「個々の能力を最大限に発揮してもらうためには、自由にアイデアを提案して実行してもらうべき」と考えている方は多いのではないでしょうか。最近の風潮として、部下の自由な発想を尊重する考え方がいいともされています。
しかし、それでは、会社という組織が機能不全に陥ります。
ここでは、「社員の意志を尊重する」マネジメントの注意点とあるべきポイントについてご説明します。
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目次
「自分なりに良い」で組織が機能しなくなる
会社のホームページやパンフレットには、人材育成の項目に「社員の自由な発想力を生かす」「社員の個性を尊重する」などの文言がよくみられます。この背景には、「社員の想いややりたいことを尊重すれば、モチベーションが高まり、いきいきと働き、そして、仕事のパフォーマンスが向上する」=「仕事ができる人になる」という考え方があります。
ところで、「仕事ができる」とはどういうことでしょうか?
- 営業力がある人
- おもしろいアイデアを発想できる人
- 資料作成が早い人
など、いろいろな要素が上げられます。ただ、この要素だけを見ても、間違いとも正解とも言えません。なぜなら、仕事ができる=「評価者の求める事ができる」ということだからです。
これは会社組織以外でも同様です。プロスポーツのサッカーで考えてみましょう。
どれだけ足が速い選手でも、過去に所属したチームで大活躍した選手でも、現在所属している監督の求めるプレーができなければ、試合に出ることはできません。試合に勝つためにそれぞれのポジションで求められる事は決まっており、それ以外のところで自分なりに良いと思ったことをプレーしても、それでよい評価を得られることはありません。なぜなら、そのプレーによってチームが組織として機能しなくなるからです。
会社組織でも同様です。組織を目標達成に近づけるためには、メンバーが「与えられた機能」を果たすことが求められます。与えられた機能以外のことを能動的にそれぞれが自分なりに良いと思うことを実行し始めると、それは組織ではなくなります。では、与えられた機能とは何か、これは評価者の求める事です。つまり、組織にとって有益な事は、目標達成に近づくことであり、目標達成に近づくためには与えられた役割を果たすことが求められるのです。
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与えられた役割を続けると+αが生まれる。
そのようなマネジメントを行うと「考えない社員になるのではないか」と思われる方も少なくないかもしれません。しかしながら、そのような事はありません。なぜなら、「評価者の求める事をどのように達成するか」を考え、実行するのはメンバーの役割であるからです。
そして、評価者の求める事に集中し、取り組んでいると、評価者が思いもつかなった、しかし、求める事の延長線上にある、組織にとって有益なプラスαを部下が思いつき実行するようになるのです。
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自己評価は意味がない。
当たり前だと思うかもしれませんが、ある仕事を評価するのはクライアントであり、上司です。自分で「よく頑張った」と思っていても、それがクライアントや上司のニーズとずれていてはよい評価をしてもらえません。どれだけ自己評価が高くても、評価者から求められることができていなければ全く価値はありません。
あくまで、評価というのは他人からなされるものです。人は自身が評価者の立場となった場合には自然とそのことを理解しています。例えば、店主がとても美味しいと思っている料理が、美味しくなかった場合、その店には行く可能性は低くなるでしょう。
ところが、自身が評価される側に回ると、自分の自己評価が評価者にも何かしらの影響を与えることができると勘違いしているのです。
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「他者評価」を意識させることで、はじめて成長できる
そのことに気づかず自己評価の思考を持っていると、自身で設定した基準で評価するため、「何が今の自分に足りないのか」を正しく認識できず、正しい方向に成長できなくなります。
そのため、管理者は、社員に求めることを明確にしなければいけません。何を求めているのかはっきりしていないのに「メンバーの自由な発想力」に賭けたところで、アウトプットは上司が期待したものとずれるのが目にみえています。そして、それが期待外れであったとしても、自由な発想で考えた結果に対して満足し、改善行動に繋がることはありません。さらには、それに費やした時間も、「全力で無駄な努力をさせた」という可能性さえあります。
管理者が、求めることを明確に認識させること。これこそが、人材育成の要なのです。
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