OJTとは?OJTによる研修の目的と必要性、メリット・デメリット、正しい導入の流れを徹底解説!

OJTは、従業員の教育育成方法の1つです。OJTでは、配属先の先輩や上司が実際の業務を通して必要な知識を教えていきます。

集合研修などのOFF JTでは、業務に必要な基礎知識の学習を行うことができますが、それだけでは実際の業務をこなすことはできません。より実践的な内容を教育することができるOJTは、即戦力となる人材を効率的に育成することができるとして、多くの企業で取り入れられています。

しかしながら、ただ単にOJTを導入しても「効果を感じられない」ということも起こりがちです。

この記事では、OJTのメリット・デメリット、OJT導入の流れや、指導者の心構えなどについて解説していきます。

 

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OJTとは

 

OJTとは「On The Job Training」の頭文字をとったもので、主に新入社員や新しく配属された社員などに対し先輩や上司が指導者となって教育していく教育方法です。

 

OJTの意味

まずOJTとはどのようなものなのか、歴史的背景を交えつつその目的や概要について説明します。

歴史的には第一次世界大戦中のアメリカで誕生した教育方法で、緊急要員訓練プログラム作成の責任者となったチャールズ・R・アレンが考案しました。戦争勃発のために造船所の大幅な人員増加が必要となったにも関わらず、従来の教育施設では間に合わなかったため、造船所の現場監督を指導者として新人を育成することに決めたのです。

日本には高度経済成長期に輸入され、現在では多くの企業において社員教育の基本的なプログラムとなっています。基本的には、一定期間の集合研修の後にOJTに移行し、1人の社員に対して1人の指導者が担当になることが多いです。

 

OJTの目的と必要性

内閣府の『平成30年度 年次経済財政報告』によると、「正社員に対する教育訓練についてOJTを重視する、または、それに近い」と回答した企業は実に71.2%にも上るそうです。企業がOJTを重要視するのはなぜなのでしょうか?理由について説明します。

 

スピーディーな人材の即戦力化

第一に、新人や新規配属社員の即戦力化がスピーディーであるという点があげられます。実際の業務を通して現実的に必要な知識や技能を習得することができるため、無駄がありません。また、配属先の業務内容や新人が持つスキルなどの特性によって、教育内容を適宜変更できるという柔軟性もあります。

 

マニュアル化しにくい知識の教育

自社や部署固有のノウハウや技術と言ったことはマニュアル化しにくく、OJTが適していると言えます。また、企業風土を肌で感じて身に付けることができたり、その業界独特の商習慣やマナーなども学びやすいです。

 

次世代リーダーやマネージャーの育成

勤続年数が長くなってくると、徐々にマネジメント能力を身に付けていくことが期待されます。そして、マネジメント能力と言った場合に必ず含まれる要素が「部下の指導力」です。

他者を指導することは、指導者としての意識の醸成や指導力を高めることに役立ちます。また、指導を通して自社の技術やノウハウ、企業理念に対する理解度が深まるため、従業員ロイヤリティを高める機会にもなります。こうしたことから、中長期的な次世代人材育成のためのプランとして、OJT指導者の経験を組み込む企業も多いです。

 

OJTの必要性が高まっている

ここまで説明してきた目的を達成する以外に、「OJTでなければ教育しきれない」という事情もあります。かつてとは比較できないほど技術革新が進み競争が激化した現代では、生産性の向上が必須となりました。また、社会全体が企業やサービスに対して求める水準も高くなってきています。それらを満たすためのノウハウを短期間で習得するためには、OJTが無くてはならなくなった、とも言えるのです。

 

OJTの基本ステップ4段階と3原則

OJTには、「4段階職業指導法」と言われる基本の4段階のステップと、3原則があります。

 

4段階のステップ

教育学者ヨハン・フリードリヒ・ヘルバルトが考案した「5段階教授法」を元に、アレンが開発した教育法です。次のようなステップで教育をしていきます。

1.Show:やってみせる

実際に目の前で仕事をやってみせ、全体像を具体的にイメージさせます。「文章や口頭の説明でも足りるのでは」と思うかもしれませんが、きちんとやってみせることは後のステップのためにも重要なプロセスです。この時、動画にしておくと後で何度も同じことをする必要が無くなり、指導される側が繰り返し見て復習することにも役立ちます。

2.Tell:説明する

仕事の内容や目的、背景について説明し理解をさせます。初めて指導をされる人が理解できる範囲なのか、ポイントは明確に説明できているかを意識しながら根気強く説明していきます。この時一方的に説明するのではなく、教わる側からの質問を受け付ける・逆に指導者から質問をすることで理解度を確認するプロセスを入れると、非常に効果的です。

3.Do:やらせてみる

ShowとTellの内容を踏まえて、実際に業務をやってもらいます。指導者は、側にいてその内容をしっかりと見ておきます。ここでは、Doの内容を見守ることを意識し、すぐに叱ったり、欠点を見つけてやると言う態度は厳禁です。指導される側がリラックスして行えるように意識します。

 

4.Check:評価・追加指導する

Doの結果、出来ていたところはきちんと褒め、出来ていなかったところや改善点については指摘と追加指導を行います。ポイントは、具体的に褒める・指摘するということです。「良かったよ」とか「イマイチだね」では、何がどう良くてダメだったのかが理解できません。また、どうすればできるようになるかを一緒に考えることで、指導される側のモチベーションを維持することができます。

 

3つの原則

OJTは実務を通しての指導となるため、指導者のスキルや意識によってその成果が大きく変わってきます。適切なOJTが行われないと、新入社員の早期離職を招きかねません。そこで、OJTを実施する際には次の3つの原則を守ることによって、質を保つよう心がけることが重要です。

1.意図的:そのトレーニングの持つ目的や目標を明確にする
2.計画的:しっかりとした計画に基づいてトレーニングが行われること
3.継続的:1度で終わってしまうトレーニングではなく、反復的・段階的にトレーニングが行われること

目標を逆算しながらそこに到達するまで段階的に反復していくことで、やりっぱなしや教えっぱなしということが無くなります。指導を行う側も、指導者であるという自覚を持ち、自身の指導内容が適切かどうか、この3原則が守られているのかを常に意識するようにしなければいけません。

 

OJTとOFF JTの違い

OJTと並んでよく聞かれる社員育成方法が、OFF JTです。「Off The Job Training」の略で、OJTとの一番大きな違いは「実務の場で教えるか、座学などの研修スタイルで教えるか」です。OJTの場合には、業務時間中に指導者によって随時トレーニングすることになりますが、OFFJTの場合には、業務を離れて研修時間を設け知識を学びます。

また、指導する内容や対象者にも違いがあります。OJTは新規配属された人に対する実務教育であることが多いのに対し、OFF JTでは知識レベルの教育になるので中堅~ハイクラスまで幅広い社員が対象になります。具体的な教育内容は対象者によって変わりますが、業務に必要になる基礎知識をあらかじめ学習させる、ビジネスマナーや情報セキュリティ、コンプライアンス、マネジメントなどの研修があります。

OJTもOFF JTもそれぞれメリットがあり、目的に合わせて両者を上手に併用していくのが良いとされています。例えば、新人教育ではまずOFF JTで基礎知識を学んでもらい、その後にOJTで実務を学んでもらう、というようにすればより効率的な教育を行うことができます。

 

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OJTのメリット

 

OJTにはメリットとデメリットがあり、企業が導入する際にはどちらも理解しておく必要があります。ここではまずメリットから説明します。

 

一人ひとりの理解度に応じて柔軟に対応できる

OJTは基本的に1対1の実務を通じた教育になります。そのため、指導される側の理解度や習熟度が見えやすく、教育スピードや1回で教える量などを柔軟に調整することができます。集合研修の場合には、周囲の人と自分の理解スピードに差があると感じてしまいモチベートできない、ということもありますが、個人のペースで教育をすすめてもらうことができれば安心して学ぶことができます。

 

指導者のスキルアップに役立つ

新人など、業務知識のない人に対してどの様に説明したら理解できるようになるのか考えながら指導することによって、初歩的な人材育成スキルを身に付けることができます。

多くの企業で必ずと言っていいほどあげられる課題に「マネージャー不足」があります。チームメンバーの時には評価の高かった社員も、リーダーやマネージャーになったとたんに輝かなくなるというのです。チームマネジメントに求められるスキルの一つには「指導力」があります。チームメンバー1人ひとりの能力をアップさせて生産性を向上し、目標達成を促すよう指導するのです。

OJTにおける指導者の役割を経験することで、こうしたマネジメント能力が育っていくというメリットがあるのです。

 

OJT終了後は即戦力につながる

OFF JTでは、主に知識を中心とした研修となるため、実際の業務に必要な知識との乖離が生じる可能性もあります。社会人として必要な知識も、業務ではめったに使う機会がないということもあります。

しかしながら、OJTであれば業務に特化して必要な実務や知識を効率的に身に付けることができるので、教えた内容はすぐに実務で役立てることができるようになり、教育期間が終了すれば即戦力となることが可能です。また、時代によって変化しつづける自社のサービスや業務の内容も、OJTであればタイムリーにキャッチアップすることができるのもメリットです。

 

OJTを通して職場の人間関係の構築ができる

企業が円滑なビジネスを行うためには、社内の良好なコミュニケーションは欠かせません。社内コミュニケーションが十分であれば、情報共有や生産性の向上につながると言われており、ひいては顧客満足度の向上にもつながります。

ところが、職場での先輩社員は日ごろの業務に注力するばかりに、新入社員とは会話をする機会もない、というケースもあります。すると新入社員は、疑問や不安があっても誰に聞いていいのか分からない、自信がないのに確認をしてもらう相手が見つからない、と言った状況に陥ってしまいます。

OJTによって聞きやすい環境が整っていれば、コミュニケーションは活発になり、信頼関係を構築することや職場の人間関係を良好に保つことに役立ちます。

 

コスト削減につながる

OFF JTの場合には、外部研修や社外講師への委託費用が発生したり、研修のための交通費や出張費がかかることがあります。それに比べると、OJTは社内施設において業務時間中に実施されるため、これらの費用は不要になります。

当然のことながら、OJTに費やす従業員の機会費用(時間の使用や消費の有益性・効率性にまつわる経済学上の概念で、あることを選択したことによって発生する損失のこと)は発生しますが、外部流出費用を抑えられることは経営的に大きなメリットとなります。

 

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OJTのデメリット

 

ここまでOJTの目的やメリットなど、良い面について説明してきましたが、デメリットについても説明します。

 

体系的な教育には不向き

実務を行いながら学ぶOJTは、その場で発生した業務しか体験しないため、業務全体の流れを把握しにくい傾向があります。また、全ての業務がまんべんなく発生するわけではないため、体系的に学ぶことが難しいという側面もあります。

OFF JTとの組み合わせによって知識の補完をしたり、頻度の少ない業務はマニュアル化する、指導者が意識して補足説明をするなど、教え方には工夫をする必要があります。

 

指導者のスキルにバラつきが出る

OJTで指導者になる従業員は、コーチングの特別な教育を受けているわけではありません。あくまでも実務経験が多い従業員が指導にあたるため、指導者のスキルやレベル、教え方にはバラつきが出てしまいます。

教育内容によっては、部分的に外部リソースを使う、指導者を複数人でローテーションする、特定分野については社内エキスパートが専任で全社横断的に教育をする、といった方法によって解消することもできます。

 

指導者の負担が増える

OJTでは、指導者が通常業務の時間を割いて教育にあてる時間を捻出することになるため、指導者の業務負荷は高くなります。また、教育対象となる人数が多ければその分指導者の人数も多く必要になり、OJTを取りまとめる従業員の負荷も増えてしまいます。

その他にも、業務で必要な基礎知識が極端に乏しい、学習意欲が欠けている、と言った新人を担当する場合にも、負荷は高まります。業務領域によっては、上司よりも新入社員の方がスキルが高いこともあり、その様な場合には指導者役の従業員にとっては負担に、指導される側もストレスが増えるという結果になってしまいます。

指導者とOJT対象者のスキルマッチングや、OJTの目標設定などをしっかりと行うことが大切です。

 

新人の育成が現場任せになってしまう

OJTでは、既に説明した通り指導者の負担が増えてしまうため、繁忙期や通常業務に追われている従業員が指導者になった場合には、指導対象者が放置されてしまうことが考えられます。また、OJTは実務をこなしながら柔軟に教育をすることができる便利な教育方法であるがゆえに、教育制度を整備しないで安易にOJTを導入し「あとは指導者がよろしく」というケースもあります。

現場任せで放置になってしまっては、従業員の不満にもつながりますし、何より教育効果が得られません。しっかりと経過を把握し、適切なフォローをしていく必要があります。

 

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OJTの失敗事例と対策法

 

OJTは、導入しさえすれば効果を得られるというものではありません。ここではよくある失敗事例とその対策法について紹介します。

 

OJTでよくある問題点「放置」とその対策法

多くの職場では、従業員数は業務量に対して適切な人数でそれぞれに業務を抱えています。それなのに、新入社員の指導者になった場合には、業務負荷が増えることになります。その結果、指導される側が「放置」されてしまうことも少なくありません。これでは新入社員の教育期間が長引くばかりか、指導者に対する不信感にもつながってしまいます。

実務を通じた教育とは言え、そもそもOJTを通じて何を学ぶのか、どこまで達成するのか、目標設定や計画が無い場合にはこの様なことが発生しやすいです。

OJTに入る前には、人事部や経営層、実際にOJTを行う指導者との間で、OJTを行う目的やスケジュールなどの認識を共有しておく必要があります。具体的な目標設定や成果目標が分かっていれば実践しやすく、OJTにたずさわるメンバーが成長実感を得られるようになれば、OJTが成功しやすくなります。

 

OJTの主な失敗事例とその対策法

その他にも、OJTで起こりがちな失敗事例やNGな取り組み、その対策法について紹介します。

 

指導者に時間がない

OJTの重要性を理解してはいても、現場の人的リソース不足や繁忙期などで指導者が教育にかける時間をとれないという悩みはよくあります。そうした場合、場当たり的な作業を新入社員にさせてしまいがちですが、それでは「雑務ばかりで業務を教えてもらえない」と感じ、業務に対する意欲を無くしてしまうばかりか、離職してしまう可能性も発生します。

指導者ばかりにOJTを丸投げしてしまわずに、部署やチーム全体でOJTの重要性を認識するようにしましょう。内容によっては、部分的に他の従業員が指導したり、指導者自身の業務負荷を分散するなどの方法をとると良いでしょう。

 

部署によって内容がマチマチで計画性がない

いくら人事が「OJTをお願いします」と言っても、その内容や目標が共有化されていなければ、思ったような効果は得ることができません。「OJT」という言葉自体は聞いたことがあっても、何をしたらいいのか、何をいつまでに教えればいいのか、計画が無ければ部署によって教育する内容にもバラツキが出てしまいます。

まずは自社のOJTとはどういうものであるべきなのか、各部署では何をどこまで教育するのか、期待する教育成果はどのレベルか、などをしっかりと検討し部署と共有するようにしましょう。

 

指導者が適切な指導法を実施できない

OJTの重要性や目的などは、部署や指導者も十分に理解していたとしても、指導者が適切な指導法を知らなければ、OJTが失敗してしまうこともあります。

OJTの現場ではやってはいけないと言われる行動があります。たとえば、「大きな声でどなる」、「改善点を説明せずに叱る」などです。新入社員がやった仕事がたとえ間違っていたからと言って、「なにやってんだよ!」と感情まかせに必要以上に叱っては、今後はどの様にしたらよいのか分からないまま、ただ委縮してしまいます。

叱ることと指導することは違います。ミスに対しては、しっかりと改善策を指導しながら、あくまでも相手の成長を願って適度な範囲で叱ることが大切です。

 

出来て当たり前と思うなかれ

OJTで実践することは業務の一環であることがほとんどなので、先輩社員からすると「当然できているだろう」と思うかもしれませんが、新入社員にとっては違います。特に、入社したての時は人間関係も希薄な状態で、分からないことがあっても聞きにくいと感じる人も多いため、完了の報告を受けて「出来ていると思っていたら、後になって実は間違いだらけだったことが分かった」ということにもなりかねません。

最初は「できないだろうな」くらいの気持ちで指示をして、完了後はしっかりとチェックしてあげましょう。また、出来ていないことがあれば改善策を指導し、出来ているところは褒めるというメリハリも重要です。

多くの経営者や指導者に知られている格言に、山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」というものがあります。この様に、指導においてはほめることも重要なポイントなのです。

 

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OJT導入の流れとポイント

 

次に、OJT導入を行う場合に成功の可否を左右する、抑えておきたい流れやポイントについて説明します。

 

OJT導入のポイント

OJTは、多くの従業員を巻き込んで長期間行われる教育方法です。せっかく実施したのに、期待ほどの効果が無かったという結果にならないよう、ポイントを理解しましょう。

OJTを成功させるためのポイントは、指導者と指導を受ける側がともに成長している実感を得ることができるようにすることです。人事や経営層の一方的な押し付けとならないよう、次の様な点に注意します。

・目的や意義を共有し、まかせっきりにしない
・OJTがスムーズに行えるよう、教育内容によってOJTとOFF JTを使い分ける
・成長実感を得られるような目標設定にする(習得しきれない目標は立てない)
・指導者にとってもキャリアのプラスになると感じられるようにする

 

OJT研修の目標を設定する

OJTが終了した時に、どの様な人材になっていて欲しいのか、目標を設定します。求める人物像は企業や部署、ポジションによって異なるため、経営層や各部門、部署、チームなどとディスカッションしながら設定します。

 

OJT研修の計画書を作成

目標とした人材育成を行うために、育成を進めるペースや必要な期間を設定します。計画を設定する際には、その業務を行う上で必要なスキルと育成手段、習得に適した順序、実施課題などを把握し、現実に即した内容にします。

また、指導対象者の現状のスキルレベルを確認する必要もあります。あまりにも現状と乖離した計画設定をしてしまえば、「自分は他の人のようにできない」と感じてしまうかもしれません。現状のレベルから、なるべく段階的にスキルアップしていけるよう、細かく計画設定するようにしましょう。そうすることで、進捗管理や課題確認、フォローアップもしやすくなります。

計画書が作成できたら、指導者だけではなくOJTを実施する受入れ部門や部署の上司とも共有しておきます。

 

指導者(OJTトレーナー)の選出・教育

指導者の選び方は、指導対象者が新入社員なのか、中堅社員の異動なのか、などによって変わります。新入社員の場合には、実務経験が3年以上で新人が最初に担当する業務はほぼ教えることができるレベルの社員や、あえて将来のリーダー候補として成長させたい社員などを選出します。中堅社員が指導対象の場合には、十分な業務知識を持つ上司が担当するケースが多いです。

指導者は、スキルが高い社員が適しているとは限りません。仕事はよくできても、他者に指導するとなると話は別だからです。中堅社員以上のベテランになると、仕事の成果に求める当たり前の水準も高くなり、ついつい教え方が厳しくなることも考えられます。そこで、「OJT研修ガイドライン」として、指導者が守るべきルールや指導方針などを決めておきます。

選出が済んだら、指導者に対してOJT研修ガイドラインの教育を行い、あわせて人事への報告や相談のマイルストーンも共有しておきます。

 

目標の達成目安を設定する

OJTの達成目安を確認するためのスケジュールや工程表を作成します。この時、育成項目と期間、達成度を確認できるようなフォーマットを用意し、全社共通にしておくと、後で達成度を確認する際に便利です。

 

OJT研修の実施

OJTの準備ができたら、指導対象者を実際に配属し速やかにOJTを開始します。OJT期間の折り返し地点では、フォロー研修を行っておくとよいでしょう。

フォロー研修は、指導対象者と指導者それぞれに対して行うようにするとより効果的です。指導対象者向けには、それまでの振り返りやこれからの自己目標を立てたり、社会人としての基本的なルールや仕事の進め方、コミュニケーションのあり方などを確認していきます。指導者向けには、前半で感じた指導上の課題、ノウハウなどを共有し、後半に向けて改善案や指導方法などを確認します。

 

目標の達成度を確認

目標達成度を集計し、確認します。研修期間にもよりますが、半年や1年などの長期になる場合には、中間地点で一度確認し、課題があれば改善方法を検討する、もしくは計画内容の変更をしてから後半のOJTを行えるようにするとよいでしょう。

見つかった課題については、すぐに改善できるものとできないものがあります。すぐに改善できないものについても、次年度のOJTではどの様にしたらよいのか、改善案を検討する計画を立てておきましょう。

 

新人へのフィードバック

OJT期間が終了したら、目標達成度やOJTに関する分析を行い、指導対象者であった新人へフィードバックします。目標に対して何がどの程度できたのか、もっとスキルアップを期待する点はなにかなどを明確に伝えることで、研修期間終了後もモチベーションを維持し、自己学習意欲の継続を促すことができます。

 

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指導者(OJTトレーナー)に必要なスキルや心構え

 

OJTは指導者の心構えによって、成果を左右すると言っても過言ではありません。では、指導者として必要となるスキルや心構えとはどのようなものがあるのかを説明します。

 

PDCAサイクル

OJTは、ビジネスの基本ともいえる「PDCAサイクル」に従って行われます。PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことによって、継続的に業務の質を上げていくマネジメント手法のことですが、実は業務の繰り返しによって学習していくとうプロセスもこれと同じことが言えます。

最終的には、指導対象の社員がひとり立ちした時に自分自身でPDCAサイクルを回せるようになっていることが理想です。そのためにも、指導者はOJT実施中に「なぜ失敗したんだろうと思う?」「うまくできたのはなぜだかな?」と言うように、自分で気づきを得る機会を与えるようにしましょう。

 

コミュニケーションスキル

OJT中は、目標や業務内容を伝える、不明点や疑問が無いかどうか聞きだす、理解できているかを確認する、ということを行う必要があります。また、時にはモチベーションが上がるような声掛けも必要です。OJTでは、一方的に指示をしたりミスを指摘するのではなく、指導者と指導対象者がお互いにコミュニケーションを取り合いながら進めていくという認識が必要です。

 

ティーチング

「ティーチング」とは、教えることの意味で、説明したりやって見せることです。ティーチングで指導者が注意すべきなのは、「なぜ(Why)」「何を(What)」「どのように(How)」を意識して伝えることです。そもそも知識がない状態の新人は、作業の仕方だけではなく作業の目的や意味も分からないため、ミスに気が付くこともできません。「Why・What・How」を意識しながら指示をするようにしましょう。

 

コーチング

新入社員がある程度業務に慣れてきたら、次に意識したいのが「コーチング」です。コーチングとは、自分で考えて答えに近づけるように導くことです。知識や経験が少ない段階では難しいので、いきなり全ての業務に対して行うのではなく、「これは理解できていそうだな」という業務を選んで行うようにするとよいでしょう。

ポイントは、信頼して任せ、考えさせることです。そして、つまずいているようだったらヒントを出したりしながら誘導してあげます。任せながらも様子を見て適宜フォローをし、ゴールまで到達させるようにしましょう。

 

オープン・クエスチョン

OJTでは、適宜質問を投げかけながら自分で考えさせることは重要です。理解度を確認したり、自分で気づかせるのに有効質問方法が「オープン・クエスチョン」です。オープン・クエスチョンとは、Yes/Noでは回答できず、考えながら自由な発言を促す質問方法です。

たとえば、ミスをしてしまった時に「なぜチェックしなかったんだ」ではなく、「どうすればミスが起きなかったと思う?」と質問することで、業務で必要な手順を全て理解できていたのかなどが分かります。もしも「チェックを忘れないようにします」と回答があれば、チェックのプロセスがあることが分かっていて怠ったことが分かり、チェックの重要性の理解も深まります。

 

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OJTを正しく理解しよう

 

実務を通して研修を行うOJTは、人材育成として有効な方法の一つです。OJTを効率よく進めることができれば、新入社員と指導者双方のスキルアップや職場のコミュニケーションが活発になるなどの効果も期待できます。

しかしながら、安易に形ばかりのOJTを導入すれば、OJTの効果を実感できないばかりか新入社員の定着率低下にもつながりかねません。OJTでは、しっかりとした計画や指導者の育成、マニュアルの準備などが必要です。導入当初は大変かもしれませんが、OJTのPDCAサイクルが回ってくれば、マニュアルなども充実しやり方も洗練してくるはずです。OJT研修の導入の際には、正しい進め方を理解しながら実施するようにしましょう。

 

 

参照
d’s JOURNAL『OJTとは?メリットデメリット、やり方、手順を徹底解説【受け入れシート付】』
https://www.dodadsj.com/content/181221_ojt/
ナビゲート『OJTの理論&手法』
https://www.navigate-inc.co.jp/ojt/archives.html
業務改善ノートTMJ『OJTとは?メリット・デメリットから現場導入時のイロハまで徹底解説』
https://www.tmj.jp/column/column_9078/
内閣府『平成30年度 年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告) 第2章 人生100年時代の人材と働き方 第2節』
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/h02-02.html

 

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