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イノベーションとは?破壊的イノベーションとイノベーションのジレンマの事例を徹底解説!

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イノベーションとは

「サービスイノベーション」や「オープンイノベーション」など、最近は新聞紙面に「イノベーション」の文字が躍っています。

「イノベーション」という言葉は、オーストリア生まれでアメリカの経済学者だったヨーゼフ・A・シュンペーターが経済発展論の中心的な概念とした言葉です。
日本語では「革新」「新機軸」と訳されていますが、主に技術やサービスの革新を表しています。従って、生産技術の変化、新市場や新製品の開発、新資源の獲得、生産組織の改革さらには新制度の導入なども含むとされています[1]。
つまり、そんなに大きな変化でなくとも、小さな変化であったとしても何かが改善されたりすればイノベーションであるとされています。

破壊的イノベーションとイノベーションのジレンマ

ところが、日本では「イノベーション」と言われると、「大きな変革」をイメージする人が多いようです。
実際に日本、アメリカ、ドイツで同じ25の事例を見せて、それがイノベーションかどうかを問うた研究では、イノベーションだと思う比率はアメリカが最も高く、日本が最も低いという結果が出ています
[2]
つまり、アメリカ人は小さな改善でもイノベーションであるとみなすのに対し、日本では相当大きな変革でないとイノベーションとはみなさない、ということです。

では日本人が思うイノベーションとはどういうものであるかというと、これは公益社団法人 発明協会が公開している「戦後日本のイノベーション百選[3]」で紹介されている「ウォークマン」や「インスタントラーメン」「ファミコン」レベルでないといけないと思っているのではないかと想像できます。

実は「イノベーション」の持つ「革新」という意味から言えば、製品の機能が毎年向上していくのも「イノベーション」だと言えます。これは「漸進的イノベーション」と呼ばれます。
またたまに飛躍的に性能が向上した場合には「画期的イノベーション」と呼ばれます
[4]

一方、「ウォークマン」や「iPhone」の様に、人々の生活様式自体を変えてしまうようなものは「破壊的イノベーション」と呼ばれます。
アメリカの経営学者クレイトン・M・クリステンセンはこの「破壊的イノベーション」が既存のマーケットを破壊し、新しいマーケットやバリューネットワークを創造すると提唱しました
[5]

大きな企業は、現在の製品やサービスを少しずつ改良する「漸進的イノベーション」を続けますが、それが進めば進むほど、顧客が求める性能を大きく超えることとなります。
つまり不要な機能がどんどん増えていくことになるわけです。これは約10年前の携帯電話(フィーチャーフォン、いわゆるガラケー)に相当します。
すでに大きな市場を作り上げてしまいましたので、自分たちの既存市場を破壊してしまうような製品の投入をしづらくなってしまうのです。
これをクリステンセンは「イノベーションのジレンマ」と呼びました。

これに対し、それまで携帯電話を作っていなかったAppleは「携帯電話を再発明する」として、2007年1月に「iPhone」を発表しました。当初のiPhoneは日本のガラケーに慣れた人々からすると、防水機能もなければワンセグにも対応していない、機能的には物足りない端末でした。
しかし、少し遅れて提供されたAndroid OS搭載のスマートフォンとともに漸進的イノベーションを続けているうちに、大多数の人が求める機能を搭載し、結果、ガラケーを駆逐してしまいました。2017年3月段階では、スマートフォン利用者が全体の77.0%、一方ガラケー利用者は19.5%となっています
[6]
それに伴い人々のライフスタイルは大きく変わりました。これが「破壊的イノベーション」の威力です。

そしてそれに乗れなかった既存のメーカー、ガラケー時代に隆盛を誇ったNEC、日立、東芝、富士通、パナソニック、そして世界最大手だったノキアは、一旦スマートフォンも開発したものの、現在では市場からほぼ撤退してしまいました(ノキアは再参入しようとしています)。
「イノベーションのジレンマ」に陥っている間に、どんどん変化する市場に付いていけず、結果、市場からの退場を余儀なくされてしまったのです。

このような例と、それを乗り越えた例を、「日本のイノベーションのジレンマ」[4]などからら3例挙げてみましょう。

例1 パーソナルコンピューター

1970年代、IBMはメインフレームという大型のコンピューターを販売・メンテナンスを行う事で事業を行っていました。この時、本当に小さくて、その代わり処理速度はメインフレームの10分の1未満でしかないIntel 4004というCPUが現れ、自作のコンピューターを作り始める人が出ていました。
しかし性能的には当時主流だったメインフレームと比較すると、使えるメモリも少なく、OSもなく、業務に使えるレベルではありませんでした。大学も企業も見向きもしなかったのです。

当然IBMも「この様なレベルでは商売にならない」と判断します。何しろ入門機でさえ1台9万ドルで販売しているのと比較すると、値段が安すぎたからです。ですが、本社から遠く離れたフロリダでは、ドン・エストリッジが率いるグループが他社の既製品を使うことにより、1500ドルで販売するパソコンを作り上げました。
電卓の代わりに使えるスプレッドシートソフト「ビジカルク」などが出て来たことによりビジネスユースで使われるようになりました。
またオープンアーキテクチャーとしたことも、パソコンの普及に一役買ったと言われています。

例2 フィルムカメラ

1988年、富士写真フイルムが初のデジタルカメラ「DS-1P」を発売したとき、35万画素程度という低い解像度(フィルムは1000万画素以上相当)で、しかも保存可能枚数が5~10枚(フィルムだと最大36枚)と少なかったため、これがフィルムカメラに取って代わるなどメーカーやプロカメラマンなど、それまでカメラを使っていたほとんどの人は思ってもいませんでした。
ですから、これからもフィルムの時代が続くと考えていたのです。

では現在はどうかというと、フィルムはほぼ使われなくなり、プロのカメラマンもデジタル一眼レフを利用しています。

そんな中、日本国内で販売されていたフィルムの大手、富士写真フイルム、コダック、コニカ(旧サクラカラー)はどうなったでしょうか。
富士写真フイルムは、「フィルム事業には先がない」と考え、そこで培った技術をベースに、「アスタリフト」ブランドの化粧品製造・販売に乗り出しています。

対して、コニカはミノルタと合併後、フィルムどころかカメラ事業からも撤退してしまいました。世界最大手だったコダックは撤退どころか、2012年1月、実質的に破綻してしまいました。

例3 自動車

これまではデジタル系の話が続いてきましたが、もの作りの世界もデジタル化の波には逆らえそうにありません。
自動車は日本が世界のトップを争っている業界ですが、ここは現在、「電気自動車」「自動運転車」「シェアリング」の3つの波に襲われています。
その中でとりあえず「電気自動車」の部分だけを取り上げましょう。

世の中では「これで内燃機関の自動車は終わりだ」などと言われ、自動車メーカー各社が電気自動車の研究を行っているのはご存じの通りです[7]
ただし、だからといって、本当に誰でも今のレベルの自動車が作れるようになるわけではありません。
そこには安全基準など、満たすべき高い基準があるからです
[8]

ですので、もしこの業界で破壊的イノベーションを起こしたいのであれば、「車を再発明する」必要があります。
その際は「移動とはどういうことなのか」を真剣に考え、最初はおもちゃのようなものでも良いので、作って世に問うたところが、今の自動車産業を御ぼやかす存在になるでしょう。

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イノベーションのジレンマを乗り越えるために

3つの事例からわかるように、大企業だからこそイノベーションのジレンマを乗り越えにくい部分と、大企業であっても乗り越えられる方法があることがわかります。
コダックのように技術の進歩を見誤った結果、倒産してしまった例に対し、富士フイルムは主な収益源が衰退することを見越して見切りを付け、新たな市場に打って出ることで生き残りました。
IBMは社内ベンチャー的なチームに任せることで、本業を続けながらパソコン事業を(一時的にせよ)成功に導きました。ですから乗り越える方法はあるのです。

とはいえ、技術を見極め、市場創造に繋げられるだけの力量は求められます。こんな事例もあります。2001年、ソニー・ミュージックエンターテインメント(SME)は、当時のフィーチャーフォン(ガラケー)で流行っていた「着メロ」の代わりに、サビの部分を30秒だけ聴くことのできる「着うた」サービスの提供を考えていました。
この企画を最大手のNTTドコモに持ち込むと「そんなの誰が聴くんですか?」と断られたそうです。一方、ドコモを追撃したい、auを展開するKDDIは「一緒にやりましょう」と言い、「着うた」サービスは2002年12月にauから展開が始まりました
[9]
これが後に「着うたフル」というサービスに発展したことを覚えている方もいるでしょう。「音楽プレイヤーではなく、普段から持っている携帯電話で音楽を聴く」という姿にライフスタイルを変化させられることにauが気づき、提案を受け入れたところが「破壊的イノベーション」に繋がったと言えます。
こういうものを「おもちゃ」「使えない」と切り捨てるのではなく、将来の可能性を見据えることこそ重要であると気づかせてくれる好例だと思います。

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引用

[1] イノベーション    ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典

[2] 「イノベーション」に対する認識の日米独比較   米谷悠 科学技術政策研究所調査資料―208、2013年3月

[3] http://koueki.jiii.or.jp/innovation100/index.html  戦後日本のイノベーション百選

[4] 日本のイノベーションのジレンマ   玉田俊平太著 翔泳社、2015年

[5] The Innovator’s Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail .  Harvard Business Review Press, 1997 (「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」 玉田俊平太監修、伊豆原弓訳 翔泳社、2000年)

[6] https://marketing-rc.com/article/20160731.html  【最新版】2017年のスマホ普及率を男女・地域・年代別に大公開!まさにスマホオンリー時代!マーケティングがこれからどう変わるべきか予想してみた。

[7] https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32118370S8A620C1TJ2000/  日産、独自HVの「eパワー」輸出へ、まずタイに

[8] https://toyokeizai.net/articles/-/216681  EVブームの論調に踊る人がわかってない本質

[9]  ドコモとau  塚本潔著 光文社新書、2004年

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