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部下の「仕事のやる気」や「モチベーション」は管理しなくて良い理由

「部下のモチベーションを上げたい」「もっと部下にやる気を出させたい」。そう考えてさまざまな本を読み、いろいろな方法を試す人もいることでしょう。しかしそれは残念ながら間違いです。

チームを平等に、的確に評価し、部下個人を成長させるマネジメントの観点からすれば、本来上司は「やる気」「モチベーション」の部分で部下に関わりを持ってはいけません。

ここではたびたび議論になる、やる気とモチベーションの定義を改めて確認しましょう。これらを個人レベルで引き上げるための方法を紹介しつつ、上司は部下のやる気とモチベーションについてどう考えるべきか、解説します。

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「やる気」と「モチベーション」の違いを理解する

「やる気」と「モチベーション」の違いを理解する

同じ意味や意味を混同されて使われがちな「やる気」と「モチベーション」ですが、厳密に言えばこの両者はそれぞれ違う意味を持っています。では、やる気とモチベーションはどのように違うのでしょうか。

やる気とは「単なる欲求」

「やる気」をシンプルに表現すれば「単なる欲求」です。モチベーション心理学の世界では有名な「マズローの欲求五段階説」によると、人間の欲求は以下の5段階に分かれています。

1:生理的欲求 食べたい、寝たい、トイレに行きたいなど、最も根源的な欲求
2:安全欲求 身の安全を確保したい、安定的な身分がほしい、不安や混乱がない状態を求める欲求
3:所属と愛の欲求 会社などの組織、家族や恋人などの共同体に所属し、受け入れられたいという欲求
4:承認欲求 自分で自分を認めたい、他人から認められたいという欲求
5:自己実現欲求 自分らしくありたいという欲求

「やる気」とはこれらの欲求と同じ意味だと言えます。マズローは根源的な欲求を満たすと付随的な欲求が新たに生じると定義しました。例えば上司が「部下には持っている才能をいかんなく発揮してほしい」と思えば、上司としては「所属と愛の欲求」「承認欲求」を満たしてやる必要があります。そうして初めて部下は「自分の才能を発揮して、自分らしくありたいという欲求(やる気)」を持ち、満たすのです。

モチベーションとは「動機付け」

一方でモチベーションは、やる気と同じ意味で使われることもありますが、正確に表現すると「動機付け」です。例えば次のような言動を動機付けと言います。

「部長の給料になれば、これだけいい時計が買えるんだぞ。お前もこんな時計を着けたいだろう?だから頑張れ」

「今回のプロジェクトが成功すれば、お前の名前と顔が社内で売れる。次の人事異動を楽しみにして頑張るんだぞ」

「あのメーカーの担当者は手ごわい。契約を取り付ければ会社始まって以来の快挙だ。お前の評価も上がるだろう。ぜひとも頑張ってくれ」

上司からこのような言葉をかけられて部下が「確かに自分もあんな時計がほしい。頑張ろう」「自分の存在を社内に知らしめたい。頑張ろう」「絶対に契約を決めたい。頑張ろう」と思えば、動機付けは成功です。つまり、何のために行動するのかという理由を与えることが「モチベーションを上げてやる」ということなのです。

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やる気やモチベーションについての議論は精神論になりがちですが、心理学や脳科学などの観点から科学的な研究も行われています。以下ではその成果の一部を紹介します。

「ゴール」を指差し確認する

まず、目標を持つ人と持たない人では、頭の中で何をしなければいけないのかの明確さが異なるのではないでしょうか。たとえば短距離走の選手が100メートルのタイムを2ヶ月後の大会までに後0.1秒縮めたい、そのためにどうトレーニングをするのかを考えて日々振り返りを行うのと、今よりも速く走れたらいいなと思うのとでは異なります。実際にいつまでにどうなると具体的なイメージを以て動く人のほうがゴールは明確なのです。

これは仕事でも同様でしょう。明確な目標を持ち、それを絶えず意識することでパフォーマンスやモチベーションがアップすると考えられます。仕事であれば、朝会社の席についた時からどう仕事に取り組むかが大切です。そのため、毎朝起きた時や出勤直後に目標を書いた紙を指さして確認するだけでも効果はあるはずです。

通勤中にその日の仕事の「最高のアウトプット」をイメージする

コーチングの世界では事前にゴールをイメージし、そこまでの道筋をシミュレーションする行為を「メンタルリハーサル」と言います。メンタルリハーサルを行うと、脳内の「やる気スイッチ」がオンになり、行動や思考が前向きになるとされています。通勤中や始業前などに自分が想像できる「最高のアウトプット(=ゴール)」をイメージすれば、高いモチベーション維持したまま仕事に臨めるのです。

気が進まない仕事の前に「上を見る」

ドイツのマンハイム大学のステッペル博士の研究によると、人間の感情は身体の動きに影響を受けることが分かっています。例えば無理にでも笑顔を作ると楽しくなる、元気なポーズをとると元気がわいてくる……などです。これと同じ理屈で、視線を上に向けると人間は後ろ向きなことを考えづらくなるといいます。気が進まない仕事をする前に「上を見る」という癖を付けるだけで、前向きに仕事ができるのです。

残業に入る前に「社内散歩」をする

体を動かして疲れを軽減する休憩の取り方を「アクティブレスト(積極的休養)」と言います。もともとはアスリートが採用していた方法で、ハードな練習日と軽めの練習日を分けることで適度に体をほぐし、疲労の回復を早めるというものでした。丸一日働いた後、どうしても残業が必要な時に、アクティブレストは効果があります。

気分転換がてら社内を少しだけ散歩したりフロアから出て1分間ほどスクワットをしたりと、体を動かすことで頭を切り替え新たな気持ちで仕事に打ち込むことができるのです。

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組織や上司はやる気とモチベーションに関わるな

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こうした方法は確かに効果があります。上司や部下が個人的にやるのは問題ありません。しかし組織として「毎朝の朝礼で自分の目標を指さし確認する」などと決めたり、上司が「どうした、やる気がないように見えるぞ。最高のアウトプットをイメージしてみろ」と声をかけたりするのはNGです。

組織や上司は部下のやる気やモチベーションを上げ下げする作業に関わるべきではありません。その理由は2つあります。「部下が自分の役割をはき違えるから」「そもそも、どちらも部下自身がコントロールすべきものだから」です。

部下が自分の役割をはき違える

会社が組織として実行することは「顧客にサービスを提供する顧客から対価を受け取る会社が従業員に給与を支払う」の順番です。この順番を従業員全員が理解していれば「給与を受け取るためには顧客にサービスを提供し続ける必要がある」と考えるはずです。ところが多くの人がこの順番をはき違えているのが現状です。「会社から給与を受け取る顧客にサービスを提供する顧客から対価を受け取る」という順番だと認識しているのです。

これでは「会社から給与をもらっているから働き、顧客にサービスを提供している」という考え方になってしまいます。すると「給与分以上に頑張るためには頑張るための理由が必要だ」ということになり、「頑張る理由がないなら給与以上に頑張る必要もない」という論理も成立します。上司がこの論理に染まってしまうと「部下のやる気やモチベーションを上げさせて、頑張らせなければ」と考え、必死に部下のご機嫌をうかがうようになるのです。

しかし本来、給与は顧客にサービスを提供した対価として受け取るものです。給与を現在より増やしたいのであれば、顧客に対しより価値の高いサービスを提供すべきです。

つまり、部下の役割は「やる気やモチベーションを持って給与以上の働きをする」のではなく、「顧客により価値の高いサービスを提供する」ことなのです。にもかかわらず、組織や上司が部下のやる気とモチベーションを管理すると、部下は自分の役割をはき違え、組織は不自然な状況に陥るのです。

どちらも部下自身がコントロールするもの

人間のモチベーションはすぐに上下するものです。仮に「部長の給料になれば、これだけいい時計が買えるんだぞ。お前もこんな時計を着けたいだろう?だから頑張れ」と言われて「確かに自分もあんな時計がほしい。頑張ろう」と思ったとしても、週末には「よく考えるとあんなに高価な時計なんて必要ないな」と冷めてしまい、モチベーションを失ってしまう可能性も十分にあります。

このように移り変わりの激しいものを上司がコントロールするのがそもそもの間違いです。本来モチベーションは目標を達成するために部下自身が上げていくべきものなのです。目標が3年以内に部長より高い時計を買う」でもかまいませんし、「5年以内にマイホームをキャッシュで買う」でもかまいません。重要なのは誰かに動機付けをしてもらうのではなく、自分自身で動機付けをすることです。

「やる気」も同様です。やる気のあるなし、与えられた仕事をきちんとこなすかどうかは別問題だからです。

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やる気やモチベーションの管理以外に、上司がするべき仕事はあります。それは「明確な目標設定」「正しい評価」です。

「明確な目標設定」で部下を無駄に迷わせない

部下に対して「あの先輩みたいになることが、当面の目標だ」と伝えることは「明確な目標設定」とは言えません。この目標では、具体的にいつまでに、何ができるようになればいいか分からないのです。仮に部下が「自分はもう十分、先輩くらいの仕事ができる」と思っていても、上司は「まだ月とスッポンくらいの違いがある」などと、認識に差が出る可能性があります。すると部下は「いつになったら『先輩レベルになった』と思ってもらえるのだろうか?」と迷ってしまいます。

これを防ぐには上司と部下の間で「100点満点の仕事」の認識を一致させる必要があります。具体的には期限を決め、達成するべき目標を数値化することです。

「あの先輩」を目安にするのであれば、「先輩の営業実績と同じ数字を今年度末までに達成する」という目標を与えるのです。事務職で営業実績などの分かりやすい数字がない場合は、「1ヵ月の業務で書類の不備をゼロにする」といった目標がいいでしょう。

こうして目標を明確に設定してやれば、部下はどれくらいのペースで何ができるようになればいいかが判断でき、迷いがなくなります。

「正しい評価」が部下の成長を促す

「明確な目標」を設定すれば、上司も目標を達成できたかあるいはできなかったかを容易に判断でき、評価する際に迷わなくなります。ここで重要になるのは評価は結果だけをもとにするということです。結果に至るまでのプロセスや仕事へのモチベーションを評価基準に持ち込むと、評価そのものが主観的になってしまいます。上司の好き嫌いや気分に左右されて評価がゆらぐと、部下は何を基準に仕事をすればいいか分からなくなり、せっかく明確に設定した目標も意味をなさなくなります。

部下が成長するためには

①「できないことが何かを認識する」

②「認識した『できないこと』ができるようになる」

2ステップが必要です。しかし上司が評価に主観を持ち込むと、そもそもをクリアすることができません。

上司の仕事は部下を成長させ、パフォーマンスを向上させ、自分の上司から与えられた目標を達成することにあります。自分の評価が原因で部下を迷わせ、成長を止めているようでは上司失格です。したがって上司は主観的な見解を評価には入れず、結果のみを持って評価を下す必要があるのです。

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まとめ 部下の「仕事のやる気」や「モチベーション」は管理しなくて良い理由

まとめ 上司は「やる気」「モチベーション」で仕事をさせてはいけない

やる気やモチベーションには個人のパフォーマンスを引き上げる力があります。

個人が仕事のパフォーマンスを上げるために、やる気やモチベーションを上げようとするのは問題ありません。

しかし、必要不可欠なものではありません。給与を受け取っている以上、仕事をするのは当たり前だからです。

したがって組織や上司は、部下のやる気やモチベーションを管理してはいけないのです。

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