「ビジネスはチームワーク。何事も社員の意見を取り入れながら決めていくべき」。そう考えて社員ひとりひとりの意見に耳を傾けたり、現場の人間に決断を委ねたりしている経営者は多いのではないでしょうか。しかし誰もがその名前を知っているような一流の経営者の中には、決断こそが経営者の仕事であり、決断をするとき経営者は孤独なものだと明言している人も少なくありません。ここでは三人の一流経営者の言葉に耳を傾けながら、彼らから「孤独に決断するリーダー」のあり方を学びましょう。
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目次
決断こそが経営者の仕事
決心することが社長なり、大将なりの仕事である。戦争するかしないか、これは大将の決めることである。それを決められない者は社長の資格がない。どうしよう、君の意見はどうだ、などといっておったらダメだ。
『仕事の夢 暮しの夢』
パナソニックを一代で築き上げ、「経営の神様」の異名も持つ松下幸之助氏は、著書『仕事の夢 暮しの夢』の中で決断こそが経営者の仕事であると書いています。若い頃体の弱かった松下氏は事業拡大のために自ら出張に行ったり、営業に走ったりできなかったため、周囲の人を信頼して指揮を振るっていました。このやり方が功を奏し、仕事を任せた人たちはどんどん立派になり、会社も大きくなっていったのだそうです。
「自分が意図したらいいのだ。決心したらしまいだ」(同上)と松下氏は言います。現場での仕事を社員に任せる代わりに、最も難しく、かつ重要な部分を誰かに相談することなく自分一人で決め抜く。それこそが松下氏にとってのリーダーのあり方なのです。
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強い自信を持って決断する
トップに迷いがあってはならない。
『人を動かし、時代を変えた心を揺さぶる名経営者の言葉』
花王の元社長・会長であり、一介の石鹸メーカーだった花王石鹸を日本最大のトイレタリーメーカーに押し上げた丸田芳郎氏は、典型的な決断するリーダーでした。ひらめきを「神の啓示」と表現し、周囲からすれば「なぜそんなに自信があるのか」と不思議に思うほど、自分の決断に強い自信を持ち、その決断に周囲を巻き込み続けていたのです。
そうした丸田氏のリーダーとしてのあり方が現れているエピソードはたくさんあります。あるときは米国視察の途中に立ち寄ったハワイで、当時まだ日本にはなかった綿もウールも洗えるP&G社の合成洗剤に出会って「これだ!」と感じ、帰国と同時に開発・製造を強硬に主張。社内では大論争が繰り広げられたものの、丸田氏の自信に気圧されたのか帰国から半年後には発売が実現され、戦後の花王復興の足がかりとなりました。またあるときは当時商慣習であった問屋への手形決済を、現金決済に切り替えようとして問屋はもちろん、花王社内からも大反対を受けます。しかしここでも丸田氏は自分の決断を貫き通し、現金決済を定着させてしまいます。
丸田氏が遺した功績を考えると、同氏のように自分の決断に自信を持ち、一点の迷いもなく突き進む姿勢こそが、一流のリーダーのあり方なのだといえます。
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社長は孤独に決断する
取締役をやるのと、社長をやるのとは、まったく違った。社長は孤独に決めないといけない。そのしんどさは、やってみないとわからないんです。
2000年に日本オラクルの代表取締役社長、2008年には同会長となり、現在はファーストリテイリングなどの社外取締役を務める新宅正明氏。同氏は取締役と社長との違いを「孤独に決めないといけない」という部分に見出しています。
自分の意思だけで決断するのは、誰しも辛いものです。できるなら社員や部下に決断をしてもらって、多少なりとも自分の責任が軽くなればいいのにと考えてしまう人も多いでしょう。しかし責任の重さは役職で決まります。決断の役割を誰かに代わってもらったとしても責任の重さは変わりません。「そのしんどさ」を背負って初めて、リーダーとしての責務を果たしていることになります。
したがって社長は誰の助けも借りずに、孤独に決断しなければなりません。情報提供やアドバイスを受けることがあっても、最後の決断と結果への責任は自分で引き受けてこそリーダーなのです。
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「愛される経営者」を目指すのはやめよう
・現場の仕事は任せて、自分は決断するだけ。
・反対されても自分の決断に自信を持ち続ける。
・他人に頼らず孤独に決断する。
このようなことを続けていれば、自ずと社員からは疎まれ、ますます孤独になっていくでしょう。しかしそれこそが本来あるべき経営者の姿です。経営者の役割は会社を成長させることであり、社員から愛されることではないからです。「社員の意見に耳を傾けながら会社の舵をとる、みんなから愛される経営者」を目指すのはすぐにやめましょう。そして一流の経営者に学び、「孤独に決断するリーダー」を目指しましょう。
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