「タスクフォース」という言葉を聞いて、このように感じたことはありませんか
- 「タスクフォースってなに? どんなチームなの?」
- 「タスクフォースって聞いたことはあるけど、説明はできない」
このように、名前だけは聞いたことはあるけど詳しくはよくわからない、といった方も少なくないでしょう。
タスクフォースとは、迅速に解決しなければならない問題に対処するために、短期間のみ結成・招集されるチームのことです。必然的に重要な問題を扱うチームとなるので、メンバーには社内外に関わらず課題に適した優秀な人材を集める必要があります。
くわえて、効果的な運営方法も理解しておかなければなりません。今回は、そんな「タスクフォース」について詳しく解説していきます。
この記事を読むことでタスクフォースの
- 目的や役割、重要性について理解できる
- メリットやデメリットが理解できる
- 効果的な運営方法がわかる
ようになります。タスクフォースへの理解を深めて、自社の危機管理体制を見直す参考にしてみてください。
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タスクフォースとは?
タスクフォース(Task Force)という言葉をビジネス用語として認識している人も多いのではないでしょうか。もともとは軍事用語として「ある特定の任務(タスク)を遂行するために集められた機動部隊、特別部隊」という意味で用いられていたものです。
そこから転じて、ビジネスや組織において、迅速に解決しなければならない問題を解決するために一定期間のみ集められるチームや組織のことを指すようになりました。つまり、ある特定の役割を果たすために期間限定で召集された「特別作業班」や「任務組織」とも呼ばれる、機動的なチームのことです。
組織を運営していく際には、常にさまざまな種類の問題が組織内外に生じるため、緊急性が高い問題と低い問題が混在しています。そのなかで迅速に解決するべき問題を見分けて、解決することは非常に重要です。
メンバーは組織内の各部署から選ばれた適任者や、組織外のプロや専門家などが集まるため、普段は全く異なる仕事をしている人同士で問題に対応することになります。そして、目標が達成される=問題が解決された時点でチームは解散となります。
タスクフォースの良い点は、緊急性の高い問題に対して速やかに対応することができる点、そして短期間にリソースを集中投下するため、高い成果を見込める点です。一方で悪い点は、短期間で問題に対する知識や知見を得たとしても、チームを解散してしまうとそのノウハウも消えてしまい、蓄積ができないということが挙げられます。
最近では、一般企業などのビジネスの場のみならず、官公庁においても用いられるケースが増えてきました。最近の例を挙げると、河野太郎氏が規制改革相に就任した際に、内閣府に「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」を結成した例があります。
(参考:再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース│内閣府)
タスクフォースの目的や役割とは?
タスクフォースにとって最も大切な目的は、切迫している問題や課題を素早く解決することにあります。しかし、それだけではありません。問題を解決することによって業務改善や組織改革、生産性の向上を行い、組織をより良いかたちに変えていくことも役割の1つなのです。
さらに、最近ではどんどん進化していくテクノロジーのスピード感に合わせ、企業や官公庁も素早い決断や行動が必要とされています。このような迅速な意思決定が求められる環境においても、タスクフォースを活用することによって、素早い判断を可能にするための組織改革を行う企業が増加しているのです。
例えば、新型コロナウイルスの流行によりDX(デジタル・トランスフォーメーション)への対応が急務となっている昨今においては「DX推進チーム」といったチームがつくられることが考えられます。
この場合、DX推進のために社内外から適任者をメンバーに加えてチームを作りますが、この際、あくまでも目的は「DXの推進」であるため、普段の企業活動とは切り離された活動をしていくことになります。
また、他にも企業イメージが下がるような問題が生じた際に速やかに信頼を取り戻すためにタスクフォースが結成され、問題対処にあたるといった場合もあります。
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タスクフォースと混同されがちな「プロジェクトチーム」との相違点とは?
「プロジェクトチーム」という言葉は、タスクフォースと同じよう意味合いで用いられることが多いですが、これらはどのような違いがあるのでしょうか?
最も大きな違いは「問題に対処する期間の長さ」です。
タスクフォースは緊急性が高い問題に対して短期的・迅速に対処するチームですが、対してプロジェクトチームは時間がかかるテーマ・問題を扱うケースが多いと言えます。
つまり、「問題に対処するのにどれくらいの時間がかかるのか」という視点で見たときに、比較的短い場合はタスクフォースを用い、比較的長い場合はプロジェクトチームを用いるのです。
タスクフォースは「緊急性」にフォーカスしており、いかに迅速に問題を解決するかが問われています。
一方でプロジェクトチームは問題への対処が短期間では終わらないことを想定して動くため、問題の検証や解決をする際も慎重に進めていくことになります。
このように両者の違いは期間にありますが、両者を明確に区別して用いている企業はほとんど存在せず、ほぼ同義と考えて問題ありません。
ワーキング・グループとの相違点
プロジェクトチーム以外にも似た意味をもつ言葉に「ワーキング・グループ」があります。
ワーキング・グループとは「作業部会」と訳されることもあり、特定の問題に対処するために招集されたグループで、タスクフォースと同義です。
企業によっては課題の規模の大きさによって区別して用いることもあります。
クロス・ファンクショナルチームとの相違点
もう一つ、タスクフォースに類似した言葉に「クロス・ファンクショナルチーム」があります。
こちらは解決する課題の規模が大きく、組織をあげて解決するような課題に対処するために編成されるチームです。したがって、従来の慣習や組織体制に縛られないようにするため、組織を横断するように人員が選別されます。
クロス・ファンクショナルチームはタスクフォースに比べて、かなり大規模な課題に取り組む際に用いられます。
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メリットは下記の3つです。
- リソースを問題解決に集中させられる
- 課題解決に最適なメンバーを召集できる
- 社内外から接点のないメンバーを集められる
それでは1つずつ解説していきます。
リソースを問題解決に集中させられる
1つ目のメリットは、リソースを問題解決に集中的に活用できることです。
タスクフォースにとって最重要目的は「素早く課題を解決すること」であるため、その目的を達成するためならヒト・モノ・カネといったリソースを集中的に投下することができます。
さらに、短期間にリソースを集中することで、大きな成果をあげることが見込めるのです。
課題解決に最適なメンバーを召集できる
課題の対応に最適なメンバーを集められることが2つ目のメリットです。
タスクフォースのチームを集める際は解決するべき課題が明らかになっているので、その課題を解決するための最適なメンバーを集めることができます。さらに、課題解決に必要なスキルや人材を把握しやすい点もメリットです。
社内から適した人材を集めて問題の共有をすれば、解決につながる良いアイデアが生まれやすくなります。
社内外から接点のないメンバーを召集できる
タスクフォースでは、普段は接点のないメンバーを社内外から集めますが、それ自体がメリットとなります。
課題解決のためには優秀な人材を社内の部署の垣根を超え、さらに社外からも招聘することでさらに優秀なチーム編成ができます。
このように普段は接点のない人材が共に仕事をすることで、新たな知見や解決策が生まれ、イノベーションの創出に貢献するのです。
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タスクフォースを用いるデメリットや課題とは?
デメリット・課題としては、下記の3つが挙げられます。
- 得られた知見が蓄積しない
- 支援不足による問題の発生
- 解決すべき課題の共有
それでは1つずつ解説していきます。
得られた知見が蓄積しない
タスクフォースでは普段は接することのないメンバーと仕事をするため、課題解決の際に新たな知見が得られることがあります。
しかし、基本的に課題が解決された次点でタスクフォースは解散となるため、得られた知見が消えて蓄積されていきません。
得たノウハウをチーム解散時にどのように蓄積させるかは課題となるでしょう。
支援不足による問題の発生
タスクフォースが問題の対処にあたっている際にも、トラブルや困りごとが起きることはあります。
そのような時に経営陣がどのように支援するのかという支援体制が整っていないと、タスクフォース内で人事考課や評価への不安につながってしまいます。
このような状況を防ぐためにも、タスクフォースの存在を経営陣や組織のトップがきちんと理解しておく必要があります。
解決すべき課題の共有
タスクフォースに集められるメンバーは、一人ひとり異なるバックグラウンドを持つ人材であるため、一般的な組織よりも強く課題や目的の共有を行わなければなりません。
この共有がしっかりなされていない場合、意思決定や行動に齟齬が生じるため、課題の解決がうまく進まなくなってしまいます。したがって、共有するべき課題や目的、価値観や規範などをどのように明文化するかが課題となるでしょう。
また、上記3つ以外にも、タスクフォースのメンバー間で意見の対立や衝突、または当事者意識の欠如が生じる可能性といったデメリットも想定できるため、注意しましょう。
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タスクフォースを用いて課題を迅速に解決するためには、効果的に運営するポイントをおさえておく必要があります。そのポイントが下記の3つです。
- 課題の明確化と最適なリーダー選び
- スピーディーかつ柔軟な対応
- 得られた知見やノウハウの蓄積
それでは1つずつ解説していきます。
課題の明確化と最適なリーダー選び
タスクフォース編成の最も大きな目的は「課題の解決」です。だからこそ、チーム編成時に何をもってゴールとするのかを明らかにしておく必要があります。ゴールがあやふやなまま運営していくと解決への道筋が遠くなってしまうため、初めに課題とゴールを明確にしておきましょう。
そしてもう一つ重要になるのが、最適なリーダー選びです。迅速な課題解決のためには、解決に適したスキルや知見を有した人材をリーダーとするのが最適です。最適な人材が指揮をとることで課題解決のための近道となります。
スピーディーかつ柔軟な対応
繰り返しになりますが、タスクフォースは「緊急性の高い課題の解決」が目的であるため、タスクフォースが必要になっている時点で、会社にとって非常に危機的な問題が生じている可能性があります。
この場合、何よりも迅速に問題を解決することを最優先にしなければなりません。現代の情報化社会においては、問題にどのように対処したかまでもあっという間に広まってしまうため、迅速かつ真摯に応じることが必要です。
また、従来のやり方では問題の解決が難しいような場合では、柔軟にやり方を変え、今までとは異なるアプローチを試みるしなやかさも重要になります。今までのルールを大切にすることも必要ですが、時と場合に応じて最適な意思決定をしていきましょう。
得られた知見やノウハウの蓄積
タスクフォースのデメリットとして「得られた知見やノウハウが蓄積しない」を挙げましたが、この点にどのように対処するかがタスクフォース運営のポイントとなります。
タスクフォースを解散する際に得られたノウハウを蓄積しておかなければ、再び似たような問題が生じかねません。
タスクフォース解散時には、どのように問題を検証したのかというプロセスや解決策を蓄積しておくことで、同じような課題が生じた際に迅速な対応が可能となります。
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まとめ タスクフォースについて
タスクフォースは場合によって、会社の命運を分けるような大きな課題に取り組むときもあります。したがって、会社のトップや経営陣などが率先的に支援する体制を整えて、会社全体でサポートしていかなければなりません。
会社の危機を救うと言うと大げさかもしれませんが、タスクフォースの運営は会社の手腕を問われる場面でもあります。だからこそ、全力で運営していきたいところです。
また、タスクフォースの役割は課題の解決のみならず、組織改革や業務改善、生産性の向上への寄与もタスクフォースの役割の1つです。問題や課題が発生した際は、解決するとともに組織を変える良いタイミングかも知れません。
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