「出世」はかつて、働く人たち共通の大きな目標でした。ところが最近の若い世代には、出世以外にも目標や仕事へのモチベーションを持ち「出世に興味がない」という人が増えているようです。
そのような人たちにとっては、出世を目指すことをすすめてくる年長者にどう対応するかも悩みのひとつとなっています。
今回は、アンケートの結果から、若者たちがどのような理由から「出世に興味がない」と考えているのかを知るとともに、出世の断り方や出世以外を目標とするキャリアプラン、気をつけるべき点についても見ていきましょう。
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出世に興味がない若い世代にとって、「出世」というニンジンは、何のモチベーションにもならない
目次
出世したくない若者が多いのは本当?出世への意識調査
これは20~30代の会社員300名を対象に「将来的にどの役職まで出世したいと思いますか?」と質問したアンケートの結果です。
最も多かったのが「出世には興味がない」という答えで、300名中113名、全体の約38%でした。
次いで多かったのが「重役以上」の85名(28%)、その後、「部長レベル」43名(14%)、「係長・課長レベル」32名(11%)、「チームマネージャー程度」21名(9%)と続きます。
「出世には興味がない」と考える理由はさまざまですが、アンケートの回答を大きく分けると「家庭、プライベートを大切にしたい」「出世より給料を重視」「責任を負いたくない」「将来的に起業・独立、転職したい」といった意見があるようです。
「家庭、プライベートを大切にしたい」という意見のなかには「出世よりも長く働ける環境の方が望ましい」「仕事よりも家族やプライベートが大事」「決まった時間に帰りたいので、出世したりなどは望んでいません」といった声があり、そこには「無理をせず長く働いていきたい」との思いが感じられます。
「出世より給料派」からは「出世よりも給料アップの方に興味があります」「給料さえもらえたら納得できるので出世したくない」といった意見や「責任を負いたくない派」からは「健康が第一。重責でストレスをためたくない」「出世をすると無駄に責任が生れて面倒」といった意見などが、それぞれあがっています。
それに対して「起業・独立、転職したい派」では、「将来的に自分で会社を興すので、この会社で出世する必要なし」など、仕事重視ながらも、出世以外の働き方を志向していることが見て取れます。
ちなみに「出世に興味なし」という回答のなかには「内緒だが宝くじが当たって数千万の自己資金あり。そのため出世する必要なし」「家が資産家で、お金に不自由はない」というなんともうらやましい理由もありました。
「出世には興味がない」の次に多かったのは「重役以上」です。
ここでは「一度でいいから社長と呼ばれてみたい」「社長になれば勝ち組の仲間入りができ、悠々自適に暮らせる」など「社長」を目指す回答が目立ちました。社長を目指す理由の多くは「組織のトップだから」「高収入」というものです。
なかには「重役なら生涯現役で働けるので憧れてしまいます」といった〝人生100年時代〟を見据えた回答もありました。
その次の「部長」レベルでは、「ある程度の責任、権限が得られること」を理由とする回答が多く見られます。その一方で「もっと上まで行きたいけれど、今の会社では難しそうだから」といった回答も多く、この辺りの層を見ると、従来通りの出世志向や仕事重視の考え方も健在であることも分かります。
さらに「係長・課長レベル」「チームマネージャー程度」では、現在その役職にあるという人の回答も多く、先の「出世には興味がない」という回答と同様の、家庭・プライベート重視志向が目立ちます。
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女性ならではの出世したくない理由もある
「出世には興味がない」という回答をよく見ると、性別によって理由に違いがあることが分かります。
女性の場合は「結婚生活がありますので出世には興味ありません」「出世よりも早く結婚して子どもが欲しい」といった、結婚、子どもをキーワードとする理由が目につくのです。
「結婚後は家事や育児を優先したいから、残業や責任が生じるのは困る」という考え方は、近年に限らず、以前から見られました。また、結婚後は転勤(転勤)が難しくなることから出世を諦める女性もいます。
近年では家庭内での家事分担、女性の管理職登用、保育環境の整備などが進んできたとはいえ、結婚、育児が、女性のライフスタイルに大きな影響を与えることに変わりはありません。女性には、女性ならではの出世したくない理由があると言えるでしょう。
たとえば子どもの急病などの場合にも、責任のない立場なら比較的休みが取りやすいけれども、責任ある立場になると急には職場を離れられない、助けを求めにくい、といった状況もあるでしょう。女性管理職として活躍している先輩が少ないことから「相談する相手がいない」「将来のキャリアパスや人生設計のイメージを描きにくい」といった悩みを抱える人もいます。
また、日本では女性の管理職登用がまだまだ遅れているという現実もあります。入社当初は「男性と同じように活躍したい」と思っていても、同期の男性に比べて評価されにくく、モチベーションを失ってしまう女性もいます。さらに、結婚・出産を機に同僚たちと差がついてしまうことにより、その後の出世を諦めてしまう人もいるでしょう。
そのほかの理由として、若い年代の女性には、出世することがいわゆる「非モテ」につながり婚期を逃すのではないか…と考える人もいるようです。また、今回のアンケート結果のなかには「女の出世は今でも妬まれるので嫌だなと思います」という回答もありました。
もしもこういった理由で出世をしたくないと思うとしたら、それはちょっと残念かもしれません。少しずつでも女性を取り巻く環境を変えていけるとよいですね。
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「出世したくない症候群」は放置するとリスク大
出世に興味がない理由としては、アンケートの回答で多かった「家庭・プライベートを大切にしたい」「将来は独立したい」などのほか、「いつまでも現場で活躍するプレイヤーでいたい」といったものもよく耳にします。
このように何かはっきりした意思や根拠があるならば、出世を望まないことは問題ではありません。
ただし気をつけなければいけないのが、最近増えていると言われる「出世したくない症候群」です。
出世したくない人を意味する言葉ですが、このような人たちが増えてしまうと、将来的には会社が成り立たなくなることすらあり得るのです。
ここで「出世したくない症候群」のチェックリストを紹介しましょう。ひとつでも当てはまれば、あなたも出世したくない症候群の可能性があるかもしれません。
- 上司や部下とはコミュニケーションを取っていない
- 部下の教育や仕事の管理にやる気が持てない。おざなりだ
- プライベートが最優先
- 努力なんてしても報われないと思う
- 今の仕事は誰にだってできる
- 仕事は生活を維持するためだけにするもの
- 別にこの会社で働きたくて働いているわけじゃない
- 残業はしたくないけどお金が欲しい
[参考]BiZPARK「出世したくない若者が増加中?昇進を拒む理由とリスク」
https://jinzaii.or.jp/2963#toc_id_10
プライベートを大切にすることは決して非難されるべきではありません。しかし、働いて賃金を受け取る以上、仕事に対してもある程度責任を持った関わり方が必要となるのは当然のことです。
過度に割り切った「出世したくない症候群」のなかには、社会人として一考の余地があると言うべき要素も見られます。組織の一員として果たすべき役割について客観的に考えてみることは、自分自身にとっても有益であるはずです。
また、出世をする/しないにかかわらず主体的に仕事に取り組むことで、スキルや知識が身についたり、自分にとっても有益な人脈や人間関係が身についたりするなど、メリットはたくさんあります。
「出世したくない症候群」をこじらせて、社会人としての常識を外れたり自身の成長を妨げることだけは避けたいものです。
どんなに残業を断ってプライベートを大切にしたとしても、職場で過ごす時間は人生のなかで大きな割合を占めます。その時間をなげやりな気持ちで過ごすのは自分のためにもなりません。長期にわたってそのような働き方をすることは、精神衛生上、大きなデメリットでさえあると言えるでしょう。
上のチェックリストのなかにあてはまる項目が多い場合は、転職を考えるのも一つの方法です。
プライベートを犠牲にしてまで仕事に打ち込んだり会社に尽くしたりする必要はなくても、せっかくならばある程度のやりがいを持って楽しく働ける職場に出合いたいですね。
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出世したくないのに昇進の打診…断り方や言い訳の方法
さて、出世したくないのに昇進の打診があったとしたらどうでしょうか。その時にどう断ればいいのかは、なかなか悩ましい問題です。
それを考える前に、そもそも出世には何もメリットはないのでしょうか?一度出世を断ると「向上心がない」とみなされ二度と出世コースに戻れないケースが少なくありません。出世を断っても本当に後悔しないか、断る前には必ず考えてみましょう。
出世をしていくことには、手当てがついて給料が増えたり、裁量を与えられてやりがいを実感できたり、社会的信用がつくなどのメリットが考えられます。住宅購入でローンを組む時にも、役職者の方が信頼度が高まる場合や、マネジメント能力がついて成長できるといったメリットもあります。
若いうちだけではなく、将来的な視点も大切です。管理職には「体力的に現場での仕事が厳しくなっても働き続けられる」「中高年になっても〝居場所〟を確保できる」などのメリットがあるのです。後輩が先に出世していったときの働きにくさ、リストラがあった時に役職がない人ほどその対象となりやすいことも考えておくべきです。
「それでもやっぱり出世はイヤ」という結論になったなら、次は円満に断る方法を考えることが必要です。
まずは自分を認め昇進を持ちかけてくれたことに、感謝を表すことが大切。今の仕事への前向きな姿勢を示しつつ、自分が出世をしたくない気持ちを誠実に伝えるとよいでしょう。
【断り方の具体例】
- 家庭・プライベートが大切だと伝える
「家族との時間を大切にしたいと思っていますので、せっかくですが辞退させていただきます」
- 今のままでいたいことを伝える
「今の仕事に満足していますし、まだまだ学ぶべきことがあると感じています」
「管理職ではなく、プレイヤーとして今の仕事を続けたいと思っています」
- 自己評価を理由にする
「現在も自分の仕事だけで精一杯です。部下の面倒を見る自信がありません」
「未熟者で、部下を育てる実力はまだないと感じています」
「今はまだご期待に応える自信がありません」
「子どもが小さいため」「家族に体が弱い者がいるため」など家庭的理由は受け入れられやすいのですが、当然のことながらウソは絶対にいけません。「◇◇の資格取得を目指して勉強中なので」など具体的な理由を付け加えることも、説得力アップに効果があります。
いずれの場合にもまず「ありがたいお話をいただき感謝しています」などと、一言前置きすることを忘れないようにしてください。
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出世したくない人のためのキャリアプラン
では、昇進をせずに会社に留まる場合にはどんなキャリアプランを考えればよいのでしょうか。
当たり前のことながら、会社に長く勤めるには「会社にとって必要な人材であること」が不可欠です。多くの職場では、長く勤める人は「管理職」または「現場のスペシャリスト」のどちらかに分かれます。
管理職にならないのであれば「この仕事はこの人にしかできない」「この人に任せれば安心だ」と思われるような実力を身につけていく必要があるでしょう。
現在、役職のない中高年の人がどのような働き方をしているか、評価や扱いはどのようなものか。一度じっくりと観察してみることをお勧めします。その上で自分が40代50代となったとき、どんな働き方をしているか、あるいはしたいのかイメージしてみましょう。そうすると、ある程度のキャリアプランは自然にできてくるのではないでしょうか。
ただし「この人にしかできない」と思われる仕事であっても、いつの間にか誰もができるようになっているケースは意外に多いものです。いわゆる〝人材のコモディティ化〟と言われます。従来は一般的なホワイトカラーを中心に指摘された現象ですが、最近では高い専門性を持つ職業でもコモディティ化が進んでいると言われているのです。
加えて、現代社会ではAIの進歩によって「仕事を奪われていく職業」があることも注意すべきポイントです。「出世したくない」などと言っているうちに、出世どころか、会社にとって不必要な存在となってしまうことだってありうるのです。
それを防ぐためにも、管理職ではなくても後輩たちの面倒を見たり、長年培った人脈を活かして幅広い部署間の調整役をつとめたりするなど、何かの形で会社に必要とされる存在になっておかなければなりません。
さらに年齢が高くなったにも関わらず役職がない場合、いざ転職しようとなった時にハードルが上がる覚悟も必要です。その意味でも、高度な技術や特別な資格など、武器になるものを身につけておくことが大切になるのです。
出世したくない理由が起業・独立や転職である場合には、まずはライフプランを明確にすることが先決です。起業する年齢や形態、転職先の業界や職種などを具体的に考えていけば、そこから逆算するような形でキャリアプランが見えてくるはずです。
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出世したくないなら転職も検討
前章では出世したくない人のキャリアプランについて考えてみました。
しかし現実問題としては、昇進の打診を断ったまま在籍することで「居場所がなくなる」といったリスクも考えられます。場合によっては降格やそれに伴う減給、不本意な部署への転属などもありうるでしょう。逆に、昇進を断ったにもかかわらず一方的に昇進させられてしまうケースもありえます。
こういった場合には今の会社に固執せず、転職を考えるのもひとつの方法です。コロナ禍以来、就職活動が厳しくなっている事情はあるものの、人手不足の業界・企業はまだまだ数多くあります。
転職サイトのなかには、転職アドバイザーからのアドバイスやサポートを受けられるサービスを設けているものも見られます。転職アドバイザーには「出世はせず、プライベートを大事にしたい」などの思いを率直に伝えることで、希望にあった求人を紹介してもらえるので利用してみましょう。
在職したまま転職活動をすることも可能ですが、その場合、今の職場に迷惑をかけないようにするのが最低限のマナーです。「どうせ転職するのだから」といって無責任なことをすると、いつの間にか業界内に悪い評判が知られ、転職の妨げになりかねません。
転職にあたっては、他業界・他職種を選べば「一からのスタート」となります。当然初心者ですから、出世の話とはいったん離れることが可能です。
年齢が高くなると他業界・他職種への転職は厳しくなる傾向があるので、この方法を選ぶ場合には早めの決断が必要となります。35歳以上で他業界・他職種への転職はかなり難しいと考えた方がよいでしょう。
今の仕事から離れたくないならば、これまでの経験やスキルを生かして希望の働き方ができる職場を探しましょう。同業界・同職種のなかは意外に「狭い世界」です。何度も転職を繰り返すと「あの人は長く仕事が続かない人だ」という評判が流れることもあります。
自分の望む働き方ができる職場かどうかしっかりと確認した上で、転職先を選ぶことが大切です。
「今の職務のまま年収アップを狙いたい」という人も、これまでの経験やスキルを生かしてレベルアップ可能な転職先を選ぶことになります。IT関連を中心に、フリーランスとなって年収アップを図る人も見られます。ただし収入が高くなればそれだけ、仕事量が増えたり責任が増したりすることへの覚悟も必要です。
多くの人にとってイヤなのは「出世」そのものよりも、出世によってプライベートを犠牲にしたり、ストレスを抱えたりすることのはずです。自分が一番大切にしたいのは何か、あらかじめ優先順位をはっきりさせておくことは転職での失敗を防ぐ上で重要だと言えるでしょう。
「リモート勤務が可能」「時短制度あり」など、現在の仕事を通じて「こうだったらいいのに…」と感じている点を書き出してみるのもよい方法です。
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まとめ 出世や昇進をしたくない若者が増加?断り方や今後のキャリアプランまで解説
「仕事はあくまでも生活の手段。家庭やプライベートを大切にしたい」と考えるのは決して悪いことではありません。もちろんそこには自分の仕事に対する責任や誇り、ともに働く仲間たちへの思いやりも大切になってきます。
自分の人生は自分のものであり、一度きりです。会社のために…と自分を犠牲にすることなく、充実した人生を送りたいですよね。
たとえば1日8時間働くとすれば、日々の3分の1は働いていることになります。働くことにストレスがなく、楽しいと感じられれば人生はグンと豊かなものになるはずです。テレワークやワーケーション、副業推進、雇用延長など、働き方はどんどん多様化しています。
後悔のない働き方選びのためにも、ぜひ本記事を参考にしてくださいね。
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