2020/10/05

社員に企業理念を理解させることは無意味 マネジメントの仕事は適材適所の配置

「社員にも会社の経営理念を共有して、全社一丸となって目標に突き進む」
「社員も経営者の視点に立って、主体的に行動することを求める」

などの理想を掲げている企業は多いかと思います。

しかし、こうした考え方は合理的なように見えて、実は思わぬ弊害に繋がってしまう危険をはらんでいます。

この記事では、会社の経営理念を全社員に理解させようとする場合、どのような弊害が生じる可能性があるのかについて考えてみましょう。

 

理念やビジョンを社員に共有する会社は多い

 


(出典:「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」(平成26年5月、厚生労働省職業安定局雇用開発部雇用開発企画課)2頁)
https://www.mhlw.go.jp/chushoukigyou_kaizen/investigation/report.pdf

上記は、平成25年(2013年)に厚生労働省により、従業員規模30人~300人の中小企業を対象として行われた、職場環境に関するアンケート調査の結果です。

これを見ると、実に75.3%もの中小企業が、「朝礼や社員全体会議を通じて会社のビジョンを共有している」という質問に対してYESと回答しています。

 


(出典:「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」(平成26年5月、厚生労働省職業安定局雇用開発部雇用開発企画課)6頁)
https://www.mhlw.go.jp/chushoukigyou_kaizen/investigation/report.pdf

また、社員に対するビジョンの共有を実施している会社は、従業員から働きやすい職場であると評価される傾向にあるようです。

上記の同じ調査のデータからは、「朝礼や社員全体会議を通じた会社のビジョンの共有」を実施していない会社では、働きやすさについて肯定的な回答をした従業員が60.9%にとどまったのに対して、実施している会社では73.0%と、実施していない会社を上回っています。

 

社員に経営理念をインプットすることの弊害とは?

 

しかしながら、「理念」という抽象的なものによって社員をドライブしようとする経営方針は、会社の営利を追求するという観点からは、必ずしも正しい方向を向いているとは言えません。

 

「社員に気持ちよく働かせる=会社として成果が出る」とは限らない

たしかに、経営理念を社員とシェアしている会社の方が、そうでない会社よりも働きやすい会社であるという傾向が、データ上示されていることは事実です。

しかし、社員が気持ちよく働くことと、会社としての成果が出ることがイコールではないのは明らかです。

たとえば、それぞれの社員が自分の関心を追いかけて、ビジネスになりにくい実験的な業務ばかりに注力しているようなケースを想像するのがわかりやすいでしょう。

この場合、社員は気持ちよく働くことができるでしょうが、会社にとって即金性の高い業務をまじめにやる社員がいないので、早晩会社の経営は立ち行かなくなってしまいます。

もちろん会社としては、「社員の快適な労働環境」を実現できることに越したことはありませんが、それはあくまでも「会社としての成果(=営利)」を追求する手段であることを強く意識する必要があります。

 

社員が経営理念を独自に解釈して意思決定を始めてしまう

前の項目とも関連しますが、社員に経営理念をインプットすると、社員はそれを自分に都合の良いように独自解釈して、勝手に意思決定を始めてしまうようになります。

そうすると、マネジメントが意図するゴールとは違う方向に向かって暴走する社員が多く発生してしまいます。
まさに「船頭多くして船山に登る」状態です。

「理念」は抽象的な概念であるがゆえに、社員にとっては解釈の余地が広く、そのことを社員は「広い裁量が与えられた」と勘違いしてしまう傾向にあります。

社員に広い裁量を与えることが一概に間違っているとはいえませんが、特に末端・現場レベルで実働する社員については、裁量が目標達成に向けた障害として働いてしまうこともしばしばです。

こうした末端・現場レベルの社員に対しては、経営理念に基づく行動を求めるというよりは、むしろ明確な仕事と役割を与えて、それを的確にこなしていくことを求める方が、会社としての成果を挙げることに繋がりやすいでしょう。

 

社長と一般社員の間の視点の差は埋まりようがない|時間の無駄になる

さらに言えば、経営理念はあくまでも社長を中心としたマネジメントの視点から見た会社の理想像に過ぎず、それを一般社員と完全に共有することはそもそも不可能です。

ドライな言い方になりますが、一般社員には、社長を中心としたマネジメントが持っているような会社成長に対する動機付けがありません。

特に創業者社長と一般社員の間には、こうした温度差が顕著に表れるでしょう。

創業者社長が一念発起して会社を起こし、成長させてきたのに対して、一般社員の多くは就職活動の結果として、たまたまその会社に入ったに過ぎません。

また、給与などの待遇面についても、マネジメントの待遇が会社の業績に直結して向上するのに対して、一般社員についてはそこまで直接的なインセンティブが与えられてはいないでしょう。

このように、社長を中心とするマネジメントと一般社員の間には、元来視点に違いがあり、その差を埋めることは不可能です。
そのため、一般社員に会社の経営理念を理解させようとする行動は、徒労に帰してしまう可能性が高いといえるでしょう。

 

社員を適材適所に配置することはマネジメントの責任

 

マネジメントの正しい姿勢としては、社員を経営理念によって動かそうとするのではなく、社員を適材適所に配置して明確な役割を与える方が、社員を会社に対して直接的に貢献させることができるでしょう。

 

社長と一般社員で見えている景色が違うのは当然

すでに言及したように、社長を中心とするマネジメントと一般社員で見えている景色が違うのは当然のことで、マネジメントとしては、その事実を受け入れなければなりません。

一般社員にもマネジメントと同じ志を持って頑張ってもらいたいという気持ちもわかりますが、会社は家族とは違って他人同士の集まりなので、ある程度の割り切りは必要です。
そのため、あくまでも経営理念を真に共有することは不可能であるという前提に立って、社員をどううまく動かすかを考えるべきでしょう。

 

社員には目の前の「役割」に集中させるだけで良い

社員を適材適所に配置することができれば、そこで与えられた役割を全うしてもらうだけで、社員は自動的に会社に対して貢献してくれます。

経営理念に比べて「役割」は明確なので、社員の独自の解釈が入り込む余地も少ないのが特徴です。
そのため、役割を基本として社員をドライブすることによって、マネジメントを頂点とした組織が適切に機能することが期待できるでしょう。

 

まとめ

 

抽象的で解釈の余地が広い経営理念によって社員を動かそうとする「理念型」の経営は、会社組織を瓦解させてしまう可能性がある、非効率で危うい経営手法といえます。

それよりも、社員を適材適所に配置して役割を全うさせる「ジョブ型」の経営の方が、社員を会社に対して直接的に貢献させることができる、効率的な経営手法です。

近年では終身雇用を前提とした企業は減少し、各社員がスキルを持ち寄って会社組織を形成することが増えているため、「ジョブ型」の経営を行うメリットはいっそう増加しているといえるでしょう。

社員をどのようにマネジメントするかは、会社のカラーが色濃く表れる部分でもあります。
自社のさらなる飛躍を目指すならば、効率的な社員マネジメントについて、今一度深く検討する必要があるのではないでしょうか。

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