社員の意欲が高ければ高いほど、仕事のパフォーマンスはが高まります。
その結果として、企業収益向上のメリットが期待できるため、社員の意欲を引き出す方法を知っておくことは経営者にとって大きな意味があると言えるでしょう。
本記事では、社員の意欲を引き出す秘訣や部下育成の方法などを解説していきます。
目次
意欲とは?
意欲と一口に言っても、さまざまな意欲や欲求が存在します。
働く上で重要となる意欲や欲求について6種類紹介していくので、社員の動機付けなどに役立ててください。
向上欲求
向上欲求とは、その名の通り「もっと向上したい」「もっと人として成長したい」という欲求です。
一般的な社会人であれば、程度の違いこそあれど、基本的に向上欲求を持っています。向上欲求が強ければ成長スピードが速まります。
また、何らかの成果を出して「向上している実感」を得ることができれば、さらに強い向上欲求を持つようになるので、好循環をもたらすことができるでしょう。
挑戦欲求
挑戦欲求も、向上欲求と同じく全ての社会人が多かれ少なかれ抱えている欲求です。
「新しい挑戦をしたい」「新しい価値を生み出したい」などの希望を総じて挑戦欲求と言いますが、挑戦欲求が満たされることで仕事に対するモチベーションが高まります。
挑戦欲求が乏しい社員は「自己成長に興味が無い」ことになるので、業務生産性が低くなってしまうでしょう。
そのため、仕事にやりがいを持たせて「挑戦欲求」を刺激することができれば、社員のパフォーマンスの向上が期待できます。
自立欲求
自立欲求とは、「自分の意思で物事に取り組みたい」という欲求のことで、他人からの支配や影響から逃れたいという欲求を指します。
自立することで責任感を持って仕事に取り組めるようになったり、支配から逃れることで創造性が高まるメリットが期待できます。
つまり、自分の意思で状況をコントロールし、裁量が増えることでアウトプットの質が高まる効果が期待できることから、社員の自立欲求を満たすことは有意義です。
さらに、自立欲求を満たすことで自尊心を満たすことにも繋がり、自己肯定感を高める効果も得られるでしょう。
探求欲求
探求欲求は好奇心に似ていますが、新しいことに挑戦したり新しいアイデアを生み出そうとする欲求や、仕事の改善や改良に取り組むことを指します。
また、特定の分野について追求し、深く掘り下げて専門性を高めることも「探求欲求」に含まれます。
探求欲求が強い社員が多いと、特定の分野に強みを持つことができたり、新たなイノベーションやアイデアを生み出してくれる可能性が高まるでしょう。
探求欲求は「自己実現の過程」と捉えることもできるので、探求欲求を満たすことで理想としている自分の姿に近づくことが可能です。
啓発欲求
啓発欲求とは、仲間やメンバーを理解し、必要なサポートや支援をするための努力に取り組む欲求を指します。
「仲間と共に良い仕事をしたい」という感情が根本にありますが、自分自身のスキルや知識を高めたいという欲求も啓発欲求に含まれます。
啓発欲求が乏しいと、協調性に欠けたりワンマンプレーが目立ってしまうので、チーム作業には向かない可能性が高いです。
啓発欲求が高い社員が多ければ、社員同士で助け合い、良い雰囲気の中で仕事に着手できるようになるでしょう。
承認欲求
承認欲求は「他人から認められたい」という欲求で、承認欲求を満たすことで自尊心を満たすことができます。
職場やコミュニティから「自分は価値のある人間である」と認めてもらうことができれば、自分自身が満たされている状態になるので、チームワークを大切にしたり、責任感と協調性を持って仕事に取り組めるようになります。
地位や名声などを得ることで承認欲求を満たすことができますが、それ以外に自己肯定感や自己効力感を得ることでも、承認欲求を満たすことは可能です。
関連記事:承認欲求とは?強い人が増えた理由やメリット・デメリット、対処法を解説
部下の意欲が低いリスク
部下の仕事に対する意欲が低いと、企業としてもさまざまな問題を抱えてしまうことになります。
ここで、部下の意欲が低いことで生じるリスクを紹介するので、意欲の重要性を再認識するきっかけになれば幸いです。
離職率が上昇し採用コストの増大
社員の仕事への意欲が低いということは、働くモチベーションが低下していることを意味します。
当然、仕事へのモチベーションが低いとやりがいを感じることができず、転職を意識するようになるので、離職率の上昇に繋がるでしょう。
「離職率の高い企業」は対外的なイメージも悪く、優秀な人材も集まりにくくなってしまうことから、労働生産性の上昇が見込めない恐れもあります。
また、人員を補充するための採用活動が必要となりますが、採用活動を進めるにあたっては担当者の貴重な時間を割くことになります。
さらに、採用後も研修や教育に関する時間や費用などの無駄なコストが発生してしまう点も大きなデメリットです。
従業員エンゲージメントの低下
エンゲージメントとは「仕事に対する満足感」を意味しますが、意欲が乏しい社員はエンゲージメントが低く、この状態だと労働生産性が向上しません。
エンゲージメントが低下してしまっている従業員が多いと、会社全体のエンゲージメントも低下してしまい、収益減少や組織の衰退などのマイナスな状況に繋がります。
特に、挑戦欲求や探求欲求といった、社会人として成長するための意欲が乏しいと会社全体にダラダラとした空気が蔓延してしまうので要注意です。
企業活動を活発化させるためにも、先ほど紹介した意欲を高めるように工夫することが重要です。
関連記事:個人の欲求を満たすことではパフォーマンスは上がらない
部下の意欲を高めるポイント
続いて、部下の意欲を高めるためのポイントを紹介していきます。
現在の部下の状態に不安を抱えている場合は、下記で解説する内容を実践してみると良いでしょう。
自己肯定感の形成
自己肯定感とは、自分自身で納得感を持つ意識を指します。
自己肯定感は成長意欲と深い関わりがあるので、社員が自己肯定感を持てる環境を整備しましょう。
自己肯定感が高ければ「自分には価値がある」とポジティブに考えることができるため、自然と意欲が高まるのです。
自己肯定感を高めるためには、自分で自分を評価する以外にも、周囲の環境も影響しています。
例えば、上司や先輩から労ってもらえたり、評価をしてもらえると自信が持てるようになり、自己肯定感の形成に繋がります。
そのため、社内のコミュニケーションを円滑にすれば、自己肯定感を形成できる可能性が高まるでしょう。
自己効力感を高める
自己効力感とは、「自分には目標を達成するために必要なスキルや知識が備わっている」と認識することで、自己肯定感と同じく仕事のモチベーションを高めてくれる意識です。
自己効力感が高い人は、常に「自分は成功できるだろう」というポジティブな感情を持ちながら仕事に着手できる強みがあります。
また、自己効力感を持ちながら仕事に取り組む人の方が仕事のパフォーマンスは高い傾向にあるため、日頃から社員の自己効力感を高めるようにアプローチしましょう。
小さな成功体験を積み重ねさせる
大きなプロジェクトではなくとも、小さい成功体験を積み重ねることでも、意欲が向上する効果が期待できます。
成功体験を積み重ねることで徐々に自分に自信が持てるようになり、それらの自信が意欲の向上に繋がるのです。
また、成功体験を得ることは先述した自己肯定感や自己効力感の形成にも役立つので、社員のレベル感に合ったタスクを与えていきましょう。
ネガティブ思考の人でも、成功体験を積み重ねることでポジティブな感覚を持てるようになるため、成功体験を得るための場を積極的に提供することが重要です。
ロールモデルを設定させる
意欲は感情面に起因している以上、個人差があるのは当たり前のことです。
なかなか自己肯定感を持てなかったり、意欲を持って仕事に着手できない社員がいる場合は、ロールモデルを設定して学んでもらうことも有意義です。
自己肯定感や自己効力感の高い社員をロールモデルとして設定し、ロールモデル社員の考え方やマインドを学ぶことで意欲が高まる効果が期待できます。
ロールモデルとなる社員のように、多くの社員に意欲を持ってもらえれば、企業活動が活発化するでしょう。
部下の意欲を引き出すマネジメント
実際に部下を統率する立場にいる人は、まず「部下が与えられた役割をしっかりとこなしているか」「与えられた目標を達成できたか」に重点を置くと良いでしょう。
一般的に、「モチベーションが高ければ成果が出やすい」傾向にありますが、これは全ての社員に共通することではありません。
むしろ「成果が出ると仕事が楽しくなり、その結果としてモチベーションが上がる」ため、このサイクルを作ることができれば社内全体に好循環を生み出すことができます。
そのため、部下の意欲を引き出すためのマネジメント方法としては、「まずは結果や成果を出す」という点を意識すると良いでしょう。
「まずはメンバーのモチベーションを上げよう!」と意気込むのも悪くはありませんが、成果や成果が出ないとモチベーションは持続しづらいものです。
「小さくても良いから、着実に成果を残す」ようなマネジメントをすれば、自然と社員の意欲は高まっていくことでしょう。
関連記事:社員のモチベーションを高めるには? 理論をもとにした具体的な方法を解説
部下の意欲を引き出すための本
部下の意欲を引き出すに当たり、参考になる書籍は多くあります。
『心理的安全性の作り方』著者:石井 遼介
『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』著者:村山 昇
『社員の力で最高のチームをつくる――〈新版〉1分間エンパワーメント』著者:ケン・ブランチャード , ジョン・P・カルロス他
『部下を元気にする、上司の話し方』桑野 麻衣
『部下のトリセツ 「ついていきたい!」と思われるリーダーの教科書』著者:浅野 泰生
『令和上司のすすめ ―「部下の力を引き出す」は最高の仕事― 』著者:飯田剛弘
『部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ』著者:松尾 睦
上記で紹介した書籍は、部下とのコミュニケーション方法やメンバーで仕事を進める際に役立つノウハウなど、多くのことを学ぶことができます。
また、部下の心理面から意欲を高めるアプローチについても学ぶことができるので、リーダー的な立ち位置にある人は読んでみるとよいでしょう。
まとめ:しかし「意欲」は働くうえで本当に必要なのか
部下の意欲、モチベーションを引き出すことは大切だとなんとなく思っている経営者の方は多いでしょう。
しかし、本来、働くのにモチベーションは必要だったのでしょうか?
モチベーションマネジメントは必ずしも成功するわけではありません。
なぜなら、モチベーションは上下するものであり、一定に保つことは極めて難しいからです。
また、それに加え、マネージャーが部下のモチベーションを管理しようとすると、思わぬ弊害を産んでしまいます。
▶漫画「【マンガで学ぶ】社員のモチベーション管理で業績が上がらないワケ」
弊社識学は感情によるマネジメントを否定しています。
それでは何が大切なのか。その答えは下記の記事からご覧になれます。
関連記事:仕事に「感情」はいらない|感情ではなく数字で管理する組織マネジメント
必ずしも感情によるマネジメントが正しいとは限りません。
ぜひこの機会に、そもそも社員の意欲を引き出す必要があるのか?を考えてみてください。