ADHDは発達障害の一種として知られていますが、同時に「イノベーション」という型にはまらない新しい発想を必要とする分野では、ADHD人材が活躍していることが多いというのをご存知でしょうか。
ADHDは今や精神障害として認定されていますが、昔は「ちょっと落ち着きのない子」「ひどく忘れっぽい子」として認識されていました。[1]
しかし、そのような子供はいつも新しいことに興味を持っていて、自由研究や図工など独自性やアイデアを生かすような課題を与えたときに、大人も驚くような素晴らしいものを作ってくることもあるのです。[2]
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目次
ADHD人材の独創性を開発に活かすために
実は「大人物」や「有名人」「アイデアマン」の中にはADHDと診断されている人が少なからずいるのをご存知でしょうか。企業の中にはADHDという障害を「イノベーション人材」ととらえて積極的に採用しようと取り組んでいる企業もあるくらいです。
しかし、このような独創性を生かして仕事をしてもらうためには、まずADHD人材の特徴を理解して採用する必要があります。
ADHDはじっとしていられない
ADHD人材は不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(すぐに行動してしまう)などという特徴を持ち合わせています。
皆が座って講義を聴いている中ひとり歩きだしてしまうことや、「考えてから口に出す」ということができず思ったことをすぐに口に出して、思いついたら場所や時間関係なく試し始める可能性が高いのです。
また忘れ物が多く、納期や期日を守れなかったり時間に遅れたりします。[3]
共感性の乏しさを指摘されることもあります。
そして、ディスクレシアと呼ばれる「文字を読む能力」に問題が出る場合もあります。
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ADHD人材に活躍してもらうためにできること
ADHD人材はイノベーションの原石であって、イノベーションの天才ではありません。
ADHDの傾向があるからといって、はじめから優れた才能があるわけではなく、ましてや天才だったりすることはありません。
ADHD人材が本来の能力を発揮するためには、周囲からの理解やストレスの減少など、環境を整える必要があります。
せっかく採用した人材をつぶしてしまわないために、私たちにできることは何でしょうか。
周囲からの理解を得る
ADHD人材は集団行動の中では目立ってしまう可能性があります。
外見上は健常者と全く変わらないことから「本当に病気なのか」「ただ怠けたいだけなのでは」と思われてしまいがちです。
そのせいで他の人からは「わがままを許している」「あの人だけ特別扱いされている」と思われて孤立してしまう可能性があります。[4]
本人の努力が報われないため、病気に対して周りの理解がない状態では、本人につらい想いをさせてしまうことになります。
そのような状況では本来の能力を発揮することは難しいでしょう。
ADHD人材がつらい思いをしてしまう主因は「ADHD人材には苦手なことがある」という部分です。
皆がやっているからといって苦手なことをやらせようとすると、本来の能力を発揮できなくなってしまうことがあります。
できないことはどんなん頑張っても「できない」のです。
「何でもいいからできるようにしろ」とプレッシャーをかけるとストレスが溜まり、時にはうつ状態になってしまうこともあります。
本人及び周りのサポートと創意工夫が大切です。[5]
病院へ通う時間が必要であれば適宜休暇を取らせる、忘れ物が多いのであればチェックリストの作成を提案するなど、少しの工夫で本来の働きをしてもらえる可能性があります。
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大人物と呼ばれるADHD人材
ADHDを持つ人の中には、大人物として成功をおさめ、世に名を遺す人も少なくありません。
古い時代には病名の正確な診断がされていませんが、ピアノの天才と呼ばれたモーツアルトや相対性理論を構築したアインシュタインや、発明王エジソンも、行動や性格の記述からADHDだったのではといわれています。
ADHDという病名が広く知られるようになりましたが、公表するかどうかは本人の状況や意志にかかっています。
幼少期に診断されることが多くなった現代では、ADHDを持つ有名人・著名人の中には「自分はADHDである」と公表している人も多くいます。[6]
マイケル・フェルペス
水泳界で「水の怪物」と称されるマイケル・フェルペス氏は、9歳の時にアメリカでADHDの診断を受けています。[7]
学校の教師から「何をやっても何一つ集中できることがない」といわれてしまったマイケル氏ですが、母親の懸命なサポートもあり、自ら集中できることを見つけ、水泳界で金字塔を打ち立てるまでになったのです。[8]
適切なサポートと本人の努力があって初めて、歴史に名を遺すような素晴らしい仕事をすることができたという例ですね。
トム・クルーズ
誰もが知っているアメリカの映画俳優トム・クルーズ氏も、ADHDを公表している一人です。
落ち着きのなさなどに加えて、彼はあまり文字が読めないといいます。そのような彼が、いかにして台本を覚えなければいけない宿命にある映画俳優になったのかということに、疑問を持つ人も多いでしょう。
ルックスの良さで俳優としてスカウトされたにもかかわらず、台本が読めないという問題があるため、付き人や家族がテープに音声を吹きこみ、本人が繰り返し聞きなおしながら覚えているといいます。[9]
学校の勉強をするために始めた、時間と忍耐力の必要なこの作業を俳優になってからも続けているのです。
彼もまた、本来の才能と共に、血のにじむような努力をして俳優界のトップに立ちつづけているのです。
勝間和代
慶応義塾大学を卒業、早稲田大学大学院を修了し、なおかつ公認会計士や中小企業鑑定士など名だたる経済系資格を取得している勝間和代氏は、しっかりと社会に適応しており、発達障害とは無縁のように見えます。[10]
しかしながら、勝間和代氏本人のブログの中で
私は複数の専門家からADHDの傾向について指摘をされていますし、チェックリストをするとかなりの部分当てはまります。また、自閉症スペクトラム指数も、素で答えると、50点満点中軽く40点を超えます。
と述べています。
過活動や忘れっぽさを自ら自覚し様々なツールで補いつつ、何かにとことん集中できる力をしっかりと伸ばした彼女だからこそ、今の成功があるのでしょう。
黒柳徹子
自署でADHDを告白している黒柳徹子氏は、ユニセフ親善大使やパンダ保護活動、執筆活動からバラエティー番組・トーク番組と、80歳を超えてなお素晴らしい活動をされています。
黒柳徹子氏の自伝といえる「窓際のトットちゃん」では、多動や落ち着きのなさなどに加えて識字障害、計算障害のエピソードが紹介されています。
そのせいで小学校を退学になってしまった黒柳氏を、母親が私立トモエ学園に転入させました。[11]
子供の個性と自主性を尊重するという校風です。
この学校に転入したことにより、黒柳氏の人生は一変したといいます。[12]
マシンガントークと聞きづらいこともズバッと質問してしまうそのキャラクターは前例がなく、自分のスタイルを貫きながら誰にもまねできないスタイルを確立していったともいえます。
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まとめ ADHDはイノベーション・新しいモノづくりに欠かせない人材
ADHDが障害として認められるようになったのはここ10年ほどのことです。
「なにかほかの人と違う」と思っていたら実は「ADHDだった」と、大人になってから診断されることもあります。
しかしADHDは「障害」と呼ばれながらも、正しいサポートを受けることでこの世でたった一人の「オンリーワン」の存在になることもできる、いわば天から与えられたギフトでもあるのです。
「障害者」として社会から排除するのではなく、イノベーション・新しいモノづくりに欠かせない人材として、受け入れられる器を作り上げることが必要ではないでしょうか。
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参照
[1]:https://adhd.co.jp/otona/shoujou/[2]:https://newswitch.jp/p/11789
[3]:http://english.cheerup.jp/article/1458
[4]:https://adhd.co.jp/otona/kaiketsusaku/workplace.html
[5]:https://www.pasonacareer.jp/hatalabo/entry/2017/06/15
[6]:https://www.amazon.co.jp/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AF%E6%9C%80%E5%BC%B7%E3%81%AE%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B-SB%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%88%90%E6%AF%9B-%E7%9C%9E/dp/4797392452
[7]:http://adhd-guide.info/michel/
[8]:https://matome.naver.jp/odai/2138328950588831901
[9]:https://www.news-postseven.com/archives/20160823_441537.html
[10]:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%9D%E9%96%93%E5%92%8C%E4%BB%A3
[11]:https://www.huffingtonpost.jp/2017/12/31/tomoegakuen_a_23320468/
[12]:https://adhd-asd.jp/episode-of-kuroyanagi-tetsuko-developmental-disorder/