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3C分析はマーケティング戦略を考える上で欠かすことのできないフレームワークです。
しかし、3C分析の概要は理解していても、実際の戦略立案ではうまく使えないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、実例を踏まえながら3C分析をわかりやすく解説します。
- 自社のマーケティング戦略を3C分析を使って進めたい
- 3C分析のやり方を知りたい
上記のようなお悩みを抱えている方に、解決方法を本記事でお伝えします。
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3C分析とは?
経営者
3C分析の概要を把握している方は多いですが、そのメリットや特徴を正確に理解し、使いこなしている方は少ないと言われています。
まずは3C分析をしっかりと理解するために、
- 3C分析の意味
- 3C分析の考案者
- 3C分析の目的
を知ることで、3C分析のポイントを押さえましょう。それぞれ詳しく解説します。
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3C分析とは、以下3つの種類の「C」に着目したマーケティングのフレームワークです。
- Customer(顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
自社を取り巻く環境をCustomer(顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)という3つの視点からカテゴライズすることで、重複や抜けのない事業戦略を策定することができます。
3C分析の考案者
3C分析の考案者はマッキンゼー出身のコンサルタント、大前研一氏です。
『ストラテジック・マインドー変革期の企業戦略論(1984)』で、3C分析は世間から注目を集め、各企業の戦略として使われるようになりました。
3C分析の目的
3C分析の目的は、自社の商品販売や効果的なブランディングを策定することです。どれほど優れた商品を生み出したとしても、市場からのニーズがなければその商品の買い手は現れません。
逆に、自社では「強み」だと思っていることも、他の会社から見れば大した強みではない場合もあります。
企業の商品の販売や、広告、営業といった戦術よりも、3C分析のような戦略が重視されるのは、上記のような仕組みだからです。
販売戦略の前提を間違えないために、3C分析のフレームワークは1984年に発表されて以来、現在もなお利用され続けています。
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3C分析における3つのC
専門家
- Customer(顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
それぞれ確認すべきポイントを解説します。
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Customerを直訳すると「顧客」という意味になりますが、3C分析におけるCustomerは「市場全体」という意味も持ち合わせています。
自社の市場規模はどの程度あるのか、そもそも市場は自社の商品を求めているのかを判断するのが、Customerの分析段階で行うことです。
具体的には以下の項目を調べ、それぞれを決定するとよいでしょう。
- 市場の定義
- 市場の段階
- 顧客のニーズ
市場の定義
市場の定義とは、「そもそも自社はどこの市場に参入するのか」を決めることです。
具体性が高ければその後の戦略立案が楽になる傾向がありますが、市場の範囲が狭まるので、その後の革新的な技術に気づかず自社が衰退するリスクもあります。
例えば、かつてアメリカの鉄道会社は自社事業を「鉄道事業」と具体的に定義しており、自動車業界や航空業界が成長した後も「競合」として認識することはありませんでした。そのため、人々の移動が鉄道から自動車や航空に代わっていった結果、鉄道会社は衰退してしまいました。
もしこの時に、鉄道会社が自社の事業を「鉄道事業」ではなく、「人が移動するための手段を創生する事業」と捉えていれば、こうした会社の台頭に敏感になり、対策を検討できた可能性もあります。
市場の成長性
自社の売上は市場の成長性と深く関わりがあります。市場が成長するのであれば、シェアが変わらなかったとしても、売上は市場規模の成長と同じように、成長を続けることでしょう。
ただし厳密には、上記の判断は間違っているともいえます。
例えば、広告費はコロナ禍でも増加傾向にあるため、一見すると全ての広告産業が潤っていると考えてしまいます。しかし、広告産業のうちテレビCMの割合は徐々に小さくなっているのです。
マクロ的視点は大切ですが、同時にミクロの視点から自社の事業の将来性を検討することも非常に大切です。
市場の段階
自社が目指す市場の段階が、どこにあるのかに注目することも大切です。プロダクト・ライフサイクルで考えてみるとわかりやすいので、以下に例を示しましょう。
上図のように、商品ライフサイクルは以下の4つに分類できます。
- 導入期
- 成長期
- 成熟期
- 衰退期
自社が参入している事業が「導入期」に当たるのであれば、何よりもシェアを獲得するための戦術を重視する必要があります。
逆に「成熟期」に当たるのであれば、既にシェアをとっている企業との差別化を図ることが大切です。
このように自社事業の市場の段階に応じた施策が必要になるため、3C分析を実施する際は市場の段階をしっかりと把握するようにしましょう。
顧客のニーズ
これから参入する事業の「顧客ニーズは何か」を明確に理解することも非常に重要です。具体的に顧客は、機能性を求めているのか、安い価格を求めているのか、デザイン性を重視しているかの順位付けができるように、落とし込むことが大切です。
全ての要素を高めることも企業努力ですが、全てを満たす商品を作ることは難しいです。
専門家
Competitor(競合)
3C分析の2つ目の要素は「競合」です。「木を見て森をみず」ということわざの通り、自社商品を開発する際は個別商品ごとの比較だけではなく、企業全体を俯瞰してみることも大切になります。
競合分析の際は、以下2つの要素を明確に確認しましょう。
- 競合の選定
- ポジショニングの確認
競合を選定する際は、自社の直接的な競合と間接的な競合の双方をリストアップしておくことが大切です。
直接競合とは、顧客が購入を検討する際に比較対象となる企業のことです。わかりやすく「美顔器」で例えるのであれば、以下の企業が直接競合です。
- 美顔器メーカーA
- 美顔器メーカーB
- 美顔器メーカーC
一方で間接競合とは、「自社のターゲットと同じ顧客が抱える悩み」に応える代替手段を提供する競合です。美顔器の間接競合には以下の企業がリストアップできます。
- エステサロン
- リフトアップ器具
- 整形
このように間接競合もリストアップしておくことで、市場に大きな変動が起きた際に、敏感に反応できるようになります。
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3C分析の具体的な手順
自社のことはよく理解しているが、他社や競合のことはいまいち理解できていないことはよくあります。特に、アイデアベースで生まれた事業の場合は顕著にこうした傾向があるようです。
こうした事態を防ぐために、3C分析は以下の手順で実施するのが有用です。
- 顧客・市場の分析をする
- 市場規模を調査する
- 競合の分析をする
- 自社ブランドの分析をする
それぞれの方法を詳しく解説します。
顧客・市場の分析をする
まずは3C分析を行う際、自社の事業の定義付けをし、顧客や市場の分析を行います。
顧客・市場の分析を行う際、重要なことは前述の「市場の定義」「市場の段階」「顧客のニーズ」を明確に捉えることです。
基本的に3C分析では事実に基づくロジカルシンキングを行いますが、ロジカルシンキングに基づく戦略決定の致命的な穴は最初のロジック形成にあります。
仮に事業の定義付けを変更する場合には、この後の全ての工程が無駄になってしまいますので、慎重な定義付けをおすすめします。
市場規模を調査する
次に実施するのが、市場規模の調査です。市場調査を実施する場合は、第三者機関の調査データをひとつだけみるのではなく、他の調査結果も参照した上で客観的なデータを集めるようにしましょう。
データがない場合は、マーケティング企業に依頼し市場規模を調べてもらうのもひとつの手です。
競合の分析をする
競合分析をする際は、直接競合と間接競合にカテゴリをわけ、それぞれ分析を進めていく必要があります。
競合の選定が終わったら、4P分析を実施した上で直接競合がどのような戦略をとっているのかを見分けるましょう。
※4P分析(マーケティングミックス)とは、企業戦略を検討する際に利用されるフレームワークです。具体的には以下4つの要素を洗い出し、競合の戦略を理解するために使用します。
- Product(商品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(促進)
専門家
自社ブランドの分析をする
次に行うのが自社ブランドの分析です。自社ブランドを分析する際は以下の項目を重点的に確認します。
- ニーズ
- 提供価値
- マーケティングミックス
自社が顧客に対し提供できる価値は何かを分析し認識しておくことで、その後の戦術の助けになります。
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3C分析とSWOT分析の違い
経営者
SWOT分析は、自社を以下4つのポイントで分析する方法です。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Thread(脅威)
上記の4つの区分により自社の置かれている状況を把握します。3C分析と同様に、自社の内部要因と外部要因から自社のポジションを判断する点が、両者が似ていると言われる理由です。
ただし、3C分析とSWOT分析は「顧客視点」か「自社視点」かという点で、大きくその性質が異なります。
SWOT分析は、あくまでも自社から見た強みや弱みを洗い出すのに長けています。したがって、自社のリソースの分析などにSWOT分析を利用するのには最適ですが、戦略の立案には3C分析の方が長けていると言われています。
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応用版:クロス3C分析とは?
3C分析を発展された例としてクロス3C分析が挙げられます。クロス3C分析ではCustomer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)をそれぞれ独立した要素として判断せずに、クロス(掛け合わせ)して分析をする方法です。
- 顧客✖️競合
- 競合✖️自社
- 自社✖️顧客
上記3つの組み合わせで分析をします。
また、この3つの全てが重なる点はKSF(Key Success Factor)と呼ばれており、企業戦略を立案する上で最も大切にすべきポイントとなります。
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3C分析のテンプレートはさまざまな企業サイトで無料配布されています。テンプレートを一部改変し、自社で活用するのがおすすめです。
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3C分析の具体例:スターバックス
スターバックスの3C分析を先ほどの流れに伴い実施しましょう。おさらいをすると、以下の流れで3C分析をするのが一般的でした。
- 顧客・市場の分析をする
- 市場規模を調査する
- 競合の分析をする
- 自社ブランドの分析をする
全てをここで分析することはできませんが、考えるべきポイントを上記に倣って分析していきましょう。
顧客・市場の分析をする
事業の定義
スターバックスのミッションを見ると、以下のような記載があります。
「ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」
スターバックスは自社を「喫茶店」ではなく、「サードプレイス」として捉えていることから、直接競合として「タリーズ」や「ドトール」などが挙げられます。また、間接競合としては「コワーキングスペース」などが挙げられるでしょう。
※直接競合と間接競合を逆転させて考えることも可能です。全ては自社のみが知りうる情報です。
顧客の属性
ある調査によると、スターバックスは20〜30代の利用者が多く、年収も比較的高い人が利用する傾向があると判明しています。男性客と女性客とでお金の使い道や、スターバックスの利用の仕方は異なるものの、以下のような人の利用が多いと想定されています。
男性:自分磨きや趣味を満喫する仕事のできるビジネスマン
女性:流行に敏感な女性
したがって、企業戦術を立案するのであれば、上記のような人をペルソナとした施策が有効だと考察できます。
市場規模を調査する
2021年10月の調査によれば、喫茶店の市場規模は2017年から3年連続で増加しています(2021年は前年比1.2%増)。したがって、市場は今のところ成長を続けていると考えられそうです。
また、間接競合の「サードプレイス」も同様に、コロナ禍を経て成長を続けているため、比較的市場はポジティブと考えられます。したがって、現在のポジションをキープできれば売上は伸び続けるとわかります。
競合の分析をする
直接競合として「タリーズ」や「ドトール」などがありますが、これらの企業とスターバックスはどのように異なるのでしょうか。
「タリーズは、スターバックスよりも豆へのこだわりが強い」と説明できます。タリーズは独自の基準で豆選びをし、国内焙煎にこだわったコーヒーを顧客に提供しています。こうしたこだわりと、店内の落ち着いた雰囲気がミドル層に人気で、利用顧客は25〜39歳が35%を占めるのがドトールです。
ドトールは他の店舗よりも価格が安いのが特徴です。低価格で質の良いコーヒーを飲めるのが、ドトールの特徴といえるでしょう。
自社ブランドの分析をする
スターバックスの強みはその店舗数と売上高です。カフェ業界の中ではトップクラスを誇るスターバックスは、サードプレイスにこだわった店舗運営をしています。「誰しもがリラックスして過ごせる空間」を作り出したことが、ブランドが高い要因だとわかります。
他にも利用者の声には、内装や店内の雰囲気について「お洒落」「高級」などのコメントがあり、カフェ空間で他社との差別化を図っていることがわかります。
ただし、現在スターバックスの屋内での喫煙は禁止されているため、タバコを適度に吸いながらゆったりと過ごしたいというニーズには応えられていないのが現状です。
以上を勘案すると、お洒落なサードプレイスと判断できる「コワーキングスペース」の動向は注意すべきだといえるでしょう。
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インナーブランディングとは?事例やメリット、具体的な施策を解説まとめ 3C分析について
本記事では、具体的な3C分析の方法を解説しました。
新規事業を立ち上げる際にも、今後の自社の進むべき方向性を検討する上でも、3C分析は欠かすことのできないフレームワークだとご理解いただけたのではないでしょうか。
3C分析を正しく実施し、「自社にとって最適な戦略とは何か」を再度検討しても良いかもしれません。
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