2020/03/27

「成長志向」だけでは企業も社員も成長しない

「仕事を通じて成長したい、することは必要」。多くの社会人がそう考えてはいますが、「したい」と言っているだけではできないというのは何事においても自明の理です。

成長志向をもつ若者は多くいますが、実際に成長を実感している社員は圧倒的に少ないようです。かつ、「成長志向」よりも「成長実感」の方が、企業の生産性に大きく寄与することがわかっています。

では「成長実感」を抱かせるには、どのようにすれば良いのでしょう。

 

「成長志向」と「成長実感」の間の雲泥の差

 

成長「実感」の効果は「目指す」ことのおよそ3倍、という調査結果があります(図1)。

図1 成長実感と成長志向の影響度(出典:「働く1万人成長実態調査2017」パーソル総合研究所)
https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201711011100.html

仕事への意欲、就業満足度、組織のパフォーマンスには「成長実感」が大きく影響しています。また、組織で働き続けたい気持ちにもプラスの影響を及ぼしているほか、「転職したい気持ち」にはマイナスの影響を与えています。
一方で、社員の「成長実感」はどうでしょうか。

パーソル綜合研究所のこの調査によると、20代の場合「成長志向」は男性76%に対し「実感」しているのは58.2%、女性の場合「志向」は81.3%、「実感」は59.5%で、大きな乖離があるのが実情です[1]。

30代以降、このギャップは大きくなっています。成長の「実感」を与えることの重要性がわかります。

しかし、「成長」とは何のことでしょうか。
人によってあまりに定義が違いすぎるため、まとまりを欠いているのではないでしょうか。
ある人にとっては成長と感じることでも、違う人にとってはそうでないということはよくあります。

成長実感を持たせることの難しさは、そこにあるように思います。

 

「モチベーション3.0」の幻想

 

「成長」のイメージについてパーソル綜合研究所は以下の8つの要素を抽出しいています[2]。

・視野の拡大
・効率性の向上
・専門性の向上
・報酬の向上
・より高い成績、評価を得ること
・ワークライフバランスの充実
・キャリアの明確化
・コミュニケーション力の向上

このうち、成長とはどんなものかのイメージを聞くと、その割合はこのようなものでした(図2)。

図2 成長イメージの割合(出典:「働く1万人成長実態調査2017」パーソル総合研究所)
https://rc.persol-group.co.jp/pgs2017/

成長は何かというイメージの中では「報酬」の割合が非常に高いという状態です。

この「報酬」について、近年「モチベーション3.0」という概念も飛び出しています。「モチベーション1.0」が「生存や安心に基づく動機づけ」、「モチベーション2.0」が「飴と鞭に駆り立てられる動機づけ」という外発的なものであるのに対し、創造や問題の自己解決、といった内発的なものに動機づけられるのが「モチベーション3.0」だというものです。

企業からすれば、お金で解決するよりも「モチベーション3.0」の世界を目指したいところです。特に「自己解決力」が足りないとされる世代にとっては、その能力が身につき、かつ内的報酬となるなら、これほど互いにとって良いことはないでしょう。

しかし現実はどうでしょう。このアンケートでいう「報酬」は純粋に「給料」のことです。「モチベーション2.0」のレベルから脱することができていないのです。

成長を測る物差しを自分の中に持てずにいるのも一つの原因と考えられます。
それゆえ「給料」といった数字化されている物差しの中で安心するという向きもあるのでしょう。

ところで、人が一番物事を学ぶのはどんな時だと思いますか?

うまくいった時、失敗した時、褒められた時…のいずれでもなく「人に教えている時」が物事が一番身につくのです。

わかったつもりでいたことが、「教える」となると案外自分の中で整理されていないことに気づくことが多々あります。「アウトプット」の重要性を感じる時です。

筆者の会社員時代、新人教育にあたって、これは良いなあと思うものがありました。

「2年生3年生に新入社員の指導をさせる」というものです。部署内で一番若い人間を指導者役にして、新入社員が金魚のフンのように2年生の後ろをついて回る時期を設けます。

すると2年生は急に張り切り出すのです。この時の彼らは非常に楽しそうに働きます。
「後輩ができた」という分かりやすい構図の中に「成長実感」を持ち、かつ教育役という重責がやる気を引き出すようです。
同時に、新入社員に自分の1年前の姿を重ね、自分の内面でもしっかりと成長実感を得ている時期でもあります。「自分も1年前はこうだったなあ」と様々なことを実感するのです。

自分で自分の中に「成長」を見つけるのです。

同時に、教えることの難しさを知ります。自分の中でルーティン化したことも言葉で説明するのは案外難しく、また、「なぜこの作業が必要なのか」という純粋な問いを新入社員はぶつけてきますから、それについて考え、自分で答えを引き出すきっかけになります。

成長を実感できないのは、自分で「点数化」ができないからです。成長とは本来自分の中にあるものなのですが、評価を他に求めてしまっている状況もあると言えます。

 

「成長実感タイムカプセル」のススメ

 

また、筆者が時々思い出すのは、自分が新入社員研修を受けていた時の一つの講義です。
スケッチブック用紙を渡され、「3年後の自分がどうなっているか、何か絵を書いて発表しよう」というものです。

各々「こんなことができるようになっていたい」「こんな生活をしていたい」と、理想と「社会人生活って厳しそうだな」という部分を折りませながら各々好き放題を語るのですが、大体は甘い見通ししか持っていません。

若い時ほど仕事や覚えることの多さに追われて自省する余裕はありません。
しかし、「去年はこんなこと言ってたよ」というものを示してやると、「あ、自分は去年よりこんなことができるようになったんだ」「去年は知らないことだらけだったなあ」と、「自分の物差し」で成長を実感できるということがあります。

定期的に「内省」「目標」「悩み」をあくまで自分の物差しで書かせて、それを保存し、1年、2年後に本人の元に返してみるというのも一つのやり方です。社内にタイムカプセルを作ると言っても良いでしょう。忙しくて忘れていたことを思い出す時間は重要です。

以前の自分を振り返り、成長を感じるとともに、プライベートも含めた次の目標を描く。数年後に照らしてみる。それをずっと繰り返していくのです。

 

「志向」のステップは必ずしも必要ではない

 

なんとなく成長「志向」→「実感」という順序があると捉えている人は多いのではないでしょうか。
しかし、必ずしも「志向」せずとも「気がついたら実感していた」という形でも構わないのです。

すると「プライベートが楽しければそれでいい」「そもそも成長志向がない」という「成長に無関心な層」へのアプローチも可能になります。

「成長を志向しない」従業員が4割近く存在するというのがパーソル総合研究所の調査結果です[3]。そして、それまでの調査の結果も踏まえ、こんなヒントを示しています(図3)。

図3 非志向層への成長機会をどう与えるか(出典:「働く1万人成長実態調査2017」パーソル総合研究所)
https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201711011200.html

無関心層は仕事に余裕がなく「自分の仕事を振り返る余裕がない」のが成長阻害要因、また「プライベート優先型」は同僚や社内の上位者との会話の少なさが成長実感の阻害要因となっていると分析されています。
プライベート優先型の場合、コミュニケーション不足によって職場がつまらない、ならば私生活にかけよう、という「逃げ」の姿勢という従業員もいそうです。

何より「自省」の時間がとにかく大切でしょう。

そして「成長」の定義は人それぞれですから、「自分の物差し」で成長を実感できることが何より重要です
それが「モチベーション3.0」に繋がっていくのではないでしょうか。

【識学からのお知らせ】
リーダーシップが育つロジカルなマネジメント手法を学んでみませんか?
<ご訪問 or Web会議で体験できます>
1000以上の企業が受講した「識学マスタートレーニング」を無料で体験しませんか?
今申込むと『伸びる会社は「これ」をやらない!』書籍をプレゼント

識学マスタートレニングは「学びながら実践」します。
平均して3ヶ月ほどで「売上向上」「離職率の低減」など目に見える成果が上がっています。


お申込み・詳細は こちらお申し込みページをご覧ください

参照
「働く1万人成長実態調査2017」パーソル総合研究所
[1]https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201711011100.html
[2]https://rc.persol-group.co.jp/pgs2017/
[3]https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201711011200.html