱い、浦川君の痛みに素直に共感ができたのは君の才能だ」といい、それができない人も多いことを嘆きます。

人はなかなか自分が立ったことの無い立場の人に共感はできません。男性が多い職場で女性職員が「生理休暇」がとりづらいのも、独身者が多い会社で子供の幼稚園の遠足への引率で休みを言い出しづらいのも、「痛みを理解してくれる人が少ないから」です。

「動けないくらい生理痛がひどいのだろう」「お母さんが遠足に一緒に行ってくれなかったら子供はひどく悲しむだろう」と人の痛みを知ることによって、相手に対する態度やかける言葉は変わります。

自分のことを理解しようと努力していな人との間に、「人間らしい人間関係」を築こうという人はめったにいません。

 

謝罪ができる潔さ

北見君を守るという約束を破ってしまったコペル君は、死にたいほどの後悔を抱えて何日も学校を休んでしまいます。「絶交されたって仕方がないことをした」と認めつつ、真摯に謝罪することで、友人たちとの友情を回復しました。

判断を誤ったと思っても、つい言い訳をしたり謝罪せずにごまかそうとしたりしていませんか?そのようなあなたの態度を、他人はよく見ています。そのような人のために尽くそうと思う人はあまりいませんね。

人からの信頼を得るためには、過ちを過ちと認め潔く謝罪できる人柄が必要なのです。

 

「なぜ?」を突き詰めて考える

「なぜ」「どうして」を突き詰めて考えられる人は、物事の本質をとらえることができる人です。物事の本質をとらえられない人は自分本位な考えに動かされやすい傾向にあり、「リーダーシップ」が必要な場面での判断ができなくなります。

部下から「どうしてですか?」と聞かれたときに「何でもいいから早くやれ!俺に逆らうな!」などというセリフは、上司自身が自分本位な考えから抜け出せずにいる証拠です。また、部下のリーダーシップの目を摘みかねません。

 

リーダーシップが必要なのはリーダーだけではない

リーダーシップはリーダーや役職者だけでなく、プロジェクトを組んでいるメンバーや役職を持たない平社員にも必要です。

リーダーシップのもとになっているのは「人間らしい人間関係を築く力」です。メンバー同士うまく協力し合って、互いの持ち味を生かしながら一つの目標を達成するために必要なのは、個々のメンバーのリーダーシップでもあるのです。

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まとめ

「君たちはどう生きるか」は、私たちが会社という小さな社会で仕事に埋もれてしまいがちな「本当に大切にするべきこと」を思い出させてくれます。その「大切にするべきことができているかどうか」こそ、リーダーシップがある人とない人の違いでもあるといっても過言ではありません。

この本には「君たちはどう生きるか」という問いに対する答えはありません。しかし、この問いに対する答えを模索していくことが「リーダーシップがある人への近道」であるといえるでしょう。

 

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