開き直ることも、時には大切です。正しく開き直れば、失敗も怖く無くなります。
仕事や趣味でのモチベーションの最大の敵。それは「失敗したらどうしよう」という恐れかもしれません。
多くの人は小さい頃に親や先生から怒られたり「そのままじゃいけない」と言われた経験を持っていたりいます。その不安は大人になっても残ります。
新規事業を始めたとき、新たな部署で新しい仕事についたとき、会社を転職したとき、フリーランスで仕事を始めたとき、英語を話すとき、新しい習い事を始めるとき、こんなふうに感じないでしょうか。
「怒られたらどうしよう」
「失敗するんじゃないか」
「間違えるのではないか」
「笑われるかもしれない」
こうして、多くの人が躊躇した結果、挑戦することをやめてしまい、消極的になってしまう。または、相手を訪問したり、電話したりするのになかなか勇気が出ずに、時間がかかってしまう。
こんなとき「図太く」なれる術を知っていると、怖いものが減っていきます。
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目次
開き直るコツ:禅の考えに学ぶ「失敗を怖がらなくなる術」
では、どうしたら、図太くなれるのでしょうか。
実は少し意外な感じがしますが「禅」にヒントがあるかもしれません。
「実は禅僧はみんな、図太いのです」というのは、曹洞宗徳雄山建功寺の住職である枡野俊明氏です。
彼の著書「傷つきやすい人のための、図太くなれる禅思考」(文響社)では禅の思考をわかりやすく教えてくれています。その中で、どうしたら失敗が怖くなくなるか、そのプロセスを説明しています。
例えば、禅寺では、新人はまず、わけのわからない状態で修行を始めるそうです。最初は、挨拶から箸の上げ下ろし、全てにダメが出されるのです。
禅寺の朝はとても早い。朝起きること一つでも「寝坊をしたらどうしよう」と心配で、なかなか寝ることができなくなってしまう。「怖い」という気持ちに支配されると、人はいろんな行動ができなくなり、余計失敗しやすくなってしまいます。[1]
ところが、そのうち枡野さんは「失敗してもいいんだ」ということに気づいたのだそう。早い話が「できない自分を認めよう」と開き直ってしまうのです。「なんだ、そんなこと?」と思われるかもしれませんが、この「開き直り」が物事を好転させていく、と彼は語ります。[2]
そうは言っても、物事をやるとき、事前に想定される問題点や疑問点を全部潰すのは当たり前です。失敗しないようにやることが重要でしょ、と思われるかもしれません。また、普段から上司や家族に「少しは考えて動け!」と怒られてきた人も多いかもしれません。
しかし、実は「考えずにすぐ動く」というのが禅の教えです。このことを「禅即実践」といい、禅の考えそのものなのだそうです。[2]
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開き直るコツ:事前に失敗を予測して心配することに意味はない
同じことは、実はありとあらゆることに言えるのではないでしょうか。
例えば、大物と言われる人に会いにいくとき。あなたは、事前に「失礼にあたらないようにするには、どうしたらいいんだろう」と考えをめぐらせてしまうかもしれません。
もちろん、相手に礼を尽くすことは重要です。
しかし、くよくよと、必要以上に考えすぎにはいいことがない。「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」なのです。考えないで、当たって砕ける図太さが時には必要です。
枡野さんは「勢いは力ですし、邪を払うのです」と言っています。勢いがないところには運が巡ってくることもない、と。[3]
私が生まれて初めて外資系企業で働き始め、外国人に英語で営業電話をかけることになったときのことです。実は、このときも上の「大物」に会う人と同様に、不安でいっぱいでした。
電話をかけて営業するのは、相手が見えないので勇気がいります。「発音が通じなかったらどうしよう」「相手の言うことが聞き取れなかったらどうしよう」「名前が聞き取れなかったら、どうしよう」と恐れと心配が心を支配してしまうと、余計心が乱れてしまい、お客様とのコミュニケーションすら、もはやうまくいきません。電話をかけるスピードもどんどん遅れてしまい、気付いたらタスクも全然進まないのです。
ところが、いったん、開き直って「わからなかったらもう一度言ってくださいといえばいいんだ」と度胸を決めてしまうと、その方がずっと結果が良いことがわかりました。
結局、お客様によって、何が起こるかは事前に予測できないのです。ですから、「あ、心配しても仕方ない」「やってみて、怒られたら考えればいいのか」と開き直ってしまったら、楽になります。
完璧主義で事前にあれこれと想定するより、むしろ自分の未熟さは認めてしまった方が良いのです。
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開き直るコツ:わからないことは、放っておくということ
もう一つ大事なのは「わからないことは、わからないまま放っておく」と言う思考です。
この本ではこんな風に説明しています。
それに、やってみなければ失敗するかどうかはわからないのです。わからないことは放っておく。失敗に縛られない。それが禅の根本的な考え方です。
出典「傷つきやすい人のための、図太く慣れる禅思考」(文響社)[4]
ときどき、相手の気持ちを必要以上に想像して消耗している人がいます。「もしかして、返事が遅いのは、怒らせてしまったのだろうか」「挨拶がなかったけれども、昨日、何か悪いことを言っただろうか」などとくよくよしてしまう人がそうです。
しかし、相手の気持ちは考えてもしょうがない、まあ何か事情があるのだろうと思考をストップする方法は有効です。考えてもわからないものは、頭から消してしまう。すると、問題は消えます。
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開き直るコツ:わかっていることは、ほとんどないことを認めてしまう
まだまだ、世の中にはわからないことが多いのです。実は、科学者や専門家にも、わかっていることはほんのわずか。例えば、なぜ重力があるのか、重力の本質がなんなのか、これをうまく説明できる人はいません。地球の簡単なことですら、まだまだわかっていないことがたくさんあるのです。百年前に「正しい」とされていた知識は、どんどん否定されていきます。だから「絶対に正しいこと」はほとんどないのだと理解してみましょう。
その中で、拙速に白黒を決めて議論して戦うより、わからないことは「わからない」と素直に認めてしまう。
そして、わからないことはそれ以上考えない。
わからないことを「わからない」ままに放っておく、という思考ができるようになると、禅寺の方がいうように、まさに図太くなり、思考がすっきりします。
こうやって精神が安定することで、初めて脳みそのリソースが、仕事の内容や創意工夫に向くようになるでしょう。そこで、初めてモチベーションが邪魔されない状態で湧いてくるようになるかもしれません。モチベーションを向上するには、自分の頭の中をすっきりさせておく必要があります。
何をするにしても、自分自身を安定させ、失敗を恐れなくなるために、「考えない」「失敗を恐れないで動く」「わからないことを、わからないままに認める」というのは有効です。
ぜひ、失敗が怖いという思いに負けそうになった時に、一度考えてみて下さい。
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[1]出典「傷つきやすい人のための、図太く慣れる禅思考」(文響社)
[2]出典「傷つきやすい人のための、図太く慣れる禅思考」(文響社)
[3]出典「傷つきやすい人のための、図太く慣れる禅思考」(文響社)
[4]出典「傷つきやすい人のための、図太く慣れる禅思考」(文響社)