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「権限なきリーダーシップ」の問題点!

リーダーシップは組織を引っ張る力になるので、権限や役職を持った社長や部長や課長が高いリーダーシップ・スキルを持っていれば、その組織は安泰である。

そして組織のメンバーたちは、安心して仕事に取り組むことができる、というのが一応のところ、リーダーシップの常識とされています。

しかしそれは本当でしょうか。

政治や行政の世界では、強力な権限を持つ者が暴走し、組織や機関や国が危険な方向に進むことは珍しくありません。また大企業でも、最近はトップによる謝罪会見が目立ちます。つまりリーダーだけがリーダーシップを発揮してもうまくいかないことがあるのです。

 

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権限のない者によるリーダーシップとは?

権限のない者によるリーダーシップとは?

そこで注目したいのが「権限のない者によるリーダーシップ」です[1][2]。組織の末端にいる者にもリーダーシップ・スキルを身につけさせたほうが組織が発展する、という考え方です。

リーダー職に就いていない者にリーダーシップ・スキルを獲得させる考え方は、突拍子もないものに感じるかもしれませんが、そうではありません。経営学の巨人、ピーター・ドラッカーも「リーダーシップは仕事である」と述べています。仕事である以上、働くすべての人がリーダーシップの獲得と発揮に取り組むべきです[3]。

 

まして日本企業の多くはいま、人手不足に悩まされています。人手不足とはスタッフ不足を意味するだけでなく、リーダー不足や管理職不足も引き起こしています[4]。

そうであるならば、経営者も上司も部下もスタッフも、いまこそ「権限なきリーダーシップ」の意味を考えるべきでしょう。

 

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「権限なきリーダーシップが多いほうが成果が上がる」

「権限なきリーダーシップが多いほうが成果が上がる」

リーダーシップ開発の研究をしている早稲田大学総合研究センターの日向野幹也教授は、権限がない人にもリーダーシップを発揮させると、組織全体の成果が上がると考えています[1]。

 

リーダーには2つの意味がある

この説を理解するには、リーダーの意味を正確にとらえておく必要があります。一般的にリーダーといった場合、社長や部長やプロジェクトチームの長などのことを指します。つまり、役職や地位や特別な役割が与えられている人のことをリーダーと呼びます。そしてリーダーの下には1人以上のスタッフがいて、リーダーはスタッフに指示を出したり責任を持ったりしなければなりません。

このタイプのリーダーがリーダーシップという特殊なスキルを獲得しなければならないのは当然のことです。

 

もうひとつのリーダーは、役職などを与えられていない人物です。例えば、ある企業が大規模イベントを開催することになり、アルバイトを含め100人の人員を投入したとします。このとき企業は、全体のリーダーを置き、サブリーダーを置き、セクションごとのリーダーを置きます。これらのリーダーは、先ほど紹介した、役職や地位や特別な役割が与えられたリーダーです。

しかし大規模イベントの場合、予想外の業務が発生することが珍しくありません。例えば重要ゲストが1人加わって、そのアテンド(世話係)を3人の一般スタッフに任せることになったとします。実はこのときもこの3人にリーダーが発生することがあるのです。3人はいずれも役職などは与えられていないので、地位としては同列であり上下関係はありません。しかし複数人に1つの仕事を任せると必ずリーダーが生まれますし、そして「リーダーを生まなければならない」のです。

このときの3人のうちの1人である役職なきリーダーにも、リーダーシップ・スキルが求められます。

日向野氏の権限なきリーダーシップ論は、この役職なきリーダーに関わるものといえます。

 

権限なきリーダーシップとは

それではここからは、日向野氏の権限なきリーダーシップ論を概観しながら、リーダーシップを活用して組織を強くする方法を考えていきましょう[1]。

日向野氏によると、アメリカの企業では1980年代から、そして日本企業では2000年ごろから、組織のフラット化と命令系統の短縮化、権限の下位への移譲が進みました。

 

それまでの企業では、上の者と下の者の区別が鮮明でした。

古い体制の企業では、上司は、言われたことだけをこなす従順な部下を求めていました。そして仮に上司が部下に「リーダーシップを発揮しなさい」と指示したとしても、それは本音ではなく、部下が実際にリーダーシップを取ろうとすると上司が妨害する、といったことも起きていました。

そして、企業が若手にリーダーシップを学ばせるのは、成績上位者や高学歴者など選りすぐりの若手エリートに限られていました。

 

しかしビジネスがグローバル化したり価値が多様化したりすると、成績上位者や高学歴者たちだけではソリューションやイノベーションを起こせなくなりました。むしろ、これまで埋もれていた人や低学歴者が持つスキルや経験のほうが課題解決に役立つことがわかってきたのです。

そこで、人材を選別せずに社員たちに満遍なくリーダーシップが必要な仕事を与え、そのミッションをクリアした者を昇格させるようになりました。

要するにリーダーシップを発揮させることを「試験」にしたのです。

 

先ほど紹介した、大規模イベントの事例をもう一度みてみます。準備途中で突如、重要ゲストが加わりアテンドするチームを3人で構成しました。このとき3人のうち1人がリーダーシップを発揮して重要ゲストをしっかりもてなすことができたら、その人は次の企画で役職を与えられるでしょう。

このリーダーシップを使った試験は、人材の有効活用の道を格段に広げました。しかも企業側にはリスクもコストもありません。そもそも権限のない者に任せる仕事はそれほど重要なものではないからです。

 

船頭が多いほうが船は速く進む

権限なきリーダーシップの有益性がわかった企業は、この仕組みを拡大したり人事制度として正式に取り入れたりするようになりました。

ただ、リーダーが多くなると、「船頭多くして船、山にのぼる」という事態が起こり得ます。

 

「船頭多くして船、山にのぼる」ということわざは、船内のリーダーである船頭を複数人指定してしまうと意見が合わず海を進むどころか山をのぼり始めてしまう、という意味です。そこから「リーダーは1人にすべきである」「リーダーシップは1人に発揮させて、他のメンバーはそれに従うチーム編成にしたほうがよい」という教えが導かれます。

 

しかし日向野氏は、そうならないようにすることが企業の経営者たちに求められている、と説きます。

経営者たちは、従業員全員に目的と目標を共有させなければなりません。それができると1つのグループにリーダーシップを発揮する人(船頭)が複数人いても、互いに他のメンバーのリーダーシップを邪魔しないようになります。

日向野氏は、船が山をのぼってしまうのは、チーム内にリーダーシップがあふれかえるからではなく、チームのメンバーにリーダーシップが足りていないからだ、と指摘します。

 

従業員全員がリーダーシップのスキルを身につけることは、共有型リーダーシップといいます。

共有型リーダーシップを機能させるためには、メンバーに自分の目的を持たせないようにすることが必要です。例えば小さな仕事のリーダーを任された権限なきリーダーが「自分はリーダーだからその他のスタッフに指図することができる」と思い始めると、船はやはり山をのぼり始めてしまいます。スタッフたちがこうした勘違いをしないように教育することも、経営者や管理職たちの仕事になります。

 

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ドラッカーは「リーダーシップとは仕事である」と言っている

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日向野氏の権限なきリーダーシップ論と合わせて、ドラッカーの考えるリーダーシップを知っておくと、より有効なリーダーシップ制度を構築できるでしょう。

ドラッカーとは、現代経営学の父といわれているピーター・F・ドラッカーのことです。

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仕事だから全員がこなさなければならない

ドラッカーは「リーダーシップは資質でもカリスマ性でもなく、仕事である」と言っています[3]。仕事ですので、新人社員でも権限がないスタッフでも役職を持たない者でも、リーダーシップを上手にこなさなければなりません。

 

ドラッカーはさらに、リーダーシップとマネジメントを明確にわけています。マネジメントは組織運営に注目します。一方でリーダーシップは、業務に焦点を当てるのです。

「この組織をどう運営していくか」を考えるのがマネジメントで、「この業務をどう成功に導くか」を考えるのがリーダーシップです。

つまりドラッカーのリーダーシップ論は、日向野氏の権限なきリーダーシップ論とバッティングしません。

 

リーダーシップを発揮した仕事の失敗には責任を負う必要がある

そして、権限なきスタッフが経営者や役職者からリーダーシップの発揮を命じられたとき、そのスタッフにとってリーダーシップの発揮は責務になります。

つまりその仕事が不成功に終わったら、そのスタッフは「権限も役職も与えられなかったために失敗した」と言うことは許されないのです。

権限なきリーダーシップは「特権」でも「地位」でもなく、「責任」であるという理解は重要です。

 

リーダーシップを持った者の姿とは

リーダーシップの発揮を命じられた者は、次の仕事をしなければなりません[3][5]。

  • 組織の使命を考える
  • 目標を定める
  • 基準を定める
  • 維持する

 

これらの仕事をするには、次の特性を持っていなければなりません。

  • 信頼性
  • 行動力
  • 誠実さ
  • コミュニケーション能力
  • 決断力
  • 逃げない
  • 安定性

 

これらの特性はいずれも、すべてのビジネスパーソンが獲得を目指さなければならないものばかりです。

正しいリーダーシップを発揮する社員が多くなれば、その企業は活性化され成果を出せるようになります。

 

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権限なきリーダーシップをビジネスシーンで考えてみる

権限なきリーダーシップをビジネスシーンで考えてみる

権限なきリーダーシップについて、あるビジネスシーンを想定して考察していきましょう。

このなかに「権限なきリーダーシップ」が必要になる場面が隠されています。気がつきますでしょうか。

 

事例紹介

親会社Aから子会社aに出向になったB氏(25歳)は、この人事異動を納得していません。今回の出向は3年期限ですので決して「左遷」ではないのですが、B氏は「確かに自分は同期のなかで特別優秀なほうではない。でも子会社に送られるほど劣等でもない」と腐っています。

一方、子会社aでB氏を自分の部下として迎え入れるC課長も「親会社で育った若手社員はプライドが高そうだ。うちの社風に溶け込めるだろうか」と懸念しています。

 

B氏とC課長の利害は次のように整理できます。

  • B氏のデメリット:親会社での出世に支障が出るかもしれない。やりがいを持てない仕事をやらされる。
  • C課長のデメリット:課内に不協和音が発生するかもしれない。戦力にならない人員を抱える。課のパフォーマンスが落ちる。

 

  • B氏のメリット:子会社に強固な人脈ができる。親会社に戻ったときに子会社とのシナジーを生み出せる。
  • C課長のメリット:課を活性化できる。難しい人材を使いこなすスキルが身につく。親会社とのパイプができる。

 

しかし現時点では、B氏もC課長もデメリットばかりに目がいって、自分にメリットがあるとは考えていません。

 

だから「権限なきリーダーシップ」が必要

このままでは、B氏は今回の出向人事をキャリア形成に活かせません。またC課長としてもB氏を異分子として扱い続ければ、B氏の労働力を課のパフォーマンスに変換できないばかりか、パフォーマンスを落としかねません。

 

この場合、B氏は権限なきリーダーシップを自発的に発揮すべきでしょう。ドラッカーの説に従えば、B氏が考えなければならないことは以下のとおりです。

  • 組織の使命を考える
  • 目標を定める
  • 基準を定める
  • 維持する

 

子会社のある課に配属されたB氏は、その課の一員であることの使命を考えなければなりません。そのためにはコミュニケーション能力を発揮して、C課長と積極的に関わるべきです。

B氏は現在25歳で、親会社Aには大学を卒業した22歳のときに入社したので、すでに3年のキャリアがあるわけです。もしC課長から新人と組んで仕事をするように指示されたら、B氏が新人を引っ張っていかなければなりません。

B氏はそういったシチュエーションを想定しながら、自身で目標や基準を設定していかなければなりません。

 

B氏がすべきことは、権限なきリーダーシップを発揮して、子会社aで実績を残すことです。いわゆる「親会社風」を吹かすことなく、謙虚に仕事に当たることで子会社社員の信頼を得れば、結果は自ずと現れるはずです。

 

C課長は、B氏に権限なきリーダーシップを発揮する機会を与えるべきでしょう。そのためにはC課長は、まずはB氏を温かく迎え入れるべきです。

もしB氏に不満そうな態度がみられたら、その心理を察して、今回の出向人事はキャリア形成に大きな利益をもたらすことを説明してあげる必要があります。

 

そしてC課長は、B氏がリーダーシップを発揮できる機会をつくってあげたほうがいいでしょう。そうすることで課員に「親会社イズム」を植え付けることができます。

もしC課長がB氏に活躍の機会を与え、B氏がそれを恩義に感じれば、B氏が親会社に戻ったときに太いパイプ役になってもらえます。

またB氏に経験を積ませて成長させて親会社A社に戻せば、C課長はA社から感謝されるはずです。そうなれば親会社は子会社を信頼するようになり、子会社の独立性を尊重するようになります。それは子会社の社員たちにとって得難い成果となります。

 

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まとめ 権限なきリーダーシップは、自分を鍛え部下を鍛える

まとめ~自分を鍛え部下を鍛える

リーダーシップは仕事なので、すべてのビジネスパーソンはリーダーシップを身につけなければなりません。したがって、まだ若手であってもリーダーシップを発揮できる場面に遭遇したら、憶することなく遠慮することなく力を出してください。

また上司は、スタッフたちにまんべんなくリーダーシップを発揮する機会を与えてあげましょう。そのためにはスタッフたちに仕事と一緒に裁量権を持たせなければなりません。裁量権を持たせるということは、スタッフが失敗したら上司が責任を取ることを意味します。

権限なきリーダーシップのコンセプトは、自分自身を鍛えることであり、部下たちを鍛えることでもあるのです。

 

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参照

[1]変わるリーダーシップ(1)権限と無関係に積極性を奨励
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO36579120X11C18A0KE8000/
[2]日向野幹也(ひがの・みきなり)
http://www.mhigano.com/about.html
[3]「仕事の哲学」
https://bit.ly/2XMq4Sb
[4]人手不足より深刻な人材不足の危機
https://president.jp/articles/-/13796?page=2
[5]「プロフェッショナルの条件」ドラッカー
https://amzn.to/2qhXZmO

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