企業に貢献してくれた社員を適切に評価するためにも、人事評価制度を導入することは重要です。
適切に制度を運用できれば、社員のモチベーションを高めたり企業活動を活発にできるメリットが期待できます。
本記事では、人事評価制度の導入方法や見直し方法、問題点などを詳しく解説していきます。
※この記事では一般的な人事評価制度の考え方と、識学式の人事評価制度の考え方を両方解説しています。
3,000社に導入された弊社識学の評価制度の考え方を知りたいという方は、ぜひ下記の動画をご覧になってください。
識学式:【動画】リーダーが陥りがちな評価制度の5つの誤りとは?
目次
人事評価制度とは?公平性のある評価制度
多くの企業では、社員の働きや成果を評価するための人事評価制度を定めているでしょう。
半期に1回、又は年に1回の頻度で、面談を通して社員の働きを評価している企業が多く、その際に人事評価制度を用います。
業種や職種によって評価する項目は異なりますが、社員が働くモチベーションを保ち、意欲を持って仕事をするためにも公平性のある評価制度は欠かせません。
「自分は適正に評価されている」と感じることができれば社員満足度も高まるでしょう。
また、人事評価によるコミュニケーションを通じて、企業理念や経営方針を社内に浸透させたり、人材の最適な配置ができるようにもなります。
つまり、社員のモチベーションを高め、企業の生産性を高めるためにも人事評価制度を正しく運用することは非常に重要なのです。
人事評価制度と人事考課制度の違い
人事評価制度とよく似ている言葉に「人事考課制度」があります。
人事考課とは、一定の基準を設けた上で社員の能力や勤務態度、企業への貢献度を評価するものです。
評価内容を昇給や昇進、移動配置などに反映する制度を指しており、「人事評価制度の中の一つとして、人事考課制度がある」と捉えてください。
つまり、人事評価制度は人事考課制度よりも広義で使われており、大きな違いはありません。
関連記事:【職種別例文あり】人事考課での目標設定とは?目的やメリットについて徹底解説!
人事評価制度の主な目的は3つ
そもそも人事評価制度とは、何を目的に設定されるものなのでしょうか。
主な目的を知っておくとともに、正しく設定・運用されないとどういった問題が起こるのか、あわせて見ていきましょう。
企業貢献と評価を可視化する
人事評価制度を設けて、社員に対して「会社としての方針や目標」をシェアすることで、社員がやるべきことが明確になります。
企業が求めている人材像や将来的なビジョンを社員が理解することで、「それを実現するにはどうすればよいのか」というひとつの指針にもなるのです。
こういった指針が明確になることで、目標に対する企業貢献や評価内容も可視化できるようになり、各社員を公平に評価できるようになるでしょう。
反対に人事評価制度の運用が不適切であれば、「自分がどれくらい企業に貢献したのか分からない」「適正に評価されているのか不明」という問題が発生してしまいます。
社員のモチベーションを高める
人事評価制度には、社員の仕事に対する意欲やモチベーションを高める目的もあります。
期首面談や期末面談を通じて企業が求めている人材像や目標などを社員に伝え、各社員が果たすべき役割や期待を明示することで、社員のモチベーションは高まります。
それにより、労働生産性や企業の魅力の向上にも役立つでしょう。
目標や役割に沿って評価することで評価への納得感も生まれるため、企業と従業員の信頼関係も強化されます。
目標やビジョンが曖昧で、人事評価の目的も曖昧だと「どうせ正しく評価してもらえない」と考えてしまい、モチベーションを喪失してしまいます。
関連記事:社員のモチベーションを高めるには? 理論をもとにした具体的な方法を解説
社員の能力・スキルの向上
明確で公正な人事評価制度を導入することで、社員の行うべきタスクや目標が明確になり、人材の育成に繋げることができます。
その結果、各社員が業務の遂行にあたって必要となるスキル習得に励むようになるので、人事評価制度には社員の能力・スキルの向上という目的も含まれています。
目標を設定し、期末にフィードバックを行い、次の目標設定を行うというサイクルを回すことで、企業が求めている人材像にマッチした人材を育成できるメリットも期待できるでしょう。
人事評価制度のメリット3選
続いて、人事評価制度を導入するメリットについて解説していきます。
3つのメリットが期待できるので、それぞれ見ていきましょう。
評価基準の透明性を担保
人事評価制度を導入することで、社員を評価する基準が分かりやすくなり、評価基準の透明性を担保できるようになります。
評価基準が曖昧だと、評価に一貫性が無くなってしまう上に社員から不平不満が出てしまうので、社員の働くモチベーションも低下してしまいます。
人はついつい他人と比べてしまう生き物なので、「なぜ自分があの人よりも評価が低いのか」「なぜ自分の評価はこの程度なのか」と考えてしまうことは仕方の無いことです。
しかし、評価基準の透明性を確保できれば、人事評価に関する不公平感が感じづらくなるので、社員のモチベーション向上にも繋がります。
社員のモチベーションが高まることで企業の生産性も高まりますから、双方にとって大きなメリットとなります。
労働力・生産性の向上
人事評価制度の導入に伴って評価基準が明確になることで、各社員が自分の役割を理解して、自分のやるべきことに集中できるようになります。
仕事の集中力が高まれば、労働のパフォーマンスが高まり生産性も向上するので、企業利益の増加にも繋がり、企業全体として有益です。
このように、良質な労働力を確保して生産性を向上させることで、社員にとっても企業にとってもメリットを得ることができます。
残念ながら、日本は海外諸国と比べて労働生産性が低いという課題を抱えているので、人事評価制度を上手に活用して、生産性を向上させる重要性は今後も高まっていくでしょう。
コミュニケーション促進
社員の評価を下すのは最終的にヒトなので、人事評価制度を通じて自然とコミュニケーションが発生します。
一方的に評価するのでなく、双方が自分の考えや価値観を伝え合ったり必要に応じてフィードバックも行われます。
特に、期初面談や期末面談の場は上司と部下がじっくりと話をする貴重な機会となるので、社内全体でコミュニケーションを促進できるというメリットも期待できます。
また、自分に与えられた役割を遂行するにあたって、上司から指示を受けたり助言を求めることもあるでしょう。
このようにコミュニケーションを促進できれば、組織としての活動も活発化するので、人事評価制度がもたらすメリットは広範囲に渡ります。
関連記事:コミュニケーションを円滑にする7つの方法と能力を高めるメリットを徹底解説!
人事評価制度のデメリット3選
人事評価制度にはメリットが多くありますが、逆にデメリットも存在します。
デメリットについてもしっかりと認識して、問題が発生しないようにしましょう。
評価者のスキル開発が必要
評価の基準が設けられていても、評価者の認識にズレがあったりすると正しく運用できなくなってしまいます。
そのため、人事評価制度を正しく運用するためには、評価者のスキル開発が必要となる点に留意しましょう。
また、単に公正に社員を評価するだけでなく、各社員が目標達成できるように導くマネジメント能力も求められます。
評価者と被評価者との間で乖離が大きいと不満に繋がってしまうので、管理者や責任者への研修は必須と言えるでしょう。
評価されない仕事をしなくなる
人事評価制度を導入することで、自分の役割が明確になるメリットがありますが、逆に「評価されない仕事をしなくなる」という弊害が生まれてしまう可能性もあります。
感情的に「評価されない仕事はしない」と考えてしまうのは仕方の無いことではありますが、社員の能力開発の意欲を削いでしまうのは大きな問題です。
社員のスキルが偏ったり、組織運営の柔軟性が失われてしまうのは大きな損失となりかねないので、評価者が上手にコントロールする必要があるでしょう。
社員から不満が出る可能性
評価を決定する際に、ある程度のヒューマンエラーが起きてしまうのは仕方の無いことではありますが、著しく公正さを欠いてしまうと社員から不満が出てしまいます。
そのため、人事評価制度を策定して運用するだけでなく、全社員が納得できるようにしなければ意味がありません。
評価は社員の働きぶりや仕事への取り組み方などから判断するべきですが、そこに「好き嫌い」などの感情が入り込んでしまうと制度にほころびが出て、不平不満が発生してしまう可能性があるので注意しましょう。
人事評価制度の評価基準
人事評価制度で評価を決定する際には、3つの評価基準があります。
それぞれ評価する内容が異なるので、各評価項目について知っておきましょう。
業績考課
業績考課とは、設定した目標の達成度や企業への貢献度で評価を行う方法です。
期初に上司とコミュニケーションを取りながら目標を設定して、期末に達成度や進捗度を評価するので、モチベーションを高く保ちながら仕事に取り組めるでしょう。
目標を数値化することで評価が分かりやすくなるメリットがありますが、プロセスが評価されない点には注意が必要です。
能力考課
能力考課とは、社員が業務を通じて習得したスキル、自己啓発を通じて得られた知識などの能力面を評価する方法です。
取得した資格などを評価に含める場合もあるので、社員の積極的な能力開発が期待できるメリットがあります。
しかし、能力を数値化することは難しいことから、「難易度の高い仕事の達成度」などを評価対象とするケースも多く、目標の達成度や企業への貢献度も評価に含まれます。
情意考課
情意考課では、社員の仕事に対する姿勢や態度、取り組み方などを評価します。
評価者の主観が入り込んでしまうデメリットはありますが、主体性や積極性、普段の業務態度などが評価基準に含まれるので、社員が協調性を持って仕事に取り組むよう導くものでもあります。
数値的な結果だけでなく、このように日頃の勤務態度なども評価対象に含めることで、公正さを維持できるようになります。
しかし、弊社、識学ではこの評価方法を明確に否定しています。
詳しくは下記の資料をダウンロードしてください。
人事評価制度の導入方法
人事評価制度を導入する際には、下記のようなステップで進めると良いでしょう。
- 現状を分析する
- 人事評価制度導入にあたって社員へ説明する
- 評価項目・評価期間を設定する
- 賃金のシミュレーションやモデルプランを作成する
- 評価するためのフォーマットやシステムを導入する
- 評価者への研修を行う
- 必要に応じて、社員への説明会や講習会を行う
- 運用開始
まずは、現状を分析して、企業が抱えている課題や社員の抱えている不満を把握する必要があります。
その後、社員へ制度の概要や導入の背景などを説明し、賃金のシミュレーションやモデルプランを作成して分かりやすく明示しましょう。
また、正しく評価をするためにも、評価フォーマットやシステムの導入も検討し、ヒューマンエラーが起きてしまうリスクを抑えるべく、評価者の研修を行うと良いでしょう。
人事評価制度の見直し方法
人事評価制度導入後に、社員から不満が出た場合や制度に綻びが出た場合は、速やかに対応しなければなりません。
人事評価制度の指針は、企業や経営状況や業績、外部環境の変化などによって常に変化するので、定期的に確認して評価項目などの基準を見直しましょう。
なお、人事評価制度を見直す際には下記のステップで着手すると良いでしょう。
- 企業理念や価値観を改めて周知する
- 求める人物像を明確にする
- 人事ポリシーを定義する
- 人事制度を再構築する
人事評価を見直す際には、併せて企業理念や求める人材像についても見直しましょう。
先述したように、企業環境だけでなく外部環境の変化によっても状況は変わってくるので、ミスマッチが起きないように適宜修正することが重要です。
また、人事制度の指針となる人事ポリシーも必要に応じて見直して、制度に公正さや透明感を維持できるようにしてください。
識学的視点:誤った評価制度の設定方法
ここまで一般的な人事評価制度の考え方をお伝えしてきました。
ここからは弊社識学の人事評価制度の考え方を紹介します。
- 目標設定と評価設定を同時にやらない
- 目標は低いのに、評価制度だけ難易度が高い
- 定性的な指標が入り込む
目標設定と評価設定を同時にやらない
目標設定と評価設定は本来同時に設定すべき項目です。
しかし、目標設定と評価設定を切り離して行う企業は散見されます。
例えば、貴社内で先に評価項目だけ決定しており、目標設定は別途定めているといったケースはありませんか?
こうした目標設定は「目標を達成していないのにあの社員だけなぜか評価が高い」といったできる社員の離職を早める契機になりかねません。
目標は低いのに、評価制度だけ難易度が高い
本来、評価と目標の達成度は連動させる必要があります。
しかし目標達成が難しいとモチベーションが下がるといったことを要因に、上司が部下の目標設定を低くしてしまうことがあります。
一時的に部下は目標を達成した満足感を抱くかもしれません。
しかし、目標を達成したのに評価には反映されないという不満は、逆にモチベーションを下げる引き金になりかねません。
定性的な指標が入り込む
「業務にひたむきに取り組んでいる」
「業務効率化に貢献した」
「自己研鑽に励んでいる」
上記のような、定量的な指標が貴社の評価制度に入っていませんか?
定性評価は、モチベーションを上げると言われてきましたが、残念ながら「不平等感」を増幅させる懸念材料となります。
また、見ている上司によって評価が変わるため、「あの上司だから評価が低かった」などの言い訳を生み出す危険性があります。
とくに昨今はテレワークが普及し、部下の定性的な指標を今まで以上に判断しづらくなりました。
このような状況下、あいまいな指標で判断していては、不公平感はより社内に広がってしまうことでしょう。
まとめ:今だからこそ評価制度を見直してみませんか?
評価制度は部下のやりがい、やる気に直結する制度です。
しかし、そもそも仕事をするのに「やりがい」「やる気」などの感情的な要素は必要なのでしょうか?
結論、弊社では感情によるマネジメントを否定しています。
関連記事:仕事に「感情」はいらない|感情ではなく数字で管理する組織マネジメント
数字で管理するからこそ、成長する会社を導き、自分で考える社員が増えるのです。
そして感情によるマネジメントは、最終的には経営者、管理職の重みにもなります。
株主、ステークホルダーには数字を求められる経営者、そして数字を求められる管理職、情緒的な項目で評価される社員。
こうした評価のバラつきは、組織内のねじれを引き起こします。
だからこそ、評価制度は定性目標ではなく、定量目標にする必要があるのです。
感情に逃げずに数字で管理する。
この際、貴社の評価制度を見直してみませんか?
貴社経営を根本から見直すいい機会になるかもしれません。
人事評価制度に関するFAQ(識学的視点)
Q.人事評価制度は中小企業にも必要ですか?
必要です。
中小企業は大手企業よりも人材育成や人事評価に時間とお金をかける余裕が無いこともあります。
効率よく業務を行うためには、人事評価制度の導入がおすすめです。
Q.人事評価制度を導入すると業績は上がりますか?
業務生産性の向上が見込まれる以上、業績が上がる可能性は高いです。
公正に運用できなければ業績が上がらない、あるいは下がってしまう可能性がありますが、
関連記事:生産性
Q. 評価者の評価のバラツキが大きく困っています。
ヒューマンエラーをゼロにするためには、定量目標を取り入れることが大切です。
なお、定性目標であっても「360度評価」などを行えば問題ない、と考えている方もいらっしゃいますが、弊社では採用していません。
この理由については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。