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エンゲージメントマネジメントリーダーシップ管理職入門組織改善部下管理法部下育成 2023.06.02

【識学視点で読み解く】『リーダーシップ・チャレンジ』が提唱する5つの実践|識学が示すリーダーの「位置」とは

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【識学視点で読み解く】『リーダーシップ・チャレンジ』が提唱する5つの実践|識学が示すリーダーの「位置」とは

「優れたリーダーとはどんな人か」この問いに「人望がある」「カリスマ性がある」と答えていると、組織のリーダーシップは特定の個人への依存から抜け出せないかもしれません。本記事では、リーダーシップ研究の名著『リーダーシップ・チャレンジ』が提唱する5つの実践を解説したうえで、識学が示す「誰が就いても機能するリーダーの仕組み」の設計方法をお伝えします。

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『リーダーシップ・チャレンジ』とは

『リーダーシップ・チャレンジ』(ジェームズ・M・クーゼス とバリー・Z・ポズナー著)は、長年にわたるリーダーシップ研究の成果をもとに、優れたリーダーシップを発揮しているリーダーの共通する実践を体系化した書籍です。世界各国で版を重ねており、リーダーシップ研究の分野で広く参照されています。

本書が明らかにしたのは、「優れたリーダーは生まれつきではなく、特定の実践(行動パターン)によって形成される」という考え方です。本記事では、本書が提唱する5つの実践を整理したうえで、識学の観点からリーダーの役割を再定義します。

優れたリーダーに必要な5つの実践——識学の観点から読み解く

実践①:模範となる(Model the Way)

自分の価値観を明確にし、言動と一致した行動を取ることで、組織の模範となるという実践です。

識学の観点では、「模範になる」ために最も重要なのは、リーダー自身が「報告は当日中18:00までに行う」「期限変更が生じる場合は期限を迎える前に上司に確認する」のような当たり前の基準である姿勢のルールを、自ら先に定義し、自ら守っている状態です。言葉で「模範を示す」より、ルールを先に定義してその通りに動く姿を見せることの方が、組織に対してより明確なメッセージになります。

実践②:共通のビジョンで鼓舞する(Inspire a Shared Vision)

将来の可能性を描いて、メンバーを共通の目標に向かわせるという実践です。

ビジョン達成のために「鼓舞する」だけで終わると、部下はビジョン達成を自分事として捉えられません。例えば「顧客満足を高める」ことを達成したい場合は、ビジョンに加えて「毎週月曜日の10:00までに顧客フォローコールを1件実施する」のように「明日から何をするか」を明確にする。もしくは「顧客満足アンケートで平均○点以上をとる」のように「数値での目指すべき指標」を明確にして、達成方法は自分で考えさせる。このように部下がイメージしやすい日々の行動レベルに翻訳して伝えることが、リーダーの責任です。ビジョンを伝えるだけでは、部下は「自分が何をすれば良いか」が分からず、動けないままになってしまうことが多くなってしまいます。

実践③:現状を改革する(Challenge the Process)

現状に満足することなく、継続的に改善・挑戦する実践です。

「何の状態になれば改革が達成されたか」という目指すゴールを先に定義しなければ、「改革に挑戦している」状態が続くだけで、実際の変化が起きているかどうかが判断できません。「○月末までに、業務処理時間を現在の○時間から○時間に削減する」このように期限と状態が明確になっている目標を、識学では「完全結果」と呼びます。改革の成否は、この目標が達成されたかどうかで判断することが重要です。

実践④:行動できる環境をつくる(Enable Others to Act)

メンバーが協力し合い、行動できる環境・権限を与えるという実践です。

「行動できる環境をつくる」ための最も重要な設計が、「役割と目標の先行定義」です。部下が「何をいつまでに達成すべきか」を知った状態でスタートできていれば、メンバーは迷わず行動できます。その際に重要なのは、やり方に口を出すなどのプロセスの管理を行わないことです。上司からの経過介入が続くと、部下は「自分で考えなくても、上司が考えてくれる」「上司の言うとおりにさえしておけば、責任を問われない」などと考えてしまい、主体性や自責意識の低下に繋がってしまうことがあります。もし、担当者に行わせる必要があるプロセスがあるのであれば、やり方に口を出さないために「ルール」として先に設定・周知することが必要です。

実践⑤:心から励ます(Encourage the Heart)

メンバーの貢献を認め、感謝と承認を伝えることで組織の士気を高めるという実践です。

識学の観点では、「励ます」ことより先に「結果で評価する仕組み」が整っていることが重要だと考えます。先月は未達だった目標が今月は達成できた。この変化こそ部下が成長しているサインです。完全結果で目標が先に定義されているからこそ、達成を「できた」として明確に認識できます。これを通して自身が成長している実感を得ることで、モチベーションが自然に発生する状態になるのです。

優れたリーダーに必要な能力——識学の観点から再整理

「誠実である」の本質:識学では、これを「ルールを後出ししないこと」と捉えます。ルールを先に決めず後から「それはダメだ」と伝えると、どうしてもネガティブな感情が発生しやすくなります。

「先を見据えられる」の本質:将来の目標を描く力だけでなく、「その目標を完全結果として定義できるか」という具体化の力です。「5年後に業界トップになる」という方向性を「今期末までに○の状態を達成する」という結果に分解できるリーダーが、組織を前進させます。

「メンバーのモチベーションを上げられる」の本質:部下が目標を達成し成長を実感することでモチベーションは自然と生まれます。だからこそリーダーの仕事は、達成基準を先に明確に定義し、部下が「自分が何をすれば評価されるか」を分かっている状態をつくることです。

「実力がある」の本質:業務の専門知識より先に、「役割と目標を完全結果で定義できること」「責任の所在を構造的に分類できること」がリーダーの実力の中核です。担当業務の知識は完全結果を定義するための土台として機能しますが、それだけではリーダーとして機能し得ません。

組織においてリーダーシップはなぜ必要か——識学の観点から

目標を達成するため:リーダーが完全結果で目標を定義し、各メンバーへの役割を先に言語化することで、はじめて組織として目標に向かえる状態が生まれます。目標が定義されていない状態では、各メンバーがバラバラな方向に動き、誰も「組織の目標達成」を自分の責任として捉えられません。

価値観を浸透させるため:「誠実に顧客と向き合おう」という価値観を「毎週月曜日の10:00までに顧客フォローコールを1件実施する」という行動ルールに落とし込む。このような翻訳を繰り返すことが、価値観の浸透の本質です。価値観の浸透は感情への働きかけだけではなく、行動への翻訳という設計も必要とします。

『リーダーシップ・チャレンジ』と識学の共通点と補完関係

『リーダーシップ・チャレンジ』と識学は、「リーダーシップは生まれつきの才能ではなく、実践によって形成できる」という点で共通しています。

ただし、アプローチに違いがあります。本書はリーダー個人の行動パターン(模範を示す・ビジョンで鼓舞するなど)を5つに体系化し、それを実践することでリーダーシップが身につくと説いた内容です。識学は、「優れたリーダー個人」に依存するのではなく、「誰が就いても機能する仕組み」の設計を重視します。

「誰がどの範囲の責任を持っているか」識学ではこれを「位置」と呼び、役割と紐づけて定義します。位置が明確に定義された組織では、リーダーが交代しても機能不全が起きにくくなるのです。

両者は対立するものではなく補完的であり、本書が示す5つの実践を、識学の「役割定義・完全結果・経過介入しない」という仕組みと組み合わせることで、個人のリーダーシップと組織の再現性の両方を高めることができます。

まとめ:リーダーの機能は「役割と目標の先行定義」から始まる

「優れたリーダー個人を育てる」という発想から、「誰が就いても機能するリーダーの位置を設計する」という発想への転換が、組織の属人化を解消する出発点です。

リーダーという位置に何の役割を担わせ、どの結果に責任を持たせるかを先に定義すること。その定義が整えば、特定のカリスマや人望に頼らない、再現性のある組織が生まれます。

現在のリーダー(課長・係長などの管理職)について、「この位置は何を決定する責任を持ち、何の結果に責任を持つか」を確認してみてください。定義できていない部分が一つでもあれば、そこが組織の属人化の起点になっているかもしれません。この原理原則が、組織運営をどのように進めていくかのヒントになれば幸いです。

参考文献・引用元

ジェームズ・M・クーゼス、バリー・Z・ポズナー(2014)『リーダーシップ・チャレンジ』(関 美和 訳), 海と月社.

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