2019/12/19

「心を鍛えて勝つ」メンタルマネジメントを仕事に応用する

メンタルマネジメントは、ビジネス・スキルアップ術のひとつで、目標達成のために必要な精神を鍛えます。
メンタルマネジメントは、元はスポーツ選手たちが成績を上げるためのトレーニングとして始まりましたが[1]、それを仕事に応用したビジネスパーソンが業績を伸ばしたことでビジネスシーンでも注目されるようになりました。
心や精神を自己管理できれば、ビッグチャンスのときもピンチのときも平常心で乗り切ることができるので、成功をつかみやすくなります。

 

「ルーティン」を仕事に活かす

 

元メジャーリーガーのイチローさんやラグビー選手の五郎丸歩さんは、ビッグ・プレーをする直前に独特のポーズや動きをすることで知られています。
一見すると「変な体の動き」にしか見えないものですが、このポーズや動きはルーティンと呼ばれています。

スポーツ科学が専門の山梨学院大学の遠藤俊郎教授によると、人は緊張状態に置かれると、呼吸や心拍数が速くなり、動作が通常より速くなることがあります[2]。練習のときにうまくいっていたのに、本番で失敗するのは、こうした体の「異常」が起きるからです。
ルーティンに取り組むことで、ストレスがかかるときでも、呼吸や心拍数を通常に保つことができます。それは、意識がルーティンに向かうからです。緊張は、意識が重要プレーに向かうことで生じるので、意識がルーティンに向かえば緊張しないで済むというわけです。

ルーティンを仕事に応用する方法を考えてみましょう。

重要な会議でプレゼンをするときに、「手汗」が出てしまうことはないでしょうか。もしくは、お腹が下り強い便意を催すことはないでしょうか。
これらの「異常」は、意識が「重要な会議」や「社長が出席すること」や「大口の契約が取れるかどうかがかかっている状況」に向かってしまうことで起きます。

ビジネスでできるルーティンには、次のようなものがあります。

・決まった時間に目覚める・毎日1本早い電車に乗る・決まったニュースサイトを閲覧する・1日の最初のコーヒーを飲む時間を決めておく

このように並べると、「ゲン担ぎ」と同じように感じるかもしれません。確かにルーティンもゲン担ぎも「同じことをする」という点では似ていますが、両者はまったく異なる行動です。
ゲン担ぎには、科学的な根拠がありません。例えば、会社の階段の1段目は必ず左足を乗せる、月曜日はアンパンを食べる、大きな仕事をする日は青い靴下をはく、といったようなものです。
ルーティンには、ビジネスにプラスになる行動を採用します。決まった時間に目覚めることで、体内時計が正常に回り始めます。毎日1本早い電車に乗ることで、万が一不通になっても別の公共交通機関を使うことができます。決まったニュースサイトを閲覧することで、情報収集が効率化します。コーヒーを飲むことで頭が活性化します。

重要な会議がある日でもルーティンに専念することで、「今日も通常とおり正しい行動が取れている」ということを、自己確認することができます。
また、ビジネスにプラスになることを毎日コツコツ積み重ねてきたという自覚が自信の形成につながり、社長や大口契約といったプレッシャーを跳ねのけることができます。

こうしたルーティンのことを、メンタルの専門家たちは「プレ・パフォーマンス・ルーティン」と呼んでいます[3]。

 

「メンタル手帳」を仕事に活かす

 

順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、自律神経を整えるために、昔ながらの手で書く手帳の活用をすすめています[4]。

手書き手帳の効果を紹介する前に、自律神経について解説します[5]。
ストレスがかかる状況においても冷静でいられるかどうかは、自律神経にかかっています。自律神経は、臓器の動きをコントロールしています。酸素が薄くないのに息が荒くなったり、暑くないのに汗が出たり、激しい動きをしていないのに鼓動が高鳴ったりするのは、自律神経が乱れているからです。
つまり、自律神経を整える術を身につければ、緊張したときに現れる体の「異常」を引き起こさなくて済むわけです。

小林氏自身、手書きの手帳を活用しています。ただし、スケジュール管理はグーグルカレンダーを使っているそうです。では、手書きの手帳はいつ使うのかというと、記録のときのメモです。重要な内容を、手を動かしてメモ書きすることで「あそこに書いたな」と思い出すことができます。記憶の引き出しがスムーズにいくわけです。

そして小林氏は、自律神経を整える訓練として、3行日記を手書きすることをすすめています。
3行の内容は次のとおりです。
1行目)今日、失敗したこと、体調が悪かったこと、嫌だったこと
2行目)今日、感動したこと、嬉しかったこと
3行目)明日の目標、今一番関心があること、です。
それぞれ1行でまとめることがポイントです。これで1日の行動をリセットでき、自律神経の正常化につながるといいます。
嫌なこと→よいこと→目標、の順で書くことで、モチベーションを高めることもできます。

 

もう一段階上のメンタル強化策

 

メンタルを強化して「自分の」仕事の能率が上がったら、「他人の」仕事についても考えましょう。
大きな仕事は1人では完結しません。自分とチームメンバーのメンタルが強くなれば、チームで成功を収めることができます。

明治大学文学部教授の齋藤孝氏は、仏教にメンタルマネジメントを学ぼう、と呼び掛けています[6]。
仏教には慈悲の教えがあり、これは「友に与え、同胞から不利益と苦を取り除く」という意味です。
齋藤氏はこの教えをビジネスに活用し、忙しさから脱却した人ほど、「他人の時間を無駄にしていないか」と自省したほうがよいと説きます。

齋藤氏のこの教えを応用すると、ビジネスで次のような行動を取ることができるようになります。

・他人から時間を奪わないようにする
・チームのメンバーの利益を考える
・仕事で責任感と協調性を重視するようになる
・チームのメンバーが抜けたら、その穴を埋めようとする
・怒りを鎮めようとする

職場内でこうした動きが広まれば、人間関係がうまくいったり、コミュニケーションが深まったり、といった相乗効果が期待できます。

 

総括~精神論ではなく科学的に精神を鍛える

 

「心を鍛える」「精神を整える」ことで、仕事にプラス効果が生まれることは「直感的に」理解できます。しかし、直感に頼ったメンタルトレーニングを進めてしまうと、精神論に向かってしまうかもしれません。
精神論が非生産的なのは周知のとおりです。

そこで、ビジネスパーソンがメンタルトレーニングを考えるときは、可能な限り科学的にエビデンス(根拠、証拠)がある方法を試しましょう。
本稿でも、スポーツ科学や医学や宗教学といった、学術的に裏打ちされた手法を紹介してみました。
いずれも簡単に実行できるものばかりですので、気に入ったものがありましたら、ぜひ明日から試してみてください。

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参照
[1]メンタル・マネジメント(コトバンク)https://kotobank.jp/word/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%82%B8%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88-163338
[2]「ルーティン」はどのようにして作られるのか?(山梨学院大学 スポーツ科学科教授 遠藤俊郎)https://yumenavi.info/lecture.aspx?GNKCD=g007880
[3]メンタルは技術。理論と研究に基づいたトレーニングで鍛えられる(園田学園女子大学教授 荒木香織)https://note.aktio.co.jp/sports/20190809-1054.html
[4]メンタルを安定させるメモ・手帳の使い方とは?(順天堂大学教授、小林弘幸)https://shuchi.php.co.jp/the21/detail/3486?
[5]一流の人は「自律神経」が整うよう、工夫をしている(小林弘幸)https://next.rikunabi.com/journal/20161102_p/
[6]:齋藤孝氏が指南 仏教に学ぶ「メンタルマネジメント」(日経ブック)https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44704490T10C19A5000000/?page=2