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労災隠しは会社にとってデメリットのみ!リスクを徹底解説!

労災隠しは会社にとってデメリットのみ!リスクを徹底解説!

新型コロナウイルスの影響が拡大する中、これまでとは異なる働き方に馴染み切れず、精神的に参ってしまう労働者の方が増加しています。

精神疾患を含めて、労働に起因して労働者に傷害や疾病が発生してしまうことを防ぐのは、使用者としての責務です。
しかし、使用者が十分に注意していても、こうした労働災害は発生してしまう可能性が常に潜んでいます。

万が一ご自身が経営する会社の職場で労働災害が発生してしまった場合、その事実を隠そうとすることはお勧めできません。
むしろ積極的に労働者の相談に乗り、労災保険給付の申請をサポートすることが、会社にとってのリスク軽減に繋がります。

今回は、労災隠しのリスクや、労災が発生した場合に使用者がなすべきことなどについて、弁護士の視点から解説します。

 

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労災申請は会社にとってデメリット?

 

職場で労働災害は発生したという事実は、会社にとっての汚点であり、できるだけ知られたくないと考える経営者の方は多いでしょう。

労災を申請した場合、会社にとってデメリットが発生するのではないかという懸念・不安も根強いところですが、このような考え方は必ずしも正しくありません。

以下では、労災申請によるデメリットと考えられがちな3つのポイントについて、労働実務の実態を見ていきます。

 

労災保険料が上がる?メリット制の内容について

職場で起こった労災について保険給付の申請を行った場合、会社が支払うべき労災保険料の金額が上がることがデメリットとしてしばしば挙げられます。

たしかに、労災保険では「メリット制」と呼ばれる保険料の増減制度を設けていて、同制度に従えば、事業場における労働災害の多寡に応じて労災保険料が変動することになっています。

しかし、メリット制が適用されるのは、以下のいずれかを満たす事業所に限られます。

①100人以上の労働者を使用した事業であること
②20人以上100人未満の労働者を使用した事業であって、災害度係数が0.4以上であること

上記のうち、②の災害度係数は、労働者数に業種ごとに定められる一定の割合をかけて計算されます。

労災が発生しやすい危険な業務を取り扱う業種(林業・漁業・鉱業・建設事業・一部の製造業、運輸業など)については、メリット制適用のボーダーラインが低めに設定されています。
これに対して、一般的なサービス業を取り扱う業種であれば、メリット制が適用されるのは、100人以上の労働者を使用している場合のみです。

つまり、中小企業はメリット制の適用対象外となっていることが多く、その場合は、労災保険給付を申請したとしても、労災保険料が上がることはありません。

 

労働基準監督署の調査が入りやすくなる?

労災申請を端緒として、労働基準監督署が事業場へ調査に乗り出してくるのではないか、という不安を抱く経営者の方もいらっしゃるでしょう。
たしかに調査対応は非常に面倒ですし、業務の停滞にも繋がるので、できれば避けたいところです。

しかし、労災の程度が軽微であれば、労働基準監督署も大々的な調査に乗り出す可能性は低いのです。
労災が頻発しているような会社は別ですが、一般的な労務に関するコンプライアンスの水準を満たしている会社であれば、労働基準監督署に労務管理を問題視されることは少ないでしょう。

むしろ、労災隠しが発覚した場合は、ほぼ確実に労働基準監督署が乗り出してきて、厳しい調査が行われます。
そのため、労災が発生した場合には、会社が自ら進んで労働基準監督署にその事実を申告すべきでしょう。

 

企業のブランドイメージが低下する?

労働基準監督署に労災を申告すると、労災が発生した事実が世間に広まってしまい、企業のブランドイメージが低下してしまうのではないかという点も懸念されるところです。

しかし、労働基準監督官は職務上の守秘義務を負っているため(労働基準法105条)、報道機関などに労災の事実をリークすることはありません。

労災の事実が世間に広まるとすれば、被災労働者本人または周囲の同僚による内部リークや、SNS上での投稿などによるケースがほとんどです。
こうした事態を防ぐには、むしろ会社として労災に関する誠実な対応を行い、従業員の会社に対する不信感を払しょくすることが必要になるでしょう。

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会社にとって労災隠しはきわめて危険

 

会社による労災隠しは、法律・経済の両面から大きなリスクを背負ってしまうきわめて危険な行為といえます。

 

労災隠しは犯罪に当たる

「労働者死傷病報告」を提出して、労働災害の事実を労働基準監督署長に報告することは、使用者としての義務とされています(労働安全衛生法100条1項、同規則97条1項)。

この義務に違反する行為は犯罪であり、「50万円以下の罰金」に処される可能性があるので注意が必要です(同法120条5号)。

 

労働者から損害賠償請求を受ける可能性がある

労働災害について会社に故意または過失がある場合、労働者から損害賠償請求を受ける可能性があります。

労災保険給付を申請していれば、保険給付に対応する金額については、会社は労働者に対する損害賠償債務を免れます。
一方、会社が労災隠しをしていると、労働者は保険給付を受けられませんので、会社が損害全額の賠償を引き受けなければなりません。

 

労災隠しの発覚は企業イメージを失墜させる

労働災害の事実自体が発覚することよりも、会社が労災隠しをしていたという事実が発覚することの方が、コンプライアンス上の問題がきわめて大きいといえます。

労災隠しが発覚した場合には、労務コンプライアンスが杜撰な会社というイメージを世間に植え付けてしまう結果となりますので、信頼回復は困難でしょう。

そのため、労災隠しを行うことは、労災発生後の危機管理としてはもっともまずい対応です。

 

労災は常に発生するリスクがある


(出典:「平成31年/令和元年 労働災害発生状況」(厚生労働省))
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000633583.pdf

上記の厚生労働省の資料から引用したグラフによると、2019年中だけで実に125,611人の労働者について労働災害が発生しています。


(出典:「平成31年/令和元年 労働災害発生状況」(厚生労働省))
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000633583.pdf

また、同じ資料から引用した上記のグラフによると、労災件数は直近20年前後の間、横ばいであり、直近10年程度に絞ってみると漸増していることが分かります。

このように、労災は珍しい出来事ではなく、どの会社にも起こり得る身近な問題であるといえるでしょう。

 

防ぎきれないケースこそ労災保険で救済を

労働災害を最小限に抑えようと努力することは会社の責務ですが、労災の可能性をゼロにすることは不可能です。

万全の労災対策を整えたうえで、それでも被災労働者となってしまった従業員に対しては、労災保険給付のサポートを行うなどして手厚くケアすることが、会社としての従業員に対する誠意の見せ方ではないでしょうか。

 

適切な事後対応が企業の社会的評価を上げる

また、適切な労災の報告・労災保険給付のサポートを行うことは、内外に向けた会社としてのイメージアップにも繋がります。

コンプライアンスの観点からは、問題発生の予防もさることながら、むしろ実際に問題が発生してしまった場合の事後対応の適切性が、より大きく会社の評判に影響することが知られています。

労働災害は、従業員のみならず、会社にとっての危機でもあります。
非常事態に対して適切に対応できるかどうかが、会社としての基盤を盤石に保てるかどうかの分水嶺となるでしょう。

 

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