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事業承継補助金とは? 対象者や申請方法などを分かりやすく解説

事業承継補助金とは? 対象者や申請方法などを分かりやすく解説

事業承継を円滑に進めるための支援金として注目を集めている事業承継補助金

経営者の方のなかには、事業承継補助金に関して詳しく知りたいと考えている方は多いのではないでしょうか。

この記事では、事業承継補助金の対象者や申請方法、事業承継補助金が採択された事例などについて詳しく解説していきます。

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事業承継補助金の制度について解説

現在、中小企業経営者の高齢化に伴う深刻な後継者不足が大きな問題となっています。中小企業庁によると、2025年までに70歳を超える経営者の数は約245万人となり、そのうち約半数の127万の後継者が未定です。

このままでは多くの中小企業が廃業となり、日本経済に大きなダメージを与えかねません。この問題を解決するために、設けられたのが事業承継補助金です。

事業承継補助金とは、中小企業や個人事業主が経営者交代やM&Aなどをした際に、新たなチャレンジを後押しするための支援金のことです。

令和2年度の事業承継の概算要求額は50億円を超えており、今後、より多くの方に利用できるように予算が増額される可能性も噂されています。

事業承継補助金の使用目的に関して

事業承継補助金の使用目的は大きく2つあります。

1つ目は、事業承継をきっかけに新商品の開発や新たな分野の開拓など、新たな挑戦を目的とする場合です。新たな挑戦に必要な人件費や設備費、外注費などに対して事業承継補助金を利用することができます。

2つ目は、事業転換をするために廃業費が必要な場合です。

在庫処分や移転、廃業登記費など、事業転換には予想以上のお金がかかることもあり、廃業費の支払いに事業承継補助金が利用できるのはありがたいですよね。

いずれの場合も、使用目的が「本事業の遂行に必要なもの」と明確に特定できる必要があります。さらに、補助金の交付が、決定から事業完了日までの期間に支払った経費に対してのみ、事業承継補助金の利用が可能です。

事業承継補助金の対象者について解説

事業承継補助金は、事業承継を行う全ての中小企業が受け取れるという訳ではありません。

事業承継補助金を利用できる主な業種は下記の4つです。

  • 製造業
  • 卸売業
  • 小売業
  • サービス業

また、資本金や従業員数に関する規定もあります。例えば、サービス業の場合、補助金を受けられるのは資本金額または出資の総額が5,000万円以下、または、常時使用する従業員が100人以下と定められています。

事業承継補助金の利用を検討されている方は、まず、事業の内容や会社規模が補助金を受けられる対象かどうかを確認しましょう。

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補助対象になる事業者が満たす必要のある要件

補助金対象の事業を行っている企業は下記の要件を満たすことで、事業承継補助金を申請することができます。

  1. 日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を行っていること
  2. 法令順守に問題がないこと
  3. 地域経済に貢献している企業であること
  4. 経済産業省から補助金指定停止措置または、指名停止措置が講じられていないこと
  5. 補助対象事業に関する情報について、統計上公表される場合があることに同意すること
  6. 事務局からの調査やアンケートに協力できること

ここでポイントとなるのが、3つ目の「地域経済に貢献している企業であること」です。

「地域経済に貢献している企業」とはどのような企業でしょうか? その定義について確認していきましょう。

地域経済に貢献している企業とは?

事業承継補助金の要件である「地域経済に貢献している企業」とは、「地域の需要や雇用を創出し、さらにその地域の需要や雇用を支え、地域経済に貢献している企業」とされています。

中小企業庁のホームページには事業承継補助金の交付例が記載されていますが、交付された事例を確認すると地域密着型の企業が多いことがわかります。つまり、地域貢献度が重要な指標となっているのです。

また、地域経済に貢献している企業に関しては、地元の特産物の生産など、「地域の強みを活かした事業を行っているか」という点も重要視されていました。

事業承継する中小企業が地域経済に貢献している場合は、事業承継補助金をもらえる確率が高いので、補助金申請をしてみてはいかがでしょうか。

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事業承継補助金の種類について解説

事業承継補助金の種類は3つあり、下記のようにⅠ~Ⅲの番号で分類されています。

  • Ⅰ型:創業支援型
  • Ⅱ型:経営者交代型
  • Ⅲ型:事業再編 / 事業統合支援型

類型ごとに補助金の上限額や申請条件が異なり、申請を行う前には、ご自身がどの類型となるのかを理解しておく必要があります。

それでは、Ⅰ型からⅢ型ついてそれぞれ詳しく確認していきましょう。

Ⅰ型・創業支援型

Ⅰ型の創業支援型は廃業を予定している法人から、有機的一体として機能する経営資源を引き継いで、創業して間もない中小企業が対象です。

創業をきっかけに経営革新に取り組んだり、産業競争力強化法に基づく認定市町村または認定連携創業支援事業者により特定創業支援を受ける者など、一定の実績や知識を有している必要があります。

Ⅰ型は有機的一体として機能する経営資源を引き継いでいなければなりません。、例えば、後継者がいなくなった飲食店の店舗を買い取り、新たな飲食事業を行うといったケースは補助金の対象として認められないので、注意しましょう。

廃業者から経営資源を引き継いで、事業を行う方が対象という点は理解しておく必要があります。

Ⅰ型の補助金上限額

事業承継補助金の補助率に関しては、申請内容によって、対象となる経費の2/3以内と定められています。

この上限額に加え、廃業費の交付申請がある場合は補助金額が加えられることになっており、廃業金を含めたⅠ型の最高支給額は600万円です。

補助金下限額は100万円、廃業金を除く補助金上限額は400万円となっており、金額は申請内容によって変わります。

申請の際には、加点の多い申請書の作成を行うよう心がけましょう。

Ⅱ型・経営者交代型

Ⅱ型の経営者交代型は、経営者が交代した際に、新たな経営者が新規事業などを開始する場合などに利用されるものです。

個人から個人に事業譲渡する場合や、同一法人内での代表者交代する場合などが該当し、個人が法人の経営者となる「法人成り」などは原則補助金の対象にはなりません。

経営者交代型の過去の事例を確認してみると、下記のようなケースがありました。

  • 商店が経営者交代に伴い、新たなイベントスペースを増設するために補助金を使用
  • 地産地消を推進するために、地元の小学校向けの商品開発のために補助金を使用

経営者交代型の申請条件

後継者承継支援型の申請を検討している方は、承継者には一定の経歴が求められるという点を、事前に理解しておく必要があります。

承継者に求められるのは下記のいずれか1つです。

  • 3年以上の経営経験
  • 同業種での6年以上の実務経験
  • 創業・承継にかかる一定の研修などの受講歴

この条件を満たしていない場合は、事業承継補助金の申請ができないため注意しましょう。

Ⅱ型の補助金上限額

Ⅱ型の補助率や補助金額については、Ⅰ型と同様です。

補助金下限額は100万円、廃業金を除く補助金上限額は400万円となっており、金額は申請内容によって変動します。

また、Ⅱ型に関しては、従業員数の少ない小規模事業者の方が、支給される補助金額が高くなる傾向にあるという点は理解しておきましょう。

Ⅲ型・事業再編・事業統合支援型

Ⅲ型の事業再編・事業統合支援型は、経営者交代のない事業承継が対象者であり、別名M&A型とも呼ばれます。

補助金の対象は、例えば2点です。

・法人同士の吸収合併や法人から個人への事業譲渡や株式譲渡
・個人から法人への事業譲渡のうち一定のもの

上記のようなものがあり、法人だけでなく、個人も対象となっている点がポイントです。

また、Ⅲ型の対象となるのは後継者不在により、事業再編や事業統合を行わなければ、事業継続が困難となる場合にのみ利用できるという点も理解しておきましょう。

事業再編・事業統合支援型の申請条件

Ⅰ型やⅡ型と同様にⅢ型にも申請条件があり、以下3つの内少なくとも1つを満たしている必要があります。

  • 対象会社または他の会社や個人事業主と3年以上の実務経験があること
  • 同業種で6年以上の実務経験があること
  • 創業 / 承継に関する研修等を受講したこと

また、原則的に、承継者が補助金を申請することになりますが、Ⅲ型は事業承継が交付申請以降に行われる場合、承継者は承継される側やその関係者と共同で申請を行わなければならない場合もあります。

Ⅲ型の補助金上限額

Ⅲ型はⅠ型、Ⅱ型と比較して補助金の上限額が高くなっている点がポイントで、補助下限額は100万円、補助上限額は800万円です。

最大800万円の補助金を受け取ることができるだけでなく、廃業費用が必要な場合はさらに200万円の補助金が受け取れる可能性があり、合計金額は1,000万円になります。

最大補助率は2/3以内ですが、1,000万円の補助金が受け取れるという点は、事業承継側にとって大きなメリットです。

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 事業承継補助金の申請方法について解説

事業承継補助金の申請に関しては、下記の4つのフェーズがあります。

  1. 事前準備
  2. 交付申請
  3. 事業実施
  4. 補助金交付

それぞれについて確認していきましょう。

事業承継補助金申請の事前準備

事業承継補助金を受けたいという場合は、最初に認定経営革新等支援機関に相談します。

事業承継補助金を受けるためには、認定経営革新等支援機関の事前確認を受けることが必須となるケースもあるため、忘れずに相談しましょう。

相談が完了したら次は、経済産業省が運営する補助金電子申請システムjGrantsにて補助金申請をしていきます。

ここで注意しておきたいのが、申請までにかかる時間です。

jGrantsを利用するためにはgBizIDプライムアカウントが必要となり、アカウントの発行には2~3週間の時間がかかります。認定経営革新等支援機関への相談を含めると、事前準備には最低でも1ヶ月はかかるため、申請は余裕を持って行いましょう

令和3年度の事業承継補助金の受付期間に関して

事業承継補助金は1次募集と2次募集があり、令和2年度は1次募集が6月11日~7月12日18:00までで、2次募集が7月中旬~8月中旬までとなっていました。

令和3年度の募集に関する詳細は発表されていませんが、受付期間は令和2年度と同様の時期である可能性が高いです。

また、令和3年度に関しては、事業承継補助金に割り当てる予算等も未定となっています。

令和2年度は、3次補正予算で56.6億円が事業承継補助金として計上されており、補助予定件数は約940件でした。

例年の傾向を踏まえると、令和3年度の事業承継補助金の予算が減額となる可能性は低いですが、最新情報が更新されるのを待ちましょう。

事業承継補助金の交付申請

事業承継補助金申請の事前準備が完了したら、交付申請を行っていきます。

交付申請の手続きはjGranatsに必要項目を入力する必要があり、具体的な入力方法は事業承継・引継ぎ補助金のホームページからご覧下さい。

また、申請書類に関して、Ⅰ型~Ⅲ型の事業承継補助金の種類に応じて提出する申請書類も異なります。

どの書類を提出するかは事前に確認する必要がありますが、法人の方であれば、履歴事項全部証明書、直近の確定申告書、直近の決算書などは必須です。

その他、認定経営革新等支援機関による確認書、補足説明資料、住民票などが場合によって必要となるので、提出資料に漏れがないよう事前確認をして下さい。

事業承継補助金申請の際に必要な事業計画書の書き方を紹介

事業承継補助金の交付申請には、事業承継計画書を提出する必要があります。

事業承継計画書は審査結果に大きな影響を与えるため、なるべく加点要素が多い資料を作りたいところです。

審査に通過しやすい事業承継計画書を作るポイントは、独走性、高い収益性、継続性の3つを盛り込んだ資料にすること。

また、事業承継補助金は、地域貢献の高い企業に対して交付されることが多いため、どのように地域活性化へつなげるのかを盛り込むことが重要となるでしょう。

事業承継計画書を作成する際には、過去の交付事例をホームページから確認してみることをおすすめします。

事業承継補助金の採択率に関して

事業承継補助金の採択率に関しては、制度が開始した2017年は13%と低い数字でしたが、翌年の2018年には採択率が70%を超える等、大幅に数字が改善しました。

2019年、2020年については、事業承継補助金の種類によって違いはあるものの、採択率は50~80%の間で推移しています。

採択率が上昇していることからも、国が中小企業の支援に力を入れていることが分かりますよね。

事業承継補助金の採択決定事業に関しては、会社名と代表者名、所在地、申請事業内容、申請を認定した経営革新等支援機関名がWeb上で公開されるため、気になる方は中小企業庁のホームページをご覧下さい。

事業承継補助金交付後の事業実施

申請完了後は、jGrantsから交付・不交付に関わらず、通知が届き、結果がわかります。

補助金の受領が決定した場合に理解しておく必要があるのは、「事業承継補助金を受け取れるのは対象事業完了後」ということです。

対象事業実施時には、自前でお金を支払う必要があり、事業を実施した際の見積書や経費などを事後報告することで、補助金が支給されます。また、事業実施に関しては、期限が設けられている点も重要なポイントです。

事業承継補助金の交付決定後、補助事業は原則同年の12/31までに完了している必要があり、期間外に事業を行う場合には事前の相談が必要です。

事業承継補助金の補助金交付

事業実施が完了したら、実績報告を行います。

実績報告に関して、令和2年度は事業完了後15日以内に実績報告を行う必要がありました。

こちらは毎年変更となる可能性があるため、事業承継補助金のホームページを都度ご確認下さい。

また、事業承継補助金の種類によって、実績報告に必要な書類が異なる点も把握しておきましょう。

提出資料のなかには承継事業の契約書や開業届、承諾に関する議事録などが含まれ、その他必要に応じて補足資料も必要です。

実績報告が完了すれば、事業承継補助金は手続き後2~3ヶ月を目安に交付されます。

事業承継補助金に関しては、交付後5年間は、事業化状況報告等を行うことが義務付けられており、「補助金を受領したら終わり」というわけではない点も注意が必要です。

事業承継補助金の交付事例を紹介

事業承継補助金は交付申請を行う前に、これまでの申請事例を確認することが重要となります。

ここでは、飲食店や農業、美容室など様々な交付事例を確認していきましょう。

また、より多くの事例を知りたいという方は、中小企業庁のホームページに事例毎のPDFが掲載されていますので、そちらをご確認下さい。

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事業承継補助金の交付事例①浅小井農園株式会社

浅小井農園株式会社は承継前から、独自のブランド「朝恋トマト」を全国の直売所へ出荷していました。

しかし、売上水準が低く、冬越しの栽培を行う際には、内部設備の一部が古かったこともあり、病気発生等で出荷量が減るという課題を抱えていたため、事業承継補助金の申請を検討したそうです。

事業承継補助金申請の際には、ビニールハウスの素材を一新させるとともに作型も見直し、収穫量を増加させる計画を提出。具体的な売上上昇率等も提示したことから、事業承継補助金の交付が認められ、浅小井農園株式会社は設備投資を行うことができました。

このように、事業承継補助金は農業分野へも門戸が開かれた支援金となっています。

事業承継補助金の交付事例②Deん~隠れ家~

景気の低迷や高齢化の影響で集客が厳しくなっていた、岩手県にある居酒屋「Deん」では

Deんは岩手県にある居酒屋であり、母親からお店を承継した娘が、お店のリニューアルを決意。

単に飲食を楽しむお店ではなく、音楽も楽しめるライブステージを併設し、提供する料理も地元の食材を活用したものに変更する事業計画書を提出したところ、事業承継補助金の交付が決定しました。

コロナの影響もあり、集客に苦労する飲食店は多いですが、事業承継をきっかけに新たなチャレンジをしたいという方にとって、事業承継補助金はありがたい制度だと言えます。

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事業承継補助金の交付事例③カラーズジャパン

最後に紹介するのは、ヘア・ネイル・アイサロンを運営するカラーズジャパンの交付事例です。

競争が激しい美容業界において、他社と差別化を行うために、カラーズジャパンはM&Aによりアイラッシュ専門店アスクレアの全株式を譲り受けました。

カラーズジャパンは新たな取り組みとして既存店にカフェを併設させ、お客様により快適な空間を提供することで、他社との差別化を図る計画を中小企業庁へ提出。

結果として、事業承継補助金の交付が決まり、店舗の改良を行うことができました。

M&A型は他の種類の事業承継補助金と比較しても、交付金額が高くなる可能性もあるため、活用できる人は申請を検討することをおすすめします。

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事業承継補助金を理解して、事業に役立てよう

この記事では、事業承継補助金に関して解説しました。

事業承継補助金は、中小企業の経営者交代や、M&Aの際に活用できる補助金であり、新たなチャレンジを後押ししてくれるものです。

経営者支援型やM&A型など様々な種類があり、該当する企業は適切な手順を踏むことで補助金を受け取ることができます。

事業承継補助金の申請条件等の情報は、毎年若干の変更もあるため、中小企業庁のホームページから最新情報を確認するようにしましょう。

この記事が事業承継補助金について知りたい方の参考になれば幸いです。

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