最近、1on1ミーティングを導入している企業の方から、どうやったらうまくいくか相談を受けることが多くなりました。せっかく時間を使って部下と話をしているのにあまり効果が感じられないというわけです。1on1ミーティングは、日本ではヤフーが取り入れたことで話題になり、多くの企業で導入が進んでいますが、うまくいく会社とそうでない会社の違いは何でしょうか。
目次
1on1ミーティングの課題
1on1ミーティングは、文字通り、上司が部下と一対一でするミーティングのことです。その目的はさまざまあり、例えば、
- 不満や悩みを解決するため
- 満足度を上げるため
- 才能や得意なことに気付かせるため
- 離職防止のため
- 成長のため
などが挙げられるでしょう。
ただ、必ずしも期待通りの効果が得られるとは限りません。1on1ミーティングにおける上司と部下の悩みを聞いてみたところ、大体下記の通りでした。
【上司側の悩み】
- 部下の話にどう対応したらよいかわからない
- 部下があまり話したがらない
- 自分で考えて解決しないといけないことを上司に頼ってくる
- どんな話をすれば部下のモチベーションが上がるか分からない
【部下側の悩み】
- 上司に悩みを相談しても何の解決にもならない
- 雑談ばかりで時間の無駄だと感じる
- 説教されたり責められたりするのがつらい
- プライベートのことを聞かれるが話したくない
要するに、1on1ミーティングで信頼関係を構築するどころか、かえって関係が悪化してしまうことすらあるのです。なぜ、このような問題が生まれるのでしょうか。
効果的な1on1ミーティングとは
社員はこれまでの経験や所属してきたコミュニティがばらばらであり、それぞれが違う価値観やルールを持って組織に集まってきています。1on1ミーティングを実施する上で、ゴールやルールがない、もしくはそれらが曖昧な状態でコミュニケーションを取ろうとしてもうまくいかないのです。そこで、まずはなぜ1on1ミーティングをするのか、上司と部下の認識を合わせる必要があります。
識学では、成長の定義を「できなかったことができるようになること」としています。つまり、目標を定め、それをどうやって実現するか話し合うことこそが1on1ミーティングの目的にほかなりません。
四つのポイント
このように考えれば、1on1ミーティングのポイントは以下の四つにまとめられます。
- 目標を明確にしてスタートする
- 前回決めた目標ができたかどうかの評価をする(達成か未達かの認識を合わせる)
- 次の目標を明確にする
- 次の目標をクリアするための行動変化(改善策)を明確にする
うまくいっていない1on1ミーティングは、そもそも①の目標が曖昧になっているケースがほとんどです。さらに、結果だけの報告で達成か未達成なのかも認識できずに②が終わってしまうこともあるでしょう。あるいは「最近どう」のような会話から始まり、雑談や悩みを聞くことが主となって、最終的には「頑張ろう」や「前向きにやろう」と励ますだけで終わっていることもしばしばです。
2目標を明確にすれば評価も容易
部下の成長のためには、①目標を明確にしてスタートしなければなりません。明確とは上司と部下の認識にずれがない状態です。
例えば「10kmを60分以内で走りない」という指示は明確ですが、「10kmを頑張って走りなさい」というのは不明確です。頑張ったかどうかは人によって解釈が異なるでしょう。つまり、部下は頑張ったつもりでも、上司からすれば十分でないという事態が起こり得ます。
両者の認識にずれがなく一致している状態だと、②の評価も容易です。10kmを60分以内で走ったかどうかは、誰が見ても分かるからです。
また、③次の目標をクリアするための行動変化(改善策)もミーティング内ではっきりさせなければいけません。「周りの方に積極的に質問できるようにします」というのは曖昧です。これに対し、「一日一つは必ず質問できる内容を見つけ、〇日までに〇〇の業務が一人でできるようになります」というのは明確です。
ただし、このときの目標は部下ではなく上司が決めるものです。部下に案を考えさせることは構いませんが、その場合は上司の承認が必要だということを認識させましょう。上司はチームの目標の達成に対して責任を負う立場であり、チームの目標達成のために、それぞれの部下にどんな役割を果たしてほしいか決めるのが上司の仕事だからです。
最後に部下が④次の目標をクリアするための行動変化(改善策)を明確にし、それに対して上司がOKを出せば完了です。
ルールの統一も忘れずに
先に述べた通り、1on1ミーティングでは、ルールもはっきりさせなければいけません。例えば、
- 上記①~④を事前に自分で考え文書に記載して持参する
- 部下を迷わせるような曖昧な否定はしない
- 感情や感覚ではなく事実で会話する
- 開始時間に遅れる際には1時間前には連絡しておく
などが考えられるでしょう
ルールなきコミュニケーションは、誤解や疑念の原因となり、組織運営においてロスタイムが発生する可能性が高まります。注意してください。
1on1だけにこだわる必要はない
ここまで、効果的な1on1ミーティングのやり方について述べてきましたが、上司と部下とのミーティングは、部下の成長のために行うものなので、必ずしも1on1にこだわる必要はありません。上司1名と複数の部下によるミーティングを実施してもよいでしょう。
最後に、それぞれの特徴を簡単に整理しておきます。適宜使い分けるようにしてください。
【1on1】
- 上司は一人の部下に集中して会話をすることができる
- 部下も周りの目を気にせず報告ができる
【1対多】
- 他人の考えを聞くことが自らにとって有益な情報となることがある
- 競争が発生し、成長への刺激となりできない言い訳を消すことができる
- 上司からの周知事項を一度にすることができるので、時間の短縮となる