ニュースやSNSなどのメディアで見かけることが多くなった「コンプライアンス」と「パワハラ」。
2020年にはパワハラ防止法が施行されるなど、世間からの注目はさらに高くなることが予想されます。
しかし、コンプライアンスの意味やパワハラの定義まで、詳しく理解している人はまだまだ少ないでしょう。
そこで、この記事では「コンプライアンスの意味や重要性、パワハラの種類と企業側の適切な対応」について紹介していきます。
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コンプライアンスを正しく理解しよう
「コンプライアンスとは?」と聞かれて自信を持って答えられる人は、少ないのではないでしょうか。
しかし、重大なコンプライアンス違反は社会的信用を失い、業績不振や倒産に陥るケースもあります。「知らなかった」では済まされないので、コンプライアンスを正しく理解しておきましょう。
まずは以下2点について分かりやすく解説します。
- コンプライアンスとは?
- コンプライアンスと法令遵守の違いは?
- なぜコンプライアンスが重視されるようになった?
コンプライアンスとは?
コンプライアンスを直訳すると「従うこと」になります。ビジネスシーンでは「法令に従うこと」を意味する単語として使われることが一般的です。
しかし近年では法律や法令で、はっきりと定められていることだけでなく、社会論理に従って企業を運営することも求められています。
また「ガバナンス」はコンプライアンスと混同されやすい言葉です。
コンプライアンスは「企業が法令に従うこと」に対して、ガバナンスは「企業が企業自身を制御すること」になります。そのため「コンプライアンスを強化するためにガバナンスをおこなう」といった関係です。
コンプライアンスと法令遵守の違いは?
コンプライアンスを正しく理解したい人は「コンプライアンス=法令遵守」ではないことを覚えておきましょう。
コンプライアンスは「法律を守ればいい」だけの単純なものではありません。コンプライアンスにとって法令遵守は、あくまでも最低限の基準です。
コンプライアンスには「法令遵守」に加えて、「社会的に広く認知されているルールに従って企業を運営する」ことも含まれています。
法律や法令を守っていれば、コンプライアンスも守れているわけではありません。法令遵守と違ってコンプライアンスの定義は広いので注意しておきましょう。
なぜコンプライアンスが重視されるようになった?
企業が本格的にコンプライアンスを重視するようになったのは、2000年に入ってからのことです。
当時はライブドア事件を筆頭に、民間企業の不祥事が相次ぎました。それに加えて、官営事業の民営化や規制緩和が重なり、特定の企業による身勝手な経営方法が世間から注目されるようになりました。
また「社会的責任投資」が普及し始めたのも、コンプライアンスが重視されるようになった大きな理由です。
社会的責任投資とは、「コンプライアンスを確立している企業は、ブランド力が高く株価が安定している」という考えのもとで投資をおこなう方法のことです。
株価の下落は企業にとって、無視できない一大事です。これにより企業は身勝手な経営方法ができなくなり、コンプライアンスが重視されるようになりました。
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コンプライアンスとパワハラの関係性
では次に、コンプライアンスとパワハラの関係性について紹介していきます。
パワハラも最近になって、よく耳にするようになった言葉です。パワハラの定義や「パワハラ=コンプライアンス違反」になるのかなど、詳しく解説していきます。
- パワハラの定義
- パワハラはコンプライアンス違反になる?
- パワハラがコンプライアンス違反になるケース
それぞれ詳しく解説します。
パワハラの定義
パワハラは「パワーハラスメント」の略語で、2001年から提唱されるようになった和製英語です。
厚生労働省は、以下の3つをすべて満たしている状態をパワハラと定義しています。
- 優越的な関係にもとづいて(優位性を背景に)行われること
- 業務の適正な範囲を超えて行われること
- 身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
パワハラは上司から部下へのみ適用されると思っている人も多いようですが、立場は関係ありません。
社歴や年齢に関係なく、上記3つを満たしていれば「パワハラ」に該当します。
パワハラの種類や具体例は後述しますので、そちらを参考にしてください。
パワハラはコンプライアンス違反になる?
当たり前ですが、パワハラは許されるべきことではありません。
しかし「パワハラ=コンプライアンス違反」にはならないのです。
先ほども紹介したように、コンプライアンスは法律や社会論理に従って企業を経営することです。
対してパワハラは、いじめや精神的圧力、肉体的暴力のことなので、それぞれの意味は異なります。
根本的に言葉の意味が違うので「パワハラ=コンプライアンス違反」にはならないということです。
そのため体制の整っている大手企業では、パワハラとコンプライアンスの相談窓口は別の部署になっています。
パワハラとコンプライアンスは混同されやすいですが、まったく違う問題ということを知っておきましょう。
パワハラがコンプライアンス違反になるケース
「パワハラ=コンプライアンス違反」にはならないと紹介しましたが、すべてのパワハラがコンプライアンス違反にならないわけではありません。
場合によっては、パワハラがコンプライアンス違反に該当するケースもあります。
- 入社試験で役員が採用担当者に内定者を強要する
- 脱税の証拠隠滅を部下にやらせる
上記がパワハラかつコンプライアンス違反に該当するケースです。
違反行為を他者に強要するようなパワハラは、コンプライアンス違反と深い結びつきがあります。
根本的には違う問題ではありますが、コンプライアンス教育にパワハラについて注意喚起する企業も少なくないようです。
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セクハラ・パワハラの定義とは?企業の対処法を解説パワハラの種類と具体例
パワハラには、さまざまなケースがありますが、以下の6つに分類することができます。
- 具体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
具体例を交えて、それぞれ紹介していきます。
(1)身体的な攻撃
1つ目のパワハラは「身体的な攻撃」です。
社内の人間に対して、殴る蹴るなどの暴力行為が該当します。
ボールペンや薄い雑誌などを投げつける行為も立派なパワハラです。
自分では上司と部下のスキンシップでおこなった行為も、相手は怯えている可能性もあります。
今一度、自分の行動を確認しておきましょう。
また、お酒を無理に飲ませるといった行為も「身体的な攻撃」になります。
一方的な暴力行為が分類されるので「同僚と喧嘩をした」などはパワハラには該当しません。
(2)精神的な攻撃
2つ目のパワハラは「精神的な攻撃」です。
「お前は仕事ができない」「やる気がないなら辞めてしまえ」などの、人格を否定しているような発言が「精神的な攻撃」に該当します。
「他の社員の前で毎日のように怒鳴られる」のような人の尊厳を傷つける発言は業務に関係ないでしょう。
歩きスマホや路上喫煙などのマナーへの注意や、社内規定に対しての注意は問題ありません。
しかし、業務の範囲内でも「言い方や状況」などが原因でパワハラになることもあるので注意しておきましょう。
(3)人間関係からの切り離し
3つ目のパワハラは「人間関係からの切り離し」です。
無視や仲間はずれなどの、いわゆる「いじめ」が該当します。
「理由もなく1人だけ違う部屋で仕事をされられる」「資料が配布されていない」このような子供じみた行為をする人は一定数いるようです。
また、業務とは関係ありませんが、自分だけ親睦会のお誘いがこなかったなども、パワハラになります。
もちろん新人研修のために違う部屋に移動するなど、理由があれば問題ありません。
「意見されたから無視する」等、このようないじめ行為をしている人は、自覚がない場合がほとんどです。
もし自分が遭遇したり、話を聞いたりしたらすぐに相談窓口や専門家に相談してみましょう。
(4)過大な要求
4つ目のパワハラは「過大な要求」です。
この「過大な要求」とは、本人の能力を超えている業務を無理に押し付けることを指します。
また、業務時間中に終わらすことが到底不可能で、毎日のように残業をしなくてはいけない状態も該当すします。
過剰なノルマを与えて、未達成時に強く叱責するのは完全なパワハラ行為です。
社員教育のためでも明らかにキャパオーバーしている業務を任せることは、パワハラ行為なので新人教育を担当している人は注意しておきましょう。
しかし実際問題として、少しレベルの高い仕事を任せないと社員を成長させることはできません。
本人の意思を尊重して「業務上必要な範囲」に収まっているか常に意識しておきましょう。
(5)過小な要求
5つ目のパワハラは「過小な要求」です。
「過小な要求」とは、仕事を取り上げることを指します。
本人の意思とは関係なく、程度の低い仕事を押し付けられるケースが代表的な例です。
本人の意思で退職させるために無理やり清掃業務を1日中おこなわせる、といった非人道的なケースもあります。
清掃や資料の整理などの雑用も立派な業務なので「過小な要求」の線引きは非常に曖昧です。
また、能力に応じて仕事量を調整することはパワハラには該当しません。
「過小な要求」に該当するかは、仕事量や内容が変更された「理由」が重要になります。
(6)個の侵害
6つ目のパワハラは「個の侵害」です。
業務に関係なくプライベートに深く介入することはパワハラに該当します。
また、理由もなくロッカーや机の引き出しを無断で点検することも「個の侵害」です。
仕事に関係していても休みの日に、電話をしつこくかけることもパワハラと感じる人もいます。
有給を取得するときに「誰とどこに行くのかをしつこく聞かれた」などが代表例でしょう。
転勤先を決めるときに家族関係を聴取するなど、必要最低限の場合はパワハラに該当しません。
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パワハラと厳しい上司の境界線とは?「厳しさが自分を育てた」それでもパワハラは許されないパワハラが発生したときの適切な対応
最後にパワハラが発生したときの適切な対応について紹介していきます。
パワハラを完全になくすことは現実的ではないでしょう。
だからこそ、適切な対応策の準備が必要です。
パワハラは自分が加害者にも被害者にもなる可能性があるので、社員全員でパワハラのない職場をつくることが求められています。
パワハラが発生した際は以下のような方法で対処します。
- 事実関係の調査
- 加害者への対応
- 被害者への対応
事実関係の調査
パワハラが発生したら、事実確認の調査を行いましょう。被害者の話だけでなく、加害者の話も聞かなければ公平な調査とはいえません。
パワハラが事実として認められた場合は、加害者に何らかの処罰があります。加害者の今後の人生に大きく関わることなので、慎重に調査を進めましょう。
また、パワハラとして認められない場合でも、当事者間の誤解を解くための対応が求められます。
被害者と加害者の話が食い違うようなら、同じ職場の人に話を聞いてみてもいいでしょう。
加害者への対応
パワハラの内容や回数、理由や経緯、反省の有無など、多面的に判断する必要があるので、加害者への処罰は一律にはできないでしょう。
懲戒処分は基本的に就業規則に基づいて行われる必要があります。
パワハラが認められたからといって安易に懲戒処分にすることは、加害者側から企業が訴えられることも考えられるでしょう。
また、処分内容だけでなく「パワハラが発生した理由」を深く理解する必要があります。
被害者への対応
パワハラが発生した場合、被害者への休暇の付与や部署異動などの対応が求められるでしょう。
また、パワハラを相談したことを理由に減給や異動、解雇することはパワハラ防止法で禁止されています。
パワハラの事実が認められなったとしても、相談者に対して経緯の説明や当事者間のトラブルを解消するような対応が必要です。
被害者と加害者、ともに納得して今後の業務に取り組めるように配慮された指導が望ましいでしょう。
再発防止に向けた取り組み
最も重要な対策が「再発防止に向けた取り組み」です。
パワハラがあった事実や加害者への処罰内容を隠さずに公表したり、パワハラ防止の研修を実施したりするなど、具体的な再発防止策が求められます。
当事者への対応も大切ですが、更なる加害者と被害者をつくらないための措置をおこないましょう。
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パワハラ防止法とは?企業が知っておくべき事例や対策のポイントを徹底解説!まとめ
今回はコンプライアンスの意味や重要性、パワハラの種類と企業側の適切な対応について紹介しました。
コンプライアンスやパワハラは最近になって使われるようになった言葉なので、細かい罰則規定は定められていません。
しかし、現代はSNSの登場により情報が一気に広がる時代です。
重大なコンプライアンス違反やパワハラの多発は企業の信用失墜につながり、業績不振や倒産の可能性まであるでしょう。
今後はさらにコンプライアンスや、パワハラの処罰が厳しくなることが予想されます。
取り返しのつかない事態になる前に社内体制を整えておきましょう。
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